海外大学に通う日本人学生が「会社選び」で重視するポイント
大学で専攻分野をしっかり学び、語学力と国際感覚を身に付け、異国で生活をしてきた海外大学に通う日本人留学生。日本企業にとって、魅力的な人材です。
ところが、日本企業への就職を希望する海外大生は、就活に関してさまざまな悩みを抱えています。
そこでASIA to JAPANは、アメリカ、イギリス、シンガポールの大学に通う8名の留学生の座談会を実施。
後半では、海外大生の会社選びの軸や現地就職への思いなど、彼ら・彼女らの仕事観について聞きました。
日本人留学生の就活スケジュールをご紹介!
学生プロフィール
Aさん アメリカ/オハイオ州立大学/機械工学専攻
Bさん アメリカ/南フロリダ大学/マーケティング専攻
Cさん アメリカ/南フロリダ大学/ソーシャルサイエンス専攻
Dさん イギリス/サセックス大学/人類学&国際開発学専攻
Eさん イギリス/バーミンガム大学/AI・コンピュータサイエンス専攻
Fさん イギリス/エディンバラ大学/地球科学専攻
Gさん イギリス/ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)/ソーシャルサイエンス専攻
Hさん シンガポール/シンガポール国立大学(NUS)/エンジニアリング専攻
望むのは「専攻が生かせる」
——海外大生からどのような業界が人気ですか?
Cさん:やっぱりコンサルは人気ですね。
Gさん:あとは商社とか、外銀かな。
Hさん:日本人留学生のほとんどが文系なのは大きいですよね。あとは給料の問題。海外企業と比べるとどうしても日本企業は見劣りしてしまうので。
Eさん:文系学生が行きやすくて、給料が高くて、海外との接点もある。この点でコンサルは人気なんでしょうね。
Bさん:コンサル、外銀、商社の情報に触れる機会が多いのもあると思います。キャリアフォーラムの参加企業の多くはコンサルですから。
——皆さんはどのような業界を志望していますか?
Gさん:日本の外資系企業を中心に、商社、コンサルを見ています。
Cさん:僕はIT専攻なので、IT業界ですね。
Aさん:私も機械工学専攻なので、工業系です。
Bさん:私はマーケティング専攻なので、業界というよりは仕事内容を重視しています。
Hさん:僕も専攻がロボティクスなので、ロボット関連志望です。
Eさん:大学で学んだことを生かせる仕事をしたいと思っています。IT業界や、自分の知識を使ってアドバイスをするコンサルが中心ですね。
Dさん:商社とメーカーを見ています。私が勉強している人類学と開発学の卒業生はNGOや国連で勤める人が多いのですが、まずは下積みが必要なので、ポテンシャルを見てもらえる日本で就職した方がいいかなと。
あとは、海外出たからこそわかる日本の良さを広めたいとも思っていて。そういう意味で、日本と海外の架け橋になれる仕事がしたいです。
Fさん:私はコンサルです。環境やサステナビリティについて学んでいるので、コンサルは大きな動きがあるのがいいなと。
あとは、学生のうちにインターンやワークショップに参加する機会が少なく、各業界について知る機会が少ないので、まずはコンサルで実践力を養いながら幅広い業界を見たい思いもあります。
前半で「海外大生は就活の情報が限られている」という話がありましたが、そういう意味でも就活の時点で幅広い業界を見るチャンスがあるといいなと思います。
——「大学の専攻を生かしたい」という点で共通していますが、日本企業の多くは総合職採用であり、特に文系職種は入社するまで配属先が分からないこともあります。
Bさん:ありえないですね。どれだけ条件が良くても、マーケティングの仕事ができる確証がないのであれば選ぶことはないかな。
Fさん:私も嫌ですね。社会貢献や価値創造につながるプロジェクトに参加したいと思って就活をしていますし、そういうモチベーションで仕事がしたいので……。
Gさん:私はそれもありかなと思っています。仕事の目的に価値を見出せるのであれば、配属はどこでもいいかなって。
日本企業が嫌なわけじゃないけれど……
——仕事内容以外で重視するポイントは何でしょう?
Bさん:働きやすさです。プライベートの時間も大事にしたいので、残業の少なさや有給の取りやすさ、福利厚生は重視したい。
アメリカの子たちと話を聞いてると、働き方はアメリカの方が良さそうなんですよね。そこは魅力だなと思います。
Eさん:わかります。イギリスも残業はほぼないので、そこはかなり魅力的ですね。
仕事は当然頑張りたいし、やる気もあるけど、それとは別に自分の時間も欲しいので、口コミサイトで残業に関するものはかなりチェックしています。
逆に言えば、残業さえクリアできれば日本企業でも全然いいんですよ。日本で働くのが嫌なわけではなく、むしろイギリスに行ったことで日本が良い国だと思うようになりましたから。
Hさん:僕は逆で、インターンシップをやって残業は嫌じゃないなと思いました。単純作業の繰り返しのような仕事をしていた時は早く帰りたくて仕方なかったけど、プロジェクトを任せてもらって自分の裁量でできる仕事は面白かった。
Fさん:実のある仕事がしたいですよね。「私、何やってんだろう……」って思うことがない会社を選びたいなと思います。
Hさん:あとは、社員さんと仲が良かったのも大きかったですね。そういう環境があれば長く会社にいることは楽しいんだなと思いました。
なので、どれだけ裁量があるのか、社員同士の関係性がどうなのか、そこは面接でも必ず確認しています。
Gさん:私も人や環境は大事だと感じています。インターンで2つの会社を受けたんですけど、45分の面接で疲れ果ててしまって……。
でも、もう1社のオファーをいただいた会社は朝6時から2時間面接をして、逆にエネルギーをもらいました。どちらもオンラインだったけど、それでもわかるんだなと思いましたね。
Dさん:私は外資ではなく、日系企業を志望しています。日本のブランドを背負って働ける会社がいいなって。
私は海外に出たからこそ日本が好きになったので、日本で生まれた商品を売っている会社で、その魅力を海外に伝えたい気持ちが強くあります。
——「グローバルな仕事がしたい」という希望もあるのでしょうか?
Bさん:ありますね。アメリカの生活が楽しいので、何かしらパイプは持っておきたいと思っています。
Cさん:どっちでもいいかな。IT系だと結局は英語が基本なので。
Hさん:日本のテクノロジーがすごいとよく聞くので、まず日本企業を経験したいですね。
最終的には海外に出たいので、海外で仕事ができるチャンスがある企業にも目を向けています。
Fさん:海外の人と一緒に進めていくプロジェクトに積極的に関わっていきたいです。私が志望している環境の分野は世界的な意識改革が必要なので、その架け橋のようなポジションになれるなら願ったり叶ったりです。
現地就職のハードルは高い
——現地就職についてはどうでしょう?
Bさん:私は日本とアメリカのどちらで就職するか、まだ悩んでいます。大学でアメリカ人の子たちと触れ合う中で、こっちでチャレンジしてみたい思いが出てきて。
一方で、自分の強みを生かせるのは絶対日本だとも思っています。日本語と英語を話せるのは、アメリカではあまり強みにならないですから。
Aさん:僕もまだ考え中です。今年の夏のインターンで日本企業を経験して、その後アメリカの企業でインターンをして、見比べてから決めようと思っています。まだ2年生が終わったばかりなので、考えるのはこれからですね。
Hさん:僕はまず日本企業と思っていますが、シンガポールの場合、先輩たちを見る感じだと日本で就職する割合は半分ぐらいです。
Cさん:アメリカで就職する人はほぼ院卒という印象ですね。現地就職を視野に入れて大学院に進む人は多いと思います。
Bさん:日本の場合は大学院を卒業しても就職にプラスになるイメージはないけど、アメリカだと全然違うんですよ。博士号まで取れば年収は2〜3倍になりますから。
Fさん:うちの大学は学部生と大学院生の双方に現地就職を目指している人はいるけど、「もう日本には帰らない」という意思が強い人が多いイメージです。海外の方が肌に合うっていうタイプですね。
Gさん:UCLは就活情報が多い方だと思いますが、海外就職の情報はほぼゼロです。
UCL卒であることが日本の外資系企業だとプラスになるけど、イギリスだと当たり前なので、自分の価値が下がるというか。だから日本で就職する人が多いのかなって。
少なくとも現地就職を考えてる人は私の周りにはいないですね。
Eさん:イギリスはおそらく他国と比べて現地就職のオプションがあまり現実的ではないんだと思います。卒業後2年間は卒業生ビザ(Graduate Visa)が取れるとはいえ、使わない人も多いです。
Dさん:就労ビザが本当に降りにくくて、就職は狭き門ですよね。
Eさん:円安だから給料は日本円に換算すれば高く感じるけど、イギリスはインフレもあるし、あらゆる物価が上がっている。それを加味すると、思ったより年収は高くないなと思います。ある程度の収入がないとビザの問題もクリアできないので、ハードルは本当に高いです。
ただ、実は気持ちの3割くらいは海外就職に傾いていて。去年までは日本企業で就職をしようと考えていましたが、大学院に進むことにしたので、あと1年あれば可能性はあるのかなと。僕は自分の専門を生かせれば国にこだわりはないので、イギリス以外の国でもいいと思っています。
日本人留学生の就活スケジュールをご紹介!
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