香港の大学について、香港人学生にヒアリング調査を行いました。
香港人学生の大学の選び方や就職事情について紹介します。
香港の学生の大学の選び方
香港には全部で11の大学があります。その中で「三大大学」として有名なのが、以下三つの大学です。
香港大学(University of Hong Kong)
香港中文大学(The Chinese University of Hong Kong)
香港科技大学(The Hong Kong University of Science and Technology)
Hong Kong Clerical and Professional Employee General Unionが2017年に1006名の学生を対象に行った調査によると、大学を選ぶ時に何を重視しているかという質問に対し、「学びたいことが学べる」と答えた学生は6割。香港の学生は大学名よりも学びたいことを優先する傾向にあり、希望する学科をまず決め、その中で人気の大学を選ぶのが一般的です。
香港独自の大学ランキングはなく、学生は主に「THE世界大学ランキング(The Times Higher Education World University Rankings)」「QS世界大学ランキング(イギリスの大学評価機関のクアクアレリ・シモンズ(QS)が毎年発表している大学ランキング)」を参考にしています。ただ、希望する学科がある大学が少ない場合、大学ランキングよりも学部・学科のランキングを優先するケースもあるようです。
なお、医学や法律、会計、グローバルビジネスマネジメントなど、理系よりもビジネス色の強い学部が人気です。
香港の大学進学の仕組み
香港では、高校卒業前に全員が「香港中学文憑」という共通の学力テストを受けます。評価は1〜5、5*、5**の7段階とU(無効)に分かれ、数字が上がるほど成績優秀と見なされます。5をとった受験生の上位30%が5*、上位10%が5**に該当します。
学力テストは中国語、英語、数学、通識(一般教養)が必修科目です。必修科目以外に、選択科目もあり、高校時は1人最低1科目、最大3科目を選択することが可能です。
大学に進学するには中国語と英語で3以上、数学、通識(一般教養)と選択科目で2以上の成績が必須です。
なお、大学には進学せずに就職をする場合にも、試験結果は書類選考時の判断材料になります。
学力テスト後は「JUPAS」という仕組みで大学を選びます。具体的には学生が志望度順に最大で15の大学・学科を選び、大学に提出。大学側は学力テストの結果を基に学生を選考し、面接を実施したのち合否を判断します。新たにテストを受けることはありません。
他に、学力テスト実施前に学校での成績優秀者に与えられる推薦枠もあります。
香港のトップ大学
香港には、QS世界大学ランキング、THE世界大学ランキングでトップ100位に入る有名大学がいくつもあります。2022年の順位は次の通りです。
香港の大学の、QS大学ランキング、THE大学ランキング順位
大学 | name | QS世界 2022 | THE世界 2022 |
香港大学 | The University of Hong Kong | 22 | 30 |
香港科技大学 | The Chinese University of Hong Kong (CUHK) | 34 | 66 |
香港中文大学 | The Hong Kong University of Science and Technology | 39 | 49 |
香港城市大学 | The Hong Kong Polytechnic University | 53 | 151 |
香港理工大学 | City University of Hong Kong | 66 | 91 |
香港バプテスト大学 | Hong Kong Baptist University | 287 | 401-500 |
嶺南大学 | Lingnan University, Hong Kong | 581 | ー |
香港教育大学 | The Education University of Hong Kong | ー | ー |
香港都会大学 | Hong Kong Metropolitan University | ー | ー |
香港樹仁大学 | Hong Kong Shue Yan University | ー | ー |
香港恒生大学 | Hang Seng University of Hong Kong | ー | ー |
また、香港の大学はどのような特徴があるのでしょうか。
QS、THEランキングの各評価項目を、香港の大学と、世界のトップ100大学で比較してみました。外国人教員比率や留学生比率、国際性のポイントが極めて高いことがわかります。逆に、世界TOP100校との比較なので多少不利ですが、雇用主からの評価や産業収入の面においてはそれほど高いとはいえません。
QSランキング2022、香港の大学とトップ100校とのポイント比較
QS2022 | International Students Ratio | International Faculty Ratio | Faculty Student Ratio | Citations per Faculty | Academic Reputation | Employer Reputation |
留学生比率 | 外国人教員比率 | 学生1人あたりの教員比率 | 教員1人当たりの論文被引用数 | 学術的評判 | 雇用主の評判 | |
香港の大学の平均 | 93.45 | 99.37 | 71.00 | 73.88 | 69.32 | 46.70 |
TOP100校の平均 | 68.23 | 66.08 | 70.38 | 73.53 | 82.18 | 79.32 |
※香港の数値は、QS2022年にランキングされた香港の大学6校の平均
THEランキング2022、カナダの大学とトップ100校とのポイント比較
THE2022 | Teaching | Research | Citations | Industry Income | International Outlook |
教育環境 | 研究力 | 論文被引用数 | 産業収入 | 国際性 | |
香港の大学の平均 | 48.38 | 52.93 | 81.67 | 52.35 | 97.82 |
TOP100校の平均 | 64.64 | 70.79 | 88.37 | 66.53 | 75.48 |
※香港の数値は、THE2022年にランキングされたカナダの大学32校の平均
香港の学生の就職事情
香港の学生の就職活動時期は定められていません。卒業前に就職先を決める人もいれば、卒業後に就職する人もいます。企業が採用を行う時期もバラバラであるため、学生が就職活動を行うタイミングによって出会える会社も変わります。
応募先は採用サイトで探すのが一般的ですが、日本のように新卒向け、中途向けで分かれていないため、採用要件と自分のスキルを照らし合わせて応募をします。基本的に就職できないことはないものの、コロナ禍で就職期間は長期化の傾向にあるようです。
特徴的なのは、試用期間の捉え方。日本の場合、試用期間は企業が新入社員を見極める期間ですが、香港の場合は「企業、個人の双方のための試用期間」という意味合いが強く、入社後数週間で個人から退職を申し出ることも珍しくはありません。学生もまた、「実際に入社し、社内の様子を見るまでを含めて就職活動」という考えを持っています。
なお、国内の大学に進学した人の多くは国内で就職し、海外での就職を希望する人は大学選びの時点で海外の大学に進学する傾向にあります。ヒアリングをした香港の学生の肌感覚では「2〜3割が海外の大学に進学しており、その割合は近年上昇傾向にある」とのことでした。
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(関連サイト)
QS World University Rankings
The Times Higher Education World University Rankings 2022
Joint University Programmes Admissions System (JUPAS)