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人事部ファスニング人事グループ黒部人材開発チームの名津井翔汰氏と家令百合果氏にお話をうかがった。(※内容は2020年発売の弊社書籍より抜粋)

【ご利用サービス】
  • FAST OFFER (外国人学生採用)

  • 【サービスご利用後の変化】
  • 外国人社員が活躍する姿をみて、刺激を受けた日本人社員がたくさん出てきた
  • 積極的に意見を言ってくれる方が多いので、職場の活性化につながった
  • 外国人材の存在が職場全体の刺激になった
  • 目次

    外国人材の採用に取り組み始めたのはいつ頃ですか。

    名津井:理工系学生の確保が年々難しくなってきているのと、 年齢や性別、国籍、学歴にかかわらず、多様なチャネルから採用していきたいと考えており、その切り口の一つとして、外国人材に対して採用を始めました。海外の大学生の採用活動を開始したのは2012年からで、毎年コンスタントに一定数を採用しています。

    現状は日本と親和性の高いアジア地域出身の学生を中心に採用をしており、実績として多いのはマレーシア、インドネシア、近年ではインドの方も増えてきています。特にインドネシアにはYKKグループの大きな工場があるので、興味をもっていただけるケースは多いようです。採用を始めて7年が経ちましたが、最近では当社の外国人社員の後輩が応募をしてくれることも増えました。

    特にファスニング事業では、海外事業を展開していく中で、現地の工場や開発拠点でリーダーとなる人材を計画的に輩出していく必要があります。そのため、国籍にかかわらず、国内外で活躍できる人材を採用し、中核拠点である富山県黒部市の黒部事業所で育成し、海外へ輩出していきたいと考えています。いろいろな文化的背景をもつ人材を採用していくことで、各国の考え方に沿ったものづくりができるのではないかと期待しています。

     

    日本人と外国人材の採用には、どのような違いがありますか。

    家令:基本的な選考の進め方は日本人と同じですが、採用時には「本当に日本で働きたいと思っているか」という点を特に確認しています。入社後には海外拠点で活躍してもらうことを期待していますが、その前に日本に腰を据えて技術・技能を身に付ける必要があるためです。また、日本に都会的なイメージを抱いていると富山の工場に来たときにギャップを感じてしまいかねないですから、黒部の環境について事前にお話をしています。

    名津井:また、グローバルに活躍したいという志向があるかを重視しています。YKKグループは約70の国・地域に展開しており、海外で仕事をするチャンスが多くあります。母国で働きたいという方もおられると思いますが、どの国へ行っても活躍できる人材を採用したいと思っています。

     

    入社後、外国人材はどのようなキャリアパスを歩むのでしょうか。

    名津井:日本人でも外国人でも、キャリアパスは同じです。入社後は双方とも同じ教育カリキュラムを受けていただき、「3年一人前」という考えの下、3年で技術者として一人前になることをめざす育成体系になっています。その計画に基づいて各職場で実務を通じたジョブトレーニングや、選抜制の1年間の海外研修などを通じて、自分の専門分野を深掘りし、入社5〜6年目に海外赴任となる流れですね。

    先日、日本で採用した外国人材の海外赴任第1号が誕生しました。ロールモデルが出てきたことで、後輩の外国人社員が将来のキャリアのイメージをもちやすくなり、定着につながることを期待しています。

     

    ジョブローテーションや終身雇用などは日本特有の制度ですが、外国人材からの反応はいかがですか。

    名津井:長期間の雇用を望む方にご応募いただいています。面接でも「海外企業だと基礎教育がなくすぐに現場に入ることが多いけれど、日本は研修制度がしっかりしているのがよい」という声が多いです。長期雇用だからこそしっかり教育を受け、その後自分のやりたい分野に挑戦できることを、むしろメリットに感じてくれている印象です。

    また、当社のものづくりの特徴である「一貫生産」に興味をもっていただくことも多く、自分の専門分野を軸に幅広い分野にチャレンジしたいというジェネラリスト寄りの考えをもつ外国人材が集まりやすいということもあります。材料から製造設備、製品までを自社で開発・生産する「一貫生産」を実現しているからこそ、いろいろな技術領域に携わりながら自身のアイデアを世界中の工場に展開することができます。このことが、技術者としての面白み・やりがいにつながっています。

     

    日本語力はいかがでしょうか。

    名津井:採用時点での日本語力は求めていません。英語で一定以上のコミュニケーションがとれることは条件になりますが、日本語は採用後教育でカバーしています。具体的には準備期間として入社3か月前に来日してもらい、会話を中心とした日本語を学ぶ授業を受けていただきます。最低限、日本語に抵抗がない程度のレベルまで引き上げることをめざしています。

    入社後は日本人と同じ研修を日本語で受けていただきますが、同期の新入社員の中には英語を話せる日本人も多くいますので、同期同士でフォローすることで、理解度の底上げだけでなく日本人の新入社員も含めた人間関係を構築できる効果もあるのではないかと思います。

     

    日本語ができないことによってトラブルになることはないですか。

    名津井:専門用語が多いので、時に言葉がわからず業務に支障が出てしまうケースはあるものの、全く仕事が進まないといったことはないですね。選考の段階では英語でのコミュニケーションなので、日本語中心の職場環境は本人にとってギャップがあると思いますし、フォローアップが必要な部分もあります。しかしながら、当社には海外経験のある社員が多く、外国人社員とコミュニケーションをとることにそれほど抵抗はないので、その点では助かっています。

     

    受け入れにあたってはどのような対応をしていますか。

    名津井:ビザの申請手続は外部へアウトソースしていますが、役所・銀行での諸手続や生活物資の調達などは来日時にわれわれがサポートしています。住居に関しては日本人の新入社員と同じ社有寮に入居しています。

     

    宗教上の対応についてはいかがでしょうか。

    家令:2017年には工場内に日本イスラーム文化センターより「ハラール認証」を取得したハラール食堂を設け、ベジタリアンとハラールに対応した食事を提供しています。海外拠点で勤務する外国人材を日本で育成するにあたっての環境整備の一環です。工場外にも当社が運営するハラール認証を取得したレストランがあり、こちらは社員だけでなく、一般の方もご利用いただくことができます。

    名津井:プレイヤールームも設けています。勤務時間は従業員一律ですので、休憩時間を少しずらしてお祈りの時間にあてるなど、そこは各職場の上長と本人が相談のうえで決めてもらっています。

     

    外国人材の採用を進めていくにあたり、今後の課題は何ですか。

    名津井:ツール面の整理ですね。当初は、社内の説明資料や各種手続関係の書類は日本語表記のものが多く、日本語で説明されてもわからないという相談を受けたこともあり、現在は入社時に必要な書類から随時、英語版の作成を進めています 。

    また、結婚した場合の対応なども整備する必要があると思っています。人事規定自体が日本人社員ベースでつくられていますので、外国人材を受け入れていくうえで今のしくみのままでよいのかということは会社としての課題です。

     

    最後に、外国人材の採用を行ったことで会社に生じた変化について教えてください。

    家令:外国人材の存在が職場全体の刺激になっています。積極的に意見を言ってくれる方が多いので、面白いアイデアが出てきたり、フットワーク軽く動いてくれたりと、職場の活性化につながっています。会社をより良くしていくための新たな気づきを得られるのは、外国人材採用の良い影響だと思います。「すごく良い人材を採用してくれた」と社員から言われることも多々あります。

    名津井:全く日本語ができない状況でゆかりのない日本に1人で来て、1〜2年で日本語を習得し、スムーズに仕事を行うようになる。そんな外国人社員の姿をみて、刺激を受けている日本人社員がたくさん出てきています。いろいろな国籍の方がより切磋琢磨できる環境をつくり出していきたいです。

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