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『日本の法人が、海外の居住者を直接雇用する場合の注意点』について、弁護士 杉田先生に伺いました

目次

外国人採用で、入社予定の内定者が入国できない等により、本邦の法人が海外の居住者を直接雇用する場合(海外の事業場での雇用ではない)、どういった注意が必要になるのでしょうか。
外国人材受け入れがご専門である、弁護士法人Global HR Strategy 代表社員 杉田昌平先生に伺った内容をまとめました。

 


 

本邦の法人が、海外の居住者を直接雇用する場合の注意点

本邦の法人が海外の居住者を直接雇用する場合(海外の事業場での雇用ではない)の注意点は、次のとおりです。

【健康保険】

日本の法人が給与を支払う場合、健康保険に加入する必要があり、原則として当該金額を基準として標準報酬月額が算定されます。

【介護保険】

非居住者については、原則として介護保険の対象となりません。
管轄の年金事務所に「介護保険適用除外等該当・非該当届」を提出することになります。

【厚生年金保険】

健康保険と同様の扱いです。

 

ASIAtoJAPANサービス紹介

 

 

【労災保険】

非居住者については、原則として対象となりません。但し、特別加入できる場合があります。

【雇用保険】

雇用契約がある場合には、被保険者となるため、資格取得届出を要します。

【適用法】

法の通則法7条、8条、12条により、特段の合意がなければ労務の提供地の法律が適用されます。
そのため、本来の勤務地が日本であれば、海外で勤務していながら、日本の労働関係法令の適用があります。
したがって、賃金についての原則(労働基準法24条)等も適用があり、就業規則や賃金規程についても国内の場合と同様に適用があります。

【労働条件の整理】

前項のとおり、日本の法人と直接の雇用契約がある場合、日本にいる場合と同様の労働条件が適用されるため、
勤務時間(日本時間か現地時間か)、労働時間の管理をどのようにするか等について、事前に整理をする必要があります。

 


■お話を伺った方

弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)

弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)

詳しいご紹介はこちら

 

【杉田先生とASIA to JAPANの関わり】

『外国人高度人材はこうして獲得する!―「準備」「手続」「定着」の採用戦略』(ぎょうせい、2020年。株式会社ASIAtoJAPAN 編著、弁護士 杉田昌平 監修)に記載されている「監修にあたって」(全文)をもって、説明に代えさせて頂きます。

-監修にあたって-
本書の企画を発案したのは株式会社 ASIA to JAPANの代表取締役である三瓶雅人氏である。私が三瓶さんと出会ったのは、私がベトナム・ハノイ市に所在するハノイ法科大学で教鞭をとっていたときであった。三瓶さんは、日本の人材関連の企業に所属していたのだが、日本の人材関連の事業者がベトナムまでリクルートに来るのかと思い、非常に驚いたことが記憶にある。
2015年6月から2017年8月までのハノイ法科大学での任期を終え、日本に戻り弁護士業務に復帰したところ、ベトナムでの経験からか、外国人材についての法務・労務を中心に仕事をするようになった。今では業務の90%が外国人材の受け入れに関する法務・労務である。
外国人材の受け入れは、法律上の制度だけを見ても複雑で理解することが難しい。そして、それに加えて各国の卒業時期や就職に関する実務慣行まで合わせて考えると、非常にわかりにくい分野だと思う。
本書はそういった「わかりにくさ」を解消することに、少しでもお役に立てたらという思いで執筆されている。そのため、外国人材の採用に関する実務、出入国関係法令・労働関係法令等の法的制度に加えて、すでに外国人材を採用している企業の事例も紹介しており、制度だけでない明文化されにくい「実際」についても解説している。
私がこのように外国人材の法務・労務にかかわり、採用を積極的に提案するのには理由がある。私は、2年間、ベトナムの国立大学で大学の講師をしていた。そのため、特に東南アジアからの外国人材は、姿が教え子と重なる。そして、多くの教え子は、日本や日本の企業で働くことを希望する。すると、やはり自然に、希望どおり日本や日本の企業で働いてほしいと思う。そして、働くのであれば、外国人材にとって望ましい職場で働いてほしいと思うし、望ましい職場を増やしたいと思っている。これが、私が外国人材の法務・労務にかかわる一番の動機だ。
この教え子の顔が見えるという点で、私と三瓶さんは共通している。株式会社 ASIA to JAPANはインドやタイを始めとする各国の大学に日本語過程を設置し、日本語過程で学んだ人材を日本の企業に紹介することを事業の一つとしている。三瓶さんが、以前、自分の会社の職業紹介事業のことを“ドライ”な職業紹介ではなく紹介する人の顔が見える“ウェット”な職業紹介だと評していたことが記憶に残っている。
本書は、今まさに増えようとしている外国人材、特に高度人材について、このような強い思いを持ち実務にあたっている関係者が、実際の現場で悪戦苦闘していることも含めて文字にしたものである。本書が、皆様が直面する課題の解決に、少しでもお役に立てたなら幸いである。

2020年5月
弁護士 杉田昌平

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