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外国人材採用の現状(1)世界的な人材争奪戦

目次

2020年現在、日本で外国人材採用を行うにあたって、まず知っておきたい情報をまとめました。
初めて外国人採用を検討している、日本国内の新卒採用だけでは優秀な人材を確保しづらいと考えている、ダイバーシティ&インクルージョンを推進したい、といったときに是非ご一読ください。

(1)世界的な人材争奪戦

国際的状況

採用面接
AIやIoTなど、最先端テクノロジーを扱うIT人材の争奪戦が先進国全体で起きている。本来であれば給与水準は国によって異なるものだが、スターバックスラテがどの国で買っても同程度の価格であるように、これらの人材にも国境を超えた「グローバルの給与水準」ができつつある。

こうした背景には、人手不足がある。例えばAIは急速に需要が増しているが、世界にAI人材はたった30万人しかいないと言われている(※1)。それにも関わらず、ビジネスの現場に必要なAI人材は約100万人と推定されており、圧倒的に人が足りていないのが現状だ。自国だけでは到底補えないため、各国が世界中から採用しようとしている。

アジアに目を向けてみると、トップ層のIT人材を採用する上で世界大学ランキング(※2)の上位大学の学生の人気が高騰している。23位の清華大学(Tsinghua University)、24位の北京大学(Peking University)、25位のシンガポール大学(National University of Singapore 略称NUS)、48位の南洋理工大学(Nanyang Technological University 略称NTU)、そしてコンピューターサイエンスの分野で評価が高いインド工科大学(Indian Institute of Technology 略称IIT)が引き合いの強い代表的な大学だ。

学生にとっては選び放題といえる状況であり、そんな中で会社を選ぶポイントは大きく「給与」と「難易度の高い仕事」の2つ。特に後者は重要で、給与以上に自分の成長につながる仕事をしたいと望む若手は多い。自ら動かずともスカウトの連絡が頻繁にくるような優秀層の場合、転職先は豊富にあるからこそ常に難しい課題を与え続けることが企業には求められる。また、AI人材の場合は「その企業に誰がいるか」も大きなポイントで、スター人材がいない会社に優秀な人が突然入ることは基本的にない。なお、就職先として最も人気が高い国はアメリカだが、トランプ政権になって以来ビザの条件が厳しくなっているため、現地で働けるのはごく一部の優秀層に限られるのが現状だ。

日本の状況

では、こうしたトップ層のIT人材の争奪戦における日本の状況はどうなのか。学生が重視する2つの観点で考えると、まだまだ至らないのが現状だ。新卒一律給与が一般的な日本企業では学生にグローバル水準の給与を付与するのが難しく、トップ層の学生を呼ぶだけの魅力的な環境もまだまだ用意できていない。世界トップレベルの研究をしている企業の総数が他のIT先進国に比べて少ないこと、そして日本語を求められることも少なくないため、言語の壁もネックとなってしまっている。

留学生の誘致に関しても、文部科学省が平成20年に発表した「『留学生30万人計画』の骨子」とりまとめの考え方に基づく具体的方策には、「各国の人材育成への貢献や我が国経済社会の発展、科学技術・学術の振興、世界で活躍できる人材の育成などに資するよう、優れた留学生を戦略的に獲得する必要がある」と記載されており、実際に留学生数は毎年数%ずつ増えてはいるものの、その動きは遅々としている。例えばAI関連の論文引用件数がマイクロソフトに続いて世界で2番目に多い南洋理工大学(NTU)のキャリアセンターの職員によれば、学生の留学先ランキング1位はイギリスの266人、3位が韓国の186人なのに対し、日本は13位の35人に留まっている。要因として、他国のトップ大学と比較して先端技術の第一人者の総数が少なく、選択肢が限られてしまうことが挙げられる。

(脚注)
※1 テンセント・リサーチ・インスティテュート「グローバル人工知能人材白書」
※2 THE World University Rankings 2020年

 

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