【出版記念イベントレポート】グローバル採用最前線!
人事担当&外国人学生 オフライン交流会
ASIA to JAPANは、代表取締役の三瓶雅人が記した書籍『高度外国人材 採用から活躍までの「定石」』が2023年12月25日に出版されたことを記念して、【グローバル採用最前線!人事担当&外国人学生 オフライン交流会】を2月22日に開催しました。
本記事では、そこで行われたパネルトークの内容の一部を抜粋してご紹介します。
■パネルトークの概要
●テーマ
「海外学生採用のBefore & After」
●登壇者
株式会社マネーフォワードPeople Forward本部 五十嵐 敬也 様
サントリーホールディングス株式会社 ピープル&カルチャー本部 名古路 実希 様
●モデレーター
株式会社ASIA to JAPAN代表取締役社長 三瓶 雅人
■海外学生採用のきっかけ
三瓶:外国人材採用ですが、登壇いただいた方々も普段から苦労されているかと思います。まずは外国人学生採用のきっかけについてお話しいただけますでしょうか。
五十嵐様:私の部署では、主に海外の大学に通う学生を対象に新卒エンジニアとして採用することをミッションとしています。また採用した学生の入国サポートや、入社のサポートを行っています。マネーフォワードは年々組織が拡大しているのですが、「いずれ日本のマーケットだけでは会社の成長を支えるエンジニアの採用は難しくなるだろう」と会社として認識をしていました。CTOのグローバル採用にかける想いも強かったため、まずはやってみないとわからないということから、日本語を話せるベトナム人材の採用を行ったことが始まりでした。
名古路様:私はビジネス部門での日本国内の新卒学生採用と、海外学生の採用を担当しています。海外学生採用を行うきっかけは、ユニークな価値観・経験を持ったグローバルで活躍できる人材を採用したいという思いが始まりでした。その一環で約10年前に1度採用したIIT(インド工科大学)の学生は今も活躍しており、工場勤務からグローバル系技術部門、そして現在は海外のグループ会社で活躍しているという成功事例があります。、今回は新たにIIT学生の採用に伴い、ASIA to JAPANさんのサポートをいただきました。
IIT学生採用を行うきっかけは、海外でインド人材の人気が高まっていることに気づいた人事役員から「採用を進めてほしい」というアイデアがあり、採用チームもその必要性を感じたことがきっかけで始まりました。
三瓶:ありがとうございます。そうするとお二方共に、上層部より指示があったことがきっかけだったのですね。
・確定から実行までの期間
三瓶:では、指示を受けてから実行するまでどれくらいの期間を要したのでしょうか。
名古路:春ごろにIIT学生の採用を行うことが確定して、8月にはプレースメントへのエントリーの締め切りとの案内がありました。そのため、8月までに申し込みを行い12月1日からのプレースメントに臨み、IIT学生の採用をしました。
※IITプレースメントについてはこちらから
三瓶:実行までの期間は大変だったか、もしくはスムーズに進められたのか、実感としていかがでしたか?
名古路様:プレースメントは日本と異なる採用のルールを把握することや、新しい取り組みとして行うことは大変でしたが、採用ルールが明確である分やりやすさも感じました。
三瓶:五十嵐さんは採用までどれくらいの期間がありましたか?
五十嵐様:日本語話者かどうかで期間が変わるのですが、日本語話者の採用は、私が入社する前からCTOが率先してグローバル社員の採用を行っていました。非日本語話者の採用は私が入社した2021年から本格的に始まりました。6月に入社をしたのですが9月には採用が始まりました。私が入社してから、非日本語話者の採用活動を行うための準備期間は1ヶ月ほどでした。
三瓶:2社ともに大きな企業ですが、決断されてから実行までは迅速に進められたのですね。日本の企業は「どうしよう….」と一歩を踏み出せないケースがあるのですが、お二方のお話から「やればできる」ということがわかりました。
■大変だったポイント
三瓶:外国人採用で大変だったポイントを伺いたく思います。
名古路様:先ほどもお伝えした通り、日本人の採用ルールとは異なります。プレースメントの場合、長期間かけて採用を行うのではなく、1日で一次面接、最終面接を終え、内定出しまで完結する必要があります。また全体の状況に左右されるので、当日まで誰が面接を受けにくるかわからず、馴染みがない日本の面接官のために、事前に情報共有を行なったり、面接者のための準備をしたりすることが大変でした。
実際に今年は一次面接を通過した学生のうち、半数が次の面接に参加されませんでした。このような不測な事態でもASIA to JAPANのサポートのおかげで、慌てず選考を行うことが出来たかなというのが感想です。
三瓶:通常の日本人の採用だとかなり整理されて行われている中で、面接官の中には今回のような外国人採用に違和感を抱く方もいらっしゃったと思います。そういった方への説得や伝えるタイミングはどうだったのでしょうか。
名古路様:今回は部長もチームに入りプロジェクトとして稼働したので、部長を巻き込んで情報伝達や連携を行いました。またプレースメントはルールが確立していることもあり、内容を理解し実行するしかないと全体で認識をしていたので、納得のもと進めていけました。
三瓶:ありがとうございます。五十嵐さんはいかがですか。
五十嵐様:大変だったポイントはたくさんありました。名古路さんもお話しされていましたが、採用イベントでは予想ができない事態も発生するので、良い結果で終わるために常に柔軟に対応できるよう準備していました。
また、技術レベルが高い学生に圧倒的にリーチしやすくなった一方で、採用フローにおいて彼らの技術や知識を正しく評価ができるのかという点も大変でした。採用と同時に、面接する側の社員と応募者の方の言語力に差が出てしまうこともありました。そのため、コミュニケーションに齟齬が生まれることもありましたし、採用基準のポイントを明確にするのも難しかったです。
また、外国籍の方は内定から来日までの間にいくつもの準備が必要ですし、入社後の日本での生活にもたくさんのハードルが待ち受けています。彼らが抱えることになる課題をきちんと把握し、これらを会社としてしっかりサポートする基準を作り上げていくことは大変でしたね。
■日本人学生との違い
三瓶:人事の方々が一番気になる「なにが日本人の学生と違うのか」ということについて、実際に採用して気づいたことやイメージとのギャップがあったかなど伺えたらと思います。
五十嵐様:やはりレベルの高い学生に会いやすくなることがグローバル採用の強みだと思います。多くの日本企業同士で国内の日本語話者を取り合っている状態だと思うのですが、グローバルに目を向けると約200カ国が対象となるので、優秀な人材と会える可能性が何十倍にも高まります。
名古路様:一番大きな違いは「サントリー」を知らない方がいらっしゃることです。日本の学生さんには周知いただいているのですが、まずは説明会で企業紹介や取り扱うブランド紹介などを行い、興味を持ってもらうことに努めました。
そのほかには、IITの卒業年齢が日本と異なり若いので、人間面に少し幼さが感じられました。一方でITやデジタルに関する知識が深く、即戦力として申し分ない人材でした。また、面接時の評価でも違いがありました。自己PRの「学生生活で何をどれだけ頑張ったか」に対してIITならではの回答が多くあり、どれが凄くてどれがそうでもないのか、その場での理解も難しく採用点数にばらつきが生じました。
三瓶:面接時の質問は日本人向けと外国人向けとで変えたりしていますでしょうか。
名古路様:基本的な質問の違いは特にありません。ただ、会社への定着について判断をするため、日本への興味についてはしっかりと聞いていました。
三瓶:日本人の場合ですと面接のためにしっかりと準備をする学生が多いですが、インドの学生はその点いかがでしたか。
名古路様:日本人学生と同じく、調べている学生もいれば全く知らない状態の学生もいました。それはエントリーシートにも表れていて、自分の言葉で書いている学生はしっかりと事前準備をしていました。
三瓶:五十嵐さんが感じた選考の難しさなどはありましたか。
五十嵐様:まず、国内外で求めるレベルが異なるのですが、質問に関しては差を出さずちょうどいい塩梅のものを用意するようにしました。採用を行った国の学生は、我々が聞かなくても凄いだろうなと思う経歴や受賞歴を持っている方が多かったです。日本では平均的な方が多いのですが、特定の分野だけ尖っているような学生がいるという多様性の面は非常によかったです。
・即戦力の採用
三瓶:お二方ともに中途に近い即戦力性がある学生を採用されていますが、その点において社内からどのような反応がありますか。
五十嵐様:そうですね、即戦力の評価が新卒学生にもされています。マネーフォワードでは、即戦力人材のみを採用をするため基準の引き上げも行っていますが、その基準を超えてくるような学生は多いです。
三瓶:IITの採用では即戦力性を注視したなどありましたか。
名古路様:そこまで注視していませんでした。考え方として、入社後にしっかりと学んでほしいというスタンスでいます。なので、「デジタルしかやりません」という学生よりも、さまざまな環境でも適応し挑戦できる学生を求め、職場のカルチャーに合うかといったあたりも考慮して採用しました。
三瓶:技術の即戦力よりも社風に合うかどうかで採用されたのですね。
■質疑応答
参加者A:外国人学生に入社後も定着し働き続けてもらうために、どのような工夫をされていますか。
五十嵐様:人材の定着についてはマネーフォワードだけでなく、他社の方もいまだに課題とされています。私たちは社員のパフォーマンス最大化に向けて、内定者からの質問に対して丁寧かつ深掘りをした回答をするなど密なサポートに努めています。会社も変化しますし、内定者も入社後からキャリアが変化していきます。私も常に「いい環境にするには何が必要か」を考えています。
参加者B:IITのプレースメントで、予測ができないこととは具体的にはどのようなことだったのか、また初めて外国人材を受け入れた際に新たに福利厚生を設けたなどございますか。
名古路様:サントリーに応募をした学生の面接リストを作っていました。与えられた面接枠がDay2だったのですが、当日の早朝にリスト上位の学生が不参加になったとの連絡を受けました。理由は、ランクの高い学生はDay1の段階で他社への内定が決まってしまったからです。また、一次面接を通過した学生も次の面接には来ないという、弊社にとってのイレギュラーも当たり前のように起こりました。
五十嵐様:今のお話を「わかるなー」と思って聞いていました。ネガティブに捉えて欲しくはないのですが、我々も希望するエンジニアを採用するために、面接日の1日のために何ヶ月もかけて準備を進めていました。ただ、前々日までイベントが本当に行われるのかも怪しいという情報が入り当日を迎えました。会場に行き選考会が始まって、選考対象者が現れるまでは採用担当として不安でした。普段は違うのですが、そういうイレギュラーが発生することもあります。
三瓶:福利厚生についてはいかがでしょうか。
名古路様:元々ある福利厚生ですが、「年に一度母国に帰郷する」もしくは「家族を日本に招待する」というのがあります。この制度には嬉しいという声をよくいただいています。
三瓶:我々が過去に日本で働く外国人労働者に対して行ったアンケート調査でも、年に一回は帰りたいという回答が多くあったので、その制度は素晴らしいですね。五十嵐さんはいかがですか。
※過去のアンケート調査はこちらから
五十嵐様:来日直後に必要な生活準備金の支給や、日本語を話せない内定者の銀行口座開設のサポートなども行っています。
三瓶:サントリーさんに勤めているIIT出身の方が、サントリーさんで良かったと感じた事は、具体的にどのようなところでしょうか。
名古路様:成長するためのサポートが充実している会社だと仰っていただいていました。 あわせて、サントリーの「人」が良かったので直ぐに馴染めたところもあったようです。
■外国人材採用を検討している方々へ
三瓶:今後、外国人材採用を検討している企業様へアドバイスはございますか。
五十嵐様:やっぱり一度少数で構わないので、外国人材の採用をしてみてはいかがでしょうか。もちろん、採用を成功とするには内定者に寄り添い、研鑽に励むなどそれなりの努力が大切です。我々もグローバル採用を行ったことがきっかけで、そこから変化の火種が増えていったので、そういったことをイメージできる会社様であれば、まずはアクションを起こすことが重要かと思います。
名古路様:私自身今回が初めての日本人以外の採用でした。サントリーでは過去にも日本人留学生の定着率が低いなど課題がある中で、IITで採用した学生が成功に終わるか失敗に終わるかまだ見えていません。そんな中でできるアドバイスが「なんとかなる精神」を持っておくことです。IIT学生採用ではイレギュラーが発生するので、フレキシブルに対応ができる状態でいることが必要かと思いました。
三瓶:ASIA to JAPANの活用についてはいかがでしょうか。
五十嵐様:ASIA to JAPANさんは海外大学の新卒採用については、深い知見を持っていらっしゃいます。我々は今でもお世話になっていますし、採用を助けていただいています。これからグローバル採用をされたい企業様は、採用担当内だけで話し合うだけでなく、ASIA to JAPANさんの知見を活用してみるのはいかがでしょうか。
名古路様:ASIA to JAPANさんには沢山サポートいただきました。IIT採用ではIITに知見のある社員さんにも現地入りしてもらい、大学関係者ともやりとりをしていただきました。面接時も採用を行っている裏方のまわしをASIA to JAPANさんに委託できたのは本当に助かりました。もし外国人採用で動き出すのであれば、社内だけでなく一度ASIA to JAPANさんに相談してみると良いと思います。
今回はイベント内のパネルトークの一部をお届けいたしました。
ASIA to JAPANでは年間300名の外国人学生の採用を支援しています。受け入れの事前準備、外国人材採用に関連する法律問題、受け入れ後のサポート方法など、外国人材採用にまつわるご相談を随時受け付けていますので、お気軽にASIA to JAPANへお問い合わせください。