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日本で働く新卒外国人学生の「住民登録&口座開設」をサポートしてわかったこと

目次

外国人材を採用してから実際に入社するまでの間、企業にはさまざまな対応が発生します。

その一つが、日本での生活に対するサポート。

住民登録や銀行口座の開設、携帯電話の契約といった手続きが必要です。

本記事では、初めて外国人材の生活サポートを行った筆者がその実態をレポートします。

具体的には、岡山県企業に就職する2人の外国人学生の住民登録と住民票取得、銀行口座開設のお手伝いをしました。

筆者はワーキングホリデーでオーストラリアに滞在したことがあり、英語がほぼできない状態で現地の口座開設をした経験があります。

今回サポートした学生たちは日本語で面接ができるレベルの日本語力があるわけで、その気になれば本人が自力でできるのではと思っていたのですが……。

実際に外国人学生たちと役所や銀行を回ってみると、日本人の目にはなかなか映らない「見えないハードル」があることが分かりました。

住民登録の手続きは全て日本語 

今回サポートをするのは、岡山県のA社に就職するインド人とタイ人の学生です。

初日は役所で住民登録を行って住民票を取得し、2日目に口座開設を行います。

大きなスーツケースを持って移動する様子

まずは羽田空港から岡山駅に移動してきた2人と合流し、大きなスーツケースを預けるべくA社付近のホテルへ。

その後、バスで役所へ向かう流れです。

岡山駅からホテルの最寄駅までの電車は1時間に1〜2本で、所要時間は1時間15分。

ホテルから役所に向かうバスの待ち時間は1時間で、移動は30分と、とにかく移動に時間がかかります。

役所に到着した時点で、学生たちが日本に到着してからの移動時間は約8時間。

その手前でタイ人学生は5時間、インド人学生は12時間のフライトを経ているわけで、2人の顔にも疲れが見えます。

ようやく到着した役所で住民登録の手続きをお願いしたところ、差し出された記入用紙は全て日本語。

当然、記入時も日本語が求められます。

2人は簡単な日本語の会話ができ、ゆっくり簡単な言葉で話せばこちらの言っていることも理解できるレベルの日本語力がありますが、読み書きはまた別問題。

タイ人学生は読み書きに抵抗はないようで、なんとなく小学校低学年レベルの漢字も読めていた印象ですが、インド人学生は読み書きに苦手意識があるようでした。

冒頭で述べた「日本語で面接ができるなら各種手続きも自力でできるのでは?」という発想は「英語の読み書きはできるけど、英会話はできない日本人」のイメージに基づくものであり、「読み書きはできないけど話せる」人の存在に想像が及んでいなかったことに気付かされます。

日本語を”書く”ことは難易度が非常に高い


今回は筆者が代筆を行いましたが、早速「ふりがな」に手が止まってしまいました。

日本語にない発音をふりがなに変換する必要があり、2人に何度かフルネームを発音してもらって記入したものの、正直手応えはありません。

また、住民票発行の際は「何を記載するか」を聞かれますが、日本人の筆者でも何が必要なのかよくわかりません。

今回は「全部記載する」方針で乗り切りましたが、日本の行政制度を全く知らない外国人材にとっては意味不明だろうなと、言語以外の面でもサポートの必要性を感じました。

手続きの最後には「生活の手引き」と書かれた冊子や地域情報がまとまったパンフレットなどをいただきましたが、中身は全て日本語。

東京や大阪などの都市部では多言語化が進みつつありますが、地方ではまだまだ日本語ができることが前提なのだと実感します。

一方、コンビニでは「どこの国の人? 日本語大丈夫か?」「だいじょうぶだとおもいます」「おーバッチリやな!」と、地元のおじさんとのちょっとした交流も。

こういったコミュニケーションは地方の良い面であり、面倒見の良い地元の皆さんによって日常生活の困りごとはある程度カバーできるのかもなと感じた初日でした。

「外国人の口座開設をするのは数年ぶり」

ホテルで朝ごはんを食べてから、口座開設のため郵便局に向かいます。道すがら朝ごはんのビュッフェで何がおいしかったか聞くと「名前がわからない」と学生たち。

そりゃそうかと目から鱗でした。とはいえおいしく食べられたようで、わからないながらも日本の朝食を満喫したようで一安心です。

さて、2人が開設するゆうちょ口座の場合は、口座開設にあたって必要な情報をWebフォームから事前入力することができます。

作成した資料を印刷して持参すれば、現地で書く必要がありません。フォームは多言語に対応しており、英語はもちろんタイ語もありました。

ところが、フォームに入力する学生からは戸惑いの声も。

例えば、インド人学生の名前は「Sai Baba」のように、ファーストネームが2語で成り立っています。

ところが入力フォームは姓名の二つに分かれており、スペースを入れることはできません。

ひとまずスペースの入力は諦め、窓口で事情を説明することに。

タイ人学生は全て自力で入力でき、困ったことは「特になかった」と言っていましたが、作成した資料を印刷して窓口に行ったところ、雇用形態のチェックが誤っていたり、住所欄に会社の住所を入れていたりと、入力内容には複数の不備がありました。

窓口での修正は手書き。読み書きが苦手なインド人学生の代筆をしようとすると、「代筆っていいんだっけ?」と局員さん。

代筆対応が問題ないか確認が発生するなど、局員の皆さんの戸惑いが伝わってきます。

後で聞いたところ、今回お世話になった郵便局で外国人の口座開設をするのは数年ぶりとのこと。

郵便局にとっては相当のイレギュラー対応であり、空いていて待ち時間はゼロだったにも関わらず、全ての手続きを終えるまでに2時間もかかりました。

スーパーマーケットの商品に英語表記はほぼなし

その後は当面の生活用品の買い出しのため、2人が暮らす寮の最寄りのスーパーマーケットに立ち寄りました。

一緒に売り場を回り、洗剤やゴミ袋などの生活に必要なアイテムがどこにあるのか説明しましたが、商品も値札も、そこに記載されているのはほぼ日本語。

店内を見回しながら必要なものを探す

スマホを片手に商品を凝視する2人の様子を見ながら、手に取った商品が洗濯洗剤なのか柔軟剤なのか、はたまた食器用洗剤なのか、正しく理解するのが一苦労であろうことは想像に難くありません。

実際、タイ人学生はキッチンペーパーをトイレットペーパーと間違えてカゴに入れていました。

「料理が好き」だというタイ人学生が食品やフライパンなど調理器具を買い込むのに対し、インド人学生の買い物はごくわずか。

理由を尋ねると「就職先ですでに働いているインド人の先輩からネットショッピングすればいいと聞いた」とのこと。

「外国人材採用は社内の外国人の数が増えるほど、横の情報交換が進み、生活のサポートは楽になっていく」と聞いたことがありますが、まさにそれを実感しました。

日本人の目に映らない、外国人材の生きにくさ

買い出し後、2人を企業へ受け渡して筆者の役割は終了。

まず思ったのは、「本人が一人で対応するのは無理」ということ。

外国人学生たちと一緒に過ごしたことで、日本語でのやりとり、地方特有の交通事情、日本独自の制度など、日本人の目には映らないハードルが複数あることが分かりました。

地方は本当に日本語を前提とした社会なのだと痛感します。

英語対応していたのはホテルだけで、役所にも郵便局にも、英語が話せる人はもちろん、英語表記も皆無といって過言ではないほど見あたりませんでした。

たとえ日本語が堪能だったとしても、「マイナンバーと口座情報を紐づけるか」「住民票に何を記載するか」といった日本の制度に関する質問に答えるのは難しいだろうと思います。

また、移動の問題もあります。

Googleマップで調べながら自力で移動することはできても、駅によって交通系ICが使えなかったり無人駅だったりすることもあり、一人で乗り降りするのは困惑しそうです。

バス乗り場を探すのにも苦労すると思います。(筆者自身が少し苦戦しました)

車社会の地方では公共交通機関の本数が少なく、乗り過ごした時のダメージも見過ごせません。

タクシーを利用するにしても、今回の地域は配車アプリのエリア外。

日本に来たばかりの外国人学生は電話番号を持っておらず、電話でタクシーを呼ぶこともできません。

仮に電話ができたとしても、日本語でタクシーをお願いする難易度は相当高いと思います。

タクシー運転手は高齢かつ訛りが強い人も多く、日本人の筆者でも何を言っているかわからない場面がありました。

買い出し後、学生たちに「役所と口座開設の手続き、自分一人でできたと思う?」と聞いてみると「無理です」とインド人学生。

日本語の読み書きに自信のあるタイ人学生は「たぶん大丈夫だった」と言っていましたが、口座開設の事前入力フォームの間違え方を見るに、あまり大丈夫ではないのでは……というのが筆者の正直な感想です。

一方、外国人学生たちのたくましさも感じました。

「日本での生活で不安なことは?」という質問に対し、「特にない」と2人。

特にインド人学生はコンビニで納豆巻きを買っており、日本文化への順応性にびっくりしました。

最初の生活の基盤さえ整えてしまえば、その後はきっとたくましくやっていくのだろうと感じます。

逆にいえば、だからこそ最初のサポートが重要です。

企業側が最初にしっかり環境を整え、生活基盤を整えてこそ、学生たちの適応力が生きてくるのではないでしょうか。

来日サポートでスムーズなオンボーディングを実現

空港への送迎の様子

ASIAtoJAPANでは、外国人材の採用後、入社までに発生する各種手配、手続き、生活準備等の業務の代行サービスを提供しています。

VISA申請・取得から、空港から滞在先への引率・同行、住民登録や口座開設、生活用品の買い出しなどによる日本での生活立ち上げサポートにより、企業の負担を減らし、外国人材が安心して新生活をスタートできる状態を整えます。

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筆者

天野夏海

2009年、人材系企業に新卒入社。求人広告営業、派遣コーディネーター、編集者を経験。2015年末に退職し、ワーキングホリデーで1年間オーストラリア・シドニーへ。帰国後、2017年より日本国内でフリーランスとして活動中。女性のキャリア、転職、人事など、主にHR領域の取材・執筆を行う

X(旧Twitter):https://x.com/natsumiamano96?lang=ja

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