【お話を伺った方】
株式会社髙松コンストラクショングループ グループ人財統括本部 人財戦略部課長 侭田さん
青木あすなろ建設株式会社 管理本部 海外技術者育成就労支援室長 加藤さん
【採用メリット】
- 日本語の施工管理技術検定に受かる人も
- サポート次第で離職率は0%
- 新入社員研修の質が上がる
- ベテランにも若手にも刺激的な存在に
- 会社全体が変化に強くなる
10年後に事業規模を保つには、外国人材を採用するしかない
外国人材採用を始めたきっかけを教えてください。
侭田:2022年頃、グループ企業である青木あすなろ建設のトップによる「外国人材にも採用枠を拡げる必要がある」との判断によります。
建設業界全体の大きな課題は「従来の施工管理を担当する国内理工系人材の採用競争が激化」していることであり、当グループも例外ではありません。
髙松コンストラクショングループにおいて、若年層の離職率や社員の定年などを踏まえ、あらためてグループ全体の技術者数の分析をおこなった結果、10年後には相当数の技術者が不足すると想定しています。
10年後にも必要な事業規模を維持、そして拡大するには、必要な人的資本を確保する必要があります。日本人で補いきれないのであれば、外国人材採用が選択肢と考えています。
先行して外国人材採用を始めた青木あすなろ建設の成功事例を踏まえ、今後はグループ全体としても外国人材採用に注力していく予定です。
青木あすなろ建設ではどのくらい外国人材を採用しているのでしょうか。
侭田:スリランカを中心に、一定水準の日本語の語学力を有する高度人材の採用を始め、2023年に13名、2024年に18名が入社しています。
外国人材採用を始めるにあたって懸念などはありましたか?
侭田:受け入れ側の体制づくりは正直心配でしたね。
2023年に青木あすなろ建設で外国人材採用を始めた当時、私は同社の人事を担っていたのですが、現場社員の多くの反応は「いきなり自分たちに受け入れられるだろうか?」といったものでした。
そんな現場の心配や不安を少しでも減らすため、人事側でどのようなケアをするのか、どの程度の研修をやるのかなど、1期生の受け入れ前は相当話し合いを重ねました。外国人材を受け入れるにあたっては、まずは社内に納得してもらうことが非常に重要でした。
実際に入社してからの現場の反応はいかがでしたか?
侭田:好意的に捉えてくれる人がとても増えました。最初の2年間で外国人材の皆さんが一生懸命やってくれたことも大きいですが、受け入れてくれた現場のみなさんの様々なご苦労があっての現状だとも思います。
現状はグループ会社19社のうち、外国人材の受け入れに積極的な会社と、今はまだという会社で二極化すると予想されますが、前者から先に採用を進めて成功事例を作っていけば、他のグループ会社でも外国人材の受け入れをやってみよう、と思ってくれるのではないかと思います。

離職率0%を実現した、外国人材への手厚いサポート
外国人材を受け入れるにあたっての工夫について教えてください。
侭田:青木あすなろ建設で海外からの外国人材採用を始めた当初は、「そこまでやるの?」と思うような手厚いサポートにトライしてみました。
日本人の新入社員と違い、当然ですが、海外から入社する外国人材は日本に家族どころか知り合いすらいません。日本円の貯金もなく、どこで食材を買ったらいいかもわからない。採用するのは簡単ですが、入社後に定着してもらうには相当ハードルは高いと思っていました。
そこで、役所への届け出や電車の乗り方、日本での一般的な暮らし方などありとあらゆる側面で積極的にサポートをおこないました。
日本人にとって当たり前の生活環境を来日時点でできる限り用意しようとすれば、想像以上のお金と工数がかかりますが、それでも日本でずっと働いていきたいと思ってもらうためには、それらが必要なことであると考えていました。
加藤:現在も各現場を回り、外国人材と日本人社員の双方と日々面談をおこなったり、アンケートを取ったりしながら課題を探っています。
やはりお互いに言いづらいことがあるようで、第三者が入り、地道にヒアリングをする必要があるのを感じます。そうやって問題を一つ一つ解決している状態です。

外国人材の離職率を懸念する企業は多いです。その点はいかがですか?
侭田:青木あすなろ建設では、1期生が入社して2025年で3年目になりますが、離職率は0%です。結果的に手厚いサポートが功を奏したかなと思います。
加藤:2024年には海外技術者育成就労支援室を新設し、母国語で同じ出身国の社員に相談ができる体制を整え、寄せられた相談を一つ一つ解決し、「ここに相談すれば大丈夫」という安心感を醸成したことが離職率ゼロにつながっているのだと思います。
社内には「なぜここまでサポートをするのか」という声もありましたが、例えば、我々がスリランカの現地資料を現地語で書くのがすぐには無理なことと同じように、彼ら彼女らには専門部署によるサポートは必須であると今では確信しています。
侭田:逆に言えば、様々な生活環境の違いや変化にしっかり向き合う覚悟がなければ、おそらく定着はしないのだろうと感じます。
他に、外国人材向けに整備した制度などありますか?
加藤:日本人の若手社員に向けて用意していた帰省旅費の支給を、外国人材にも適用しました。年間2回まで、上限金額を設けて支給する制度です。
侭田:他に、資格試験の申込の代行も会社側でしています。日本人社員には自分で願書を出してもらっていますが、外国人材の場合は願書などの独特な記入方法などわからないことも多いので、必要な対応だと考えています。
こういった取り組みが行われている会社であることは、外国人材のコミュニティの中で情報として広まっていくので、最近は当社への応募も増えつつあります。そういう意味でも、手厚いサポートは重要だと思います。

目指すのは「外国人材がいて当たり前」の会社
初年度は社内に対して受け入れ文化の醸成を行い、外国人材には手探りでサポートを行うなど、苦労も多かったと思います。2年目、3年目と、大変さに変化はありますか?
侭田:最初の土壌作りは記憶がなくなるくらい大変でした(笑)。ただ、その後のエネルギー投資は2年目で半減、3年目で3分の1になった感覚です。
1期生が入社し、評価されるようになると、風向きは一気に変わりました。そこまで持っていくのが最も重要であり、最初さえ乗り切れば、後は波に乗っていけると思います。
外国人材の存在は、社内にどのような影響を与えていますか?
侭田:採用しなければ事業が縮小してしまうという危機感から始まった外国人材採用ですが、今はたとえ人材不足でなくても受け入れるべきだと思っています。
侭田:彼ら彼女らの姿に、多くの日本人社員が刺激を受けています。外国人材の皆さんともっと関わるために語学の勉強を始めたり、英語で話しかけてみたりと、若手にもベテラン層にも、かつてない新しい風を吹かせているのを感じます。
もちろん言葉や文化の違いによるトラブルもありますが、それ以上にプラスが多いです。会社全体が変化に強くなりつつあるように思います。
最後に、今後の展望を教えてください。外国人材の採用をグループ全体に広めることで、どのような会社にしていきたいですか?
侭田:今は外国人材がダイバーシティの象徴になっていますが、目指しているのは「外国人材がいて当たり前」の状態です。
外国人材への特別なケアが必要なフェーズが終わったら、外国人材が日本人と同じように当社を選び、成果を出し、キャリアを積めるようなグループにしていきたいと思っています。
