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[外国人採用事例/ヤマハ発動機]企業成長と“内なるグローバル化”を促す外国人社員の「定着率」を上げるポイントとは

2月20日にグローバル採用とダイバーシティ推進に関するセミナーを行いました。テーマは『今なぜ、「海外大採用」を行うのか?』。大手2社の人事担当者に、外国人学生採用の狙いと課題についてお話いただきました。

 

ここではヤマハ発動機株式会社の人事部部長、河合多真美さんの講演をご紹介します。

 

ヤマハ発動機株式会社の人事部部長、河合多真美さんの講演

 

“感動創造企業”を理念に、モーターサイクルを中心とした輸送用機器を主に手がけるヤマハ発動機。単体で約1万人、海外を含めた連結で5万人強の社員が働いています。売上の多くが海外でつくられており、500〜600人の社員が常に海外に駐在しているそうです。

 

「私どもは女性活用や障害者雇用といったダイバーシティ&インクルーシブに関する活動の一つに、外国人材の採用を位置づけています。一般的には労働力としての外国人材活用という話があると思いますが、当社としては最終的に外国人の経営者を育てることを目指すために、採用を強化しています

 

「外国人採用はトップダウンで始まりました」と河合さん。

 

「企業の成長のためには社内に変化を起こす必要があり、外国人材の採用をスタートしました。組織に刺激を与えるような人材を採りたいと、新卒採用者の10%程度を目標人数として掲げ、当初はシンガポールの大学を中心に採用活動を実施しました。幸い当社は海外シェアが非常に高く、海外でのネームバリューもあったため、トップ大学の出身者が興味を持ってくださいます」

 

それでも初めての取り組みゆえに「十分な人数をすぐに採用できたわけではなかった」と河合さん。今でこそ目標人数を採用できるようになったものの、これまでに数々の失敗を繰り返してきたと続けます。

 

「最初は採用後の戦略が不十分なまま、頭数を採ろうとしていたため、残念ながら入社後に辞めてしまった方も多くいます。その後改善を図り、2018年入社以降の外国人材の離職率は現状0%。離職数は年々減ってきています

 

製造業の新卒入社3年以内の平均離職率はおよそ20%であり、同社の外国人社員の離職率も同水準。そういう意味では「それほど悲観していない」とする河合さん。ただし、ヤマハ発動機の新卒社員でみると3年以内の離職率はわずか3%であるため、そこと比較して「辞めすぎなのでは?」と懸念の声もあるといいます。

 

「そもそも同じ会社にずっといるという発想が非常に日本人的であって、この考え方をベースに離職率を指標にするのはどうなのかとも考えています。その人たちが持っている力が発揮できる環境をつくる努力をした上で、それでも辞めてしまうのであれば、それはあまりネガティブに捉えない方がいいのではないかという考えに今は至っています」

 

「優秀な学生を採用し、入社後に配属を決める」は外国人材に合わないと痛感

 

では、どのように外国人社員が活躍できる環境を用意し、定着率向上につなげるのか。「まだまだ課題は多い」と前置きしたうえで、河合さんはポイントの一つに初期配属を上げます。

 

「これは日本企業が抱える問題の一つですが、ポテンシャル採用で新入社員を採ってから各職場に振り分けているやり方が外国人材には合わないことを痛感しています。どういう仕事にアサインするかによってモチベーションも、力を発揮できる度合いも大きく変わりますし、その振れ幅は日本人以上に大きいように感じています」

 

同社でも最初は「優秀な大学から採用しておけばポテンシャル高いからいいだろう」という考えで外国人材の採用を行っていましたが、最近では職種別採用のような形で、配属する部署をあらかじめ決め採用を行うようになってきたそうです。

 

その結果「定着率はだいぶ良くなった」と河合さん。数年前から、日本人学生に向けても同様の採用スキームを用意し始めているとのことです。またその一方で、配属先の上司に対するサポートの重要性も指摘します。

 

「外国人社員にメンターを配置するなどのサポートはもちろん必要ですが、同時に外国人社員の上司も変わってもらわなければなりません。そこに大きな鍵があると考え、上司への支援やアドバイスを目的とした面談を実施しています」

 

他に宗教への配慮として、食事面での対応やお祈り部屋を設けるなど、できる範囲での対策を実施。日本語力向上のためのサポートも用意しています。「日本語でのコミュニケーション力が低いことによる問題はどうしても発生する」と河合さんは語ります。

 

「仮に社員の英語力が向上したとしても、取引先とのやりとりは日本語です。ヤマハ発動機のグローバルコミュニケーション力がどれだけ高くなったとしても、地域や社会そのものが変わっていかなければ苦労する場面はどうしても出てきてしまう。この点については相互の努力が必要だと思っています」

 

今後の取り組みとして、外国人社員同士のネットワークをつくることを計画中。また、日本人社員が海外駐在する際、その家族が現地に適応する苦労があるように、日本で働く外国人社員も家族があれば同様の苦労が発生します。「外国人社員の家族のケアを会社としてどこまでやるのかは今後考えなければならない」と河合さん。

 

外国人社員が日本人社員に刺激を与えてくれているのは間違いありません。会社がグローバルな方向に向かっていることを肌で感じてくれ、“内なるグローバル化”も徐々に進展しているように思います。昇格の要件に『グローバル』の項目が入るなど、会社の制度としても動きが出てきています。世界中の優秀な外国人社員と、真のグローバル企業を目指していきたい。そんな高い志を持ってこの活動を続けていきたいと思っています」

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