ASIAtoJAPANは2019年1月、さらなるインドの優秀な理系学生を日本に呼び込むべく、南インドのタミルナードゥ州へ赴いた。現地大学を案内してくれた同州のアショク先生は、日本で10年以上の就労経験を持つ。そんな彼に、「インド人部下と一緒に働く時に気をつけるべきこと」を聞いてみた。

−−日本で仕事をする中で、インド人と日本人にはどのような違いがあると感じましたか?
納期への意識は大きく違うと感じました。OKと言っておきながらインド人は納期を守らないことが多いですが、日本人は死んでも守ります。これは文化的な違いが影響していると思っていて、インド人は小さい頃からいろいろなことをごまかしてきていますから、残念ながらあまりしっかりしてはいない(笑)
一方で、日本人は細か過ぎると思う場面が多くありました。「検討します」「考えます」と言われてしまって、判断に時間がかかるんですよね。インド人はもっと判断のスピードが早いので、そこはギャップがありました。
あと、これは個人的な意見ですけど、日本人4人を一つのチームにしたら、チームとしての出力は5、6、7……と上がっていく。少なくとも下がることはないように思います。これがインド人の場合、チームの出力はたぶん2くらいになる(笑)。チームにしてプラスになることはあまりない気がします。
というのも、インドは人口が多いゆえに、インド人は小さい頃からいつも競争をしています。自分がトップになりたいという感覚が強いから、チームワークが苦手というか、チームで協力して利益を分け合う習慣がないんです。日本人はできることはできる、できないことはできないと言いますが、インド人は何でも「できる」と答える傾向にあります。これも競争をしながら育ったことが影響しているような気がしますね。
実際の仕事に関しては、日本人はクリエイティビティを生かしたものづくりが得意ですが、インド人は計算やロジックが得意です。そういう意味で、IT系エンジニアをはじめ、コンピュータを使った仕事はインド人に向いていると思います。もし僕が車がつくるなら、製造は日本人に任せ、設計はインド人に任せますね。
−−働く環境や制度について、インド企業よりも日本企業の方が優れている点はありますか?
いっぱいありますよ。まずは食堂。日本企業は社員の扱いがとても良くて、大事にしていることを感じました。私が働いていた会社はテニス部や工芸部、自然探検部などいろいろな部活動があって、社員同士で交流もしやすかったし、仲も良かったです。
あとは通勤面ですね。インドは通勤がつらいんですよ。会社から10km程度の場所に住んでいても、1時間ぐらいかかりますし、車やバイクは危険です。でも日本は電車やバスで、短い時間で安全に通えます。
日本はハードワークと言われることもありますが、私はあまりそうは思いませんでした。そもそもインドも残業が多くて、IT系の人は少なくても1日10時間は働いています。多いときは14〜20時間くらい仕事をすることもあるんですよ。
−−もし日本人が初めてインド人の部下を持つ場合、どんなことに気をつければいいでしょうか?
最初にはっきり言わなければいけないことが2つあります。まず、「約束は守りましょう」ということです。例えば納期が4時30分だとして、4時35分に「ちょっと遅れそうです」なんて報告をすることは、インドでは珍しくありません。時間がかかるなら事前に伝えるというのはもちろんですが、「できることはできる、できないことはできないと断ってください」と伝えておくことも重要です。インド人は指示を受けたら、たとえできないことでもOKと言ってしまう傾向にあります。その結果、取り組み始めてからさまざまな問題が発生し、納期に間に合わなくなってしまう。
もう一つは、チームワークのことです。インド人は自分を中心に考えてしまう人が多いですから、チームの目的をしっかり伝えて、チームのことを考えて仕事をしてほしいというのはきちんとお話しした方がいいですね。
−−他に注意点や知っておいた方がいいことはありますか?
やめていただきたいのは、お酒の強要ですね。インドは宗教の影響もあって、飲まない人が多いです。もしインド人の部下が飲まないと言ったら、無理して飲ませようとするのはやめてください。あとはイスラム教の人は豚を、ヒンドゥー教は牛を食べてはいけないと決められています。この辺りもご理解いただきたいですね。
知っておくといいだろうなと思うのは、インド人は家族との関係が深いということです。常に家族と相談しながら生活しているので、日本人にとっては「なんでこんなことまで親に話すの?」って不思議に感じることもあると思います。
例えば転勤の打診を受けた時、日本人なら30分程度考えて答えるところを、インド人は親と相談したいから1日考えたいと言う人も珍しくない。また、両親の結婚60周年記念パーティとか、家族の結婚式とか、さまざまな家族行事があって、その都度休みを取りたいと言う人も多いと思います。全員がそうではないですが、そういう傾向があることは知っておいていただけるといいですね。