2019627日(木)、ASIAtoJAPANは株式会社エンリッションと共同で『グローバル採用セミナー』を開催した。アジアを代表する高度人材の輩出国であるインドとシンガポールから、トップクラスの3校のキャリアセンター責任者、マネージャークラスが来日し、学生の就活やキャリア観について説明。ここではNTUNanyang Technological University/南洋理工大学)のThe Career Attachment OfficeCAO)の胡さんのプレゼンテーションの一部を紹介する。

 

NTUはエンジニアリングを学べる大学として、1991年に設立された。まだ若い大学ながら世界大学ランキングは12位*に位置する。生徒数は約31700人。学部生が23670人、大学院生が8020人在籍しており、各学部の生徒数は以下の通り。エンジニアの需要の高まっていることから、コンピュータサイエンスを学ぶ生徒数が増えているという。( *QS World University Rankings 2019  )

 

 

同校では学生の就職にも力を入れている。大学が設立された1990年代の採用では「空きがあるポジションに人を送る」という考え方が一般的だったが、時代は代わり、「今はもう、ただ仕事を紹介する役回りではない」と胡さん。キャリアの準備、企業との人脈、キャリアコーチング、グローバル体験、インターンシップ、就職と人脈形成のためのイベント、業界教育の大きく7つのカテゴリーで、学生のキャリアをサポート。各業界の動向や就職に関する情報が記載された冊子を年1回配布している。

 

まず入学して間もなく「キャリアの準備」がスタートする。1年生の時から学生はリーダーシップや思考力、コミュニケーション力を鍛えるためのワークショップに参加し、3年でインターンに参加、4年生になったら就職イベントに参加するなどして就職先を見つけるのが一般的な流れだ。キャリアコーチングでは各業界のプロがコーチを務め、レジュメや面接の内容についてブラッシュアップするなどして学生のニーズを満たしている。

 

インターンシップはほとんどの生徒が1022週で行う。最近の取り組みとしては、1年生の時から参加できるインターンシッププログラムを導入。期間も5080週に延長するなど、インターンシップへの取り組みはより強化する方針だ。

 

 

グローバル体験を積むことを目的に、インターン先は国外を推奨。50以上の中国現地企業と提携をするなど、学校としても国外企業との連携を進めている。他に業界教育の取り組みとしては、会社訪問や展示会参加、トークイベント、プロジェクト体験など、さまざまな機会を設けている。

 

 

大学にいるだけではどうしても業界の動向が掴みにくいため、各業界から人を呼び、その人たちから動向をシェアしてもらうことを狙う。よりリアルに業界を学ぶための新たな取り組みとしては、学生がCEO23日同行し、肌で業界や仕事について感じられる「Job Shadowing」を開始した。

 

大学としては、業界動向もキャッチすること、企業と生徒をつなぐための役割を担うことを目的に、企業との人脈形成に力を入れている。企業と密接に関係を築き、生徒や企業、大学職員など、多様な人が参加できるコミュニティーを作っていきたい考えだ。

 

同校の年間スケジュールは8月から新学期が始まり、11月で前期が終了。12月に休みを挟み、1月から後期がスタート。5~7月が夏休みで、卒業月は5月となる。学生が就職活動を始めるのは、だいたい卒業の半年前の12月ごろ。大学での就職フェアは2月に行うが、企業はそれ以前から学生にコンタクトを取り始め、早い会社は8月から動いているという。

 

 

仕事探しの際に、大学のサイトやジョブイベントを利用する生徒は73%。インターン先に就職する生徒は42%、第三者機関を利用する生徒は70%となっており、併用して活動する学生も多い。

 

学生の就職率は90%で、平均月収額は日本円にしておよそ277000円。各学部の平均月収は以下の通り。最も平均月収が高いのは35万3000円、ビジネスとエンジニアリングの2つの学位を取得している学生だ。

 

人気の業界は、情報コミュニケーション、金融・保険、電気製品、行政、法律・会計・監査、建設。どの業界からもコンピュータサイエンスの生徒の引き合いが強く、金融・保険業界はエンジニアの学生からの人気も高いという。

 

各企業は学生を採用するためのさまざまな工夫をこらしているが、伝統ある老舗企業ほど、才能ある若手の採用に苦戦する傾向にあるという。学生から人気の企業の共通点として、以下が挙げられた。

 

・キャリアプランが明確であり、キャリアトレーニングの機会がある

・上下関係がなく、フラット(若手がシニア人材のメンターにつくなど、逆転のメンター制度がシンガポールにはある)

・社会貢献活動を行なっている

・フレキシブルに働ける環境がある

・個人の責任の元、自由がある

 

学生が仕事を探す際に重視しているのは、「興味関心と情熱」「社会へのインパクト」「ワークライフバランス」「スキルアップやキャリアを伸ばせる仕事」の4つ。また、ジムやちょっとしたゲーム機器があるなど、遊び心があるオフィス環境があったり、社員の健康に気を配っていたり、奨学金返済の補助などの仕組みがあったりする企業も人気があるという。「企業はただ高い年収を提示するだけでなく、これらの観点を踏まえた動機付けが必要となる」と最後に胡さんは強調した。