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中国人学生の「日本で働きたい理由」が変わりつつある? 中国北京・東北部の大学視察レポート

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201911月、ASIAtoJAPANは中国の北京、東北部の2つの地域で合計8つの大学を視察し、各大学で「Study Go Work JAPAN プログラム」の説明会を行いました。

 

北京では北京大学(Peking University/PKU)、北京科技大学(University of Science and Technology Beijing/USTB)、清華大学(Tsinghua University)、北京交通大学(Beijing Jiaotong University/BJTU)、中国人民大学(Renmin University of China/RUC)の5つの大学を訪問。

 

これまで北京では複数回「Study Go Work JAPANプログラム」の説明会を行ってきましたが、全体的に参加者数は減少傾向にあります。説明会の形式がオフラインからオンラインに移行しており、説明会会場に足を運ぶ人自体が減っていること、そして中国全土の給与水準が上がっていることから日本での就業を希望する人が減ったことの2つが要因として挙げられます。

 

また、北京ではスタートアップ企業も多く起ち上がっており、トップ大学の学生は就職先にはそれほど困りません。スタートアップ企業の給与水準は高くないものの、将来上がる可能性があるため、最初の給与が低いことをそれほど気にしない学生も多い印象です。

 

東北部ではハルビン工業大学(Harbin Institute of Technology/HIT)、東北大学(Northeastern University/NEU)、大連理工大学(Dalian University of Technology/DUT)の3つの大学を回りました。

 

東北部はそもそもの企業数が少なく、経済も冷え込んでいます。また、中国では同じ企業でも地域によって給与水準は異なり、例えば華為(ファーウェイ/Huawei)の場合、東北部の機械系学部の修士生の年収は24万元程度(約370万円)。これは東北部でトップクラスの給与水準であり、他の有名企業はおよそ20万元(約310万円)、国営企業は18万元前後(約280万円)です。

 

就職先が少なく、給与水準も低いため、東北部の学生は大都市に移動せざるを得ませんが、東北部から上海、北京、日本への移動距離はほぼ同じ。そんな背景から「日本での就職」が選択肢として持ちやすい状況にあります。さらに東北部は旧満州に当たる地域であり、歴史的背景から日本語に慣れている人が多くいます。

 

大学での日本語教育も盛んです。日本企業が世界で最も盛んにキャンパスリクルーティングを行っているであろう大連理工大学はダブルディグリー制があり、世界でも珍しく理系分野と日本語の2つの学位を取得することが可能。つまり日本語のできる理系人材の宝庫であり、日本企業から大変人気があります。実際に日本に就職する学生も多い一方で、競争率が高いため、辞退率も高い傾向にあります。

 

東北大学は実学を重んじる大学であり、3,4年生はインターンシップに参加するため、ほとんど大学にいないほど。即戦力としての活躍が期待できるので企業からの引き合いが強く、特にIT系学部の学生が人気です。大連理工大学が作ったテキストを用い、IT用語などの専門用語を中心に日本語を教えているため、日本企業からも人気があります。

 

ただ、中国の企業からも人気が高く、昨年は700万円の年収を提示された学生もいるため、日本企業の新卒社員の給与水準では採用が難しい面もあります。また、日本語を勉強しているものの、日本に就職した先輩が少ないため「日本で働く」という選択肢がそもそも頭にない学生も少なくありません。

 

同地域トップ大学であるハルビン工業大学では選択科目に日本語が用意されており、約200人の学生が日本語を勉強しています。ただ、同大学でも日本で働いている先輩が少なく、やはり「日本で働く」選択肢が発想にないケースが珍しくありません。ASIAtoJAPANは東北部の各大学で「Study Go Work JAPAN プログラム」の導入を交渉中。日本企業との親和性が高い東北部の優秀な理系中国人学生に向けて、まずは「日本で働く」という選択肢を啓蒙していく予定です。

 

中国全体に言えることは、「給与水準の上昇が明確になってきている」ということ。これまでは「一部の超優良企業と一部の超優秀な学生」が日本と同水準以上の給与を得る形でしたが、その範囲が「優良企業と優秀な学生」にまで広がってきています。これまでのように中国のトップ大学の学生を採用できなくなりつつあることをまずは認識し、採用戦略を考え直す必要があります。

 

一方で日本企業での就業を希望する理由として増え始めているのが、働き方です。中国ではワークライフバランスを意識していない企業も多く、中国の学生の間では「朝9時から夜9時まで、月曜日から土曜日までの6日間働く」という意味の「996」という言葉も生まれています。日本でいうブラック企業と同じ意味合いであり、働き方のイメージとしては高度経済成長期の日本に近い状況。この働き方を避けるために日本で働きたいと考える学生が少なからずいます。

 

中国の採用市場の状況が変わりつつあることを把握し、自社のアピールポイントを整理すること。そして従来の人気大学以外にも目を向けることが、採用の成功率を高める第一歩。ASIAtoJAPANは引き続き中国の各大学との提携を継続していくと同時に、まだ日本企業とのつながりが弱い東北部の大学との取り組みを強化していく予定です。

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