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日本人留学生と本音トーク。海外大生採用で企業がとるべき戦略とは?

目次

ASIAtoJAPANは8月25日、現役の海外大生4人を招き、Webセミナー「日本人留学生が参加・本音トークで知る海大生採用で企業がとるべき戦略とは?」を開催しました。

2024採用に向け国内での選考準備が進む中、ダイバーシティー推進やグローバル化に向け即戦力性の高い海外大生。彼らが日本の就活をどのように捉え、どのように動いているのか、採用を実現するヒントが得られるセミナーとなりました。この記事ではセミナーの一部を抜粋してお伝えします。


トークテーマ:

  • 海外大生の現状について
  • 海外大生の就活スケジュール、情報収集の方法、動き方の実態について
  • 海外大生ならではの就活の悩み、日本の大学生との違いについて
  • 就活の実情を、現役学生との直接トークでリアルに知る

パネラー学生:

  • Aさん(カリフォルニア大学サンディエゴ校、以下UCSD)
  • Bさん(トロント大学)
  • Cさん(カリフォルニア大学ロサンゼルス校、以下UCLA)
  • Dさん(サセックス大学 修士取得済/ヨーク・セント・ジョン大学 MBA留学中/日系メーカー内定済)

モデレーター:

株式会社ASIA to JAPAN Client Service Division マネージャー 青地 翔子

1. 海外大生の現状について

コロナ禍の過去2年、海外大に進学した日本人学生の就活スタイルや思考は大きく変化しました。現地での大型イベントも再開する今、改めて対象学生の日本就職に対する考え方や、活動方法、スケジュールを確認する必要があります。

本セミナーに先駆け、ASIAtoJAPANでは海外大生との座談会を開催。アメリカ、カナダ、イギリスの大学に通う11名の現役日本人学生と話し、最新の就活事情をヒアリングしました。

海外大生の就職活動における悩み、情報収集の難しさ、実際の動き方など多くの発見をすることができました。
抜粋して別記事にまとめておりますので、ぜひご覧ください。

■海外大学に通う日本人学生の ホンネと悩みを徹底調査

本セミナーでは、さらに掘り下げた実情に迫るため、改めて海外(イギリス、アメリカ、カナダ)で学ぶ日本人学生4名に本音の意見を伺いました。

2. 海外大生の就活のスケジュール

日本の大学とは異なる大学制度で生活する海外大生は、日本の就活にどのようなスケジュールで取り組んでいるのでしょうか? 実は、海外大生の就活スケジュールは決まっておらず、彼ら自身も就活を始める時期や何をいつ始めればよいのか明確に理解していないのが現状です。

日本の大学では、6月頃からESの書き方や自己分析の方法など大学のキャリアセンターから就活に関する案内が出始め、一般的な就活スケジュールを認識することができます。周囲でもリクルートスーツを来た学生が増えてきて、「就活をそろそろ始める時期だな」という実感を持つようになります。一方で、海外の大学では卒業後に進路を決める学生が大半です。

日本とは異なる大学生活を送る彼らは日本の就活に対し

「いつスタートするのか分からない」

「日本の就活について情報も足りない上に、大学の勉強が忙しく時間も足りない」

という本音を抱えています。

●大手のキャリアフォーラムから就活を始めた

本セミナーに参加いただいた、これから本格的に就活を始めるアメリカ、カナダ大学に通う学生3名からはボストンで開催される大手キャリアフォーラムや一時帰国中の東京でのキャリアフォーラムに参加することから就活を始めたという声が伺えました。

Cさん(UCLA):1番初めに就職活動について意識し始めたのは、コミュニティカレッジからユニバーシティにトランスファー(*注)する時期、学年で言うと大学2年生から3年生になる時期でした。実際に就活に取り組み始めたのは、トランスファーが終わった3年生のタイミングのキャリアフォーラムからです。

Aさん(UCSD):私もCさんと似ていますが、コミュニティカレッジから今の大学に編入したときに今後就活をどうしていこうかな、と考え始めました。そこから去年のオンラインのキャリアフォーラムに参加し、面接練習や就活とはどんなものなのか、というところから入りました。その後、自己分析や自分がどんな業界に興味があるのか分析をしました。
ですが、その後はテストや学期の勉強が忙しく…。今年の夏、東京のキャリアフォーラムに行き、これから本腰を入れようかなというところです。

(*注)トランスファー:コミュニティカレッジからユニバーシティに編入すること。高額な留学費用を抑えるため、こうした進学をする学生が多い

●日本の大学生向けの選考フローは海外大生にハンデ

日本の大学生のスケジュールに合わせた選考フローでは、選考やインターンがそもそも海外大生が参加できない時期に開催されていることもあります。彼らからは「本当にグローバルな人材を求めているのかな」との声も上がりました。

本セミナーの本音トーク中にも、就活を終え日系メーカーから内定をもらっているDさんから、日本での面接必須という点について意見がありました。

Dさん(ヨーク・セント・ジョン大学):私の志望していた業界の一つが教育機関だったのですが、採用ページに「海外の大学に在籍されている方、卒業された方を歓迎します」と書いてありました。しかし選考フローを見てみると、最終面接は絶対に日本でしなければいけない、ということが多くありました。結局その業界自体を受けるのを諦めてしまいました。海外大生やグローバル人材を求めるのであれば、全ての選考がオンラインになることもあると思うので、それも受け入れていただけるとよいと感じました。

日本の大学とは異なる海外大のスケジュール、勉強が忙しい、なかなか帰国できない、時差がある…
海外大生のこのような状況や意見をふまえ、グローバル人材の採用を目指すのであれば海外大生向けの選考フローの導入を検討していく必要がありそうです。

3. 海外大生を採用したい企業が知っておくべきこと

本セミナー中に出た海外大生からの意見をもとに、企業様が海外大生への採用活動を進める中で、知っておくべき点として次の3点をまとめました。

  • 日本とは異なる大学制度への理解が必要
  • 海外大生の入社5年後の理想の働き方
  • 日系企業のポテンシャル採用についての印象

海外大生の本音トークを交え、ご紹介します。

●日本とは異なる大学制度への理解が必要

海外の大学は日本の大学とは異なるシステムで動いています。
たとえば以下は海外の大学では珍しくない、ごく一般的な制度です。

  • ゼミや卒論がない
  • トランスファー(編入)する(アメリカ)
  • 大学が3年制(イギリス)

これらは、海外大生にとっては当たり前ですが採用側が認知しておらず、面接で大学制度自体の説明を求められるケースが非常に多いとの意見がありました。

Cさん(UCLA):ゼミと卒論がないことが結構大きくて。私がこれまで面接を受けた際にも、「ゼミはどこに所属しているの?」「卒論は何について書いているの?」と聞かれることが多くありました。「ないです」と答えると「じゃあ君は大学で何をやっているの?」と聞かれてしまいました。
もちろん自分からも何を勉強しているのかはお話しするのですが、せっかく海外大生向けの採用枠を作っていただいている中、そのような内容になってしまうと、限られた面接時間のなかではロスだと感じてしまうこともあります。
また「海外大生に興味があるのかな」と思ってしまいます。日本の大学の勉強のシステムと海外大の勉強のシステムが違うことを理解していただけると、ありがたいと思います。

●海外大生の入社5年後の理想の働き方

青地(ASIAtoJAPAN):働き方や活躍イメージについて海外大生はやはり、英語を使う、海外出張など海外と関わる働き方を希望しているというイメージがあります。実際のところ、みなさんの理想とする5年後の働き方や活躍イメージをお聞かせいただけますか?

Cさん(UCLA):5年後というと中堅とも言えないけれど新人とも呼べない微妙なラインになると思います。
5年も経てばある程度の経験を積んでいると思うので、自分で裁量を持って業務や事業の舵を切れるような仕事につくことができればいいな、と考えています。

青地(ASIAtoJAPAN):そのときに、英語を使うことや海外駐在があればいいな、と思いますか?それともマストで欲しいと思いますか?

Cさん(UCLA):やはり可能な限りあればいいなとは思います。4年間アメリカで過ごしているので、この経験は将来に活かしたいという気持ちはあります。就活をする中でも、英語を使う、海外に駐在するといった機会がある業界を中心に選んでいます。

Aさん(UCSD):新入社員から数年経って、社会の基礎を身につけている時期だと思いますので、適性として社会でどういう働きができるのかを見据えていける頃と考えています。そのような点で、自分のやってきたことや知識、言語力が活かしていけたらいいと思います。

海外大生にとって、やはり外国語や海外との繋がりのある仕事は重要なポイントであることが分かりました。日本を離れ海外で大学生活を送った「自分の経験を活かしたい」という思いに寄り添い、活躍の機会について海外大生にしっかりと伝えることが重要となりそうです。

●日系企業のポテンシャル採用についての印象

青地(ASIAtoJAPAN):日本の新卒採用はまだまだ総合職としての採用が多いと思いますが、それに対してはマイナスなイメージはありますか?それとも総合職もいい点があると、受け止めている認識でしょうか。Dさんは既に内定しているのは総合職採用ですがいかがですか?

Dさん(ヨーク・セント・ジョン大学):現在イギリスで生活をして、インターンシップという形でイギリスの会社で働いている経験を通じて、私は日本の新卒採用について、こんなに素晴らしい制度はないと痛感しています。
たとえば、私が現在内定をいただいている企業と同じ規模の企業で同じポジションの内定をイギリスでもらうのは恐らく無理だと思います。その大きな理由として、経験が足りないということがあります。
日本の新卒採用のように、経験がなくてもポテンシャルを見て教育の機会を与え、会社が人材を育てていくというのは非常にありがたいと感じます。

転勤や入社後の部署が選べないことなど、日本企業ならではの慣習に不安を抱える海外大生もいる一方で、ポテンシャル採用や充実した福利厚生など、海外経験を通じて日本企業のありがたさを感じていることが分かりました。

4. 海外大生の就活の指向性

海外大生にはコンサルや商社のような企業が人気で、メーカーやBtoBで学生にあまり知られていない企業には応募が集まらないのでは、という懸念をもつ企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。

本セミナーに集まっていただいた海外大生4名に直接、次の3つの質問をしてみました。

  • 海外大生にはやっぱり金融、コンサル、商社が人気?
  • 入社の際に重要視するポイントは?
  • 認知度が高くないBtoB企業の説明会にも参加してみようと思いますか?

回答の一部を抜粋してご紹介します。

●海外大生にはやっぱり金融、コンサル、商社が人気?

Cさん(UCLA):やはり私の周りでも金融、コンサル、商社を志望している学生が多いです。海外大学へ留学しているという自分のバックグラウンドや英語が話せる、英語を使いたい、海外駐在したいという就活の軸を叶えられる企業や業界は実際偏ってしまうという現状はあると思います。

Aさん(UCSD):Cさんと同意見です。それに加えて、海外大生に人気のコンサルなどの企業は情報が入ってきやすい、海外大生向けの採用枠を用意していることも多いと思います。先輩もコンサルなどに就職していることが多いので、自然と興味もそちらに向きやすいのだと思います。

青地(ASIAtoJAPAN):ありがとうございます。一方で、Dさんはコンサルや商社など海外大生に人気の業種もある中で、メーカーを選ばれました。どのような過程があったのでしょうか?

Dさん(ヨーク・セント・ジョン大学):私もはじめは総合商社などに興味をもち、ロンドンで開催された説明会にも参加しました。ですが就活を進める中で、自分の専攻である移民学と仕事内容を照らし合わせていった結果、メーカーで日本の技術を海外に発信することで貢献したいという思いに気づきました。

また本音トーク中にはBさんから次の意見がありました。

Bさん(トロント大学):自分の大学の卒業生の方とお話しする機会があったときに、ファーストキャリアで人気の業種に行く方が多いものの、セカンドキャリアで全く違ったキャリアに進むことが多いと伺いました。一概に海外大生が人気の業種に行きたいわけではなく、みんな専攻がバラバラで好みがハッキリしている方も多いので、人気業種以外の仕事についても知る機会をいただけると非常に嬉しいです。

●入社の際に重要視するポイントは?

Cさん(UCLA):海外出張や海外駐在、英語を使う機会があるかどうか。また最近では転職することも一般的になってきていると思いますが、私はファーストキャリアで一度勤めた会社で長く勤め上げたいと考えています。そのため、自分の興味関心や特技と照らし合わせて長く働きたいと思う企業かどうかを見ています。

Bさん(トロント大学):一概には言えませんが、自分にとって大きな要素が四つほどあります。一つ目はお給料、二つ目が労働環境、三つ目は社風、四つ目はキャリアにおける繋がりです。大きくこの四つの組み合わせで決まると考えています。

Aさん(UCSD):まず一つはお給料の面です。あとは私の興味とどれだけ合っていて、その企業に入ってどんな技能や知識が身につくのか、自分がどれほどスキルアップできるのかを重点的に見ています。

Dさん(ヨーク・セント・ジョン大学):私が内定をいただいた企業に入社を決めた理由は大きく分けて3つあります。まず勤務地が東京であること、もし日本でなければ欧米やアジアに駐在の機会があることです。次にお給料というよりは福利厚生が充実していた点も魅力でした。あとは面接の過程や選考のフローで「この会社は本当にグローバル人材が欲しいんだな」と感じ、私が海外大を卒業し入社した後にきっと活躍の場があるんだなと、人事の方とのお話を通じて感じることができたので入社を決めました。

●認知度が高くないBtoB企業の説明会にも参加してみようと思いますか?

Dさん(ヨーク・セント・ジョン大学):私が就職活動を始めた時期に説明会に参加する企業をどう決めていたかというと、サセックス大学の日本人コミュニティがあり運営者の方が定期的に説明会についてFacebookに案内してくれていました。
そこでたまたま内定をいただいた企業の説明会開催を知り、説明会に参加した経緯があります。当時は企業の名前は知っているけれど、何をしているかを詳しくは知らず志望度も高くない状況でした。

Bさん(トロント大学):実際に自分の先輩でもBtoBの企業へ入社した方もいらっしゃいますし、学生に認知度が低いBtoB企業に海外大生が興味がないということはないと思います。
私も東京のキャリアフォーラムに行った際には、BtoBの企業で非常に興味を持ったところもありました。大切なのは、何をしているかと環境だと思いますので、認知度はあまり気にならないのかと思います。

Aさん(UCSD):業種的に興味があるかないかで、見るか見ないかは分かれるかもしれませんが、認知度で判断することはあまりないのかなと思います。
たとえば、私も東京のキャリアフォーラムではパンフレットがかっこよかったり、興味を惹かれたところへ話を聞きに行ってみたりしました。そこでどんな風にどんな仕事をされているのか、魅力を感じるかを判断すると思います。

Cさん(UCLA):人による、ということはもちろんあると思いますが、海外大生は自分の学んでいることに芯が通っている人が多く、この分野のこれがやりたいから勉強しています、という人が多いです。ですので、一般的な知名度が低くても何かに特化した企業にバッチリ興味関心がはまる人材がいると思います。そのような場合は企業の知名度に関わらず、説明会に参加すると思います。
なので、ぜひ様々な企業に説明会に来ていただきたいなと思います。逆に説明会などの場がないと企業を知る機会がないので、企業や業界を知るよい機会だと思います。

やはりコンサル、商社、金融といった業界は海外での活躍のチャンスも多く、情報が多いことからも海外大生には根強い人気があるようです。一方で、自立した考える力をもった海外大生たちは「自分の興味関心とマッチするか」「活躍の機会があるか」などを、自分で判断していきたいという思いがあることも分かりました。企業側が海外大生に、事業内容やグローバル人材を採用したい思いを正しく伝えることで、採用のチャンスは十分あることが分かりました。

5. 海外大へのオンキャンパスプロモーションの重要性

日本で大学生活を送っていれば、さまざまな企業の名前や業務内容について同級生や先輩から自然と情報を得る機会があります。しかし、情報源が限られる海外大生においては「偶然の出会い」はありません。

本セミナーを通しても、海外大生側も情報不足や企業との接触の機会が少ないことによる選択肢の狭さを感じていることがわかりました。

青地(ASIAtoJAPAN):先日の座談会での「就職する企業が限られている、偶然の出会いはまずないです」という、海外大生の本音は私もすごく印象に残っています。国内の大学生は、CMなどで企業について知り調べてみるきっかけとなると聞きます。しかし海外大生には、そういった機会はないのでキャリアイベントやオンキャンパスのプロモーションに出展している企業の中で、自分が知っている、もしくは先輩から聞いた中で調べてエントリーしていく流れとなります。
なので大手のキャリアイベントなどに出展すれば海外大生は集まると言うのは、少し認識が違うと思っています。グローバル人材を必要としている企業様には、どの企業様も海外大生に対して響くポイントがあります。アピールするポイントをしっかり学生に届けていくことが非常に重要です。キャリアイベント前に、海外大生に認知させていく活動が大事だと考えています。

海外大生への認知を広め、採用に大きな役割を果たすのが「オンキャンパスプロモーション」です。

オンキャンパスプロモーションは、企業と学生の双方にメリットがあります。

  • 企業側のメリット:学生からの印象がよい、アピールできる
  • 学生側のメリット:情報の少ない海外において学生同士で横の繋がりがもてる

ゼミがなく横の繋がりを持ちづらくなった海外大生、さらにコロナ禍でひとりぼっちで就職をする学生も少なくありません。このような状況下で、オンキャンパスプロモーションは就活を行う学生同士で繋がりをつくることができる貴重な機会、学生が非常に集まりやすい実情があります。

コロナ禍もオンキャンパスプロモーションを実施

ASIAto JAPANの提供するFAST OFFERでは、海外大に留学する日本人学生の採用支援をしています。

昨シーズン、ASIAtoJAPANはエージェントとして唯一、コロナ禍でもオンキャンパスプロモーションを行ないました。各校の学生団体との強いコネクションを持ち、現地の就職学年はもちろん低学年まで対面での強い繋がりを築いています。

また、2023年1月末~2月にかけてイギリスでのオンキャンパスプロモーションも予定しております。優秀な学生と出会うチャンスはまだまだございますので、ご興味のある企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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