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株式会社モリタアンドカンパニー

株式会社モリタアンドカンパニー
取締役技術部・製造部管掌の谷口昌也氏、管理部の山本祐司氏にお話をうかがった。(※内容は2020年発売の弊社書籍より抜粋)

【ご利用サービス】
  • FAST OFFER (外国人学生採用)

  • 【サービスご利用後の変化】
  • 採りたい人数、求める優秀な人材がきちんと確保できるようになった
  • 「外国人だから」とか「日本人と同じようにできないから」といった理由で不満に思う人を作らない環境ができた
  • 外国籍の新入社員は会社に自然に馴染んであまり変化はないように感じた
  • 目次

    外国人材の採用に取り組み始めた理由について教えてください。

    谷口:理工系の日本人学生がなかなか採用できなくなってきたからです。これまでは毎年年間10人程度と面接できていましたが、ここ数年は突然応募が減ってしまいました。

    山本:2019年の会社説明会では、日本人の技術系学生の参加者はゼロでした。応募者を集めるために予算を増やしても、それは他社も同じことです。世の中全体で日本人学生が採用しづらくなっている中で応募が増やせず、2017年から技術部門で外国人材の採用を始めました。

    谷口:外国人材の雇用に対する問題意識は5~6年前からあり、実際に留学生の方と面接をしたこともありました。日本語がある程度できる方々ではあったものの、それでも時には英語で会話をしなければいけないこともあって腰が引けてしまいましたし、技能レベルがなかなか理解できなかったことにも戸惑いを感じていました。ただ、先述したとおりいよいよ日本人学生が採用できなくなってきて、そんなことを言っている場合ではない、ということになりました。切羽詰まって採用に踏み切ったイメージですね。

     

    外国人材の採用を始めるにあたって、最初に何をしましたか。

    山本:最初はノウハウが全くなかったので、外国人材の採用サポートをしている業者と打合せをして、まずはターゲットを絞り込みました。親日の国や地域が受け入れやすいのではないかと考え、対象を台湾に定めて現地で開催された日本企業の合同面接会に参加しました。2017年、2018年の双方とも4人に内定を出して、2人が辞退、実際に入社したのが2人です。現在は合計4人の台湾出身の社員が働いています。

     

    日本人と外国人材の採用には、どのような違いがありますか。

    谷口:日本人学生の面接と同じやり方では相手のことをチェックできないというのが、最も大きな違いだと感じています。そもそも書類選考の段階で学力がわからない。良い大学と聞いても、それがどのくらいのレベルなのかが判断できません。2017年に採用した2人と約1年一緒に働いてみて、「この大学だとこれくらいのレベルなのか」ということがようやくわかり始めたところです。

    面接では通訳をつけて会話をしているのですが、日本と台湾の習慣が違うため、従来の定番の質問が成り立たないことも多いです。たとえば学生時代の部活動について聞いたときに日本人の場合は何かしらエピソードが出てくるものですが、台湾人の場合は部活動がないようで全く出てこない。どのように高校、大学時代をすごしたのかがイメージできないのです。「5年後はどうなっていたいですか」と質問したところ「わかりません」という答えが返ってきたことにも驚きましたね。

    結局、人物面に関しては「嫌な感じがしなければ採用する」こととし、ほかには素養を確認するために本人の好きなことやアピールポイントを徹底的に追求しています。たとえばパソコンの組み立てが好きという話があれば、やり方や好きな理由、かかる費用、搭載するOSなど、細かなことを聞いていきます。それに答えられる人は物ごとにのめり込めるタイプだと思うのです。これは技術者に必要な素養ですし、当社のような小さな会社の場合、個性の強い人が集まったほうが特徴が出るということもあって、会社としては国籍問わずオタクっぽい人を雇いたいという思いがあります。

    山本:2度の外国人材の採用を経て最も気をつけていることは、「仕事内容が本人のやりたいこととマッチしているか」です。実際、大手企業から内定をもらっていた学生が「やりたい仕事内容だから」と当社を選んだ例がありました。大手企業の場合は配属や職務内容を入社前に明確に伝えることが難しいところもあると思いますが、当社の場合は、たとえば設計の仕事でも、部品なのか装置なのかといったところまで具体的に伝えられます。海外ではジョブ型採用が一般的だといわれますが、当社もその方向性で採用をしています。

    谷口:日本の大手企業も旧来の雇用体制から抜け出しつつあるものの、あくまで“徐々に”ですよね。その点当社は順応が早いので、外国人材にも定年まで働いてもらえるとは思っていないのです。「最低3年は働いてほしいけれど、運良く当社とマッチして5年、10年と在籍してくれたらラッキー」くらいの感覚です。面接の時点で将来国に戻って起業したいという話があれば、「それならうちで日本の技術を覚えて帰ればよい」と伝えますし、その際もしも当社の仕事の一部をやりたいという話があれば支援したい。そのような気持ちで外国人材の採用をしています。大手企業がこのようなスタンスで採用を行うのは厳しいと思いますので、そこは差別化になるのではないかと思っています。

    山本:面接の場では「ずっと働きたいか」という意思ではなく、「どのくらい在籍してくれるのか」を確かめたいと思っています。たとえそれが5年であっても、当社としてはそれで問題ないということを伝えているので、そこは候補者の安心感につながっているかもしれません。

    谷口:当社には外国人材はまだ4人しかいませんが、これが10人程度になったとき、その半数が10年残ってくれたらリターンとしては十分だと考えています。もちろん早期退職は避けたいですが、こればかりはどうしようもない。長くいてもらうことが難しいのであれば、最初から「この人は5年頑張ってくれればよい」と想定するしかありません。その結果6年いてくれたら1年分ラッキーですし、逆に10年いてほしいと高望みすると腹が立つわけです。

    また、「会社に在籍している間にどれだけ頑張ってくれるか」という視点で考えると同時に、早期退職を防ぐための対応として、今後は外国人材を多国化していきたいと考えています。同じ国の外国人材ばかりを採用してしまうと、その国のグループができてしまいますし、1人辞めたら芋づる式に全員が辞めてしまうリスクもありますから。

     

    日本語力についてはどの程度重視していますか。

    谷口:日本語ができない人も採用しています。入社前は現地の日本語学校を手配し、入社後は学校と、家でのウェブ学習をサポートしていますので、「日本語学習のフォローはするから、自分ができる仕事をしっかりやって成果を残してほしい」と面接では伝えています。

    最初に採用した2人の場合、1人はほぼ日本語をマスターしており、もう1人はあまり話せなかったのですが、1年勉強したらコミュニケーションがとれるようになりました。翌年採用した2人は、入社10か月経った今もまだ日本語はたどたどしいですが、先輩の2人が中国語でカバーしてくれているので、今後全く日本語が話せない人が入社したとしても既存の外国人社員の力でどうにかなるのではないかと考えています。過去には「日本語ができなくても大丈夫だから応募した」という人もいたので、アピールポイントの一つになっているのではないかと思います。

     

    受け入れの手続や宗教上の対応についてはいかがでしょうか。

    山本:ビザと役所関係の手続は業者に依頼し、家探しは人事側で不動産の法人営業の方とやりとりして準備しています。既存の台湾出身の社員4人については特別な対応は必要ありませんでしたが、2019年11月に入社予定のインド人の方はベジタリアンです。食堂にベジタリアン向けのメニューはないものの、「自分で持参するので特別な配慮はいらない」と本人が言っていたのですぐに対応する予定はありませんが、いずれは整備していく必要があるとは思っています。

    谷口:その他の宗教上の対応についても入社後に適宜調整していくことになると思います。お祈りに要した時間を休憩時間から引くなどすれば本人も周囲も納得がいくでしょうし、ルールさえきちんと決めて、皆にとって不公平がないようにすれば問題ないかと思います。われわれのお客さまの中には打合せ中、お祈りのために席を外す方もいらっしゃいましたし、海外の展示会にはお祈り用のスペースが準備されていることもあります。グローバルで考えれば、こういった対応をしていくことは自然なことなのかもしれません。

     

    外国人材の採用はビザや役所手続、日本語教育など、日本人の採用にはかからないコストが発生します。その点はどのように考えていますか

    谷口:トータルでみると採用費用はさほど変わりません。確実性の高い外国人材の採用に予算を割いています。外国人材の採用で最もよいのは、採りたい人数がきちんと確保できることです。外国人学生が日本で働こうと思ったときの選択肢はそれほど多くありません。だからこそ不確定要素が少なく、歩留まりが想定しやすいのです。現状は計画どおりに、われわれが求めている優秀な人材が確保できています。そうして採用した人に日本語習得のための教育費をあてる。そのうえでトータルコストは変わっていないので、効果としてはよいと思っています。

     

    最後に、外国人材の採用を行ったことで会社に生じた変化について教えてください。

    谷口:おそらく変化していると思いますけれど、自然になじんでいるのであまりわからないですね。もしかしたら若い社員は外国人材と接することにそもそも抵抗がないのかもしれませんし、上の人間も優しいタイプが多いので、外国人だからといって避けるようなこともありません。日本人や外国人という分け方もしていませんし、そのような意識もないと思います。技術部門での外国人材の採用は始めたばかりですが、別の部門では以前から外国人材や日本に帰化した人が働いていますので、その影響もあるかもしれません。

    山本:外国人社員の努力によるところも大きくて、たとえば日本語があまり話せない台湾出身の社員の場合、もともと人あたりがそんなに良いタイプではないと思うのですが、日本語を覚えるためにいろいろな人に積極的に話しかけていました。相当頑張っているのはみていて感じましたね。

    谷口:もちろん仕事の不備に対して注意することはありますが、「外国人だから」とか「日本人と同じようにできないから」といった理由で不満に思う人はいません。本人の努力不足なのか、教えるほうに問題があるのか、それとも文化の違いなのか。できない理由がどこにあるのかというジャッジさえしっかりしておけば、国は関係ないと思っています。

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