【インドネシア最前線 #1】インドネシア人が日本を目指す理由とは?

【インドネシア最前線 #1】インドネシア人が日本を目指す理由とは?—内定者の声と現地資料から見る「インドネシア人材」のリアル

📌 本記事は「インドネシア最前線」全4回シリーズの第1回です。

「インドネシア人材を採用したい」——そう考える日本企業が増えています。しかし「アジアの学生はだいたい同じような動機で日本を目指すのだろう」という捉え方をしてしまうと、採用や受け入れの場面でミスマッチが起きやすくなります。

今回は面接イベント「FAST OFFER」を通じて内定を得た2名の学生への取材と、ASIA to JAPANが持つ現地調査データをもとに、インドネシア人材ならではの特徴を整理しました。あわせて、他のアジア諸国と共通する部分についても触れています。

特徴①日本との「歴史的な近さ」が土台にある

インドネシアの学生が日本に親しみを持つ背景には、単なる文化的憧れだけでなく、日本の製造業が長年にわたり現地に進出してきた歴史があります。家族や親戚に日本への留学経験者や日本企業での就業経験者がいるケースも珍しくなく、学生自身が生まれる前から「日本」が身近な存在として根付いている土壌があります。

今回取材した学生も、父親の工学留学に伴い幼少期を新潟県長岡市で過ごした経験を持っており、こうした「家族を通じた日本との接点」は、他のアジア諸国と比べてもインドネシアで比較的多く見られる傾向です。

採用担当者へのポイント:「なぜ日本なのか」を掘り下げると、単なる憧れではなく実体験に基づく親近感が土台にあるケースが多いことがわかります。動機の”厚み”を見極める材料になります。

特徴②家族の意向がキャリア選択に強く影響する

インドネシアでは大家族制度が根強く、就職やキャリアの選択にも家族の意向が大きく影響します。これは他のアジア諸国と比べても顕著な特徴とされ、本人だけでなく家族の理解・信頼を得ることが、安定した雇用関係の土台になります。

取材したインドネシア大学の学生も、内定の報告をした際に母親が感極まるほど喜んだというエピソードを話しており、家族にとっても「日本就職」が大きな意味を持つ出来事であることがうかがえます。

採用担当者へのポイント:オファー時には本人だけでなく、将来のキャリアパスや待遇について家族にも伝わるような丁寧な説明を意識すると、意思決定の後押しになります。

特徴③「バリバリ働く」より安定志向——実は転職文化が薄い

これは特に強調しておきたいポイントです。インド編(#3)で紹介したように、インドの人材市場は「2〜3年での転職が当たり前」という流動性の高さが特徴でした。一方インドネシアは対照的に、安定や職場の人間関係を重視し、頻繁な転職や過度な給与要求は比較的少ない傾向があるとされています。

就職活動についても、卒業前から積極的に動くというより、卒業後にゆっくり始める学生が多いのも特徴です。

採用担当者へのポイント:「定着率」を重視する企業にとって、インドネシアは相性の良い市場と言えます。ただし就活開始が遅めな分、早期からの接点づくりと、選考前の丁寧な目線合わせ(職務内容と専攻の関連性など)が採用成功の鍵になります。

特徴④性格的な「協調性」の高さ

温和で協調的な性格の学生が多いとされ、周囲との調和を重んじる日本人の気質と合致しやすいと言われています。今回取材した学生からも、対面での面接で「堅苦しくない雰囲気の中で、もっと話したいと思えた」という声が聞かれ、競争より協調を好む姿勢がうかがえました。

採用担当者へのポイント:チームワークを重視する職場では、この協調性の高さが円滑なコミュニケーションにつながりやすい傾向があります。

補足:日本語学習の独学化は、インドネシアに限った話ではない

ここまで紹介した4つの特徴とは別に、一つ触れておきたい点があります。それは「日本語力の伸ばし方」についてです。

今回取材した学生も、大学に日本語学科があったわけではなく、機械工学やエンジニアリングといった専攻を学びながら、JLPTの参考書を使って独学でN4から学習をスタートし、最終的にN2相当のレベルまで到達していました。こうしたエピソードは一見「インドネシア人学生の頑張り」を象徴する特徴のように見えます。

しかし実際には、これは日本語学科が必修になっていない国・地域では広く共通して見られる傾向です。理工系の専攻を持つ学生が、就職を意識し始めてから独学で日本語力を伸ばしていくケースは、本シリーズのインド編で取材した学生たちにも同様に見られました。つまり「独学でここまで到達できるのはインドネシアの学生だからこそ」ではなく、「専攻に日本語教育が組み込まれていない国では、学生本人のモチベーション次第で結果に大きな差が出る」という、より普遍的な構造がそこにはあります。

この点を区別しておくことには、採用担当者にとって実務的な意味があります。日本語レベルは、出身国よりも本人の学習環境・きっかけ・継続力に左右される部分が大きく、面接では出身国の傾向で判断するのではなく、実際の会話力や学習プロセスそのものを確認することが重要です。

まとめ——インドネシア人材の採用で押さえるべき4つの特徴

特徴 固有性 採用担当者への示唆
日本との歴史的な近さ ◎ 特有 動機の”厚み”を見極める材料になる
家族の意向がキャリア選択を左右する ◎ 特有 家族にも伝わる丁寧なオファー説明を
安定志向・転職文化が薄い ◎ 特有(対インド) 定着重視の企業と好相性。ただし就活は動き出しが遅め
協調性の高さ ○ 傾向として強い チームワーク重視の職場との相性が良い

次回(#2)は「インドネシアの大学生のリアル」として、ITBインタビューをもとに大学側から見た採用のヒントをお届けします。

■ 取材協力(学生)

Aさん(男性)
バンドン工科大学(ITB)機械工学・航空宇宙工学専攻。内定先は産業用機械刃物・工具・工作機械・機械部品の製造販売企業。幼少期に父親の工学留学に伴い新潟県長岡市で暮らした経験を持つ。在学中はASHRAE Design Competition(室内空気質ヘルスメーター設計)で優勝し、シカゴでの発表経験もある。ITBの先輩の紹介で「FAST OFFER」に参加。

Bさん(男性)
インドネシア大学 エンジニアリング&デザイン学部。内定先は放射線・電磁波・超音波を用いた非破壊検査(建造物や製品内部の欠陥検知)を手がける企業。大学入学後に日本語学習を開始し、独学でN2相当のレベルに到達。東北大学へ1学期間の留学経験があり、研究室での労働倫理(ワークエシック)に触れたことが日本就職への関心を深めた。JLPT受験会場で出会った同級生の紹介で「FAST OFFER」に登録。