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日本人留学生の就活への危機感と現状 ~北米、イギリスのトップ大学訪問レポート~

目次

日本人留学生の就活状況最新レポート
2021年9月〜10月にわたり、ASIAtoJAPANはアメリカ、カナダ、イギリスの約50大学を実際に訪れ、日本人留学生向けの就職支援サービス『Fast Offer』の説明会をオンキャンパスで行いました。
各大学で行った説明会に参加した学生数は、合計480名。海外の大学で学ぶ日本人留学生の就職活動には、コロナ禍でどのような変化が起きているのか。
ASIAtoJAPAN代表・三瓶雅人と、『Fast Offer』を共に運営するアブロード代表・大崎隆志氏が、日本人留学生の就活の今をご紹介します。現地に赴き、学生や各校の日本人学生会と直接接点を持って見えてきたものとは?
前半では、日本人留学生の就活への危機感と現状について。後半では、日本人留学生の採用を考える日本企業へのアドバイスをお届けします。
※本記事は11月12日12時より開催したウェビナー『日本人留学生の「就活状況」最新レポート~北米・イギリス TOP 50校の直接訪問から帰国しました!~』の内容を基に作成しています。


質疑応答に行列。現地で感じた日本人留学生の危機感

三瓶:アメリカとカナダ、イギリス、一部のアジアの大学を周り、現地の日本人留学生に向けて説明会を行いました。欧米の大学だと参加者はだいたい10〜30名、多い大学だと50名近く集まるところもありましたね。
一方で、アジアの大学に留学する日本人は激減しています。北京や上海などの都市部を中心に、現地学生の日本企業への就職意欲も減退しているのを感じました。

【今回訪問した大学】

■北米
アリゾナ州立大学Arizona State University(ASU)、ジョージア工科大学Georgia Institute of Technology(GATech)、
パデュー大学Purdue University、デボー大学DePauw University、
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校The University of Illinois at Urbana–Champaign(UIUC)、
ミシガン大学University of Michigan(UM)、オハイオ州立大学Ohio State University、
カーネギーメロン大学Carnegie Mellon University(CMU)、ハーバード大学Harvard University、
ノースイースタン大学Northeastern University、ボストン大学Boston University、
ニューヨーク大学New York University、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校Stony Brook University、
カリフォルニア大学バークレー校UC Berkeley(Cal)、アメリカ創価大学Soka University America(SUA)、
サンフランシスコ州立大学San Francisco State University、
カリフォルニア大学ロサンゼルス校University of California, Los Angeles(UCLA)、
カリフォルニア大学サンディエゴ校University of California San Diego、サンディエゴ州立大学San Diego State University、
ワシントン大学University of Washington、ブリガムヤング大学Brigham Young University、
グリネル大学Grinnell College、ブリティッシュコロンビア大学University of British Columbia(UBC)
■イギリス
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンUniversity College of London(UCL)、
キングス・カレッジ・ロンドンKings College of London(KCL)、
インペリアル・カレッジ・ロンドンImperial College of London、
コベントリー・ユニバーシティ・ロンドンCoventry University London、
エディンバラ大学University of Edinburgh、リーズ大学University of Leeds、ヨーク大学University of York(JUSU)、
マンチェスター大学University of Manchester、シェフィールド大学University of Sheffield、
ランカスター大学Lancaster University、ウォーリック大学Warwick University、バーミンガム大学University of Birmingham、
オックスフォード大学Oxford University、ケンブリッジ大学University of Cambridge、
イーストアングリア大学University of East Anglia(UEA)、
エセックス大学University of Essex、ブリストル大学University of Bristol、エクセター大学University of Exeter、
サセックス大学University of Sussex、レディング大学University of Reading

大崎:参加者は例年以上に多かったですね。最初に訪問したアリゾナ州立大学(Arizona State University/ASU)では30人以上に参加いただき、学生の危機感を感じました。
対面のセミナーは1年以上ぶりでしたが、セミナー後の質疑応答には行列ができ、対応には1時間以上がかかって。やはり心に溜まったものがあるのだと思いました。「自分の置かれたシチュエーションで、ベストな選択肢は何なのか」といった相談を多数受けましたね。

三瓶:日本企業が他に誰も来ていない中で、歓待を受けたのが印象に残っています。対面のイベントや面接が渇望されているのを感じました。定型の講演ではなく、直接話をしたいというニーズは多かったですね。

大崎:「オフラインの就職イベントは初めて」という学生がほぼ100%でしたね。

三瓶:今回のオンキャンパスでの説明会に参加した学生について、まとめたのが次のグラフです。年齢層は20〜23歳で、卒業時期は再来年の2023年5〜6月卒業の方が最も多かったです。1〜2年生の参加も目立ちましたね。
FAST OFFER留学生就活、参加学生の年齢、卒業時期、性別
FAST OFFER留学生就活、参加学生の居住地域、学部
大崎:例年のオンキャンパスでは、だいたい翌年卒の学生が最多でしたから、再来年卒業の学生が最多というのは今回の特徴ですね。
昨年就活した先輩は、まさにコロナ禍のど真ん中。苦労していた人が多く、それを見て「早めに準備をしなければ」と思った人が多かったようですね。コロナ禍で危機感があおられて、低学年の参加者が増えたのでしょう。
参加学生が約500人というのも、例年に比べて多いと思います。現地を訪れたのが我々だけだったことも大きいですね。

大崎:ブリティッシュコロンビア大学(The University of British Columbia/UBC、カナダ)やオックスフォード大学(University of Oxford、イギリス)など、上位校は学生の受け答えに安定感があり、さすがだなと感じました。
知る人ぞ知るイギリス郊外のウォーリック大学(University of Warwick)なども、良い学生が参加をしてくれて、有意義な説明会になったなと思います。

日本人学生会の動きが鈍化。就職情報の引き継ぎができていない

三瓶:日本人留学生の就活について、その活動の主体となるのがJSAです。

大崎:JSAは「Japanese Student Association」の略称で、和訳すると「日本人学生会」。サークルのような団体をイメージしていただければと思います。イギリスではJS(Japan Society)と呼ばれることが多いですね。
JSAには日本人留学生の他、日本語を勉強している外国人学生も多くいます。私は十数年前からJSAに直接アプローチをしていますが、日本企業が日本語と英語が話せるバイリンガル採用をする際は、このJSAとの連携が非常に重要です。

三瓶:今回各大学のJSAを回る中で、全体的に動きが遅れている印象を受けました。通常、上級生から下級生へ就職情報の引き継ぎが行われますが、今年はそれがまだ実施されていないケースも。
日本人学生会の動きが鈍化
大崎:引き継ぎがまだ行われていないところは多かったですね。通常、新入生が入る時期の歓迎会などのイベントで、初めて上の学年と下の学年が接点を持ちます。ところがコロナ禍で何十人と集まるイベントができなくなり、上級生と下級生の接点が取りにくい事情がありました。
JSAには、「社交」と「就活」の大きく2つの機能があります。頻度が圧倒的に高いのは前者で、バーベキューなどのイベントで上級生と下級生が接点を持ち、会話の一部で就活について相談が行われていました。そういう機会は激減しているようです。

三瓶:現地大学のキャリアセンターは、日本の就職活動のサポートをしていません。頼みの綱だったJSAでの気軽な会話がなくなり、就活情報を得にくくなったのは大きな課題ですね。

日本人留学生を取り巻く環境

三瓶:バイデン政権に移り変わった今もなお海外就職は困難ですが、その認識もないですよね。「アメリカと日本、どちらで就職するか悩んでいる」と相談に来る学生も結構いました。

大崎:特にアメリカの場合は1年間有給で働けるOPTビザがあるので、「現地就職するか、日本で就職するか悩んでいる」という相談は毎年受けますね。
OPTビザで1年間働いたとして、どれだけの経験ができるのかは疑問ですし、仮に現地企業と相思相愛になったとしても、審査でビザ取得が拒否されてしまったら日本に帰らざるを得ません。
実際に泣く泣く帰国する人の例も見ていますし、私の意見としてはあまりおすすめはできません。むしろグローバル進出する日本企業が増加していることを考えれば、日本企業でパフォーマンスを上げて、安定した雇用とセットで海外駐在を目指す方が現実的かなと思います。

日本人留学生を取り巻く環境
▲日本人留学生を取り巻く環境

三瓶:他に「オンラインセミナーが多過ぎる」という問題もあるように思います。費用も時間も掛かるオンキャンパスに対し、オンラインセミナーは気軽にできます。実際に日本人留学生向けのオンラインセミナーも多々ありましたが、何がどういいのかわからず、結局行かない学生も多かったように感じました。

大崎:私は各大学のJSAのFacebookページにも参加していますが、オンラインセミナーは本当に多かったです。参加する学生もオンラインで気軽に参加できるぶん、うっかり忘れてしまったり、勉強が忙しくなってドタキャンしたりといったことも散見されましたね。

日本人留学生の就活は「一人ぼっち」が前提になってしまっている

三瓶:日本人留学生向けの就職支援サービス『FAST OFFER』に登録いただいた学生と面談をした所感についてもお伝えできればと思います。
まずはコロナ禍ということで、9〜10月にようやく現地に行けた学生が多くいました。初めてキャンパスに来た方も、久しぶりに戻ってきた方も、現地での生活に慣れたり整えたりと忙しい中、すぐに就活が始まってしまう課題があるのを感じています。

大崎:コロナ禍で大学でも新しいシステムが導入されるなど、学業の面でも例年通りにいかないことばかり。まだまだ制約も残る中、さらに就活も始めなければならず、とにかく時間がないですよね。

面談した日本人留学生への所感
▲面談した日本人留学生への所感

大崎:そのような中で、就職に向けた準備がまだまだ足りていないというのが率直な感想です。自分が勉強している内容や、それに関連するキーワードを強引に結びつけて志望動機を作る人が散見されました。「先々を見越した上でどういうキャリアを描くのか」までは思考が追いついていない印象があります。

三瓶:実際、学生に「もう少し将来について考えてきてね」と伝えることも多々ありました。せっかく優秀なのに、このまま面接に行ったら落ちてしまうであろう学生が多数でしたね。

大崎:一方で企業側は、採用がオンライン中心になったことで母集団が増えている。そのぶん、人気企業はストライクゾーンを狭めていますから、なおさら日本人留学生は見送りになってしまいがちです。
そのような状況なのに、学生には困ったときに相談できる先がありません。先輩との接点が減っている中、一人ぼっちの就活が前提になってしまっている。オンラインでしか情報が得られず、面接対策も限定的です。孤軍奮闘で就活スキルを上げるのは、難易度が高いなと思います。

(END)

 

(NEXT)コロナ禍で北米・イギリスのトップ大学の日本人留学生を採用する2つのポイント

 


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