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海外大学に通う日本人にとって、就職活動は悩みの種。日本での就職活動と異なり、周囲の活動状況が見えず、得られる情報も限定的です。
そこで、ASIA to JAPANではアメリカ、カナダ、イギリスの大学に通う11名の留学生と座談会を開催(※参加者の詳細は記事末尾参照)。
海外大学の日本人留学生のリアルな苦労やホンネを数多く聞くことができました。

この記事では、次の6項目に分けて、海大生のリアルをお伝えします。

 

1.就職活動を始める時期がわからない

選考がオンラインに切り替わり、距離のハンデがなくなったと思いきや、新たな困りごとも生じているようです。

 

——海外大学生の皆さんが日本での就活をする上で、どのような苦労がありますか?

●Fさん(カナダ/トロント大学):就活のスタート時期がわからないですね。ボスキャリでインターンシップに行って、そのまま内定をもらう人が多数いるらしいのですが、それを知らなくて。

僕はもうすぐ大学4年生になりますが、今からインターンに応募し、内定を取ろうとしています。自分が早めに就活をしなかったのが悪いんですけど、事前に就活を始める時期について情報があればよかったなと思います。

●Dさん(カナダ/UBC大学):スタートの時期は本当にわかりにくいですよね。早い人だと大学1年生から就職先を探し始めている人もいるけど、一方で大学3年生でインターン先すら探していない人も結構いる。

——日本の場合は一般的な就活のスケジュールがありますが、それがないのでしょうか?

●Dさん(カナダ/UBC大学):ないです。そもそもカナダには日本のように決まった就職活動スケジュールがないし、カナダ人の友達の場合、3年生でインターンを探して、4年生の夏に就職先を探し始める人が多いので、周囲との就活スケジュールは全然違います。

●Bさん(アメリカ/UCLA):情報が少ないこともあって、右も左も分からない状態ですよね。就活を始めた時は苦労しました。

というのも、日本の大学にはキャリアセンターがあるけど、アメリカの大学に日本の就活に特化したセンターは当然ありません。ESの書き方や自己分析、面接の対策の方法など、基本的なことも、どうやって就活を始めればいいのかもわかりませんでした。

——そのような中で、どうやって情報を集めたのでしょう?

アメリカ、カナダ、イギリスにいる日本人留学生のホンネ

●Bさん(アメリカ/UCLA):日本の大学から来ている交換留学生から教えてもらいました。就職活動を始めているか、すでに終えている大学3〜4年生が多かったので、どうやって就活をしたのか聞きましたね。あとはキャリアフォーラムに参加して、自分で情報を集めていました。

●Aさん(アメリカ/UCLA):私は1〜2年生がコロナ禍真っ只中だったこともあり、横のつながりも縦のつながりも本当になくて。しかも、私は2年生から別の大学に行ったので、就活を始めるタイミングで先輩はほぼゼロ。何をすればいいのか、全く分からなかったです。

ネットで調べながら手探りで始めましたが、最近になって先輩ができ始め、もっと早くに始めた方がよかったことを今更知りました。

●Bさん(アメリカ/UCLA):日本の大学にいると、周りの友人が就活を始めるから自分も始める、みたいな流れがあると思いますが、海外大学にいると自発的に動かなければ情報が入ってこないなと思います。同じ日本人でも、日本での就職を目指していない人もいますしね。

 

2.就職先が限られてしまう

●Cさん(カナダ/トロント大学):海外大学生に共通することだと思いますが、企業のリストが少ないなと思います。日本で就活をする場合はアプローチ先がたくさんあるけれど、海外大学生にアプローチしている企業は圧倒的に金融系とコンサル系が多く、相当限定されているのを感じます。

●Eさん(カナダ/UBC):会社のイメージが湧きにくいのもありますよね。日本に住んでいたら「このCMの会社か」など、なんとなくイメージが持てることもありますが、海外にいると日本企業を目にする機会が全然ありません。

●Iさん(アメリカ/サンディエゴ州立大学):不利だと思うのは、主体的に情報を取りに行かなければいけないこと。

本来、最初はいろいろな業界を見るべきだと思うんですけど、普通に生活をしていても情報は入ってこないし、偶然の出会いもない。海外大学生向けの就活サービスも業界が偏っているので、すでに自分が知っている業界や企業にどうしても絞られてしまいます。

●Jさん(アメリカ/UCSD):圧倒的にチャンスは少ないですよね。OB・OGがほぼいないからOB・OG訪問もできないですし、日本の大学生に比べて就活の選択肢が少ないと感じています。

●Iさん(アメリカ/サンディエゴ州立大学):私は日本の大学生向けのセミナーに参加したことがあるのですが、全く考えもしなかった業界を知ることができて、めちゃくちゃ面白かったんです。そういう機会がもっとあればなと思います。

●Aさん(アメリカ/UCLA):積極的に自ら動かないと企業と出会えないのは、国内学生との大きな違いだと思います。

僕自身はボスキャリだけで決めるのは怖かったので、日本人大学生向けの選考に片っ端からエントリーをして、内定をもらった企業もあります。ボスキャリには来ないけど、海外大学生を採用したい企業はたくさんあることを知ったので、そういう企業との出会いがもっとあるといいなと思いますね。

3.就活に割く時間がない

●Gさん(イギリス/マンチェスター大学):イギリスの場合、大学は3年生までです。だから2年生はめちゃくちゃ忙しい時期。僕は卒業を来年に控えているので、シンプルに就活をする時間がありません。

しかも、日本企業は日本の大学生に向けてスケジュールを組んでいます。海外大学生を考慮している場合も、イギリスの学生は数が少ないこともあり、ESの締め切りや面接日程が大学のテスト期間と丸かぶりすることもあって。時間を作るのが大変だし、どうにか時間を作れても焦ってクオリティーは下がってしまう。それが一番きついですね。

これは勝手な偏見ですが、日本の大学生の中にはあまり勉強しない人もいるじゃないですか。自分のリソースを就活に全振りする人もいると思いますが、海外大学はそういうわけにいきません。大学の勉強と就活のバランスをとって、どちらもそれなりのクオリティーでやるのは、正直かなりしんどいです。

●Bさん(アメリカ/UCLA):アメリカの場合、「大学在籍中は大学に集中するのが当たり前」という考え方です。だから4年生の学業が落ち着いた時期や卒業後に就職活動をする人がほとんど。一方、日本は大学3年生で就活をするじゃないですか。大学3年生は学業が忙しい時期なので、この就活スケジュールの違いは厳しいなと感じます。

●Kさん(イギリス/マンチェスター大学):イギリスも「就活は卒業後にやればいい」という感じですね。

●Jさん(アメリカ/UCSD):ボスキャリも11月なので、試験とかぶるんですよね。日本企業のスケジュールに従わざるを得ないとは思っていますけど、勉強で手一杯なところに就活も重なるのはつらいものがあります。同じアメリカとはいえ、僕がいるサンディエゴからボストンは飛行機で3時間かかりますし。

●Kさん(イギリス/マンチェスター大学):イギリスからすると、ボスキャリは結構な旅行なんですよ。毎年は行けないし、就活系のセミナーもアメリカに焦点を当てたものが多いなと感じます。イギリスの学生の母数が少ないので仕方がないとは思うけど、「日本の方がまだ時差がマシだったな」と思うことも結構ありますね。

夜中4時まで図書館で勉強して、スーツに着替えてセミナーを受けたり、夜中3時にグループディスカッションをしたり。正直、頭は回らないです。

●Fさん(カナダ/トロント大学):時差の問題は大きいです。日本とカナダは13〜14時間違うので、深夜に面接を受けることもあって。

●Jさん(アメリカ/UCSD):夜中2時にスーツを着て、髪をセットして、みたいなことは海外大学生にとってあるあるですよね。

 

<参加者>

  • Aさん:アメリカ/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)社会学専攻
  • Bさん:アメリカ/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)社会学専攻
  • Cさん:カナダ/トロント大学、映像・経済学専攻
  • Dさん:カナダ/ブリティッシュコロンビア大学(UBC)金融専攻
  • Eさん:カナダ/ブリティッシュコロンビア大学(UBC)心理学・美術学専攻
  • Fさん:カナダ/トロント大学、経済学・保健数理専攻
  • Gさん:イギリス/マンチェスター大学、コンピューター専攻
  • Hさん:アメリカ/カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー校)環境経済学
  • Iさん:アメリカ/サンディエゴ州立大学、ビジネス専攻
  • Jさん:アメリカ/カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)社会学専攻
  • Kさん:イギリス/マンチェスター大学、ビジネス専攻

 

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