「いきなり外国人材を採用するのは不安だから、まずはインターンで様子を見たい」
高度外国人材のインターンシップを、そう考える企業は少なくありません。一見すると理にかなっているように思えますが、実は知らないうちに法令違反となってしまうリスクをはらんでいます。
「現場の実態は真逆。実はホワイトカラーのインターンシップは外国人採用の入門編ではなく、本採用よりも法務・実務のハードルが高くなり得る応用編」。
今回は、外国人雇用の法務に精通する杉田昌平弁護士にインタビュー。外国人が日本で専門的あるいは技術的な仕事に従事するための在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザにおいて、なぜインターンシップの受け入れは難しいのか、法律の観点からお話を伺いました。
記事の後半では、受け入れ前に確認すべき10項目のチェックリストも紹介します。
外国人材の無給インターンシップは実務上成り立ちにくい
Q. ホワイトカラーの外国人材をインターンシップで受け入れるにあたって、法律上知っておくべきことを教えてください。
杉田弁護士:まずは在留資格について理解しましょう。外国人がインターンシップで来日する際に使われる在留資格は、大きく分けて「給与なし」と「給与あり」の2つに分類されます。
まず給与なしの場合、見学が中心の「短期滞在(90日以下)」と日本独自の文化や技法を修得するための「文化活動(90日超)」の2つがあります。
また、無給である以上、企業はインターンシップ生に対して指揮命令を行ったり、時間や場所を拘束して作業をさせたりすることが法律上問題となり得ます。
指揮命令をして労働をさせた時点で最低賃金の支払義務が生じ得るため、不法就労や労働基準法違反となり得ます。
Q. 「無給だから手軽に受け入れられる」と思ってしまいそうですが、そもそもインターンシップとして成り立ちにくいわけですね。
杉田弁護士:学生に実際の作業をさせたり指揮命令をして研修を行ったりする場合は、給与を支払った上で「特定活動告示9号」か「特定活動告示12号」のいずれかの在留資格を取得する必要があります。
特定活動告示9号は、海外の大学と日本の企業が協定を結び、大学の単位取得を前提に報酬を受けて行う活動です。
一方の特定活動告示12号は、大学の長期休業期間などに報酬を受けて行う季節的な活動。
大学との協定は必要ですが、単位取得は要件となりません。
Q. まとめると、インターンシップは「給与なし」と「給与あり」の2つに分類され、さらに各2種類の在留資格がある。ただし、企業のインターンシップの場合、実質「給与あり」の特定活動告示9号か12号のいずれかを取得することになるということですね。

「国外にわたる職業紹介」に要注意
Q. 特定活動告示9号、12号でインターンシップを受け入れる場合、注意すべきことはありますか?
杉田弁護士:職業紹介サービスを利用して海外にいる学生を特定活動告示9号、12号で日本に呼び寄せる場合、厚生労働省が定めた「国外にわたる職業紹介」に該当し得る点に注意が必要です。
「国外にわたる職業紹介」とは、求職者と雇用主のどちらかが海外にいる場合の職業紹介を指します。インターンシップであっても、(学生であると同時に)労働者の紹介であることに変わりはありませんので、職業安定法が定める国外にわたる職業紹介の規制の対象となり得ます。
国籍ではなく求職者の居住地によって判定されるため、海外在住の日本人にも適用される規定です。
この「国外にわたる職業紹介」では、法律上守らなければいけないルールが3つあります。
1つ目は、「職業紹介事業者が労働局に届出をした国しか扱うことができない」というもの。
許可証に記載がある国の人材しか扱うことはできません。
2つ目は、「相手先の国の法律の順守」です。
ベトナム、インドネシア、フィリピン、インド、ネパール、中国、スリランカ、ウズベキスタン、ミャンマー、バングラデシュ、タイ、パキスタン、カンボジアといった主要な国は、国外への職業紹介を許可制にしていますので、現地の法律に沿って手続きを行う必要があります。
具体的には、相手先の国で職業紹介事業者が許可を取ったり、日本国外で求人及び求職の申込みがあった時に日本の職業紹介事業者に取り次ぐ「取次機関」を利用したりする必要があります。
そして3つ目が、「取次機関を使う場合は許可事業者に限られる」です。
取次機関は相手先の国が許可を出している事業者に限られ、許可を持たない大学やブローカーを介して募集をすることはできません。
要するに、その国の人材を紹介できる許可を取得した日本の職業紹介事業者と、現地の取次機関を介さないと、法令違反となり得るわけです。

Q. 大学や自治体、人材系企業が間に入っていれば安心、ではないということでしょうか?
杉田弁護士:その通りです。
まず大学は法律上の取次機関ではありません。取次機関は、現地の法律で送り出し行為を行うことができる必要があり、当該国の送り出しが許可制であれば、送出機関の許可を持っていることが必要です。
現地大学が学生を取りまとめて日本企業に紹介したり、選考の仲介を行ったりすると、法的には「大学が無許可で職業紹介を行っている」ことになり得ます。
人材系企業や自治体、コンサルタントなどが間に入り、面接の日程調整や連絡の仲介などを含めて支援をする場合も、日本の職業紹介の許可や届出と、国外にわたる職業紹介の許可や届出の両方がなければ、たとえ無料であっても違法となるケースが多いです。
Q. 第三者に仲介を依頼する場合、国外にわたる職業紹介の3つのルールを満たしているか、確認が必要ということですね。
杉田弁護士:まとめると、適法に海外在住者をインターンシップに呼ぶには、主に以下いずれかの方法が考えられます。
・自社のみで完結させる
企業が自ら現地大学に赴き、第三者を一切挟まず、自社で直接募集、面接、契約、在留資格申請を行う。
・適法な紹介事業者の利用
候補者が在住する国の「国外にわたる職業紹介」の届出を日本側で持ち、かつ現地の取次機関と協定を結んでいる職業紹介事業者を介する。
・募集情報の活用
求人サイトなどのプラットフォーム上で候補者が直接応募し、仲介者を挟まずに企業が候補者と直接やり取りを行う。あるいは企業が人材データベースを参照し、直接候補者とコミュニケーションを取る。

「知らずに法令違反」を防ぐためのチェックリスト
Q. 海外から正しくインターンシップを受け入れるには、「国外にわたる職業紹介」の複雑な仕組みを理解し、法令違反にならないよう注意する必要があるということですね。
杉田弁護士:「インターンシップ=本採用をする前の手軽なステップ」というイメージを持っている人は多いですが、実際には本採用よりも工数がかかります。
国外にわたる職業紹介の規制自体はインターンシップも本採用も変わらないものの、インターンシップの場合は大学との協定の締結やインターンシップ期間の育成プログラムの策定などが追加で求められるため、実は本採用よりもステップが多いんです。
つまり、技人国で在留資格をとって本採用する方が簡単である場合が多く、インターンシップは応用編というわけです。
Q. ちなみにインターンシップ後、本採用としてオファーを出す場合は、在留資格の手続きを改めて行うのでしょうか?
杉田弁護士:そうですね。インターンシップ終了後に内定を出したとしても、必ずではありませんが、学生は一度帰国する必要があることが多く、改めて技人国の在留資格申請を行うことになります。
まとめ

杉田弁護士:「まずは気軽にインターンシップから」という発想でスタートすると、多額の費用と手間がかかり得る上、知らず知らずのうちに違法行為に加担してしまうリスクがあります。
法律と実務を正しく理解した上で判断することが極めて重要です。
繰り返しになりますが、インターンシップは外国人材採用の入門編ではなく、応用編であり、高度な手法です。
外国人材採用のノウハウがまだ少ない企業こそ、本来は最もシンプルで手続きが明確な直接雇用からスタートするのが、安全かつ確実な選択肢です。
そうやって外国人採用を5年、10年と継続し、社内の体制や法務知識が十分に備わった企業が明確な戦略を持って活用してこそ、インターンシップは真価を発揮するのだと思います。
もし自社で外国人材のインターンシップ受け入れを検討する場合は、トラブルや法令違反を防ぐためにも、以下の10項目を必ずチェックしてください。
☑ 外国人材のインターンシップ受け入れ前チェックリスト(10項目)
- 【報酬と業務内容】 無給の場合、指揮命令や場所・時間の拘束を伴う労働をさせられないことを理解しているか
- 【在留資格の分類】 有給の場合、大学との協定および単位取得の有無に応じた在留資格(特定活動告示9号または12号)を正しく選択しているか
- 【法的概念の認識】 海外の学生を招聘する行為が職業安定法上の「国外にわたる職業紹介」に該当することを理解しているか
- 【紹介事業者の許可】 間に入っている人材紹介会社が労働局に該当国の取扱届出を提出していることを厚生労働省の人材サービス総合サイトで確認しているか
- 【現地取次機関の正規性】 現地の仲介機関が、相手国の法令に基づいた正規許可を持つ送出機関(取次機関)であることを確認しているか
- 【労働基準法の順守】 日本国内での就労に対し、最低賃金をはじめとする日本の労働法規を順守することを前提としているか
- 【直接受入体制】 第三者を挟まない場合、自社で直接募集・選考・契約の手続きを行っているか
- 【トラブル・中断時の対応】 万が一途中で受け入れが困難になった場合の在留資格の変更・帰国支援などの対応策を想定しているか
- 【本採用移行フロー】 インターン終了後に本採用へ移行する際、再度技人国ビザ申請が必要となり得ることを理解し、手続きやスケジュールを整理できているか
- 【行政への届出】 受入開始後に「外国人雇用状況の届出」を提出しているか
外国人材採用のお試しは「まず始める」こと
杉田先生の説明から、「国外にわたる職業紹介」の複雑な仕組みを理解し、適法で外国からインターンシップ生を呼び込むには、相当の手間と費用がかかり得ることが見えてきました。
それだけ工数をかけてインターンシップ終了後に内定を出しても、残念ながら学生側から辞退されるケースも少なくありません。
その結果、企業側は「手間もお金もかかったのに誰も入社しなかった」と疲弊し、「外国人採用はもうこりごりだ」と挫折してしまう悪循環に陥るケースも見受けられます。
本来、外国人材採用においてのお試しは、「まず開始する」ことです。
数人の採用であれば個別対応で十分な場合が多く、最初から社内の環境を整備する必要は必ずしもありません。
少人数を採用し、受け入れた後に少しずつ環境を整えていくのが、最もリスクの低い「お試し」といえるでしょう。
ASIA to JAPANでは、無理なく外国人材採用を始めるためのご相談を承っています。「まず開始する」ための最初の一歩を考えていきましょう。
PROFILE
杉田 昌平(すぎた しょうへい)氏
弁護士法人Global HR Strategy 代表社員弁護士。社会保険労務士、行政書士。JICA国際協力専門員(外国人雇用/出入国管理関係法令及び労働関係法令)。外国人雇用関連法務の第一人者として、政府・自治体・企業への助言や著書多数