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[解説]ベトナム送出機関からの受入停止の法的意味とは?~杉田弁護士

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ベトナムの送出機関からの受入停止の件について、措置が公表されました。
この措置の法的意味について、杉田弁護士に解説いただきました。


杉田昌平弁護士
弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)
詳しいご紹介はこちら

 


[送出機関からの受入停止の法的意味]

 

■ 送出機関からの受入停止の公表

さて、少し前から報道を端緒として注目が集まっていたベトナムの送出機関からの受入停止の件について、措置が公表されました。
失踪者の発生が著しい送出機関に対する措置について

他の送出機関と比較して失踪者が多く、背景に多額の手数料問題があるのではないか、という実態的な問題については注目が集まるところですが、あまり注目されていないように感じる、この送出機関に関する措置の法的意味について考えてみたいと思います。

 

■ 送出機関と技能実習法

技能実習法を読んだことがある方ならお気づきのとおり、厚生労働省も入管庁も、そこから事務委託を受ける外国人技能実習機構も「外国の送出機関」に対して本邦での営業を認めるとか認めないといった許可を与えることはしていません。

これは、送出機関は、日本国内で職安法の特例が定められている「技能実習職業紹介事業」(法27条1項)や「監理事業」(法2条10項)を営むものではなく、技能実習法の許可手続である監理団体の許可や、職安法上の許可手続となる職業紹介行為を(少なくとも日本で)行うものではなく、技能実習法上の許可を取得する必要がないためです。
さて、では、なぜそもそも外国人技能実習機構から許可を得る必要がない送出機関について、外国人技能実習機構が当該送出機関からの受け入れを停止するといったことができるのでしょうか。
これを理解するために、送出機関の技能実習法上の位置づけを改めて確認したいと思います。

 

■ 送出機関の技能実習法上の位置づけ

技能実習法上「外国の送出機関」という用語は、法23条2項6号に定義がおかれていて
「団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを適切に本邦の監理団体に取り次ぐことができる者として主務省令で定める要件に適合するものをいう。第二十五条第一項第六号において同じ。」と定義されています。

ここで注目すべきは「主務省令で定める要件に適合するものをいう」という部分です。
主務省令(法施行規則25条がそれです)で定める要件に適合するものと定められており、言い換えれば、要件に適合しないものは「外国の送出機関」ではないことを意味します。

さて、その上で、技能実習法上「外国の送出機関」はどのような位置づけにあるかというと、2つの行政処分の要件ないし基準として出てきます
(なお、このうちの一つの技能実習計画の認定が行政事件訴訟法上の「処分」に該当するかは争いがあるところですが、今回は本論に影響しないのでスルーして、「行政処分」としてまとめて話しを進めます)。

2つの行政処分とは①技能実習計画の認定(法8条1項)と②監理事業の許可(法23条1項)です。まず、②監理事業の許可の方がわかりやすいので、②→①という順番で見ていきましょう。
ちなみに、もっと細かく見ると、監理事業の許可の更新(法31条2項)及び事業区分の変更(法32条1項)もありますが、ようは監理事業の許可なので②にまとめてお話しを進めます。

 

■ ②監理事業の許可と送出機関

技能実習法は、監理事業(法2条10項)を行おうとする者に対し、監理事業の許可を得ることを義務づけます(法23条1項)。
この監理事業の許可の基準を定める条文として、法25条が置かれています。
この法25条1項6号には「外国の送出機関から団体監理型技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みの取次ぎを受けようとする場合にあっては、外国の送出機関との間で当該取次ぎに係る契約を締結していること。」と定められています。

技能実習生の紹介も、法に職安法の特例が置かれているとおり(法27条)、職業紹介の一つであり、国外に渡る紹介にあたるわけですから、取次機関としてのを要するわけですので、監理団体は取次機関からの取次を要することになりますが、これが「外国の送出機関」に限定され、「外国の送出機関」との間で取次に関する契約を締結していることが、監理事業の許可の要件となっているわけです。
これを言い換えれば、当該国の機関から取次を受けようとすると、「外国の送出機関」との間の取次に関する契約がなければ、監理事業の許可の要件を満たさないことになります。

 

■ 法施行規則における「外国の送出機関」の要件

さて、では監理事業の許可を得る際に、取次のパートナーとして要件を満たす「外国の送出機関」はどういったものでしょうか。これは、先に「外国の送出機関」の定義を確認した際に出てきた主務省令である法23条2項6号から委任された技能実習法施行規則25条により定められています。

 

法施行規則25条は、「外国の送出機関」の要件として次の1号から10号の要件を定めます。

「一 団体監理型技能実習生の本邦への送出に関する事業を行う事業所が所在する国又は地域の公的機関から団体監理型技能実習の申込みを適切に本邦の監理団体に取り次ぐことができるものとして推薦を受けていること。

二 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者のみを適切に選定し、本邦への送出を行うこととしていること。

三 団体監理型技能実習生等から徴収する手数料その他の費用について算出基準を明確に定めて公表するとともに、当該費用について団体監理型技能実習生等に対して明示し、十分に理解させることとしていること。

四 団体監理型技能実習を修了して帰国した者が修得等をした技能等を適切に活用できるよう、就職先のあっせんその他の必要な支援を行うこととしていること。

五 団体監理型技能実習を修了して帰国した者による技能等の移転の状況等について法務大臣及び厚生労働大臣又は機構が行う調査に協力することとしていることその他法務大臣及び厚生労働大臣又は機構からの技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する要請に応じることとしていること。

六 当該機関又はその役員が禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者でないこと。

七 第一号に規定する国又は地域の法令に従って事業を行うこととしていること。

八 当該機関又はその役員が、過去五年以内に、次に掲げる行為をしていないこと。

イ 技能実習に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、技能実習生等又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他技能実習生等と社会生活において密接な関係を有する者の金銭その他の財産を管理する行為

ロ 技能実習に係る契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をする行為

ハ 技能実習生等に対する暴行、脅迫、自由の制限その他人権を侵害する行為

ニ 技能実習を行わせようとする者に不正に法第八条第一項若しくは第十一条第一項の認定を受けさせる目的、監理事業を行おうとする者に不正に法第二十三条第一項若しくは第三十二条第一項の許可若しくは法第三十一条第二項の更新を受けさせる目的、出入国若しくは労働に関する法令の規定に違反する事実を隠蔽する目的又はその事業活動に関し外国人に不正に入管法第三章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可若しくは入管法第四章第一節若しくは第二節若しくは第五章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、偽造若しくは変造された文書若しくは図画又は虚偽の文書若しくは図画を行使し、又は提供する行為

九 団体監理型技能実習の申込みの取次ぎを行うに当たり、団体監理型技能実習生等又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他団体監理型技能実習生等と社会生活において密接な関係を有する者が、団体監理型技能実習に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産を管理されていないこと及び団体監理型技能実習に係る契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をしていないことについて、団体監理型技能実習生になろうとする者から確認することとしていること。

十 前各号に掲げるもののほか、団体監理型技能実習の申込みを適切に本邦の監理団体に取り次ぐために必要な能力を有するものであること。」

 

■ 措置の対象となった送出機関の「外国の送出機関」該当性

この措置の前は、4社の送出機関は「外国の送出機関」に該当していました。
しかし、今回公表された措置は、「3 措置の内容」部分で「技能実習法令に定める外国の送出機関の要件に適合しないものとして審査する。」と記載されています。
ここで、措置の内容の法的意味が、これまで「外国の送出機関」の要件を満たしていた送出機関について、「外国の送出機関」の要件を満たしていないものとして扱うことであることが理解できます。
では、どの要件を満たさないとされたのでしょうか。これは、「4 根拠法令」の部分を見ると明らかになります。公表された文書の「4 根拠法令」部分では「法施行規則第25条第2号及び第10号」が引用されています。
つまり、次の技能実習法施行規則25条2号及び10号で定める要件について、公表されている送出機関は満たさないことになった結果「外国の送出機関」に該当しないものとして扱うことになったことが理解できます。

「二 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者のみを適切に選定し、本邦への送出を行うこととしていること。
十 前各号に掲げるもののほか、団体監理型技能実習の申込みを適切に本邦の監理団体に取り次ぐために必要な能力を有するものであること。」

 

■ 今回の措置と②監理事業の許可との関係

公表された文書の「3 措置の内容」では、次の申請で公表された送出機関について「外国の送出機関」として扱わないとされています。

・ 監理団体許可申請
・ 監理団体許可有効期間更新申請
・ 事業区分変更申請

ここまで検討してきたところから、この意味がご理解頂けると思います。簡単にまとめると、これらの申請については許可の要件について「外国の送出機関」との取次契約があることが要件となりますが、その要件を満たさない=許可されない、ということを意味するわけです。
監理団体許可申請について法25条の定める許可基準のうち、1項6号を満たさなくなりますし、監理団体許可有効期間更新申請については、法31条3項が法25条1項各号を準用しており要件を満たさなくなり、事業区分変更申請についても法32条2項が法25条を準用しているので、同じ結論になります。

 

■ 今回の措置と②監理事業の許可との関係の結論

今回の措置である4社について「外国の送出機関」と取り扱わないことの法的意味の結論は、②監理事業の許可手続(更新、事業区分変更を含みます)において、措置の対象事業者をCPとしての「外国の送出機関」として許可等を受けることができないということになります。

 

■ ①技能実習計画の認定と送出機関

さて続いて、①技能実習計画の認定との関係の検討を進めてみましょう。
技能実習計画の認定基準については、法9条各号が定めます。法9条には直接「外国の送出機関」という用語は出てきません。
ですが、法9条6号は「六 技能実習を行わせる体制及び事業所の設備が主務省令で定める基準に適合していること。」という基準を置き、同号を受けた法施行規則12条1項7号は「七 団体監理型技能実習において、監理団体が団体監理型技能実習の申込みの取次ぎを受ける場合にあっては、外国の送出機関からの取次ぎであること。」と定めます。
つまり、個々の技能実習生について技能実習計画の認定を受ける必要がありますが(法8条1項)、その基準の一つとして、団体監理型の技能実習については、取次を受ける場合は「外国の送出機関」からの取次でなければ、技能実習計画の認定の基準(法9条6号、法施行規則12条1項7号)を満たさないことになります。

 

■ 今回の措置と①技能実習計画の認定の関係

今回の措置では、これまで見たとおり、公表された送出機関について「外国の送出機関」の要件に適合しないものとして扱われます。
そのため、結果としては、技能実習計画において、今回公表された送出機関を「外国の送出機関」として記載する技能実習計画の認定申請については、技能実習計画の認定がされないことになります。
但し、一部救済措置が設けられています。
公表された文書の「3 措置の内容」を見ると、次のように記載されています。

「・ 第1号技能実習計画認定申請
・ 第2号及び第3号技能実習計画認定申請(国内移行ケースを除く。)」

ここで、2号及び3号の技能実習計画の認定申請については「(国内移行ケースを除く。)」という文言が付加されています。これは、新規の入国案件について公表された送出機関を取次機関とする技能実習計画の認定は行わないが、既に国内で技能実習中であり、1号から2号、2号から3号と移行する場合については、引き続き「外国の送出機関」として取り扱うことを意味するものと解されます(なお、公表された文書はこの点は明確ではなく、引き続き一部の手続では「外国の送出機関」として取り扱うという解釈をするのか、それとも、既に先行事例で扱われた方法である送出機関を空欄とする取扱いを認めるのか等の例外の中身については、明確ではありません)。

 

■ ここまでのまとめ

さて、ここまでの検討を通じて、今回の措置が、公表された送出機関について、①技能実習計画の認定及び②監理事業の許可の要件・基準として出てくる「外国の送出機関」に該当しないとするものであることがご理解頂けと思います。
すると、それぞれの申請手続をしようとする場合、新しく取次機関である送出機関を探すことになります。

②監理事業については、新しく取次機関となる監理団体を探すことになると思います。特に、「5 留意事項」にあるとおり、監理団体は法39条3項で主務省令で定める基準で事業を行うことが求められ、その基準として施行規則52条6号により「団体監理型技能実習の申込みの取次ぎを受ける場合にあっては、当該取次ぎが外国の送出機関からのものであること。」が求められるため、「外国の送出機関」ではなくなった送出機関から取次を受ければ、技能実習法に違反したものとして、許可の取消原因に該当するわけです(法37条1項4号)。

①技能実習計画の認定については、もう少し難しく、技能実習生については、既に送出機関の施設等に入寮している状態だと思います。その場合、COEの発行前であれば、ベトナムの法律では、まだ送出機関への手数料を支払っていないことになってますが、支払っている事例もあるでしょうし、送出機関にたどり着くまでの手数料は、既に支払済でしょう。
すると、技能実習生が送出機関を変更するのは難しく、現実的には、措置期間である6ヶ月(これも6ヶ月の確定期間か明確ではないですが)を経過するのを待つことになるような気がします。
さらに、既に認定されている技能実習計画や、当該技能実習計画を前提とするCOEの扱いについては明示されていません。ですので、この点で入国が秋から再開する場合には、この措置前に発行あれていた認定技能実習計画及びCOEの扱いが問題化しそうです。

 

■ その他の実務上の問題点

今回の措置では、いわゆる送出監理費についても「5 留意事項」で「監理事業に関し,措置対象機関への管理費等の支出を目的として実習実施者から費用を徴収した場合には,法第28条第1項に違反する可能性があることから,かかる行為を行わないこと。」と定めます。
この点は、それほど明確ではなく難しい論点であり、かつ、実務上紛争に発展しやすい論点です。
つまり、技能実習法28条2項は、「あらかじめ用途及び金額を明示した上で」実習実施者から監理費を徴収できるとしており、その明示された監理費の一費目として「送出監理費」を徴収しています。

今回の措置は、公表された送出機関が「外国の送出機関」に該当しないものとするものですが、技能実習法28条2項及びそれを受けた法施行規則37条は送出監理費を支払うことができる送出機関として「外国の送出機関」であることは定めていません。
すると、今回の措置で「外国の送出機関」ではなくなった送出機関に対して送金することを目的として実習実施者の契約に基づきこれまでどおり、法28条2項に基づき送出監理費を徴収することが、法28条2項の監理費の徴収に該当せず、徴収行為が法28条1項が禁止する手数料や報酬の徴収行為に該当するかと言われれば、正直疑問です(だから、今回の文書も「法第28条第1項に違反する可能性がある」としているのだと思います)。

さて、それでも文書にしたがって実習実施者から送出監理費の徴収を停止して、送出機関への支払いを停止した場合、これが本当に送出機関=監理団体間で定められた取次契約の中での送出監理費の支払い義務の不履行とならないかについては、とても難しい問題だと思います。
これは本質的には、送出監理費の対価的牽連性を持つ役務が何であるかという問題に帰着するように思います。送出監理費が、技能実習生が支払っていた手数料を実習実施者に転嫁するものであるという見解に立てば、送り出せなくなったのであるから、同時履行の抗弁権的に支払わない、取次ができるためには「外国の送出機関」であることが必要であり、「外国の送出機関」に該当しなくなったのであるから、履行が不能となったものとして支払わないといった理論展開が一応可能となります(といっても、既に入国している方についての支払いについては、反対給付である送出し行為は既に履行済なので、さらに当該報酬について「外国の送出機関」ではないと受領することができないという理論をワンクッション挟む必要があります)。

他方で、送出監理費の対価的牽連性のある役務が、送り出された技能実習生との本国との間の連携等、事後的なケアにあるとすれば、当該行為は技能実習法上の許可事業ではないわけですから、今回の措置に拘わらず可能であって、その裏返しとして送出監理費の請求権も失われないという結論になると思います。

いずれにせよ、送出監理費の取扱いは、お金の問題であり、かつ、取扱いが技能実習法上明確ではないので、今後、紛争化する可能性は十分にあると思います。
こういった複雑な問題にならないためにも、良い送出機関を探すことは大切ですね。


 

(関連リンク)
>> OTIT 外国人技能実習機構

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