ASIA to JAPANは日本における異文化接触の諸問題を専門にする同志社大学 鈴木教授を招き、Webセミナー「外国人留学生の見極めポイント ~面接で見るべきは ”日本語能力”ではなく●●?~」を開催しました。
ASIA to JAPANでは毎年、独立行政法人 日本学生支援機構(通称JASSO)から発表される『外国人留学生在籍状況調査』について経年の変化を把握し、海外人材を採用する人事担当者様へ有益な情報を届けるため、セミナーを開催しています。
今回のセミナーではJASSOの調査をもとに、外国人留学生在籍状況の推移と現状について、国別、大学別など様々な角度から解説。
日本における異文化接触の諸問題を専門とする同志社大学 鈴木教授をお招きし、
・コロナ禍を経て、外国人留学生が現在どのような状況におかれているのか?
・外国人学生を採用する際に、人事担当者が気を付けなければいけないことは何か?
など、お話しいたしました。
本記事では、内容の一部を抜粋しまとめました。海外人材の採用に興味のある企業さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。

●トークテーマ
✓外国人留学生在籍状況の推移と現状について、国別、大学別など様々な角度から解説
✓コロナ前後での学生の変化
✓人事担当者が外国人学生との面接で見るべきポイントについて
✓日本企業がグローバル化するために意識しないといけないこと
●こんな方にオススメ
・日本国内の留学生動向が気になっている、企業の人事ご担当者様
・外国人学生採用に課題をお持ちの企業様
・社内のダイバーシティに取り組まれている、これから取り組もうとされている企業様
●登壇者
同志社大学
グローバル・コミュニケーション学部 グローバル・コミュニケーション学科
鈴木 伸子教授
●モデレーター
株式会社ASIAtoJAPAN 代表取締役社長 三瓶 雅人
コロナ禍に来日した学生の日本語力への影響

コロナ禍では私たちの日常生活に多くの障害が発生しましたが、これは大学生活においても同様です。
鈴木教授にコロナ禍に日本の大学へ留学した学生たちの日本語能力について、コロナ前とは異なるリアルな事情を伺いました。
三瓶:コロナ禍に来日した学生たちの日本語レベルには何か影響が出ていますか?
鈴木教授:日本の大学に入学してから3年間オンラインの授業を受けている学生もいます。オンラインもすごく有効なツールではありますが、日本語をもう少し勉強しなきゃいけないような人に関してはなかなかコミュニケーションを磨く場がないんですね。完全に留学して周りが日本語環境であれば日常生活の中でもかなり日本語に慣れることができるのですが…。それがちょっと難しいというような場合、伸びしろがコロナ禍前に比べるとこれから伸びるんだけど少し時間かかってるな、というようなケースはあるかと思いますね。
三瓶:そうすると採用としてはどのように視点を移していくべきでしょうか?
鈴木教授:いつ受験しても合格するような優秀層は問題ないと思うんですが、日本語レベルがまだまだな層な人たちが一定数います。大学を卒業して就職する時に、日本語力が企業の方が求められるレベルに届いていない方がもしかしたらいるかもしれないです。その場合は日本語力ばかりを見るのではなくて、本質的な考える力があるのかを見ていただければいいかなと思いますね 。
三瓶:そうするとやはりコロナ前と今では、採用側も変化していかなくてはいけないということですね。
鈴木教授:コロナ禍で学生生活を送った学生に関しては、今までと違う対応が必要だと思います。
多くの日本企業が誤解する日本語能力の測り方

三瓶:日本語力について、いろいろな測り方やテストがありますが、この辺りについて簡単に教えていただけますでしょうか。
鈴木教授:日本語能力を測る主要なテストはいくつかありますが、おそらく一番よく知られてているのは日本語能力試験(JLPT)だと思います。日本語能力試験のN1というのが、一番高いレベルではあるんですが…かなり誤解が多いので、その話をさせていただこうかなと思います。
日本語能力試験N1は日本人の中学生レベル
鈴木教授:日本語能力試験のN1をもっていれば、日本語がものすごく上手でビジネスの場面での交渉とか文書作成とか、もう十分にできるというようにお考えの方がたくさんいらっしゃると思います。 実はそうではないよということです。
日本語能力試験は読む、聞くの2つを中心とした試験です。書く、話すのといった「算出」の部分は入っていないんです。N1は「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」とされています。この「幅広い日本語を理解できる」というのは、言語が形成された完成段階と考えていただけるといいと思います。
だいたい 0歳から15歳までの間に言語が形成されるというように言われます。中学生になると「幅広い場面で話されてる日本語がだいたい分かる」ようになりますよね。それと同じレベルと理解いただけるとよいと思います。
三瓶:つまりN1は日本人の中学生と同じレベルの日本語能力ということですね。
鈴木教授:そうです。だからそこから先の、ビジネスにおいてコピペではなくて自分の言いたいことを丁寧語とか特別な語彙を使うというようなレベルではないです。
日本語能力試験では書く、話すはテストしていない
鈴木教授:N1は上下幅が大きいとされています。書く、話すの算出部分は見ていないので、漢字圏の中国の方は合格しやすい傾向にあります。
N1というと、ビジネスメールが自由に書けるとかお客様との交渉場面ですごく丁寧な話し方ができるか、というとそうではないんです。
三瓶:日本語能力試験の最上位ですから、だいぶ日本語ができるのかなと思いますが、中学生レベルですよということですね。
鈴木教授:はい、むしろそれが当然なんです。日本語が中学生レベルとはいっても、意思の疎通は十分できますよね。日常会話ができる、それがN1の意味だと捉えていただくといいと思います。
ビジネスメールの実例

鈴木教授:日本語能力のレベル感の例として見ていただきたいのですが、以前私が勤めていた大学に国費留学生として来日したベトナム人女性のメールがこちらです。彼女はN2でした。
間違いはないですが、小学生高学年から中学1年生くらいかな、というような文章ですよね。

鈴木教授:この方は、大学卒業後に日本企業に入られました。来日して4年後のメールがこちらです。大学3年生から日本で過ごし、入社して2年目の時ですね。N1を遥かに超えたレベルですよね。
三瓶:丁寧な日本人と同等なレベルですね。
鈴木教授:日本人が書いたものとほぼ変わらない、むしろ日本人の大学生でここまで書ける方はどれくらいいるのかな、というレベル感だと思います。
三瓶:その人の能力にもよりますが、入社してだいぶ伸びますよということですね。
人事担当者が外国人学生との面接で見るべきポイント

鈴木教授:日本語が上手とか下手とかっていう時に、ツルツルと滑らかに日本語でおしゃべりされる方を「この人は日本語が上手」と思われるかもしれません。しかし、だからと言ってその人が戦力になる優秀な社員かというと、それはちょっと別の問題かなと思います。
おしゃべりが上手いだけではダメで「抽象的な概念や難しい話を論理的に語れる」のが本当に思考能力があることです。ここの部分が問われるんじゃないかなと思います。
ただ、こういう抽象的とか概念的な内容っていうのは、まだ勉強の始めたばかりの上記のメールを紹介した学生のような言語レベルだと語彙的な部分で追いつかないんですよ。 ものすごく言いたいことがたくさんあって、母語や英語だったら自分の意見をかなり難しいこととか抽象的な事を語れるし考える力がある。
でも、それを勉強中の日本語で算出する(話す、書く)という場面では、ちょっと追いつかない人が時々います。その状態だと、なかなか判断が難しいところなんですが…「本当にこの学生は思考力があるのか」私たちですら判断は難しいです。
インターンシップなど長期的な行動で学ぶ能力を見極めることが有効
鈴木教授:「学ぶ能力があるのか」を行動とか作業の結果で見ることが確実だと思います。
例えば、上記のメールを紹介したベトナム人の学生ははじめは1つ目のメールの日本語レベルでしたが授業を通してすごく努力家であることは分かりました。会社に入ってからも、きっとその調子で伸びるだろうなという予想はしていましたが、あそこまでのレベルになるとは正直、私も驚きました。
なので、アルバイトとかインターンシップとかある程度長期的な行動で「学ぶ能力」を判断するといいんじゃないかな、と思います。
日本語が下手だからダメと判断せず、反対におしゃべりの日本が上手でも思考力があるとは限らないので…表面的な日本語力に目を奪われないでください、ということを念頭に面接すると良いと思いますね。
外国人学生と面接する時のポイント
三瓶:面接で見るべきポイントはなんでしょうか?
鈴木教授:理系の方であれば、専門分野をどのくらい学んでいてどのくらい通じてるのかっていうのを、同じ分野の方…例えばSEだったら同じSEの方が面接を担当するのも一つの方法だと思います。日本語にこだわらず英語とか母語とか他の言語で面接するのも可能であれば、いいと思います。
三瓶:我々、面接をしていると企業の方に「ちょっと違うね」と言われることがあるのですが、その違うのが文化の違いなのか自社とアンマッチなのか。もし文化の違いだったらそれはウェルカムのことなのでは?という話をお伝えさせていただくケースがあります。面接で感じたちょっと違うが「何の違和感なのか?」はちょっと見ていただきたいな、と私は思いますね。
鈴木教授:「ちょっと違う」のは、どこがどう違うのか?掘り下げないと、じゃあ「どういう人だったらいいのか?」という次に繋がらないのでは、と思いますね。
ASIA to JAPANは海外のトップ学生との面接会を日本で実施しています
ASIA to JAPANは2022年以降、海外大学の訪問を再開しました。現地とのコネクションを活かし、世界のトップ学生を日本へ招き就職面接会を開催しています。
アジア11ヶ国50大学とのネットワークがあるため、世界トップレベルの学生とマッチングが可能です。
優秀な海外人材の採用に興味がある企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください!