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【出張レポート | マレーシア】日本就職への関心は拡大中?説明会参加者増加の背景と学生の本音

マレーシア出張

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【出張レポート | マレーシア】日本就職への関心は拡大中?説明会参加者増加の背景と学生の本音

2025年11月、ASIA to JAPANはマレーシアの複数の現地大学を訪問しました。

現地では、日本企業への就職支援プログラム「FAST OFFER」の説明会を実施するとともに、大学関係者や学生へのヒアリングを通じて、マレーシア人学生の日本就職に対する関心や不安について探りました。

近年、マレーシアでは日本就職に関する説明会への参加者が増加しており、関心が高まっているように見えます。

一方で、ムスリムが少ない国で働くことへの不安や、日本企業の労働環境への懸念、円安や税負担による収入面の目減り感など、学生が慎重になる要因も少なくありません。

日本で働くという選択肢は、マレーシアの学生にとって本当に「現実的なキャリア」になりつつあるのでしょうか。

また、採用を検討する日本企業は、こうした学生の本音にどのように向き合うべきなのでしょうか。

本記事では、説明会参加者増加の背景や、現地学生のリアルな声をもとに、マレーシア人材採用のヒントをご紹介します。

 

■日本就職への関心は本当に高まっている?

・説明会参加者は増加、その背景にある変化とは

今回のマレーシア出張では、日本企業への就職支援プログラム「FAST OFFER」の説明会を複数回実施しました。

日本就職に関心を示す学生は一部に限られる傾向もありましたが、今回はいずれの会場でも参加者数の増加が確認されました。

集合
FAST OFFER説明会後の様子

特に印象的だったのは、「すぐに日本で働きたい」という明確な意思を持つ学生だけでなく、「将来の選択肢として日本就職を知りたい」という情報収集段階の学生が多く参加していた点です。

その背景には、マレーシア国内の就職環境の変化に加え、SNSや口コミを通じて日本文化に触れる機会が増えていることが挙げられます。

一方で、説明会への参加がそのまま日本就職の意思決定につながっているわけではなく、多くの学生が慎重に比較・検討を進めている段階にあることも見えてきました。

・なぜ今、日本就職が選択肢に浮上しているのか

説明会参加者が増加している背景には、マレーシアの学生にとって海外就職の選択肢が変化していることがあります。

欧米就職は依然として人気が高い一方で、近年はビザ取得の難易度が上がっており、「行きたい気持ちはあっても現実的ではない」と感じる学生が増えています。

その中で、日本は比較的明確な採用スケジュールと就労ビザ制度が整っている国として認識され始めています。

特に、日本独自の「新卒一括採用」という仕組みは、世界的に見ても珍しく、職務経験がない学生でも正社員としてキャリアをスタートできる点に魅力を感じる声が多く聞かれました。

また、アニメや日本食、観光をはじめとする日本文化に触れる機会が増えたことで、「日本で働く」だけでなく「日本で生活してみたい」と考える学生が増えている点も特徴的です。

文化的な親しみがあるからこそ、日本就職を一つの現実的な選択肢として検討し始めている様子がうかがえました。

このように、日本就職は特別な進路というよりも、海外就職の選択肢の一つとして、学生の視野に自然と入り込んできていると言えるでしょう。

・「複数の選択肢の一つ」としての日本就職

説明会に参加した多くの学生からは、日本就職に対して前向きな関心が示されました。

しかし、その関心がすぐに「日本で働く」決断につながるケースは多くはなく、全体としては慎重な姿勢が目立ちました。

背景にあるのは、日本での働き方や労働環境、生活に関する情報不足です。

説明会01
FAST OFFER説明会の様子

就労ビザや採用スケジュール、日本企業の社風や評価制度など、断片的な情報は持っていても、「実際に働くとどうなるのか」という具体的なイメージを描けていない学生が少なくありません。

そのため、日本就職に興味はあるものの、自国企業や他国企業との比較、将来のキャリアを考えながら判断を保留している学生が多い印象です。

また、海外就職そのものには理解があっても、日本という国や企業文化について十分な情報が共有されていない場合、最終的な決断には時間がかかる傾向があります。

こうした点からも、日本企業や支援側が提供する情報の質と分かりやすさが、今後ますます重要になると言えるでしょう。

 

■マレーシア学生が日本就職で感じる“期待と不安”

・「飲み会文化」はどう関わるべき?

マレーシアの学生、とくにムスリムの学生からは、日本の社内コミュニケーションにおける飲み会文化についての質問が多くありました。

宗教的背景からアルコールや食事の制約があるため、「参加を強制されたり、飲酒を強要されるのではないか」と不安を抱く学生もいます。

こうした認識の背景には、SNSだけでなく、マレーシアでも知られている90年代の日本ドラマから得た知識が影響していることも多く、実際の状況との間にズレが生じているケースも見られました。

説明会02
FAST OFFER説明会の様子

説明会内の質疑では、学生向けに現在の飲み会文化の実態を紹介しました。

多くの企業で文化的配慮をし参加の自由度があること、実際に可能な対応策を明確に伝えることで、不安は大きく軽減されていました。

企業にとっても、こうした情報提供は学生の安心感を高め、信頼構築につながる重要なポイントです。

・ムスリムでも日本で問題なく働けるのか

ムスリムの学生にとって、日本で働く際の宗教的配慮は重要な関心事の一つです。

具体的には、1日の祈祷のタイミング、ハラール食の確保、服装規定や礼拝スペースの有無など、日常業務に関わる細かな点が気になる学生が多く見られました。

説明会やヒアリングでは、「これらの配慮は本当に実現可能なのか」「職場で孤立することはないのか」といった具体的な質問も寄せられました。

背景には、宗教慣習に不慣れな日本企業での生活に対する漠然とした不安や、情報不足が影響しています。

一方で、実際には祈祷時間の確保やハラール食の提供、服装の柔軟な対応など、現場での配慮事例が増えているため、こうした事例を参考に、企業側が事前に準備し具体的に学生に示すことで、安心感を高めることが可能でしょう。

また、同僚や上司とのコミュニケーションを通じて理解を深めることも可能であり、ムスリムであることが仕事に支障をきたすケースは少ないことが分かっています。

・「ブラック企業ではないか?」という根強い不安

マレーシアの学生の間では、日本企業の労働環境に関する不安が根強く存在しています。

特に、長時間労働や休暇取得の難しさといったイメージが、前述同様SNSやメディアを通じて広まっていることが背景にあります。

そのため、説明会に参加する学生からも「本当に働きやすいのか」「自分の生活と両立できるのか」といった具体的な質問が多く寄せられました。

説明会03
FAST OFFER説明会の様子

こうした不安を軽減するには、企業側が働き方や休暇制度、評価制度、残業の実態などを具体的に示すことが重要です。

数値や事例を交えて「見える化」することで、学生は現実的な職場環境を理解しやすくなります。

 

■収入面での現実:円安・税金による“目減り感”

・円安が与える初任給・生活費への影響

マレーシアの学生の間では、日本での初任給に対する関心が高まる一方、円安による手取りの目減り感も意識されるようになっています。

為替レートによっては、マレーシアリンギットに換算した際の給与が想定より低く感じられることもあり、学生にとって不安材料となっています。

また、日本での生活費についても、観光で訪れる場合は物価が安く感じられることもありますが、実際に生活するとなると家賃や交通費、食費、水道光熱費など、日々の支出が重なるため、想像以上にコストがかかると考える学生が多くいます。

特に都市部では家賃の高さが負担感として強く、初任給だけでは生活の余裕が十分に感じられないケースもあります。

こうした点から、学生は初任給や手取り額だけでなく、生活費を差し引いた実質的な可処分所得についても不安を抱えている状況がうかがえます。

・税金・社会保険への理解不足が生む不安

日本での税金や社会保険制度に関する理解が十分でないことから、誤解を抱く学生も少なくありません。

給与からどの程度が控除されるのか、実際に手元に入る金額はいくらになるのかが分かりにくく、額面の数字がそのまま手に入る、もしくはほぼ同額もらえると考えている学生もいます。

さらに、マレーシアと日本の制度の違いも不安を強める要因となっています。

社会保険や年金の仕組み、所得税の計算方法が異なるため、現地の給与体系と単純に比較できず、手取りの実感をつかみにくいのです。

このような制度面の不透明さから、学生は「実際に生活できるのか」「給与は自分の想定に合うのか」といった疑問を抱きやすく、場合によっては入社後に「オファー額と全然違う」「2年目からこんなに控除されるのか」といった不満につながることもあります。

・「今の収入」だけで判断されないために

学生の中には、日本就職を考える際に「初任給だけ」で判断しようとする傾向が一部見られます。

今回の説明会で出会った学生は、日本文化に触れたいといった目的から就職を考えている学生が半数以上でしたが、給与額に注目する学生も一定数いました。

こうした学生は、キャリア形成やスキル習得、将来的な年収の伸びといった中長期的な視点が十分に意識できていないことがあります。

特に、日本の新卒一括採用制度やジョブローテーション制度など、給与以外の価値を含む仕組みを理解できていない場合、短期的な収入の高さだけで就職先を選ぼうとする傾向が見られます。

さらに、日本での生活費や税金、社会保険の影響を考慮せず、単純に額面だけで「割に合うかどうか」を判断してしまうケースも少なくありません。

この結果、学生は「今の収入」だけで日本就職の価値を測ろうとし、中長期的なキャリアの可能性や将来の年収アップの見込みを十分に評価できない状況が見受けられます。

 

■日本企業が向き合うべきポイント

・「言語習得」のタイミング

説明会やヒアリングを通じ、多くの学生が日本語能力の重要性を意識していることが分かりました。

日本語学習のハードルを高く感じる学生も多く、英語との使い分けや、英語のみで業務に就けないかといった質問も寄せられました。

もちろん、日本企業で働く場合、英語だけで業務が可能な企業は限られており、ほとんどの企業では実務レベルの日本語が求められます。

日本語ができることで業務の幅が広がり、チーム内でのコミュニケーションもスムーズになるのは間違いありません。

ここで日本企業が意識すべきなのは、「どのタイミングで日本語が話せるか」という点です。

極論すると、配属先で業務を開始するまでに対話可能レベルの日本語力を身につけていれば問題はありません。

面接時に日本語が話せなくても、語学習得サポートによってN3レベルまで育成することも可能であり、面接時点で日本語ができないことを理由に切り捨てるのは非常にもったいないと言えます。

学生が安心して日本就職を検討できるようにするためには、どの程度の日本語能力が、いつまでに必要かといった現実的な基準を示すことが重要なポイントです。

・学生の関心は多岐にわたる

マレーシアからの人材採用では、学生が抱く関心や質問の幅が非常に広いことを理解しておく必要があります。

宗教や文化、働き方、労働環境、給与・生活費に加え、配属後のキャリアや成長機会、具体的な業務内容まで、さまざまな情報を求めています。

そのため、説明会や面接では、単に待遇や条件を伝えるだけでなく、学生が実際に職場でどのように働くかを具体的にイメージできる情報を提供することが重要です。

曖昧な回答や一方的な説明では、学生の不安は解消されず、採用選択から外れるリスクが高まります。

 

■訪問から今後へ

・学生の不安は先輩の体験談で

説明会には、今年度だけでなく数年前にFAST OFFERを通じて日本企業に内定した各大学の先輩学生にも参加してもらいました。

説明会05
FAST OFFER説明会後の様子

学生たちが抱く不安は、当時の先輩も経験してきたものであり、外国人採用が今ほど進んでいなかった時期に内定を得る難しさや、FAST OFFERのメリット・デメリットを自身の体験を通じて伝えてもらいました。

特に来年入社が決まっている先輩からの体験談は、数年後の自分と重ねやすいこともあり、普段はあまり発言しない学生からの質問を引き出すきっかけとなりました。

また、数年間同じ会社で働いた経験から見えてきた日本企業の魅力や、実際に直面した苦労も共有され、参加学生が職場での生活やキャリアイメージをより具体的に描けるようになりました。

・UTeMとMOU締結

今回の訪問で、UTeM(Universiti Teknikal Malaysia Melaka)との初めてのMOU締結が決まりました。

UTeMと契約
UTeMとのMOU締結後の様子

これにより、これまでオンライン講座のみの参加だった同校の学生も、今後は専用カリキュラムを組むことで、日本語話者育成をより本格的に進められるようになります。

また、今回訪問したすべての大学に対して、大学単位で認定される日本語講座プログラムを提案したところ、ほとんどの大学が興味を示しました。

今後、このプログラムが授業として正式に取り扱われるようになれば、日本語話者育成がより安定的かつ円滑に進むことが見込めます。

・マレーシア国内大学関係者向けに説明会開催

今回初めての取り組みとして、これまで関わりがなかった大学関係者向けに、FAST OFFERや日本語講座、そしてASIA to JAPANの活動内容についての説明会を開催しました。

説明会はオンラインとオフラインの同時開催で、合計で10校の関係者にご参加いただきました。

説明会で最も注目を集めたのは、日本企業と学生をつなぐ就職支援サービス「FAST OFFER」です。

通常の採用過程では、学生は自ら企業に応募し個人で選考を進める必要があります。

そのため、日本企業とのつながりがない学生にとっては、情報が限られる中で挑戦しなければならないというリスクが存在します。

しかし、FAST OFFERを活用することで、大学としても学生が企業の採用担当者と直接会える機会を提供できるほか、無料で日本語講座に学生を参加させられるなど、大きなメリットがあります。

この取り組みは、今後のさらなる人材発掘の可能性にもつながると感じました。

説明会にご参加いただいた大学関係者とは、今後も継続的な関係構築に努めてまいります。

 

■マレーシアで訪問した大学

今回訪問した大学を紹介します。

・マレーシア技術大学マラッカ校(Universiti Teknikal Malaysia Melaka:UTeM)

マレーシア技術大学マラッカ校は、2000年12月1日に設立されたマレーシア初の公立技術大学で、同国の14番目の公立大学です。

キャンパスはユネスコ世界遺産都市のマラッカ州にあり、工学、情報通信技術(ICT)、技術管理などの分野に強みを持っています。

UTeMは産業界のニーズに応える技術系人材育成を重視しており、実践・応用志向の教育を提供しています。

学士・修士・博士課程のプログラムが整備されているほか、国際学生も受け入れており、多様なバックグラウンドの学生が学んでいます。

・マレーシア工科大学(Universiti Teknologi Malaysia:UTM)

マレーシア工科大学は、マレーシア南部のジョホールバルを拠点とする国立の研究型大学で、工学・科学・技術分野における教育と研究で国内外に高い評価を受けています。

1904年に起源を持ち、長い歴史を通じて技術系人材の育成に貢献してきました。

UTMは多数の学士・修士・博士プログラムを提供し、工学や情報通信技術、マネジメントなど幅広い分野をカバーしています。

また、約3,000名の国際学生を含む多様な学生が在籍し、国際連携や産学協働にも積極的に取り組んでいます。

近年はQSアジア大学ランキングにおいて上位にランクインするなど、地域でも研究・教育の質が高く評価されています。

・マレーシア科学大学(Universiti Sains Malaysia:USM)

マレーシア科学大学は、1969年に設立されたマレーシアの国立研究大学で、同国で2番目に古い高等教育機関です。

主要キャンパスはペナン島のジョージタウン近郊にあり、工学・理学・医療・社会科学・人文科学・教育など幅広い分野をカバーする学士・修士・博士課程を提供しています。

複数のキャンパスを持ち、学生数は3万人を超える規模です。USMは研究活動にも力を入れており、複数の研究センターを有するとともに、政府が推進する卓越大学プログラム(APEX)にも選ばれています。

また、多様な国際学生を受け入れ、国際的な教育環境を築いています。

・マラヤ大学(Universiti Malaya:UM)

マラヤ大学は、マレーシアの首都クアラルンプールに位置する国立の総合研究大学で、同国で最も歴史のある大学です。

1905年に設立された前身を持ち、1949年に現在の形となりました。

長い歴史と学術的伝統を背景に、教育・研究の両面で高い評価を受けており、QS世界大学ランキングでもマレーシア国内で最上位クラスにランクインしています。

UMは医療、工学、理学、社会科学、人文科学など幅広い学位プログラムを提供し、研究・学術ネットワークも豊富で、国際的な学生や教員を多く受け入れています。

・マレーシア日本国際工科院(Malaysia Japan International Institute of Technology:MJIIT)

マレーシア日本国際工科院は、マレーシア工科大学(UTM)内に設置された国際工科教育機関で、2011年に開校しました。

日本とマレーシアの政府間協力プロジェクトとして設立され、日本型の工学教育と研究を導入することで、技術力と実践力を備えた人材育成を目指しています。

カリキュラムは工学分野を中心に構成されており、学部・大学院レベルの教育を提供しています。

また、学生は日本の教育・研究文化に触れる機会があり、日本の大学や産業界との交流や共同プロジェクトを通じた国際的な経験を積むことができます。

MJIITは、ASEAN域内における最先端技術教育の拠点としての役割を果たしています。

 

■まとめ

今回の訪問で得られた情報を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

マレーシアは、日本文化への関心の高さや教育水準の高さから、今後も有望な採用先の一つであることに変わりはありません。

一方で、欧米やシンガポールとの比較、日本独自の新卒採用制度、日本語能力や労働環境に対する不安などを背景に、「日本で働くこと=魅力的」という構図は、学生によって慎重に捉えられる傾向があります。

今後の採用では、日本語力だけでなく、ポテンシャルや意欲、キャリア形成の可能性なども含め、学生が納得できる情報提供が重要です。

ASIA to JAPANでは、現地のリアルな声を企業の採用戦略に活かし、日本と海外の「まだ出会っていない」人材の架け橋として、今後もサポートを続けてまいります。

マレーシア人材への関心や採用プロセス、大学へのアプローチ方法などについてご相談がある場合は、お気軽にASIA to JAPANまでお問い合わせください。

またスタッフとの個別相談会をご希望の場合はこちらからお問い合わせください。

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