【オフライン交流会レポート】
25年4月開催「インドエンジニア市場との関わり方」
世界有数のIT人材輩出国であるインドにおいて、ASIA to JAPANは毎年多くのインド人理系学生に向け就職支援を行い、日本企業で働くきっかけを提供しています。
2025年1月には、インド国内で豊富な実績を持つ現地法人の日本語教育事業の事業譲渡を受け、「AtoJ HIRAMEKI」として本格的に日本語教育の支援をスタート。日本での就職を目指す学生にとって、より質の高い学習環境を整える取り組みを進めています。
こうした取り組みの一環として、今後インド人材採用を検討する日本企業を対象に、オフラインでの交流会を2025年4月22日に開催しました。
本記事では、当日行われたトークセッションの様子を一部ご紹介します。
■人事交流会の概要
●テーマ
「インドエンジニア市場との関わり方」
●登壇者
第一生命テクノクロス株式会社(以下:DLTX)
DX推進本部 DX変革推進部 統括マネジャー 岩元慎弥 様
株式会社ASIA to JAPAN(以下:ASIA to JAPAN)
代表取締役 三瓶雅人
AtoJ HIRAMEKI(以下:HIRAMEKI)
代表 Channagiri Shruti
●モデレーター
株式会社ASIA to JAPAN
代表取締役 三瓶雅人
■世界が注目するインド人材の魅力と活躍状況
・インドエンジニア人材の日本語教育
三瓶:Shruti先生、今日はよろしくお願いします。
まず、先生が日本語を学び始めたのはいつ頃でしたか?
Shruti:よろしくお願いいたします。
私は大学の頃から勉強し始めたので、約15年前になります。
三瓶:その時と比べて、インド国内で日本語を学ぶ人の数に変化はありますか?
Shruti:当時は、日本で働く機会が今と比べてほとんどなかったので、1クラス30人のみと学習者はほとんどいませんでした。
ただ、今は日本就職の機会が増えている関係で日本語を学ぶことがブームになっています。
そのため、日本語学習に励む学生の数は年々増加傾向にあり、45人規模のクラスが3つあります。
今後はさらに人数が増加すると予想しています。
三瓶:今お話しにもあった通り、近年外国人の日本就職の機会が増えてきているのですが、インドの方が日本語を学ぶ理由で一番多いのは何でしょうか?
Shruti:最近「日本のアニメをオリジナルでみるため」授業に通う若い学生が増えています。
ただ、一番多い理由は「東アジアでの就職」で、インドでは特に日本の人気が高まってきています。
その要因は、欧米諸国での就職が困難になってきたことです。
コロナ禍以降からVISA取得がとても難しくなってきており、人気がある欧米での就職を断念し、その他の行き先を模索する人たちがこぞって、受入れ間口が広く開かれ、かつ最も先進的な日本に注目しているのです。
・インドの大学生
三瓶:現在、少子化が進み特に理系採用が難しいと言われる日本では、文理合わせても大学生は約400万人である一方で、インドでは約4,055万人と10倍以上の学生が日々研鑽し学問に勤しんでいます。
ただ、人数が多い影響で40%近くの学生が国内就職できていないという問題が発生しているため、いわばインド人材は狙い目だと言えます。
理系人材だけに絞った場合、日本だと学生全体のうち20.7%ほどしか存在せず、採用競争が激化しています。
また残念なことに年々母数が減少傾向にありますが、さらに少子化は進み、今後も減り続けることがわかっています。
「では、日本語や日本文化を知っている留学生を狙えば?」と思うかもしれませんが、こちらも理系に絞ると留学生全体の20%未満と困難を極めます。
では、インドはどうかというと、そもそも大学生が日本の10倍以上いるうえ、そのうち理系割合は全体の約34%と、日本よりはるかに多くの理系学生がいることがわかります。
グローバル市場における存在感でいえば、インド人材の人口は世界最大の14.2億人であり、2030年には世界の労働力人口の20%以上がインド人になると予想されています。
ちなみに、今注目を集めるAI関連人材においては60万人と、日本全国の一学年を合わせた数とだいたい同じ人数がいるので要注目です。
・インド人材の採用ポイント
三瓶:ASIA to JAPANの事例をもとに、注意すべき4つの採用ポイントを紹介します。
一つ目は「中途採用の代替」です。
最近は転職する人が増えてきましたが、いまだに日本人の中途採用は難しいものがあります。
インド人材はインターン経験があったり、企業と共同研究をしている方など、磨けばすぐに戦力となりうる人材が豊富にいます。
プレースメントという独自の採用システムがあるインド最高峰のインド工科大学を除けば、基本的に時期問わず採用できるのでおすすめです。
二つ目は「地方採用(地方勤務)、海外勤務」です。
日本人は地方勤務や言語の壁を感じる海外勤務を敬遠する傾向にありますが、インド人材はそういった傾向は少ないといえます。
ただ、勤務先(配属先)については面接段階でしっかりと伝える必要があります。
人によっては東京で働くことを望んでいることがあるため、見極めが必要です。
三つ目は「他分野からの情報系人材採用」です。
DXやAIといった分野での人材獲得には日本人がなかなか来ないため、切り替えて考えておくのがポイントです。
そして四つ目は「インド現地採用」です。
これは日本人をインドに送るのではなく、直接インド人材を現地採用することでコスト削減だけでなく、円滑に事業を進めるための手法としても有効です。
採用をうまく進めるポイント、それは言語です。
日本企業の採用担当者様からよく伺うのは、「日本語で面接したい」という希望ですが、日本語ができる理系人材はほぼいません。
そのため、採用難易度が極端に上がります。
そのため、言語の壁を低く設定して採用活動を進めることをおすすめします。
詳しくはASIA to JAPANにご相談ください。
■インドでの戦略とインド人材市場との関わり方
・事業戦略(インド・インド人材との関わり)について
三瓶:インドやインド人材との関わりを交えた事業戦略について教えていただけますでしょうか。
岩元様:DLTXは名前のとおり第一生命のグループ会社で生命保険に関するシステム開発や、そのほかにDX人材の育成に携わっています。
なぜ事業戦略でインドやインド人材に関わっているかというと、若者の減少と将来的なIT人材枯渇が危ぶまれる中、DX事業を進めるにも担い手がいなければ意味がないということで、海外での事業活動を進めていました。
その中で、インドと関わることが増えたのがきっかけで、人材採用するようになりました。
・これまでの取り組みで得たものや気づいた点
三瓶:我々が開講する理系インド人材の日本語話者育成講座のスポンサーシップや、インド人材採用等、これまでの取り組みで得たものや気づいた点などあれば教えてください。
岩元様:それについては「言語」「IT・スキル」「文化」の3点お話ししたいと思います。
まず言語でいうと、過去シンガポールで働いていたとき、社内が英語中心だったこともあり言語に苦労したことがありました。
インドでも同じように苦労すると考えていましたが、採用した方々は皆仕事で必要なレベルの日本語を流暢に話せたため、コミュニケーションを円滑に取れました。
インドの母国語と日本語の文法が同じため、習得にそこまで時間は掛からなかったそうです。
もちろん漢字を使った書き取りは漢字圏には劣りますが、言語の壁を感じるまでもなかったと気づきました。
三瓶:IT・スキルについてはいかがでしょうか。
岩元様:ITについては学生のレベルの高さに驚かされました。
採用した学生はみな学生時代にITを深く学び込んでいたので、IT人材としては日本人と比べて全く違うというのが正直な感想で、即戦力として考えても申し分ないほどでした。
実際に、今年の入社後研修は日本人と同じレベルにすると暇を持て余す可能性があるので、基礎を飛ばしていきなりプログラムをあてようと考えています。
最後に文化ですが、こちらはギャップがあります。
正直この面については扱いが難しいのではと思います。
ただ、日本に興味を持って就職した方々なので、日本寄りのマインドでいてくれています。
三瓶:今年頭に4名採用されましたが、今までと違うことなどありましたか?
岩元様:実は普段と採用活動のタイミングが違っていたので、4名の採用は当初の予定にありませんでした。
ただ、面接で学生の日本語レベルの高さに驚き、配属先の幅を広げられると思ったので、4名の学生たちに内定を出しました。
・高度外国人材(インド人材)が企業へもたらす効果・期待は?
三瓶:外国人採用を考えている方々が気になるところだと思いますが、高度外国人材(インド人材)が企業へもたらす効果・期待は、どのようなものがあるでしょうか?
岩元様:弊社の話になりますが、先ほどもお伝えしたとおり、IT知識が深い人材が多く、そして対象の母数もとても多いので数の採用が可能です。
まず、人材確保の面では大いにプラスの効果をもたらしてくれています。
また新卒採用でとった学生は、日本人と同じタイミングで入社するのですが、横並びになると技術力の高さに日本人が焦り出します。
同世代の実力と能力の差を感じることで、日本人のやる気が増してモチベーション高く仕事に取り掛かってもらえています。
社内の空気を良くしてくれていますね。
そして、先端技術をリサーチする時、はじめに出てくるレポートは英語のことがほとんどなので、この点でもメリットがあります。
日本人では仕事レベルの英語を使えない人がほとんどで解読に少し時間がかかりますが、バイリンガル以上の方の場合すぐ翻訳に取り掛かり、内容把握まで簡単にできるため企業の進行に欠かせない人材です。
■インド人材の魅力とは?
三瓶:本日(イベント当日)は、多くの日本企業の方々にお集まりいただきました。
インド人材の魅力についてご紹介いただけますでしょうか。
Shruti:インド人は数学が得意であることについて日本の方々にも広く伝わっているかと思いますが、理系分野を得意とする学生で、日本就職を目指して言語取得に励む生徒が数多く存在します。
ぜひこの機会に彼らのことを知っていただけると嬉しいです。
三瓶:ありがとうございます。
私の方からもいくつか紹介したいと思います。
まず、インド人は日本人と同じ給与水準で採用が可能です。
一部から「今やインドは日本よりも給与が高いのでは」とお話を伺うことがありますが、新卒であればそういうことはありません。
給与面でも安心して採用いただけます。
続いて、世界的な有名企業で活躍する人材を輩出する大学からの採用が可能です。
インド工科大学がまさにそうですが、ASIA to JAPANは企業様の採用支援で毎年内定承諾者を獲得しています。
言語面においても日本語ができれば母国語、英語と少なくてもトリリンガル以上の話者であり、グローバル化やダイバーシティ化に尽力する企業にとって貴重な人材であると言えます。
そして2年後に日本のGDPを抜くと言われており、注目すべき大きなマーケットであると言えます。
・インド人材を受け入れるにあたって
三瓶:インドの方を受け入れるにあたり、課題があるかというと、他国ほど無いというのが答えです。
強いて言えば、「社内の環境が整ってから、採用したい」という考えは一旦置いてもらう必要があるくらいです。
なぜかというと、社内の環境は外国人材を受け入れなければ整うことはないからです。
国によって文化、習慣、食べ物、宗教など全て異なります。
特徴を国ごとで大まかに理解するのは構いませんが、受け入れる外国人材が皆同じかというと否です。
そのため、まずは受け入れ、個別に情報を聞き出し、地道に環境を整えていくことをおすすめしています。
今回はイベント内のトークセッションの一部をお届けいたしました。
ASIA to JAPANでは、インド人学生だけでなく年間300名の外国人学生の採用を支援しています。
また、日本語での面接が可能なレベルの学生とオフラインで面接する来日型面接イベントを毎月開催しています。
イベントだけでなく外国人材採用にまつわるご相談を随時受け付けていますので、お気軽にASIA to JAPANへお問い合わせください。