【セミナーレポート】建設業における技人国採用の正しい理解 〜外国籍技術人材の定着につながる職務設計とは〜

2026年8月19日、日本経済新聞社とASIA to JAPANは、セミナー「建設業における技人国採用の正しい理解」を開催しました。講師には、弁護士法人Global HR Strategy代表の杉田昌平氏を迎え、建設業における外国人雇用の現状から、在留資格と業務の関係、採用後の定着を支える受け入れ体制まで解説いただきました。 

外国人材の採用では、「仕事と在留資格のペア」を整えることが出発点になります。採用した人材にどのような仕事を任せ、どのようなキャリアを歩んでもらうのか。本記事では、当日の講演と質疑応答をもとに、制度上の要件と本人・受け入れ側双方の期待をつなぐ職務設計のポイントを再構成して紹介します。
※本記事は、セミナーの講演および質疑応答の内容をもとに再構成したものであり、一般的な情報提供を目的としています。個別の事案に対する法的助言や、在留資格の取得・更新等を保証するものではありません。在留資格や各種制度・法令に関する記述は講演時点の情報に基づいており、その後の法改正や運用変更等により、内容が変わる場合があります。具体的な採用・配置・申請等については、業務内容や本人の経歴等に応じた確認が必要です。出入国在留管理庁等の最新の公表情報をご確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

建設業に広がる外国人雇用と、これからの採用環境

外国人雇用を、すでに身近な採用の選択肢として捉える

講演資料によると、2025年末の在留外国人数は約412万人、2025年10月末の外国人労働者数は約257万人です。とりわけ大きな変化が、2022年以降、在留外国人数が毎年30万人以上増えていることです。外国人雇用を考えるうえでは、人数の規模に加えて、その増え方にも目を向ける必要があります。 

ここでいう増加数は、入国者の数そのものではなく、帰国なども含めた増減の結果です。毎年、県庁所在地に相当する規模の人口が増えていると考えると、その変化の大きさが分かります。長い期間の平均だけではなく、直近の数年間に起きている受け入れ規模の変化を見ることが重要です。 

円安を背景に「日本は選ばれない」という見方もありますが、講演で扱った統計では、円安が進んだ2022年以降も在留外国人数は増加しています。技能実習や特定技能だけでなく、技術・人文知識・国際業務の在留者数も増えています。採用環境は印象だけで判断せず、受け入れ人数とその内訳から捉える必要があります。 

建設業では約20万人が働き、在留資格も役割も多様に

建設業の外国人労働者は、講演資料に示された概数で約20万人です。そのうち技能実習生は約11万人、特定技能外国人は約5万人です。残る約4万人には、技人国などの高度人材に加え、永住者など身分に基づく在留資格で働く人が含まれます。約4万人すべてが技人国の人数というわけではなく、複数の在留資格と役割によって建設業が支えられています。 

杉田氏が訪問先の建設協力会で聞いたのは、型枠・鉄筋などの若い世代の職人には外国人が多いという話でした。業界全体の人数だけでは見えない変化が、職種や世代ごとに生じていることを示す一例です。自社が必要とする仕事や人材層に目を向けて、採用環境を捉えることも重要になります。 

人手不足の背景を、人口だけでなく就業者数から見る

建設業の就業者数は、講演で取り上げた国土交通省の資料では、1997年の約685万人から2024年の約477万人へ減少しています。ここで区別して考えたいのが、15〜64歳の生産年齢人口と、実際に働く人を表す就業者数です。生産年齢人口が減るなかでも、日本全体の就業者数は女性や高齢者の就業参加によって支えられてきました。 

杉田氏は、就業参加の拡大だけでは人数を維持できなくなったとき、採用競争がさらに厳しくなる可能性を指摘しています。日本全体の就業者数が維持されてきた間にも、建設業の担い手は減っています。目の前の欠員を埋めるだけでなく、今後の採用環境を見据えて人材確保に取り組む必要があります。 

技人国採用で問われるのは、働く場所ではなく仕事内容

技能者と技術者の仕事を分けて考える

建設業の外国人雇用では、実際の施工を担う「技能者」と、設計・施工管理などを担う「技術者」の仕事を分けて考える必要があります。同じ建設現場で働いていても、行う業務によって対応する在留資格は異なります。 

土木作業などの施工を担う技能者には、技能実習や特定技能などの在留資格があります。一方、「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国に対応する業務には、建築設計、設計監理、建築積算、施工管理などがあります。施工管理であれば、施工計画を作り、その計画に沿った進捗を確認し、現場の安全衛生を確保するといった仕事です。 

重要なのは、現場に立ち入ること自体が問題になるのではないという点です。「現場で働くか、オフィスで働くか」という場所の区分ではなく、そこで何の仕事に従事するのかを見る必要があります。 

「仕事と在留資格のペア」を崩さない職務設計

在留資格は、原則として一人につき一つです。外国人は、その在留資格で認められた範囲で活動します。技人国と技能実習を同時に持ち、施工管理と実際の施工作業をそれぞれの資格で担う、といった働き方はできません。 

特に注意したいのは、設計や施工管理に加え、自社で施工部隊を持つ企業です。電気工事などでは、技術者の仕事と技能者の仕事が近接する場合があります。施工管理として採用した人が、実際には施工を担うようになっていないか。職種名だけで整理せず、現場での業務実態まで確認する必要があります。 

職務設計で大切なのは、任せる業務を具体化し、その内容と在留資格が対応している状態を保つことです。人材を採用する段階だけでなく、実際の配属先でも、技術者の仕事と技能者の仕事の線引きが崩れないようにする必要があります。 

採用前に確認したい、経歴・業務・手続きのつながり

在留資格の有無に加え、認められる業務の範囲を確認する

在留資格は、就労制限のないもの、認められた範囲で就労できるもの、原則として就労できないものに大別できます。技人国は、認められた範囲で就労できる在留資格です。そのため、在留資格を持っているかどうかだけでなく、任せる仕事がその範囲に入っているかという確認が必要になります。 

適正な受け入れを進めるうえでも、仕事内容と在留資格の対応は欠かせません。講演で取り上げた外国人の受け入れに関する総合的対応策でも、認められた活動内容に該当しない業務への従事が課題とされています。採用や申請の段階で整えた内容を、実際の業務にも反映することが基本となります。 

大学等で学んだ内容と、実務で使う知識を結びつける

技人国で重要なのは、大学等で学習した内容と、仕事で使う技術・知識との関連性です。例えば、工学を学んだ人が、その素養を用いて施工計画を作成し、計画に沿って工事が進んでいるかを確認する仕事では、学んだ内容と実務で使う知識が結びつきます。 

「大学を卒業しているから、どのような仕事でもよい」と考えるのではなく、採用候補者の経歴と、自社で任せる業務の両方を確認することが重要です。学歴の有無だけでなく、何を学び、その知識をどの仕事で使うのかまで整理する必要があります。 

海外採用と国内採用で異なる手続き

採用に伴う手続きは、海外から呼び寄せる場合と、日本国内の留学生などを採用する場合で異なります。海外採用では、取得できる在留資格を検討し、雇用契約の締結や必要書類の収集を行ったうえで、在留資格認定証明書の交付を申請します。その後、現地の日本大使館・領事館で査証を申請し、入国する流れです。 

国内の留学生を採用する場合は、在留資格の取得可能性を確認し、必要書類をそろえて在留資格変更許可申請を行います。留学から技人国などの在留資格へ変更し、新しい在留カードを受け取って就労につなげます。どちらの場合も、手続きの前提となるのは、任せる仕事と候補者の経歴の確認です。 

まず仕事を特定し、対応する在留資格と人材を考える

日本企業に多いメンバーシップ型の採用では、まず会社に合う人を採用し、その後に配属を考えます。一方、ジョブ型は、先に仕事があり、その仕事を担う人を採用する考え方です。同じ「人を採用する」という行為でも、仕事を決める順序が異なります。 

外国人採用では、仕事を特定しなければ、対応する在留資格も判断できません。そのため、「社内でどのような仕事をする人が必要か」を整理し、その仕事に対応する在留資格、さらにその資格を取得できる人材を検討する順序が重要になります。仕事を起点に考える必要がある点で、外国人採用はジョブ型の考え方になじみやすいといえます。 

職務を明確にすることと、キャリアを狭めることは違う

施工管理から他部門への異動はできるのか

施工管理として採用した人材に、将来は経営管理などの部門も経験してもらい、会社全体を担う人材に育ってほしい。こうした育成を考える際にも、在留資格で認められる業務の範囲を確認することが基本です。技術・人文知識・国際業務は一つの在留資格であり、その範囲内でのジョブローテーションは可能です。 

杉田氏が質疑応答で示したのは、理工系の素養を持つ人材が、施工管理から財務や法人営業などへ業務を広げる例です。採用時に施工管理を担当していたとしても、その職種に将来のキャリアを固定する必要はありません。 

ただし、本人が学んできた内容と新たな業務の関係によっては、在留資格の更新で問題となる場合があります。異動後の業務が技人国で認められる範囲に入っているか、本人の経歴との関係はどうかを確認しながら、成長の機会を設計することが大切です。 

社内で成長する道筋を、言葉にして伝える

キャリアの説明は、定着にも関わります。日本企業では、同じ会社の中で複数の部門を経験し、その会社の業務に詳しい人材を育てるキャリアが多く見られます。一方、ジョブ型のキャリアでは、同じ専門領域の仕事を続けながら会社を変える傾向があります。この違いは、入社後の成長や処遇についての受け止め方にも関わります。 

そのような前提を持つ人には、転職しなければ給与が上がらないという認識があるかもしれません。同じ会社で働き続けながら昇進し、給与が上がる仕組みがあっても、説明されなければ伝わらないことがあります。 

自社ではどのような成長の機会があり、どのように昇進や処遇につながるのか。日本人社員には当然と思えることも含め、あらかじめ言葉にして伝えることが重要です。社内でキャリアを築く道筋を共有することが、本人の将来像と会社の育成方針をつなぎます。 

定着を支えるのは、外国籍社員と受け入れ側の両方への準備

入社後の困りごとには、言葉が通じにくいことだけでなく、文化や価値観の違いから問題を理解してもらえないこともあります。講演で用いられた在留外国人への調査でも、相談先との意思疎通や孤独感が課題として表れています。業務を教えるだけでなく、困りごとを共有し、認識の違いを埋められる環境を整えることが必要です。 

孤立を防ぎ、経験のある人が支えられる環境をつくる

孤立を防ぐ方法の一つが、複数名での採用です。一人だけの場合には、本人が孤立しやすいだけでなく、受け入れ側も、その人の個性なのか文化的な違いなのかを判断しにくいことがあります。複数名の採用は、受け入れ側がそうした違いを理解する助けにもなります。 

また、外国人と一緒に働いた経験のある人がいる部門への配属も、受け入れを進める方法の一つです。相手の前提を想像しながらコミュニケーションを取れる人がいることは、日々の認識のずれを埋める助けになります。 

生活支援を、同僚の善意による追加業務にしない

生活面では、給与口座の開設など、日本人にとっては身近な手続きでも、来日したばかりの人が一人で進めるのは難しい場合があります。こうした支援を誰が担うかは、採用前から考えておきたい点です。 

生活支援や、言葉の違いに配慮した指導は、通常の業務に加えて時間と手間を要します。近くにいる同僚に任せたままにし、その負担や貢献を会社が評価しなければ、受け入れ側の不満につながりかねません。 

受け入れを支える社員の貢献は、会社として認めることが重要です。例えば、育成手当のような形で、その役割を評価することも一つの方法です。外国籍社員への支援だけでなく、支援を担う側にも目を向ける必要があります。 

入社前の情報提供と定期面談で、期待と実態の差を埋める

入社前には、仕事内容に加え、住む場所や生活環境について、できるだけ具体的な情報を伝えることが重要です。期待が高すぎると入社後の実態との差が生まれ、反対に仕事や暮らしのイメージが十分に伝わらなければ、入社の判断そのものにも影響します。 

写真や動画も活用し、言葉だけでは伝わりにくい仕事や暮らしの様子を共有することが有効です。よい面だけを強調するのではなく、本人が実際の環境を理解したうえで入社できる状態を目指します。 

それでも、働き始めてから初めて分かることや、雇用慣行の違いによるずれは残ります。定期的な面談で本人と会社の認識を確かめ、ずれを埋めていくことが、継続的な支援につながります。 

専任チームの設置は、採用計画と社内の状況に合わせて考える

サポートチームを先に立ち上げるか、採用人数の増加に合わせて段階的に整えるか。一律の正解はありません。自社の中長期的な採用計画や、受け入れに関わる社員の状況を踏まえて考える必要があります。 

中長期的に大規模な採用を計画している場合は、専任部署を設ける方法があります。一方、少人数から始める段階では、外国人と働くことに前向きな社員がいる部署や支社で、経験を積みながら受け入れを進めることもできます。採用の規模や進め方に合った体制を選ぶことが大切です。 

どの体制でも共通して大切なのは、受け入れに関わる日本人社員に、今後の採用方針と、サポートする役割への期待を伝えることです。支援を会社として評価していると示すことで、受け入れに関わる社員が納得して協力しやすい環境を整えられます。 

採用後の活躍まで見据えた職務設計へ

今回のセミナーでは、建設業の外国人材採用に必要な制度理解から、入社後のキャリアや受け入れ体制までを取り上げました。在留資格の取得をゴールにせず、採用後の活躍までを見据えることが重要です。 

任せる業務と在留資格を対応させ、その範囲で成長の機会を設計することが、採用後の活躍につながります。さらに、本人への情報提供と継続的な対話に加えて、支える社員の役割も評価する。こうした準備を積み重ねることが、採用した人材が長く働ける環境づくりにつながります。 

セミナー終了後には、参加者同士のネットワーキングも行いました。 

※本記事は、セミナーの講演および質疑応答の内容をもとに再構成したものであり、一般的な情報提供を目的としています。個別の事案に対する法的助言や、在留資格の取得・更新等を保証するものではありません。在留資格や各種制度・法令に関する記述は講演時点の情報に基づいており、その後の法改正や運用変更等により、内容が変わる場合があります。具体的な採用・配置・申請等については、業務内容や本人の経歴等に応じた確認が必要です。出入国在留管理庁等の最新の公表情報をご確認のうえ、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。

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