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インド最高峰の大学「IIT(インド工科大学)」学生は日本企業とは合わない?

7月10日に行われたJAC Recruitment主催の「インドビジネスセミナー」に、ASIAtoJAPANの代表・三瓶が登壇。『インド理系TOP大学の「採用方法」と「彼らが望んでいるものとは?」』と題した講演の一部を紹介する。

 

インドで最高峰の大学といえば、IIT(インド工科大学 /Indian Institute of Technology)。各地にキャンパスを構える同校だが、昨年のインドのエンジニア系大学ランキングでは、ASIAtoJAPANが日本語授業を行うIITマドラスが第1位となった。同校で有名なコンピューターサイエンス専攻の学生の就職事情を次のように説明する。

 

「同校で有名なコンピューターサイエンス専攻の優秀なバチュラー(学士)学生10〜20人ぐらいが、年収1000〜1500万円でシリコンバレーにて働きます。シリコンバレーの新卒学生は大体この程度の金額をもらっているので、インド人が特別優秀だからというわけではありません」

 

IIT学生の就職事情

シリコンバレーで就職できなかった学生の多くは、アメリカの大学に奨学金をもらって進学する。奨学金がもらえるかどうかは3月に決定するため、IITの学生をそれ以前に採用した場合、注意が必要だ。

 

「例えば12月に400万円でオファーを出した場合、本人が受諾していたとしても、もしアメリカの大学に行けたらそちらを優先しようと考えているケースがあります。その結果、突然辞退となってしまうことも。3〜4月くらいまでは安心できないというのは頭に入れておく必要があります」

 

アメリカの大学にも行けなかった学生の多くは国内で就職するか、IITのマスター(修士)に進むこととなる。

 

「つまり、IITのバチェラーとマスターはインド国内では価値が大きく違う。もちろん優秀ではあるものの、『IITのコンピューターサイエンス専攻の学生は超優秀で年収1500万円』というのは、バチェラーの学生のごく一部です」

 

 

 

IIT学生のほとんどはプレースメントで就職先を決める

IITで有名なのが、12月に行われる面接会の仕組みだ。同校では就職活動を大学が管理しており、12月1日に一斉に面接がスタートする。そこで就職先を探すのが学生の間では一般的だ。

 

「参加希望の企業は7月までにオンラインでプレースメント(就職斡旋)への登録をします。必要であれば9〜11月に学力テストを行ったり、学内で説明会を実施したりできます。11月には面接をしたい学生を選び、12月1日から選考がスタートします」

 

IIT学生採用の流れ

大きな特徴は、企業が参加できるのは期間内の1日のみ、面接をその日の内に実施し、しかも同日中に採用するか否かの結論を出さなければならない点にある。

 

「企業からのオファーに対して、学生は同日の21時までに返事をすることが義務付けられています。学生は一度オファーを承諾してしまうと、翌日からの面接に参加することはできません。例えば自社で3日目に面接を予定していた学生が初日の会社のオファーを承諾してしまうと、その学生との面接は自動的にキャンセルとなります」

 

つまり、企業は12月1日の面接解禁初日から、できるだけ早い日程で学生と面接する事が重要となってくる。できるだけ初日に参加したいところだが、参加できる日程は大学側が決定する。

 

「参加企業がそれぞれの日程にどのように振り分けられるかというと、過去の実績とお給料です。基本的には年収800万円以上出せる会社が大体初日に振り分けられる。『この会社に受かったら行くだろう』という順番で初日から振り分けられているとお考えいただくのが一番分かりやすいかと思います」

 

また、「IITの学生を採用した日本企業からは『採用したけれどすぐに辞めてしまう』という声を聞くことが少なくない」と三瓶。

 

「インド人は友達との食事会で、近況を尋ねるのと同じ感覚で『給料いくら?』という話になります。つまり、全員がそれぞれの給料を知っているんです。年収800万円の人と400万円の人の仕事内容がほぼ一緒な場合、損していると感じて、転職に繋がってしまう。そういう意味では、『IITなら年収はだいたいこのくらい』と、給料が平準化してしまう面があります。相場に合わなければ、採用はできても定着が難しい」

 

初任給は低く、在籍年数が長くなるにつれて徐々に給与が上がっていく日本の大手企業の場合、給与面でのミスマッチが起きてしまう。さらに、彼らの知的好奇心を満たすことも考えなければならない。小さい頃から無理難題のような問題を解き続けてきたIIT学生に、「新卒だから」と通常の学生と同じように課題を与えることは、彼らにとっては退屈であることを覚えておく必要がある。

 

同時に、先々のキャリアビジョンをはっきりさせることも重要だ。

 

「採用した後の覚悟が必要だと思います。日本の今の終身雇用のシステムにIITの学生は合いにくく、採用後が大変。これがIITの大きな特徴だと思います」

 

そこでASIAtoJAPANが勧めるのが、同じくインドにあるプネ大学。アジアランキング188位と、大阪市立大学や東京理科大学と同ランクの大学だ。次回のレポートにて詳しく紹介していく。

 

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