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日本は送出国から受入国となったか[コラム]杉田昌平弁護士

国際移動転換(Migration Transition)とは、移民の送り出し国/地域から、通過または受入れ国/地域へと転換することをいいます。
これに関して、外国人材雇用、受け入れの専門家である杉田昌平弁護士によるコラムをお届けします。


 

杉田昌平弁護士
寄稿者
弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)
詳しいご紹介はこちら


 

12月29日から1月3日まで、飛ぶように時間が過ぎてしまいました。この間、ずっと家に引きこもり、外国人雇用に関する統計をひたすら集計していました。気がついたら、1月3日が終わっていました。

貴重なお正月を全て費やして調べていたものが何かというと「日本は送出国から受入国となった」が本当かというものです。

国際移動転換点を1990年頃に迎えたというのは、石川(2005)・是川(2019)のとおりだと思います(※1 参照)
が、そもそも日本は送出国だったのかという点は疑問です。特に、1910年の韓国併合後の外地たる韓国から内地への移動を含めると、「戦前も受入国だったのでは?」という疑問が出るわけです。

しかし、こんな面倒な統計とのにらめっこは、ある程度まとまった時間がとれるときにしかできません。

さて、集計してみました。

①1889年から1920年までのハワイ向け移住:162,215人
②1917年から1934年までの南米向け移住:155,198人
③1932年から1945年までの満州国向け移住:270,007人
※いずれも移住事業での送出
①~③の合計:587,420人

④1938年時点の在留外国人数:28,857人
⑤1938年時点の内地に在留する韓国出身者:799,878人
④・⑤の合計:828,735人

厳密にストックとフローの計算をしていませんが、送出より受入れ人数の方が多いような・・・

引揚げ事業の統計では、民間人の引揚げ者が3,183,291人であり(厚生省援護局(1978))、満州から1,003,609人、韓国から416,093人等引き揚げていることから、送出事業ではなく移動した人が相当数いて、それを含めた送出のフローだと、送出過多になるので、送出国と言われていたと思います。

が、いわゆる送出事業として送り出された人の規模と同様に併合後の韓国からの移動(ほぼ労働移動)の規模を比較すると、典型的な送出国ではなく、送出も受入れも拮抗していたというのが、正しそうです。
さらに、戦後の統計も集計してみました(下のグラフ)

国籍別在留外国人数

 

1990年頃が国際移動転換というのは、恐らくその通りですが、国際移動がとても少ない年代が1945年から1980年頃まであります。
とすると、どうやら、日本の国際移動転換は1990年で送出と受入れが逆転したというようなモデルではなく、

1)多国際労働移動期(明治から終戦時)
2)少国際労働移動期(戦後から1980年代まで)
3)国際労働移動受入期(1990年代以降)

といった区分で理解するのが正しそうです。
そんなことを調べていたら、本当にいつのまにかお正月から平日への転換点を迎えていました・・・・。
本年も何卒、よろしくお願い申し上げます。

 


※1 国際移動転換点に関する研究は、国立社会保障・人口問題研究所などによって、研究・発表されています。

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