技人国まるわかりガイド【第2回】許可要件と実務研修、採用担当者が知るべきこと

技人国の許可基準と、採用直後の実務研修はどこまで許容される?

対象読者:外国籍人材の採用を検討・推進する人事・採用担当者様

前回の記事は、技人国と特定技能の制度上の違いを整理しました。

今回は一歩進んで、「実際にこの候補者を技人国で採用できるか」を判断するために必要な許可基準と、多くの企業が悩む「採用直後の実務研修」の扱いについて、公的機関の公表資料に基づいて解説します。

1. 技人国の許可基準を正しく理解する

技人国での在留資格認定を得るには、活動内容の該当性に加えて、基準省令が定める上陸許可基準を満たす必要があります。人事担当者が押さえておくべき主要な基準は次の4つです。

用語の確認:技人国に該当する活動は「自然科学の分野」(理学・工学・農学・医学・薬学など)、「人文科学の分野」(法律学・経済学・社会学・経営学など)、「国際業務」(通訳・翻訳・語学指導・海外取引・デザインなど、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を要する業務)の3つに分かれます。

以下の学歴・実務経験要件は、このうち「自然科学・人文科学分野」(=エンジニアや経理・法務等、専門知識を要する業務全般)に適用される基準です。 3類型の詳細は第1回で解説しています。

基準項目 内容 誰に適用されるか
学歴要件 従事する業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して大学等を卒業していること 自然科学・人文科学分野の全員が対象。これを満たせば新卒・実務経験ゼロでも可
実務経験要件 (学歴の代替) 10年以上の実務経験(専攻期間を含む) 上記の学歴要件を満たさない人のみ。学歴要件を満たせば不要
実務経験要件 (国際業務) 原則3年以上の実務経験 通訳・翻訳・海外取引等の国際業務に従事する人のみ。大卒者が翻訳・通訳・語学指導を行う場合は不要
語学要件 (CEFR B2相当) JLPT N2以上、BJT400点以上、本邦大学卒業 等のいずれか 通訳・翻訳等、言語能力そのものを用いる対人業務に従事する人のみ。エンジニア・設計等には適用されない
報酬要件 日本人が従事する場合と同等額以上の報酬 技人国で従事する全員に共通の要件

出典:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について/翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について(出入国在留管理庁)

1-1. 学歴要件:専攻科目と業務内容の関連性(新卒採用でもOK

自然科学・人文科学分野(理学・工学・農学・医学・薬学、または法律学・経済学・社会学・経営学等に関する業務。詳しくは第1回参照)の業務に従事する場合、次の①〜③のいずれか一つを満たせば足ります。すべてを満たす必要はありません。

  • ① 従事する業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して大学等を卒業していること
  • ② 10年以上の実務経験を有すること(自然科学・人文科学分野の業務の場合。専攻期間を含む)
  • ③ 従事する業務に関連する業務について3年以上の実務経験があること(国際業務の場合)

実務上のポイント:繰り返しにはなりますが、①の学歴要件を満たしていれば、新卒者・実務未経験者でも技人国の学歴・職歴要件はクリアできます。

②の「10年以上の実務経験」は、専攻と業務の関連性がない、あるいは大学等を卒業していない人が学歴要件の代わりに満たすための基準であり、学歴要件を満たす人にまで実務経験が求められるわけではありません。

大学(国内外を問わない)卒業者については、専攻科目と業務内容の関連性は比較的柔軟に判断される一方、専修学校卒業者の場合は「専門士」「高度専門士」の称号が前提となるなど、学歴の種類によって基準に差がある点に注意が必要です。

1-2. 国際業務の実務経験要件

通訳・翻訳、語学指導、海外取引、デザイン等の「国際業務」に従事する場合は、当該業務に関連する実務経験が原則3年以上必要です。ただし、大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合は、この実務経験要件が免除されます。

1-3. 言語能力要件(対人業務の場合のみ)

この語学要件が課されるのは、通訳・翻訳・語学指導など「言語能力そのものを用いる対人業務」に従事する場合に限られます。エンジニア、経理、設計、法務など、専攻分野の専門知識を活かす業務に従事する場合は、この語学要件の対象にはなりません。

翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化についてでは、主に言語能力を用いる対人業務に従事する場合、申請人がCEFR・B2相当の言語能力を有していることが前提とされています。

日本語であれば、JLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、本邦の大学卒業などが、この水準を満たす基準として示されています。

出典:翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について(出入国在留管理庁)

1-4. 報酬要件:日本人と同等額以上

技人国の在留資格では、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。通勤手当や住宅手当等の実費弁償的な性格を持つ手当は報酬に含まれません。同時期に採用された日本人従業員と比較して報酬額が低い場合、合理的な理由がない限り不許可となる可能性があります。

 

2. 「実務研修」の取り扱い——採用直後の現場研修はどこまで許容されるか

多くの企業では、新卒・中途を問わず採用直後に一定の実務研修期間を設けています。技人国の在留資格者についても、この研修期間中は本来の専門業務に該当しない業務(工場のライン作業、店舗での接客・販売等)に従事することがありますが、これは一定の条件下で許容されています。

2:実務研修の許容可否は在留期間全体に占める割合で判断される(出入国在留管理庁公表資料をもとに作成)

  • 日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる研修の一環であること
  • 在留期間中の活動を全体として捉えた場合に、研修期間が在留期間の大半を占めないこと
  • 採用から1年間を超えて実務研修に従事する場合は、研修計画の提出が求められ、その合理性が審査される

2-1. 「在留期間中」とはどの期間を指すか

ここでいう「在留期間中」とは、1回の許可で決定される在留期間そのものではなく、雇用契約や研修計画等から想定される、技人国で在留する期間全体を意味します。したがって、長期雇用を前提とした社員であれば1年間の在留期間すべてを研修に充てることが許容される場合がある一方、雇用契約期間が短く更新の予定もない場合に、その大半を研修に充てるような計画は認められません。

実務上の注意:雇用契約期間が3年間のみで契約更新も予定されていない場合、採用から2年間実務研修を行うといった申請は認められません。

研修計画を立てる際は、雇用形態(無期雇用か有期雇用か)と研修期間の長さのバランスを必ず確認してください。

出典:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について(出入国在留管理庁)

まとめ:第2回のポイント

  • 技人国の許可基準は、学歴・実務経験・語学能力・報酬の4点が関係するが、すべてを同時に満たす必要はない
  • 専攻と業務内容に関連性のある学歴があれば、新卒・実務未経験でも学歴・職歴要件はクリアできる(実務経験10年は学歴要件の代替ルート)
  • 語学要件(CEFR B2相当)は通訳・翻訳等の言語能力を用いる対人業務のみに課される要件で、エンジニア等には適用されない
  • 報酬要件(日本人と同等額以上)だけは、職種を問わず全員に共通して求められる
  • 採用直後の実務研修は、日本人と同様の内容であり、かつ在留期間全体に占める割合が過大でなければ許容される
  • 1年を超える研修には研修計画の提出が必要。雇用契約期間とのバランスに注意

次回(最終回)予告:「2026年の厳格化動向と、失敗しないための業種別チェックリスト」——製造業・建設業での審査厳格化、派遣形態の取扱変更など最新動向と、実践的なチェックリストをお届けします。

参考資料

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(出入国在留管理庁)

翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について(出入国在留管理庁)

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について(出入国在留管理庁)