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日本の中の外国人労働者[コラム]杉田昌平弁護士

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日本における外国人労働者の中には派遣形態で就労している人が数多くいます。
その就労形態から発生する外国人労働者の脆弱性にはどのようなものがあるのでしょうか。


杉田昌平

寄稿者
弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)
詳しいご紹介はこちら


現在の日本の外国人労働者はどのような産業で、どのような形態で働いているのかを表にしました。

派遣形態で働く外国人

外国人労働者の労働市場における位置づけは、労働市場の二重性(Piore、1979)に言及する先行研究が結構ありますが(※1)、受入国への労働市場への統合という移民学的な視点ではなく(※2)、もっぱら、どういった産業で働いていて、その傾向は日本人と異なるのか、という観点で調べたものです。

といっても何か難しい統計処理をしているわけでもなく(そもそも出来ない)、平成29年就業構造基本調査と令和3年10月末の雇用状況の届出の数字を切り貼りして%を付けただけです。ここから見える傾向で興味深いのは、派遣形態で働く日本人が、雇用者数の約2.4%なのに、外国人の場合は19.89%と約9倍な点です(但し派遣請負事業所での就労数なので厳密には派遣労働者数とは一致しません)。

この背景には、佐野(1995:116)※3に書かれているとおり、「中小企業の事業所内における仕事上の管理にはなんとか対応できるが、その他の採用活動、現地語による指導、住居の世話、その親族を含めた日常の世話までは、人も資金も回らない」ので、直接雇用する場合でも(元)派遣事業の労務コンサルタントを活用するという記載とニーズが共通すると思います。

「受入国の制度に固有の事象」ではない

これが何に影響してくるかというと、私は、外国人労働者に関する問題は特定の受入国の制度(例:技能実習制度、特定技能制度、雇用許可制etc)に固有の事象ではなく、国際労働移動共通の事象であり、移住労働者の脆弱性を見ないと問題は解決しないという考えを持っています(日本では、技能実習制度等の制度固有の問題だと把握する見解が圧倒的多数で、ものすごいマイノリティ説だと思いますが、同じないし類似する立場の見解もあります※4)。

外国人労働者の脆弱性

「移住労働者の脆弱性」といった場合、移住労働者が固有で持つ脆弱性と日本人と共通する脆弱性があるんですね。移住労働者が固有で持つ脆弱性は、例えば高額な入国前借金で、後者の日本人と共通する脆弱性は非正規労働による雇用の不安定さ等です。外国人労働者で派遣形態で働く人が多い場合、日本人と共通した雇用の不安定さによる脆弱性を有する人の割合が日本人より多いことがわかります。移住労働者は、「移住労働者が有する固有の脆弱性」×「日本人と共通する脆弱性」のかけ算で、より脆弱な立場がエスカレーションしやすいという構造がありそうで、ここを解明しないと、移住労働者の権利擁護はできないだろうなと思うわけです。

例えば、非難されることが多い技能実習制度は、3年間実習実施者を同じとすることが職業選択の自由を制限していると言われます。これを使用者側から見ると、3年間は雇用を維持しなければならないという面もあり、在留期間中の雇用が相対的に安定するという作用があります。

根本的な問題にたどり着くためには

このことをもって「だから正しい」といいたいわけではなく、移住労働者の脆弱性という観点から、一つ一つの構造を見ていかないと、問題の根っこにはたどり着けないと思うわけです。その作業としては、移住労働者固有の脆弱性と日本人と共通する脆弱性は何であり、それを軽減、取り除くためにはどうしたら良いかを考えなければならないと思っています。


※1 梶田孝道『外国人労働者と日本』(日本放送出版協会、1995)54頁以下、下平好博「外国人労働者 労働市場モデルと定着化」稲垣=川喜多編『講座社会学6 労働』(東京大学出版会、1999)233以下等。最近の先行研究の動向は山口塁「日本の外国人労働者と労働市場構造:これまでの整理とこれからの論点」に詳しい。
※2 この観点からの先行研究として是川夕『移民受け入れと社会的統合のリアリティ 現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題』(勁草書房、2019)113頁以下
※3 日本労働研究機構「日系人労働者の需給システムと就労経験―「出稼ぎ」に関するブラジル現地調査を中心に」
※4 田辺=是川監 国立社会保障・人口問題研究所編『国際労働移動ネットワークの中の日本 誰が日本を目指すのか』等


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