「日本で生活するのは大変なことはありますが、とてもいい環境です。」

– 「中国国内では特に金融業界において競争がとても激しく、常に上に行かないと淘汰されるような環境でしたので、別の場所に行きたいと思いました。」 –

内定先企業

オートバイを中心とした輸送用機器を製造するメーカー

吉林大学卒業後、京都大学大学院に進学し経済学を専攻する修士学生。学士課程在籍中から日本語を勉強し、JLPT N1を取得するなど日本語レベルが高い。中国語、英語、日本語を話すマルチリンガルでグローバルな活躍が期待できる方。学士の卒業研究では日本と中国の人口高齢化と社会保障について研究した。

Profile

国籍・地域
中国
大学
吉林大学
学部
経済学部
最終学歴
修士

楽しいと思える勉強がしたい!日本語との出会い 

日本語と出会ったのは本当に偶然でした。中国の大学受験において、文系では「とりあえず経済学部」「とりあえず法学部」という流れがあります。もその流れに乗った一人でした。経済学部に入学したのはいいものの、正直学んでいて自分にとっては楽しいと思えず、また経済学に対する苦手意識を持ってしまいました。経済学部は文系からも理系からも学生がいるのですが、自分はどちらかというと論理や計算が苦手な方だったので、別の何かを勉強してみたいと思いました。 

そこで、大学一年生の二学期に、大学の外国語学部が提供している言語の副専攻を取ろうと思いました。言語にはもともと少し興味がありました。最初は韓国語を勉強したいと思っていたのですが、副専攻としては提供されていませんでした。また、スペイン語を見たら、教授が外国にいるとのことでその年は開講されませんでした。ドイツ語も出しましたが、ドイツ語は成績要件が高かったようで、結果も来ませんでした。そこで、残った履修できる言語が日本語でした。日本語のことは何も知りませんでしたがひとまず申請を出し、それが通ったというメールを後日もらいました。そして、日本語の授業に行くことになりました。 

2回程授業を聞いてみて、授業のやり方も、内容も面白く、にとっても学ぶことが苦痛でなかったので、続けてみることにしました。大学三年生の時に、「せっかく外国語を学ぶんだから、この言語を母語としている国に行って現場の風景を感じてみたら?」 というある日本語の先生の言葉が腑に落ちて、日本に行ってみたい、という気持ちが強くなりました。そこから、学校が提供している中国と日本の交換留学プログラムについて追っていましたが、N1やN2を条件とすることが多く、自分に合うものがなかなかありませんでした。その中で、たまたま同級生から日本の東北大学出身の金融学の教授が、その後輩が行っている東北大学の地域復興プログラムを紹介していた、という話を聞きました。この話をしてくれた同級生や教授、プログラムリーダーであるその教授の後輩を通して最後は宮城県に行くプログラムに参加することになりました。せっかくの機会だったので、地元の大学に行って見ようと思い、プログラムとは別でしたが東北大学に行ってみました。街中にありながらも静かだった東北大学は中国の大学とは雰囲気が全く違い、にとってはとても理想的な環境でした。の大学はかなり賑やかでしたが、は落ち着いた雰囲気のほうが好きで、宮城に行ったときはまだ中国の大学院に進学することを考えていましたが、東北大のような、落ち着いていてかつ世界でも有名な日本の大学に進学しようかなと思い始めました。 

 

日本の大学への憧れから大学院受験へ 

中国に帰って、日本に留学するかどうかを悩み始めました。日本語の授業を受け始めた時から実は日本の経済学に強い大学院を調べてみることもしましたが、日本から帰ってきてもう一度考え直すと、やはり専攻の経済の成績が何とも言えず、日本語でそれを学ぶことに自信がありませんでした。日本の大学院について調べつつ、実際には中国国内での院試に向けて勉強していました。毎日のように苦手な数学に触れながら、本当にわからなくて、自暴自棄気味になっていました。そこで、やはり日本に行きたいと強く思いました。3年生の夏か4年生の始まりにはもう心は決まっていました。 

そこで4年生の時、同級生に勧められ、お金を貯めるために学内の事務のアルバイトをはじめました。それに加え、同級生が皆院試や就職活動を進めていく中で、クラス長(出欠や規律、掃除、授業に必要な用品、先生の手伝いなどをする人)が忙しくなり、仕事をほぼ全てに任せるようになりました。正直4年生の間はその二つで手いっぱいで、院進に向けての準備はN1とTOEFL受験にむけて軽く勉強した程度でした。もちろん、両方ともあまりうまくいきませんでした。そのため、本格的に大学院に向けて準備を始めたのは卒業してからになりました。 

日本の大学院には結局経済学で出願することにしました。日本から帰ってきた後の大学三年生の春学期に取った日本経済という授業は面白くて好きだったことがきっかけです。教授は経済学の博士号を日本でとっていて、その教授の授業を受けていく中でこういう経済学なら面白いかもしれない、と思えたのです。また、4年間もがきながらも最後まで学んだので、別の専攻に切り替えるのはもったいないという気持ちもありました。その教授に相談してみようと思い、留学に興味があった友達と一緒に行きました。は色々と自分の中で固まり、またその友達は香港に留学するつもりで日本語が一言もできないのに、相談が終わるとすぐに日本の大学院に留学することを決めていました(笑) 

当初親は留学することに猛反対で、国内進学を強く勧めていました。しかし、私は自分で着々と準備を進めました。大学を卒業してから9月にTOEFLを受けて、N1も受けました。TOEFLも悪くなく、N1も無事合格できました。年が明けたらもう一回TOEFLを受けて点数を伸ばそうと思っていたところ、新型コロナが流行り始めました。コロナ禍の中で自宅に籠りきりで準備を進めていくのは正直とても苦しくて、たくさん悩みました。その中で4月に大学院の選考方法が書類選考のみになり、その中で京都大学から合格を頂くことができました。本当に嬉しくて、あきらめなくてよかった、と心から思いました。京都大学には行ったことがなかったのですが、経済学では有名でしたし、もちろん大学自体も名が通るため、そこに進学しました。 

 

N1取得しても高い言語の壁 

京都大学の大学院に進学し、日本に行くとなったときに、の中ではもう日本で就職したいと考えていました。中国国内では特に金融業界において競争がとても激しく、常に上に行かないと淘汰されるような環境でした。僕は正直それに疲れてしまっていたのと、就職した友達や先輩から就職してからもそのような環境で仕事もすごく大変だと聞き、別の場所に行きたいと思いました。もちろん日本社会も競争社会ですが、外国人/留学生として来るならば面白いかもしれない、と思いました。 

京都も、京都大学もとてもいい環境でした。東京や大阪に比べたらそこまで栄えてはいませんでしたが、それでも静かで住みやすくていい場所でした。京都大学はとてもユニークな校風で、定期的に変な立て看板が立てられていたり、雪が降ったときに大学の正門の「京都大学」という文字が「東京大学」や「北京大学」「清華大学」に変えられていたりと、東北大学の見学がの中での日本の大学のイメージを作ったので、京都大学に来たときは違いに驚きました(笑) 

日本に実際に住み始めてみて、言語の壁に驚きました。N1を取得はしましたが、日常生活でも、学校でも、正直何が何だか理解できないことが多かったです。N1くらいの日本語力があれば大学院の勉強も日本での就職もある程度対応できると思うかもしれませんが、にとっては言語が一番の壁でした。コロナによる隔離の関係もあり2022年の5月に京都に来たのですが、それまでは授業のスライドだけ見れば大丈夫だったのが実際に対面での授業だと先生の話を聞きながらスライドも見なければいけないので、授業中はどっちつかずの状態になってしまい正直なにもわかりませんでした。先生の話がまず言語面でわからず、そちらを聞き取ろうと集中するとスライドを注意深く読むことができなくなり、逆にスライドに集中しすぎると先生の話についていけなくなるので、授業が本当に大変でした。日常生活でも、スーパーやコンビニに行った時の「袋いりますか」「お支払い方法は何にされますか」「ポイントカードはお持ちですか」ですら聞き取れず、理解もできなくて、特に最初の学期はまるで自分に耳がなかったような感覚になりました。正直かなりつらかったです。 

 

決まらない将来の方向性と挫折の連続 

その中で、日本での就活の流れも大体わかってきたのでなんとなくやってみましたが、あまりうまくはいきませんでした。経済学を学んでいるので、とりあえずで金融業界の企業をいくつか受けましたが、ほとんど落ちました。今思うと、金融業界に正直興味もなくて、モチベーションが全くない状態でした。二学期の終わりである3月あたりに様々な企業が就活情報を解禁しますが、そこで自分のキャパを考えて、本格的に就活するなら自分から留年しようかな、と思い始めました。僕のスーパーバイザーに相談したところ、できるなら早く卒業した方がいいと言われて、悩みながらもそのまま最終学期を迎えることにしました。 

そこから悩みながらもその場その場で考える、という状況が続きました。時折何個か企業を受けることもありました。その中でFAST OFFER Internationalを見つけ、特に期待することもなく登録してみました。ASIA to JAPANのスタッフの方々と面談したり、自分でじっくり考えたりする中で、自分が何の業界、何の職種に興味があるのかがだんだん見えてきました。ずっと経済を学んでいるからとりあえず金融、とやってきましたが、やはり興味がなかった、ということと、営業のような仕事が多くコミュニケーション能力がかなり求められるということで自分にはあまり向いていないと感じました。ほかの業界の営業職も自分には合わないと思いました。日本語能力があまり求められなくて留学生をたくさん採用しているIT系も考えましたが、以前プログラミングを学んだ時にあまり合わなくて、一か所企業を受けてみましたが、その時もモチベーションが上がらずきちんと準備しておらず、落ちました。人間、モチベーションがないと努力しないですよね。 

 

偶然の出会い、背水の陣 

その中で、たまたまメーカーという業界を知る機会があり、業界の雰囲気と自分が合っているように思えて、また製品によっては自分が興味あるものもたくさんあると思いました。メーカーについて調べているときに、 FAST OFFER International から今の内定先の輸送用機器のメーカーを受けてみないか、と連絡がありました。その時に、ここだ!と思いました。私自身乗り物が好きで、バイクや車、バスや電車などに幼いころから惹かれて、製品も日常に近くてわかりやすいと思いました。また、募集職種もバイヤーのようなものだったので、自分に向いている気がしました。そうして、この会社を受けることにしました。その時はもうすぐ卒業論文を提出する時期で、修士論文を提出して審査が通れば卒業できるわけですが、正直僕は就職先が決まっていない状態で卒業することをずっと渋っており、まだ卒業を延ばすかどうかを悩んでいました。卒業論文はほぼ仕上げていたのですが、提出するかをずっと迷っていて、この会社から内定が出なかったら締め切りの日になっても提出しないことにしようと決めました。行く方向を決められずなかなかモチベーションが上がらなかった僕でしたが、やっと興味のある、働いてみたいと思える会社に出会えて、そこから真剣に準備をし始めました。 

選考を受ける中で、自分にとっての壁はやはり日本語でした。ウェブテストのSPIや玉手箱の数学の部分は問題なかったのですが、言語の部分がやはりには難しかったです。また、面接の準備の時にメンターの人に「日本語で伝えられなかったら英語でもいいよ」と言われ、は英語を使ってみましたが100%は伝わらず、メンターの人が「日本語も英語もうーん…」と困っていたのを覚えています。やはりの中ではどうしても中国語を日本語にするプロセスがあるので時間がかかるのと、日本語学部出身ではないのでプロフェッショナルな日本語をうまく使いこなせませんでした。それでもメンターの方は粘り強くを支えてくれて、言葉遣いや表現、ふるまい方などを叩き込んでくださいました。メンターの方は「リラックスして、元気そうで積極的であるという印象を与えるのが本当に大事」と何度も言っていました。また、その時はメールをあまりチェックしなかったりやるべきことを先延ばしにしたりしてしまう傾向があったので、選考の際にASIA to JAPANのスタッフからメールだけでなくWeChatを使って何度もリマインドしてくださったおかげで最後まで緊張感をもってやり切ることができました。こうして、なんとか内定をもらうことができました。そして、卒業論文も無事提出し卒業できることが決定しました。(笑) 

 

日本に来るなら日本語は絶対!自分の進む方向性も明確に 

みなさんにメッセージを伝えるとしたら、まず日本語をとにかく勉強して、語彙力を高めて、実際に使われる表現や言い方、プロフェッショナルな言い回しも含めて自分ができる最大限の努力をしてください。日本に来たいという想いがある以上、特に職を見つけて定住したいなら、これは絶対に必要なことだと思います。もう日本語を勉強し始めて数年たち日本でも2年近く暮らしていますが、それでも日々自分の日本語能力が不足していることを痛感してしまいます。就活の時も日本語が本当に大変でした。特に準備をしていなかった質問を聞かれたときに、日本語が思い浮かばなくて思ったことと全然違うことを話してしまったり、うまく伝えられなかったりしたことがありました。いくらいい考え方やアイディアを持っていても伝えられなかったら意味がないですよね。とにかく日本語は頑張ってください! 

また、以上の通り、は自分の将来の方向性がなかなか定まらず、自分の興味もあまり自分でわかっておらずモチベーションが上がらないことがありました。自分の将来進みたいと思う方向性とその計画を考えてはっきりと認識しておくことが大事だと思います。もしそれがなければ、まず3年後、5年後どうしていたいか、自分がどうありたいかを考えるといいと思います。そうすれば見えてくるものはあるでしょう。 

日本で生活するのは特に言語面で大変なことはありますが、とてもいい環境です。頑張ってください! 

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