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HRコミュニケーションカンパニー人財開発部の採用課課長 辻田訓男氏、人財育成課課長 小灘隆弘氏、人財育成課 トゥガス氏にお話を伺った。

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  • FAST OFFER (外国人学生採用)

  • 【サービスご利用後の変化】
  • 実際のグローバル社員の悩みも取り入れ、グローバル人材に必要な施策を進めている
  • 日本人同期によるバディ制度など、新しい取り組みを推進
  • 目次

    外国人材採用を始めたきっかけを教えてください。

    辻田:会社が「ダイバーシティ推進は経営戦略である」という方針を打ち出し、その一環で2015年から海外大学の外国人学生の新卒採用をスタートしました。彼ら・彼女らを社内では「グローバル人材」と呼び、年間 1 〜4名を採用しています。

    当社は自動車の内燃機関エンジンに関する商品売上が 8 割を超え、自動車産業の発展とともに成長してきましたが、ご存知のとおりEV車が台頭してきました。将来的にエンジン車の需要は減少していくことが予想される中、新たな事業の柱を構築していくことが大きな経営課題となってきました。

    新しい発想を得るには異質な考え方を持つ人材が必要です。社内では「知と知の融合」という言い方をしますが、異なるバックグラウンドを持つグローバル人材が入社することで、イノベーションが生まれることを期待しています。

    グローバル人材の採用基準や評価軸で日本人との違いはありますか?

    日本語のレベルをチェックするくらいです。面接を日本語でできる程度を目安にしていますが、内定後と入社後に日本語教育のフォローもしていますので、あとから学んでもらえば良いと考えています。あとは、ただ日本で暮らすことに憧れがあるだけでなく、「日本で仕事を頑張りたい想いがあるか」を重視していますね。

    グローバル人材が入社したあとの教育やサポート体制について教えてください。

    小灘:「言葉」と「文化」の大きく二つの面から支援しています。言葉については、当社はグローバル企業と言われながらもメイン言語は日本語であり、どうしても日本語での読み書きが必要になりますので、日本語学校に通ってもらうなどして学習をサポートしています。

    トゥガス:文化に関しては、入社前と配属後に研修を行っています。

    前者については入社 1 週間前に来日してもらい、新入社員研修の内容や配属面談など、入社後の流れを説明すると同時に、日本での生活についても伝えています。海外から日本に来るグローバル人材にとっては全てが初めての出来事であり、慣れるまでは戸惑いの連続です。ですので、トラブルが起きる前提で各種手続や携帯電話の手配など、細かいところまで手厚くフォローすることを心掛けています。

    入社後は、異文化コミュニケーションに関する研修を行っています。海外と日本の文化の違いを伝えることを目的としたもので、グローバル人材向け、受け入れ部署向け、本人と部署が一緒に受けるものの三つを用意し、配属後は部署を巻き込みながら「入社後にどのようなギャップが生じやすいのか」を一緒に確認しています。

    私自身が2017年に入社したグローバル社員なので、自分の体験を踏まえながら、他のグローバル社員の悩みも取り入れ、必要な施策を会社に提案しながら進めていますね。

    トゥガスさん自身は、入社後にどのようなギャップや困り事に直面しましたか?

    トゥガス:仕事の進め方に戸惑いました。海外はジョブ型雇用であり、ジョブディスクリプションに仕事内容が明記されています。ゆえに「仕事=決まった役割がある」というイメージでしたが、日本の場合はそうでなく、周辺の仕事を積極的に取りに行く姿勢が求められます。それが最初は理解できず、苦労しましたね。「ホウレンソウ」(報告連絡相談)も苦手でしたし、「これは自分の仕事ではない」と勝手に判断して放置してしまうこともありました。

    そうして失敗しながら先輩に考え方を教わり、少しずつ違いを理解していきましたが、途中で異文化コミュニケーションの研修を受けたことで、自分がギャップを感じる理由が明確になりました。これをきっかけに仕事の進め方を変えていけた経験があるので、最初に文化の違いをインプットすることは非常に重要だと考えています。

    今はグローバル人材に対して、異文化コミュニケーションの研修をまず受けてもらい、文化の違いを事前にインプットした上で働いてもらうことで、ギャップを一日でも早く解消しようとしています。

    グローバル人材採用を始めてから、新しく作った制度はありますか?

    小灘:日本人同期によるバディ制度です。入社前の日本人内定者から希望者を募り、4 月から約 1 .5か月間行われる新入社員研修の期間中、グローバル人材のサポートをします。グローバル人材が研修内容を理解しきれていない場合にバディを頼ることになるので、説明する日本人社員の理解度を高めることにつながりますし、異文化を知る機会にもなっていますね。異なる考え方に触れることで思考の幅が広がる効果もあるように思います。

    また、グローバル人材採用を始めてから最初の 3 年間は、先輩と後輩のネットワークづくりを意識していました。研修のようなことを行ったり、お互いが悩み事を相談したりする場としてグローバル人材が集まる機会をつくっていましたが、そこで彼ら・彼女らが外国人材の取扱説明書を自主的に作ってくれたこともありましたね。

    辻田:他にもグローバル人材が自身の経験を踏まえ、後輩たちがよりスムーズに日本の生活に適応できるよう、『日特ペディア』というお助けサイトを自主的に立ち上げてくれたことがあります。このように当事者主体で整備されていくところもありますし、会社としても経験を積みながら受け入れ体制を整えてきました。失敗から学ぶことも多いですし、最初から想定できることは限られますから、採用しながら変えていけば十分だと思います。

    例えばどのような失敗がありましたか?

    辻田:採用を始めた当初は、グローバル人材とはいえ、日本人と同じように総合職として採用をしていました。ただ、海外では「就社」ではなく「就職」の考え方が主流であり、日本人よりキャリア志向も強いため、入社後に配属先を決める方法が合わず早期退職となってしまったことがありました。今では専門性を持った人材、特に理系に絞って採用し、入社後の配属先を想定しながら採用する形に切り替えています。

    小灘:早期退職の原因として、配属先の部署の問題もありました。「グローバル人材が入ればインクルーシブな組織になるだろう」という考えで配属したものの、受け入れ体制が整っておらず、上司のマインドセットもないわけですから、グローバル人材のモチベーションがどんどん下がってしまいました。グローバル人材が部署を変えるのではなく、受け入れを起点に部署が変わらなければいけないのに、それができなかった失敗事例ですね。

    制度や体制を事前に整備する必要はないものの、受け入れ側の心構えは必要だと。具体的に、受け入れ側はどのような考えを持てばいいでしょうか?

    トゥガス:多様な個人を受け入れる、オープンで柔軟なマインドが必要だと思います。「外国人だから」と特別に考えるのではなく、「国籍に関係なく、皆それぞれ違う」という前提を持つことが大切ではないでしょうか。一人一人の価値観と向き合い、その人がしたいこと、職場として期待することなど、個別に話し合うことによって誰もが自分らしく働ける会社になっていくのだと考えています。

    一方で、全てを受け入れてしまっては方向性が定まりませんので、譲れない軸はきちんと持つ必要があります。チームをリードするリーダーの存在が、ダイバーシティを進めていく上で重要だと思います。

    私は2023年 4 月 からダイバーシティ推進チームの担当にもなったので、全社的なダイバーシティの必要性の理解を高め、グローバル人材が職場に合わせ、溶け込むだけでなく、お互いが歩み寄ることで、よりインクルーシブな職場にしていきたいです。現状、グローバル人材の影響を受けているのは受け入れ部署にとどまっているので、まずはこれを全社に広めていきたいですね。

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