【出張レポート|中国】 公務員の給料が20年前の約18倍!飽和する学生と就職氷河期で安定を求める中国学生の現状とは?
ASIA to JAPANは2025年3月17日〜21日にかけて、日本就職を目指す学生に向けた説明会や大学関係者との打ち合わせを目的に、中国の現地大学を訪問しました。この記事では訪問した大学の紹介や、現地での様子についてご紹介します。
【中国】人事のための大学情報まとめ
■中国学生の就活事情
・続く就職氷河期
中国の大学生は年々減少傾向にあります。
その要因は、長らく続いた一人っ子政策による少子化の影響です。
しかし減少傾向にあるとはいえ、2024年12月時点で約4,763万人(院生込み)と日本の人口の約1/3の学生が在学しています。
一方で、一般企業の採用数はコロナ禍以降減少傾向にあり、時には大規模リストラが行われるなど、新規の受け皿が学生数に比べて圧倒的に少ないことから、長らく就職氷河期が続いています。
・求める職場
リストラや企業の倒産が相次ぐ中国では、若者の職場に求める条件が変わってきています。
今までは給与が良くステップアップを図れる大手企業が注目されてきましたが、近年では公務員のようなリストラや倒産の危険がない安定した職が好まれるようになりました。
これは都心に限らず地方の公務員も人気が高まっており、わざわざ地方に越してまで公務員を目指す人も少なくありません。
そんな地方公務員は、20年ほど前までは日本円で1万円弱だった給与も、今では18倍の20万円程と驚きの給与アップが行われています。
・実情は?
とはいえ地方公務員も採用枠は限られています。
年間1179万人(2024年次)の卒業生が輩出される中国では安定した職に就くにも苦労が絶えません。
・トップ大学とその他の大学の差
就職の有利さについて大学生や院生でそこまでの差は現状ないそうです。
中国の就活で差がつくのはやはり学歴が一番です。
実際に北京大学などトップ大学に通う学生は、中国国内の大手企業から引く手数多となっており就活での苦労も少なく済んでいるそうです。
一方で、中堅以下の大学はどこも苦戦を強いられる状況となっています。
中国はジョブ型採用のため、学生は実績作りを大切にしています。
その手段の一つが「インターンシップ」で、国内就職を目指すならば必ず体験する必要があるといいます。
インターンも在籍期間中給与をもらえるそうですが、フルタイムで働いても3万円から多くて6万円もらえるかどうかで、全て住居費用で消えてしまうとのこと。
そのように、ほぼ赤字になったとしてもインターンに参加しなければ就職できない状況のため、昨今では早々に就活を諦める人もでできているとのことでした。
・給与格差
日本と異なり学士と博士では、年収が1.5 倍ぐらい違います。
もちろん業界や業種で平均額は異なりますが、そういった影響もあり博士課程を選ぶ学生が5割以上います。
しかし博士課程修了者も人数が飽和状態となっており大手企業での競争も激化しています。
もちろん中小企業では人材を求めていますが、高収入を見込める企業以外は候補にしないということで、働き先が見つからなかった場合は就職を諦めてしまう人もいます。
【中国】人事のための大学情報まとめ
■海外就職の希望
・人気が増す日本就職
中国の大学生が日本で就職したいという意欲が高まってきているそうです。
その主な理由が、「日本企業の安定性と待遇」や「日本語能力の向上と日本文化への関心」です。
前述した通り、中国の学生は安定した職場で働くことに強い関心があり、また日本企業は福利厚生が充実している場合が多いことから、就職先としての魅力が高まっているのです。
さらに、漫画やアニメなど日本文化への関心も上がっており、日本で生活したいと考える人が増えているそうです。
・日本語レベル
今回お会いした学生のほとんどがJLPT(日本語能力試験) N2以上の日本語レベルを保有していました。
なぜ中国学生が日本語習得に長けているのかというと、同じく漢字をもとに文章が作られているということがあります。
そのため、他国の学生に比べて慣れるまでにそこまで時間がかかりません。
・学生の考え
ヒアリングした中国の学生が希望する業種は、主に金融や商社、コンサルなどで、安定かつ高収入を求める思惑が感じ取れました。
ここで採用担当者の方々が注意しておかなければいけない点があります。
それは「考え方の違い」です。
日本人の場合、内定通知後の辞退者は比較的少なく、連絡もきちんとすると思います。
しかし中国の学生は、自身にとってメリットがある内定がもらえたら、既にもらっていた内定を簡単に辞退してしまう傾向にあります。
例えば、外国人採用枠が1名分しかない時、入社意欲が高く信頼できそうという理由で他の外国人材を削って中国学生に内定通知を出していた場合でも、他に興味を持ったらすぐに辞退してしまうということです。
結果として、他国の優秀な人材も採れずに終わってしまう、というリスクを抱える可能性があります。
日本人と同じような感覚で準備を進めてしまうと、考え方のギャップを感じた時にはすでに取り返しのつかないフェーズに入っている恐れがあるため、じっくりと見極めることをおすすめします。
■現地就職イベント
未定ですが、今年も北京大学での就活イベント開催や、現地の学生と直接会って面接できる「弾丸ツアー」の同時開催も検討しています。
詳しく情報が決まり次第、別記事にて紹介します。
■中国で訪問した大学
今回訪問した大学を紹介します。
・浙江大学(Zhejiang Universit)
浙江大学は、中国で最も早く創立された四大学府の一つであり、歴史ある大規模校です。北京大学や清華大学に次ぐ、中国でも5本の指に入る名門校としてその名を広く知られています。
浙江省の省都である杭州市に位置し、中国最大の都市上海に近接しています。
対外交流も積極的に行っており、学校教育、科学研究、文化の方面においての発展に力をいれている大学です。
・浙江工商大学(Zhejiang Gongshang University)
浙江工商大学は、1911年創立の「杭州中等商業学堂」が前身で、1980年に「杭州商学院」、2004年に「浙江工商大学」に改称されました。
浙江省人民政府に属し教育部と商務部が共同運営する地方重点大学です。
・上海同済大学(Tongji University)
上海同済大学は、ドイツ人が上海に開いた同済独文医学・工学堂を前身とし理学、工学、医学、文学、法学、哲学、管理学、教育学などの学科を有する1907年創立された研究型総合大学。
開学以来、ドイツとの関係が深く、ドイツからの技術導入による中国のリニアモーターカーの代表的な開発拠点であり、構内には総延長1.5kmの実験線が敷設されています。
・復旦大学(Fudan University)
復旦大学は、1905年に創設された「復旦公学」が前身で、教育部と上海市との共同運営による支援を受けて、人文科学、社会科学、自然科学、技術科学、管理科学などを含む研究型総合大学に発展しました。
2011計画など指定大学であり多くの政府官僚のほか、金融、弁護士、公認会計士などの分野でも高い就職率を保っています。
また、2017年9月、「双一流」構築大学に選出されました。
・華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)
華中科技大学は、1952年設立の「華中工学院」、1907年設立の「上海徳文医学道」、1952年設立の「中南建築工程学校」の3校が起源で、中国湖北省武漢市にある総合大学です。
中国の大学ランキングで常に上位10校に入っています。
総合大学として理工科と医科は特に有名で、ハイレベルの国家重点実験室や研究センターを多数有しています。
・武漢大学(Wuhan University)
武漢大学の前身は1893年に創設された「自強学堂」で、現代中国で最も早い時期に設立された総合大学です。
教育部の直轄下に置かれる重点総合大学で、国家「985プロジェクト」と「211プロジェクト」に指定された重点大学の1つです。
また、2017年9月、「双一流」構築大学に選出さました。
・北京外国語大学(Beijing Foreign Studies University)
北京外国語大学は、1941年に「延安外国語学校」として設立され、1994年に現在の「北京外国語大学」となりました。
教育部直属の重点大学の一つで、中国の高等教育機関の中でも歴史が古く、語学教育で取り扱っている言語の種類が最も多い大学です。
2017年9月、「双一流」一流学科構築大学に選出されました。
・北京科技大学(University of Science and Technology Beijing)
北京科技大学は1952年に当時の化学工業部の直轄で「北京化工学院」として設立され、1998年9月から教育部の直轄大学になりました。
「国家のために先端科学技術分野の研究を高度化するハイレベルの化工人材を輩出する」ことを目標に掲げ、化工学系に高い専門性と強みを有する、理系学部を中心とした総合型の重点大学です。
・中国人民大学(Renmin University of China)
中国人民大学は中華人民共和国の建国後に設立された最初の大学で、抗日戦争中の1937年に開設された「陝北公学」を前身にとし、1950年に「中国人民大学」として正式に創立されました。
人文社会学科を主体とし、一部理工系学科を併設した総合大学で、全国重点大学の1校にもなっています。
また、2017年9月に「双一流」構築大学に選出されました。
・北京大学(Peking University)
北京大学は1898 年に北京帝国大学として創立された中国初の国立総合大学であり、当時の教育の最高権威でした。
1949年の中華人民共和国成立以来、文理両面の基礎教育研究に取り組む総合大学として発展しており、世界大学ランキングではアジアトップ3に選ばれています。
1998年、北京大学100周年の際に中国政府の支援のもと「世界一流大学創建計画」である国家「985プロジェクト」が開始されました。
【中国】人事のための大学情報まとめ
■まとめ
今回の訪問時の情報を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
日本人材の母数が減少し採用が難しくなってきましたが、世界に目を向けてみるとまだまだ出会えていない優秀な人材が豊富にいることがわかります。
そして、創業当時から培ってきた大学とのリレーションを活かし、今年も北京大学での就活イベントの開催や、企業様を現地にお連れする弾丸ツアーを検討しています。
中国人材へのご関心、また採用後から入社までの手続き方法など気になることがありましたら、お気軽にASIA to JAPANへお問い合わせください。
またスタッフとの個別相談会をご希望の場合はこちらからお問い合わせください。
<関連する記事>