海外大学に通う日本人学生が、就活で企業に思うこと「日本の大学生と比較しないで」
大学で専攻分野をしっかり学び、語学力と国際感覚を身に付け、異国で生活をしてきた海外大学に通う日本人留学生。日本企業にとって、魅力的な人材です。
ところが、日本企業への就職を希望する海外大生は、就活に関してさまざまな悩みを抱えています。
そこでASIA to JAPANは、アメリカ、イギリス、シンガポールの大学に通う8名の留学生の座談会を実施。
前半では、海外大生たちがどのような就活をしているのか、その実態を紹介します。
日本人留学生の就活スケジュールをご紹介!
学生プロフィール
Aさん アメリカ/オハイオ州立大学/機械工学専攻
Bさん アメリカ/南フロリダ大学/マーケティング専攻
Cさん アメリカ/南フロリダ大学/ソーシャルサイエンス専攻
Dさん イギリス/サセックス大学/人類学&国際開発学専攻
Eさん イギリス/バーミンガム大学/AI・コンピュータサイエンス専攻
Fさん イギリス/エディンバラ大学/地球科学専攻
Gさん イギリス/ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)/ソーシャルサイエンス専攻
Hさん シンガポール/シンガポール国立大学(NUS)/エンジニアリング専攻
就活の軸は各種キャリアフォーラム
——海外大生の一般的な就活スケジュールを教えてください。
Cさん:今年卒業した先輩は、4年生の夏休みにボストンキャリアフォーラムの準備を始め、11月のボスキャリ本番で内定を取って就活を終えていましたね。
そこで内定がもらえなかった人は日本の大学生の就活スケジュールに合わせて就活をしていましたが、完全に昼夜逆転で、声をかけられないぐらい忙しそうでした。
Dさん:スタート時期は日本の大学生より遅い気がしますね。うちの大学は最終学年に入ってから始める人も多いです。
Fさん:欧州だと4月のロンドンキャリアフォーラムを軸にスケジュールを立てる人が多いですね。周りでは3年生の冬休み前後から就活について調べたり履歴書を書いたりし始める人が目立ちます。
中にはボスキャリも視野に入れて、11月にアメリカへ行けるような授業の取り方をする人もいます。そういう人は夏休みの間もリサーチをしています。
私の場合は1年生の時にロンキャリ行きました。就活意欲が高い人は早い段階から参加していますね。
Gさん:やる気がある人は2年生の最後には内定をもらっています。私はまだ1年生ですけど、周りに日本企業でインターンをやっている人が多くて、私もこの夏参加予定です。1年生なのに、もう内定をもらっている子もいますね。
UCLはジャパン・ソサエティ(日本人が集まるコミュニティ)が大きいので、縦のつながりがある分、先輩から就活について聞く機会が多いんです。その分動き始めが早いのかなと思います。
Cさん:アメリカで1〜2年生から動く人はあまりいない気がしますね。3年生で情報収集のためにボスキャリに参加する人がいるくらいかな。
Gさん:ロンドンは3年制なので、それも影響していると思います。
Aさん:僕はアメリカですが、工学部だと2年生の夏からインターンを探して、3年生で給料ありのインターンをやって、4年生で就活する人が多いです。
Hさん:シンガポールは日本人学生の数が少ないのですが、先輩はギリギリに就活を始めて4年生の卒業1カ月前に内定をもらったと言っていました。
一方、僕の代は日本人が3人いるんですけど、3年生の後半から始める人が多い印象です。僕も3年生後半からスタートして、最近面接が入り始めました。東京キャリアフォーラムで内定をもらって、4年生にかけて内定を増やしていければと考えています。
——総じてキャリアフォーラムが軸となるのですね。並行して日本の大学生と同じような就活をする人はあまりいないのでしょうか?
Bさん:私の周りにはいないですね。ボスキャリを軸に動いて、そこで内定出たら就活終了という人が多いと思います。
Fさん:私が知る限り、イギリスも同じ感じです。
Gさん:そもそも日本の大学生の就活の仕方がよくわからないです。
就活情報は「自然に入ってこない」
——就活に関する情報収集はどのようにしていますか?
Cさん:ネットで「海外大生 就活」といったワードでざっくり調べてから、身近な先輩や経験者に話を聞いています。
うちの大学はジャパン・ソサエティというほど公式のグループではないのですが、年末年始や学期末、学期始めなど1学期に2回くらい日本人学生が集まる機会があるので、そこで知り合った人に聞いて回る感じです。
Hさん:NUSは交換留学生が多いのと、ジャパン・ソサエティもあるので、そこで情報を得ています。日本の大学の友達からも話を聞きますね。
Fさん:私もネットで調べつつ、ジャパン・ソサエティのキャリアオフィサー(※)が週1回学生を集めてセッションをしているので、そこで情報収集をしています。
※ジャパン・ソサエティ内で就活に関する情報を取りまとめる人。エージェントや各企業との窓口となり、集まった情報をソサエティ内で発信する役割を担う
Gさん:UCLの場合は10月に毎週エージェントの方が来てレジュメの書き方を教えてくれたり、企業座談会があったりとイベントも多いですね。
コンサル企業がたくさん来るので、そこで内定をもらう先輩も多い印象です。
Hさん:ジャパン・ソサエティでシンガポールの会社のオフィスツアーを行うことはあるんですけど、日本の会社はほとんどないかなぁ。
Bさん:私はまだそこまで情報収集はできていませんが、ひとまずLINEに流れてくる就活フェアの情報を見るくらいです。自然と情報が入ってくる感じではないので、自分から探しにいかないといけないんだなと感じています。
Aさん:わかります。大学の日本人コミュニティに入らないと、ほとんど情報は得られないですよね。あとは、インスタの就活系アカウントを見るくらいかな。
Dさん:ワンキャリアや外資就活など、就職サイトも見ます。
——インターンの情報はどうやって得ていますか?
Hさん:先輩から教えてもらった長期インターンシップを募集しているWantedlyなどのサイトで探しました。同じサイトが代々後輩にも伝わっているので、うちの大学はそこで探す人が多そうです。
Dさん:私は将来的に国連で働きたいので、発展途上国でインターンをしたいと思い「タイガーモブ」で長期インターンを探しています。
日本企業でのインターンも考えましたが、適性テストやウェブテストの対策をまだ何もしていないので申し込めないなと。
Hさん:僕は日本で2社インターンをしましたが、どちらもウェブテストはなかったです。代わりに1社では「当社のこの課題を解決してください」というエンジニアとしてのスキルを見るようなテストがありましたね。大変だったけど、ウェブテストより業務に関連するのがわかるし、実践的で納得感はありました。
海外大生が得られる情報には偏りがある
——日本の大学生と海外大生の就活には、どのような違いがあると感じていますか?
Cさん:基本のやり方は一緒だけど、海外にいる分チャンスが少ないとは思います。日本だと就活系のイベントがたくさんあって、選択肢が多いですよね。さまざまな業界や業種に特化したセミナーも多い印象があります。
一方で海外の場合、選んで参加できるほどの選択肢がありません。志望する業界に関連するセミナーがあるとも限らず、「とりあえず就活関連のイベントがあれば行く」感じになる。
Gさん:だからこそオンキャンパスに来ていただけるのはうれしいし、その会社への意識も高まりますよね。自分で調べるだけでは分からないことも知れるし、ぜひ来ていただきたいなと思います。
Fさん:ただ、偏りはありますよね。2023年秋からの1年弱で日本から数社がオンキャンパスツアーに来てくださったんですけど、ほとんどがコンサルでした。
私はコンサル志望なのでうれしいですけど、選択肢は限られています。より幅広い企業が来てくれたらいいなとは思います。
Hさん:わかります。海外大学に日本企業の情報は全然来ないので、興味がある分野を自分で調べて、会社を知って、ウェブサイトを見て初めて採用情報を知る流れになる。要は知らない企業にリーチできないんですよ。
現状はコンサルや外銀、商社の情報ばかりで、エンジニアや日系企業の情報は本当にありません。キャリアフォーラムも業界がかなり偏っていますし。
Eさん:エンジニアの情報、本当にないですよね。さっき「日本企業がエンジニア採用に困っている」って初めて聞いて驚きました。
Fさん:あと、地域も偏りますね。就活系イベントはロンドン開催がほとんどですけど、「エジンバラの学生もどうぞ!」と言っていただければロンドンまで行くので、ぜひロンドン以外の地域の大学生も対象にしていただきたいです。
情報不足の解消にもなるし、資料を共有していただけると助かるなと。
Cさん:とにかく情報が少ないので、企業と交流できる場があれば積極的に参加したいですね。
あとはキャリアフォーラムの前に、学生同士の交流会があればなとも思います。他の海外大生がどういう準備をしてきたのか知りたいなと。
Bさん:海外大生の就活はどうしてもオンライン主体になるけど、私はオンラインがあまり肌に合わないと感じていて。来ていただくのが難しいのはわかるので、帰国時に参加できるものがあるといいなと思います。
——日本でイベントを行う場合、何月だと皆さん参加しやすいのでしょう?
Bさん:アメリカだと5月から8月中旬までが夏休みですね。
Fさん:イギリスは6月から9月末ぐらいかな。
Hさん:シンガポールは大体5月上旬から8月上旬までが夏休みですね。
Aさん:総じて、7月が一番参加しやすそうですね。
日本の大学との違い
——他に就活で困っていることはありますか?
Eさん:ロンキャリで面接官が「海外大生は敬語がおかしいことが多い」と言っていました。
海外大生の場合、バイトで社会人と日本語でコミュニケーション取ることもないし、ビジネスメールを添削してくれる大人も周りにいない。
企業側もある程度理解してくれているとは思いますが、日本の大学生に比べてギャップがあるのは感じます。同じ理由で、マナーも少し大目に見てほしいです。
Dさん:私は適性検査やウェブテストに困っています。
日本の友達は「大学の授業が緩いから、その分対策に時間を使える」らしいんですけど、勉強に全ての時間を使っている私たちはどうしたらいいんだろうって……。生きるだけでも大変なので、正直対策に割ける時間はないんですよ。
海外大生に求められる点数は低いと聞いたこともあるけれど、どちらにしても対策は必要じゃないですか。せめて海外大生枠の専攻では他のやり方を検討してほしいです。違う角度から私たちを見てほしいと強く思います。
Hさん:すごくわかります。僕は10年以上シンガポールに住んでいて、日本語より英語に慣れてしまっているのもあって、日本語で素早く文章を読み取るのに苦戦しています。
Aさん:ウェブテストの情報自体、全然回ってこないですしね。自分で調べないと対策が必要なことすら分からない。
Eさん:授業と並行して就活をすること自体が相当しんどいですからね。だからこそ多くの海外大生がキャリアフォーラムで勝負しようと思うわけですし。
Fさん:一方で、海外大生を対象とした場に行くと、英語が話せる前提になるんですよね。異文化経験をしているのもみんな一緒だから、そこのアドバンテージがなくなる。
その分、海外生活で得た強みを分析してアピールする必要があるけれど、そこは苦戦していますね。
Bさん「こうアピールすればいい」っていう情報もないし、お手本やテンプレもないですよね。自分が何をしたのか、よりシビアに見られるように感じます。
Aさん:大学名を言って伝わるのかなっていう不安もありますね。「オハイオ州立大学」と言った時に、どのくらいのレベルなのか判断できるのだろうかと。
アメリカのGPAが日本の偏差値にするとどのくらいなのか、わかるといいんですけど。
Eさん:あとは、新卒枠が狭いことに悩んでいます。僕は大学院に行くんですけど、卒業して1年以上経つと既卒枠になって仕事を探しにくいと聞いて。
実際に企業の方と話していて、「この枠はちょっと遅いかもね」みたいな雰囲気を匂わされたこともありました。
Aさん:そもそも卒業時期が違うし、日本のスケジュールと合わないですもんね。
Eさん:海外選考枠を用意してくれている企業もあるけど、それ以外の企業が選択肢から外れちゃうのもな……と思っています。
Cさん:まとめると、日本の大学生を比較対象にしないでほしいですよね。それぞれいろいろな理由や境遇から海外の大学に進学しているので、それを踏まえて「海外大生」として見てほしいなと思います。
日本人留学生の就活スケジュールをご紹介!
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