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【三瓶の未来予想図】〜採用スタイルの変化で浮き彫りになる「2割の穴」〜

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【三瓶の未来予想図】〜採用スタイルの変化で浮き彫りになる「2割の穴」〜

この記事はASIA to JAPAN代表の三瓶が、就活支援で得た情報や世の中のニュースから予想する採用の未来について紹介します。
今回のテーマは「採用スタイルの変化で浮き彫りになる2割の穴」です。
通常大手企業、中小企業、個人事業主などは経営にあたり人手が必要な時に人材を雇用します。また人材を雇用する際、日本では「新卒採用」「中途採用」と応募者の状況によって採用枠が異なるのが一般的です。
ではテーマである「2割の穴」とはいったい何なのか想像できますか。

 

■変化する働き手の意識

終身雇用の考えが一般的だった一昔前までは「会社に対する裏切り行為」「忍耐力がない」「そもそも1つの企業で安定して長く働くことが良い」など転職行為をマイナスにとらえる風潮がありました。

しかし最近は海外のように自分の実力や実績を正当に評価してもらえる企業に就くため転職を選ぶ人が増えてきました。
大手人材会社のマイナビが2023年に新卒入社した男女(新入社員)800名を対象にした調査「新入社員の意識調査(2023年)」によると、勤続意向について10年以内で転職を考えている人が半数近くの49.1%いると発表しました。主だった理由が「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」や「いろいろな会社で経験を積みたい」など働き手のキャリア意識アップや、「給与が安い」など給与アップを考えているなど、働き手が企業に尽くす考えから自身の成長へと意識が変化してきていることがわかります。

また今では当たり前であるネットやSNSを用いて企業や労働環境など様々な情報を気軽に収集できるため、働く選択肢の自由化が進んでいます。これらが作用し転職に対するマイナスイメージが薄れてきたのではないかと考えています。

 

■企業の意識変化

一方の企業も近年採用の考え方に変化が生じています。今まで働き手は定年になるまで働き続けることが当たり前だったのが、転職する社員の増加や今まで中核を担っていた団塊世代が定年で退職するなど、以前よりも人員に関する問題が増えてきました。また少子高齢化による採用母数の減少による人材不足だけでなく、コロナ禍や経済低迷による「大幅リストラ」などコスト面での問題にも直面しています。

効率よく人材を確保するため「新卒育成」をもって即戦力を育成する企業が多くありますが、産労総合研究所が行った「2023年度 教育研修費用の実態調査」によると、従業員1人あたりの平均研修費用は年間32,412円かかっているそうです。また企業によってはさらに費用をかけて育成をしています。しかし手塩に掛けて育てた新人もゆくゆくは転職してしまう可能性を考慮して、あまり新卒育成にコストをかけず即戦力として稼働できる中途の採用を積極的に行う企業が増えています。
マイナビが中途採用活動実績のある企業の人事担当者1,400名を対象にアンケートした「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」によると2023年の中途採用人数は年間平均21.8人でコロナ禍に比べ8人増で過去最高の数値となり、一方で退職者数の平均人数は15.6人と前年比3.1人増となり人材流動性が高まる結果になったと公表されています。
このように企業の人材確保の考え方が変わってきていることがわかります。

 

■活発化するメガバンクの中途採用

中途採用に力を入れるのは中小企業だけでなく比較的人材確保に有利な大手企業でも行われるようになりました。日刊工業新聞が先日メガバンクの中途採用について取り上げていました。

「3メガバンクが中途採用を活発化させている。2023年度は3行合わせて前年度比2倍となる1100人超を採用。24年度はさらに採用数を上積みし、少なくとも合計1200人を採る計画だ。新たなビジネス機会の創出を目指すIT・デジタル領域や金利上昇で重要性が増す法人向け融資、資産運用などで専門人材を確保する。採用の軸足を新卒から高い専門性を持つ人材に移し、事業環境への対応を急ぐ。」
※ニュースイッチ「3年で7倍以上…3メガバンクが中途採用を活発化する背景事情」より引用

メガバンクはかつて新卒一括採用で様々な部署を経験させて人材を育成してきた従来の手法から、近年はキャリア採用、特にIT人材を確保するため中途採用に力を入れているようです。そしてその採用比率は新卒をしのぐ勢いとなっています。

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メガバンクに限らず金融業界では今まで中途採用をほとんど行っていなかったので、大幅な人員増減などなくヒエラルキーごとに銀行人員は固定化されていました。しかし今ではレイヤーごとに上位2割が流動的に動くため、下位レイヤーでは人員が2割足りなくなるという問題が起きています。これが今回のテーマである「2割の穴」です。

 

2割の穴とは

2割の穴とは、すなわち「優秀な人材が転職で去ったあとの空席」です。

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独立という選択を抜くと零細企業、中小企業、大手企業の順番にステップアップすることが一般的です。企業に所属する働き手の中には個人の実績に対して正当な評価を求め、さらなるステップアップのためにより良い企業へ転職します。

大手企業は必要な人材を同レベルもしくは下位レイヤーの同業者、もしくは関連企業に在籍している優秀な人材から引き抜きます。それによって人材が流出した中小企業や大手の関連会社は空いた穴を埋めるため、さらに下位レイヤーから優秀な人材を引き抜きます。このような連鎖が近年活発化しており人材の流動化が目立つようになりました。具体的な数値はありませんが、就職支援などで培ったデータを元に見るとその数が「各企業全体の2割ほどになる」というのがASIA to JAPAN代表 三瓶の見解です。

 

地方企業が抱える問題

例としてメガバンクの話を上げましたがこの問題はほとんどの業種で起こっており、今後流動化によって採用の窮地に立たされるのが地方を中心とした零細もしくは中小企業と考えています。
東京や大阪など都市部は人材が集まりやすく、さらに大手企業などは新卒の初任給を大幅に引き上げるなど対策をとっているため、地方と比べて人材採用に関して有利な条件を提示できます。
一方の地方都市はなかなか人が集まりにくいという問題を抱えています。ASIA to JAPANで関わった地方企業では3年連続で新卒採用を実施しているものの採用できていないというお話を伺いました。

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もちろん地方だからといって優秀な新卒人材を採用できないかというとそうではありません。しかし将来的にステップアップのため企業を去られた場合、「人が集まりにくい」や「予算を簡単に割けない」などが原因で必要な人材確保が都市部に比べて困難を極めます。この簡単に空席を埋められない問題が2割の穴で、今後少子化が進むと企業運営事態が危うくなる可能性があります。帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査(2023年)」によると、2023年に人手不足が原因で倒産した企業の数が過去最多の313件に及び、前年の146件に対して約2.1倍にも増加しています。また従業員10人未満の小規模事業者が4社に3社が倒産していることがわかりました。

下位レイヤーに該当する企業も「初任給を上げれば良いのでは?」と考えるかもしれませんが、初任給を上げるには既存の社員に不満を持たれないように従業員全体の給与水準を上げる必要があります。企業体力があれば問題ありませんが対応できない企業がほとんどのため、上位レイヤーと下位レイヤーの間で人材確保の格差が生まれています。

 

■まとめ(考えうる打開策)

空いてしまった2割の穴を埋めるために取れる打開策は大きく2つ考えられます。
一つ目が「異業種からの採用」です。下位レイヤーに含まれる企業の場合、同業他社から引き抜くことはほぼ不可能と言えるでしょう。そのため同じレイヤーの異業種から必要な人材を誘致することがまず一つの打開策になるでしょう。

二つ目が「外国人材の採用」です。日本国内だけを見ると新卒の母数は年々減少しているため、今より企業の充足率は低下していくと考えています。しかし、世界に視野を広げると専門性を極めた優秀な人材が就職先を探しています。日本のように新卒を一括採用している国は限られているため、学生のうちに研究や企業と合同でプロジェクトを推進するなど、即戦力としての実績を積んでいる場合がほとんどです。日本での就職を希望する優秀な外国人材も豊富にいるので、彼らを採用するのも打開策の一つとなるでしょう。

いかがでしたでしょうか。この2割の穴をどう考えるかが今後の企業存続を左右するかもしれません。
ASIA to JAPANでは海外の新卒理系学生を中心に高度人材の就活支援を行っています。支援の一環として日本語で面接できるレベルを目標に、現地大学と提携し理系学生の日本語話者育成も行っています。
またアジアを中心としたトップクラスの大学で学ぶ外国人学生と、日本企業が採用面接を行う「面接イベント」を開催しております。外国人材の採用に関して気になることがあれば、お気軽にASIA to JAPANへお問い合わせください。

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