【出張レポート】スリランカに初訪問!スリランカ学生の就活事情とは
ASIA to JAPANは、2024年7月13日〜16日にかけてスリランカの現地大学を訪問し、大学関係者と今後の取り組みに向けた打ち合わせをしました。
この記事では訪問した大学の紹介や、スリランカの学生事情についてご紹介します。
■今回訪問した大学
・コロンボ大学(University of Colombo:UoC)
コロンボ大学は1870年に設立されたセイロン医科大学をルーツとし、数回の統合を経て1978年に独立した大学機関としてコロンボ大学となったスリランカ最古の大学です。医学部と理学部はスリランカの大学システムで最も古いだけでなく、教員とリソースの点でもトップクラスです。メインキャンパスにある象徴的な建物「カレッジハウス」は、1912年に建設された国定記念物であり管理棟として使用されています。
今回初めて大学を訪問しました。面会したコロンボ大学の副学長から、ASIA to JAPANの就職支援などの取り組みがコロンボ大学の生徒が日本で就職ができるきっかけになるのではと、将来性や興味を持っていただけました。今後スリランカで始動する日本語話者育成プログラムの実施及び、提携に向けた打ち合わせなど具体的に話し合いをしました。
■スリランカとは
北海道の0.8倍の国土面積に人口約2,218万人が居住するスリランカは、公用語にシンハラ語とタミル語、連結語として英語を話します。
隣国のインドはヒンドゥー教徒が大半を占めていますが、スリランカでは国民の7割が仏教を信仰しています。2019年に爆破テロ事件及び当時のゴタバヤ大統領就任後の大規模減税を含む大きな政策変更を受け、スリランカ経済は徐々に悪化しました。さらに新型コロナ感染拡大後は主要産業の観光業が衰退し、海外送金額も低下しました。2022年4月末の外貨準備高は約16億ドル(1か月分の輸入額に満たない水準)となっています。
※外務省「スリランカ民主社会主義共和国(Democratic Socialist Republic of Sri Lanka)基礎データ」
●経済状況と海外就労
前述した通り、スリランカ経済は悪化の一途をたどっていましたが、JETROが掲載する「経済回復の兆しも、人口減少がリスクに(スリランカ)」によると、物価上昇は落ち着き、実質GDP成長率は2023年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率が前年同期比1.6%と、7四半期ぶりのプラス成長となったとのことです。
さらに近年スリランカのIT産業は、オフショア開発やIT、ビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)のアウトソーシング先として世界的に注目が集まっており、ICTサービス(情報通信技術)の輸出額は年10億ドル前後と近年増加傾向で、海外労働者からの郷里送金やアパレル輸出、観光収入、紅茶の輸出に次ぐ重要外貨収入源となっています。(JETRO「スリランカのデジタル人材調査報告」)
IT産業が成長している背景には、英語が通用する人材が多く、かつ低コストで稼働させられることが挙げられます。そのため、世界の企業がスリランカのIT人材獲得に向けて動いています。
JETRO「世界から注目集まるスリランカのIT産業」によると、スタートアップ・ゲノムが発刊した「グローバル・スタートアップ・エコシステム報告書(Global Startup Ecosystem Report )2023」では、「高度IT人材の確保」に関して、アジア地域のスタートアップエコシステムとして1位、世界全体でも4位となっており、海外のスタートアップへの有望な人材供給源として評価されています。
高度IT人材を求める海外との賃金格差も影響し、より高い給与を得られる国で就労することを考えている人も少なくありません。
■スリランカの学生事情
スリランカの教育制度は小学校5年間、中学校6年間(前期4年+後期2年)、高校2年間の13年間です。大学進学率は22.97%(2022年度)と低めの水準で、大学入学のタイミングが諸外国と比べて少し異なります。
日本の場合、一般入試の結果が3月までに発表され、新年度となる4月から大学に入学できます。しかしスリランカ(国立)の場合、3ヶ月以内に試験結果が出ますが受験者の点数と大学側の基準の精査に時間がかかり、最終的な合否判定は約1年半後(大学によって期間が異なる)になります。
そのため高校を卒業する18歳で受験しても、実際に入学するのは20歳を過ぎてからというギャップが生まれています。さらに大学ごとだけでなく同じ大学の学部ごとに入学時期が変わるため、日本のように4月に全大学が一斉に新入生を迎え入れるということがありません。
学生は高校卒業から大学入学までの期間、スキルアップのため英語などの語学や、ITなどの専門知識を増やす勉強を自主的にするそうです。
今回訪問したコロンボ大学は、スリランカ国内の大学ランキングで常に1位2位に入る大学ですが、同大学も合格発表は約1年半後と伺いました。さらに経営学部は1月入学、法学部は3月入学、文学部は5月入学と学部によって入学時期が異なっていました。副学長によると、この現象自体は以前からありましたが、ここまで長期となったのは新型コロナやスリランカの経済悪化が影響しているとのことです。
■コロンボ大学生の就活事情
学生たちはスリランカでもトップレベルの成績を収める優秀な学生が大半で、国内の企業からの人気があり引く手数多ですが、初任給が6~7万スリランカ・ルピー(約34,770円)と日本と比べても安く、高収入を望める海外就職を考える学生が一定数います。
多くの国の場合、キャリア採用が一般的で実績重視であるため、卒業時点で24歳を超えているという年齢による問題はそこまでありません。しかし、日本企業の大半は新卒一括採用を行なっているため、採用を検討している企業は年齢による課題を事前に把握しておく必要があります。
■まとめ
今回はスリランカの学生事情などをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
初めてのスリランカ訪問でしたが、今まで関わってきた国とは異なる独自の学生事情があることを知り、今後学生の支援を行なっていく時に注意すべき課題への対策を練る必要があると感じました。一方で優秀な学生が多くいることも知れたので、実りある大学訪問となりました。
海外の高度人材採用へのご関心、また採用後から入社までの手続き方法など気になることがありましたら、お気軽にASIA to JAPANへお問い合わせください。