【出張レポート】日本市場を目指す韓国学生の現状とは?〜注目される日本の半導体市場〜
ASIA to JAPANは、2024年3月25日〜28日にかけて韓国を訪問し、現地大学の視察や日本就職を目指す学生に向けた説明会を開催しました。
この記事では、訪問した大学の特徴と、実際の韓国人学生の声や韓国の教育事情等をご紹介します。
■韓国で訪問した大学
今回訪問をした、3つの大学を紹介します。
・成均館大学(ソンギュングァン大学)
成均館大学は1946年に設置された韓国の私立研究大学です。1398年の朝鮮王朝時代に設立された最高教育機関である『成均館』の伝統を引き継いだ大学で、アジア最古の大学と言われています。
1996年からは韓国を代表する大企業のサムソンが運営に参画しており、サムスングループからのサポートを受けています。
・西江大学(ソガン大学)
西江大学は1960年に設立された韓国の私立大学で、日本の「早慶上理」のような韓国トップクラスの大学の総称である『SKY』や『서성한(ソソンハン)』と呼ばれる大学群に属します。
経営学部や経済学部など文系学部を中心に企業からの評価が高いです。カリキュラムでは異なる研究分野を統合し、学際的な学習を促進する幅広い教育を学生に提供するように設計されています。
・慶熙大学(キョンヒ大学)
慶熙大学は1949年に設立され学生も23,000人以上の私立総合大学です。文系理系ともにレベルが高いだけでなく、東洋医学や看護学など医療関連の学部も得意としています。留学生のために慶煕大学校の韓国人学生が韓国語の学習や韓国での生活をバックアップする『トウミ制度(チューター)』があるなど、韓国の大学の国際化をリードする大学です。
■韓国学生の特徴
今回訪問をした大学などでASIA to JAPANが運営する支援サービス「FAST OFFER」や、日本語話者の育成を目的とした「日本語講座」の説明会を行いましたが、参加した人材には以下のような特徴がありました。
・年齢が高い傾向にある
他国と比べて年齢が少し高めの参加者が多い印象がありました。その理由が「兵役」と「大学院進学」です。
韓国の成人男性には一定期間軍隊に所属し国防の義務を遂行する「兵役」義務が課せられています。兵役は全部で7級に判定区分が分かれており、そのうち1~4級判定者は満20歳~28歳の誕生日を迎える年までに入隊しなければいけません。そのため該当する韓国人男性の大半が、大学在学中に約2年近く休学し義務を果たします。そのため卒業する年齢が他国に比べて1〜2年高くなります。
さらに理系学生は大学院に進学するケースも多いため、全体的に年齢が少し高くなる傾向があるのです。
・人気分野は「半導体」
今回の説明会では「日本の半導体メーカーに勤めるには?」という質問が多くあがりました。JETROが昨年公開した「主要韓国企業の現在地と展望(韓国)」によると、2022年の年間貿易統計のうち品目別輸出のトップが半導体と、国の主要産業として成り立っていることがわかります。
この韓国の半導体業界を牽引しているのが、大企業のサムスン電子とSKハイニックスです。その背景もあいまり韓国の大学によっては、半導体に関する講義が細分化して行われていると言われています。日本の半導体メーカーを希望する学生は、日本が持つ技術に興味を持っていることが分かりました。
・日本への順応性
韓国の学生にとって日本は、文化が似ていて韓国からも近く最先端の技術もあり、なにより福利厚生や新卒に対する教育環境が整っていることが魅力的に思えるそうです。また日本を目指す韓国学生の多くが、在学中に「問題なく会話ができる」日本語レベルまで学習しているので、日本企業が求める「語学力」も兼ね備えています。
■韓国の教育事情
今回現地を訪問することで、新たに韓国の教育事情についても情報を得ることが出来ました。
韓国には、政府が就職および職務能力の向上を希望する人に教育費を支援する制度として「国費支援制度」があり、就職準備中の大学生や失業者はもちろん、在職者も最大500万ウォンまで支援を受けることが可能です。
この制度を取り入れているのが韓国の「メガスタディ」です。メガスタディとは大学や大学院入試、さらに公務員受験分野にも長けた韓国最大の予備校のことで、オンラインやオフラインを含め全国で最も多い受講生が通っています。このメガスタディのIT分野の教育を専門とした「ITアカデミー」では、国費支援制度を通じた各種国費課程を開設しています。中でもJavaウェブ開発、AI-ビッグデータ、サーバー・ネットワーク・模擬ハッキング活用情報セキュリティ管理者などの対象となるコースは、受講生の学費全額を国費支援で受講できる「全額国費課程※」となっています。
チャットGPTなどで注目されているAI開発者を養成する「AIアルゴリズム開発コース」や、情報セキュリティに対する重要性が高まり注目される「情報セキュリティ管理者コース」などITに関わるプログラムの人気が高いです。
このようなメガスタディと政府の支援から、IT先進国の韓国では、IT人材の育成を国を挙げて行っていることが分かります。
※)希望する職業訓練にかかる費用を政府の訓練費支援を用いて受講できる課程を「国費課程」という
■ASIA to JAPANの新たな取り組み|海外の理系大学生向けオンライン日本語講座
ASIA to JAPANは海外の理系大学生を対象にしたオンライン日本語講座「ワールドワイド日本語クラス」を4月末より新たに開講します。
ワールドワイド日本語クラスは国や地域を問わず、日本就職を目指す理系大学生を日本語話者に育成を目的にしており、「日本語で面接ができるレベルまで育成」することを最終目標に掲げています。
1年半のオンライン用プログラムを予定しており、当プログラムを修了した学生はASIA to JAPANの就職支援サービス「FAST OFFER」への登録が可能となります。
■韓国学生にとっての日本市場
ASIA to JAPANでは新卒理系外国人材の就職支援を創業以来行っていますが、今回の訪問で日本就職を希望する韓国学生の数が以前に比べて減少傾向にあると感じました。
その理由が、給与面で日本と韓国の差がなくなってきていること。そして優秀な理系大学生の多くが韓国内の大手企業に入社しているということです。過去の記事でも紹介している通り、文系と理系で就活事情が大きく異なりますが、新卒学生の就職率も日本学生と比べて3割近く低い数値となっています。(過去の記事はこちら)
もし韓国人材の採用を狙うのであれば、対象者を絞り込みすぎず、かつ国防の義務も考慮して25歳以降でも積極的に採用対象にすることをおすすめします。
■まとめ
昨今の韓国学生の特徴やキャリア観について解説してきましたが、いかがでしたか?
韓国学生の採用を決める際は、入社時期を意識した準備が必要となります。韓国の大学は2月が卒業シーズンなので、卒業証書も2月以降の受け取りが多くなります。しかし、就労ビザ申請や受理まで時間を要するため、もし4月入社を目指すのであれば、卒業見込証明書を事前に用意いただくなどの対応を行いましょう。
理系人材の充足に悩む企業の方も多くいるかと思います。しかし世界に目を向けると日本の就職を夢見る優秀な学生が、チャンスを掴むため日々研鑽をしています。海外の高度人材採用へのご関心、また採用後から入社までの手続き方法など気になることがありましたら、お気軽にASIA to JAPANへお問い合わせください。