留学しないと日本での就職は無理だと思っていましたが、そうではありませんでした。
中学生の頃から国際交流に憧れていたのですが、なかなか留学の一歩が踏み出せずにいて、故郷の武漢で大学院まで進みました。修士課程で先輩たちの就職体験記を見て、中国の電子科学技術の目覚しい発展に驚きながら、心に抱いていた夢を思い出しました。
日本に留学したこともなく、この先、日本に行くチャンスはあるのだろうかと考えました。そして、日本の技術はアジアでトップクラスですし、私は趣味で日本語を勉強してきたので、日本で就職することを思いつきました。
少子高齢化が進み、労働力が不足している日本では、外国人労働者を受け入れる企業も多いと思いますが、難しいところは、どうやって日本で就職活動をするかということです。中国の人材紹介会社では、選択肢が狭いと思いました。
中国の大学の就職説明会では、日本企業は数社参加しますが、内陸部の大学へはほとんど来てくれません。
父は、「それなら、海外に行ってもう一つの修士号を取ったらどうか」とアドバイスしてくれました。でも、私は時間を無駄にしたくなかったので、父のアドバイスに従わず、別の道を探していました。
そして、ついに見つけたのです。それは、ASIA to JAPANが主催する海外の優秀な人材の日本での就職を支援する『FAST OFFER International』というプログラムです。 応募後、さまざまな面談、選考を経て、嬉しいことに日本での面接会に参加することが決まりました。
中国企業の面接では、技術力が細かくチェックされますが、日本企業は、学生のポテンシャルを大事にしているような気がしました。例えば、私の面接では、専攻に関する質問だけでなく、趣味や日常生活などさまざまな話題があり、会社の雰囲気にマッチしているかどうかを確認されました。また、留学生を対象とした面接であったため、難しい日本語は使わず、カジュアルな面談のような感じでした。おかげで、落ち着いて自分をアピールすることができました。
2日間の最後には、日本の大手機械メーカーから内定をもらい、そこに就職することにしました。個人的な事情もあり、卒業後には少しお休みをいただき、2020年4月に入社することになりました。すでに2019年の10月から日本で新生活を始めている仲間もいるので、みんなと日本で再会するのを楽しみにしております。
研究テーマはPUFを使って、暗号を作ることです。
PUF(Physically Unclonable Function)は電子回路の誤差を利用した暗号の作り方です。同じ回路を持つ半導体の、製造工程によるわずかな差異をチップの“指紋”として利用し、クローン出来ない暗号を作りました。3種のPUFを作る課題を4人のチームで行いました。
私は回路の時間差を利用したArbiter PUFを担当しました。FPGA上に全く同じ回路を二つ作って、それぞれの中にデータが通れるルートを264個ずつにしました。64bitのルート選択信号を使い、ルートを変えながら、二つの回路に同時にチャレンジを与え、レスポンスが返す順番をアービタ回路で判断し、0と1で構成した暗号を作ることができました。
作り上げた暗号は、同じチップでなければ再現できないため、複製の不可能性が高いです。