EN

人財開発促進部人財企画課の課長奥村徹氏、主任後藤彰臣氏、吉岡あずみ氏にお話を伺った。(※内容は2023年発売の弊社書籍より抜粋)

【ご利用サービス】
  • FAST OFFER (外国人学生採用)

  • 【サービスご利用後の変化】
  • 外国人社員とのコミュニケーションによって、どう伝えるかを考える力が備わったと実感
  • 外国人社員との交流を通じ、新たな視点から考えるきっかけとなった
  • 日本人採用以上に優秀な人材を採用できた
  • 目次

    外国人材採用を始めた背景を教えてください。

    後藤:国内の技術系学生の採用が厳しくなったことが最初のきっかけでした。それまでも、就活サイト経由で応募いただいた留学生を数年に 1 名採用することはありましたが、本格的に外国人材を採用し始めたのは2020年からになります。日本人の技術系学生からの応募が減る中で、優秀な技術系学生を確保する手立てはないかと検討した結果、外国人材の採用を行うことになりました。

    とはいえ、海外在住の外国人材を採用するのは初めてです。受け入れ経験がない中で大丈夫なのか、ビザなどの手続はどうなのか、採用した外国人材は日本の生活に慣れてくれるのか。様々な面で手探り状態であり不安も大きかったですが、当社が求める優秀な人材を採用するのであれば、手間や労力はかけなければいけません。受け入れの手続は別の課と協力してそちらにお願いするなど、人事部門内での連携を意識してスタートしました。

    もともと当社は世界中でビジネスを展開していますし、日本語が拙い海外事業所の社員が日本本社に出向することも多々あるので、外国人材採用にチャレンジすることへの後ろ向きな雰囲気はなかったと思います。

    奥村:当時はグローバル人財開発部を立ち上げ、グローバルを含めたグループ内人事の交流を進めていた時期とも重なっていましたので、そういう追い風もありましたね。

    実際に採用を行ってみて、選考の仕方に違いはありましたか?

    後藤:選考の段階で明確な違いはありませんでした。選考基準や質問項目を変えることはなく、相手の日本語レベルに合わせて丁寧に話したり、面接時間を長めに取ったりといった調整をしたくらいです。結局は人対人なので、人柄が会社とマッチしていれば入社後にハレーションが起きることは少ないだろうと思いましたし、実際にそういったことはなかったですね。

    日本語に関してはどの程度のレベルを求めていますか?

    後藤:N 2以上を基準にしていましたが、面接でコミュニケーションがとれていれば問題ないと考えています。こちらの質問の意図を捉えて回答する力さえあれば入社後にレベルアップできますので、選考時点ではそこまで高い日本語力は求めていないですね。

    受け入れにあたり準備したことはありますか?

    後藤:特別なことはしていませんが、銀行口座の開設や病院の行き方、買い物の仕方など、生活基盤を整える部分は付き添いをしながら丁寧に行いました。住居も会社の寮を用意しています。

    ただ、受け入れは手間がかかりますので特に最初は大変でしたね。4 月入社に向けて 3 月に来日していただいたのですが、人事として忙しい時期でもあるので、通常業務と受け入れ対応が重なってしまい、業務のバランスがとれないことがありました。現在は入国時期を早めて余裕を持たせたり、受け入れの人員体制を強化したりと、前年度に困ったことを地道に改善しています。

    奥村:あとは、入社前に同じ出身国の既存社員と内定者をLINEでつないだのは効果的でしたね。

    後藤:そうですね。同じ国の先輩・後輩であれば質問もしやすいですし、困るポイントも似ています。先輩が困ったことを後輩にアドバイスしてあげたり、後輩が不安なことを先輩に気軽に質問したりできた点はよかったですね。

    吉岡:新入社員は 4 か月ほど同期と一緒に研修を受けます。そこで外国人材の先輩だけでなく、日本人の同期とのつながりをつくれたのもよかったのかなと思います。

    受け入れ部署や社内に対して、事前に行ったことはありますか?

    後藤:当社では職種別採用を行っているので、採用予定の職種に関しては事前に役員や部長クラスの者に、外国人材でも問題ないか確認していました。その上で、外国人材が働いている部署に配属するようにして、丁寧に調整を行いました。

    当社の場合、管理職クラスですと過去に海外赴任や海外出張を経験した者も多いので、外国人材を受け入れることに抵抗がある人は比較的少ないと思います。

    外国人材採用を始めて 4 年目になりますが、これから新たに取り組もうとしていることはありますか?

    後藤:現在は正社員の外国人材が30名ほど在籍しており、人数が増えてきたので、宗教上の配慮をしていく必要があると思っています。

    実は昨年の入社式では、新入社員に用意したお弁当に豚肉が入っていて、マレーシア出身のムスリムの人がお弁当を食べられなかったことがありました。配慮不足だったと反省しています。来年もインドネシア出身のムスリムの人が入社する予定ですので、プレイヤールームなども、今後検討していきたいと考えています。

    吉岡:現状、ムスリムの外国人材は業務の合間にお祈りをしているようですが、業務の都合で時間がとれないときは、帰宅後に長めにお祈りの時間を設けるなどの対応をしているようです。当社に合わせて柔軟に対応してくれていますね。

    後藤:受容的で柔らかい雰囲気の人を採用していることもあって、外国人社員の皆さんにはうまく順応していただいているなと思います。その分負担をかけてしまっている面はあるので、そういう意味でも会社としてもう少し環境面での整備を進めていきたいですね。これまで面接時に宗教上の要望の確認はしていなかったのですが、今後は面接の時点で確認し、それに応じた準備をする意識を持たなければと思います。

    奥村:外国人社員の中には、きっと環境の変化に困惑をしている人もいると思います。そういった不安や会社での悩みをどこに吐き出しているのか、心配はありますね。より良い環境をつくり、定着率を上げるためにも、会社とは別に外部のサポートも必要なのかもしれないと感じています。

    総じて、外国人材採用自体のハードルはそれほど高くないですが、当社が外国人材の期待に応えられる会社なのか、という思いは常にあります。意を決して日本に来ていただくので、「こんなはずではなかった」と思われないように努力しなければいけませんね。

    振り返って、外国人材採用のポイントは何だと思いますか?

    後藤:配属だと思います。外国人材は目的意識が高い人が多く、「こういう勉強をしてきたから、こういう仕事をしたい」という意思を明確に持っている傾向にあります。面接でその点を丁寧に聞き、希望を汲み取った配属をするのが非常に重要だと感じます。

    当社は職種別採用なので希望の職種で社会人生活をスタートできますが、それでも配属で失敗してしまったことがあります。似た系統の部署が二つあり、人事が考えた配属と本人の希望が異なり、「確かにそちらの部署でもスキルは生かせるけど、よりマッチしているのはもう一つの部署だ」という本人からの指摘により、再検討して配属部署を変更しました。

    日本企業は総合職採用が多いので、配属によってはやる気を損ねてしまったり、早期離職につながってしまったりといった事態になりやすいかもしれません。当社ではそれを逆手に取り、「配属先は内定の段階で決定するので、あなたがやりたい仕事をお約束できます」と説明会や選考時に伝えています。実際、本人の希望職種を内定時に提示したことで、大手企業を辞退して当社に決めてくれた事例もあります。そのくらい、配属は重要だと思います。

    外国人材採用を始めて、社内にはどのような変化がありましたか?

    後藤:外国人社員は前向きにチャレンジする人が多いので、一緒に働く日本人社員に良い影響を与えてくれていると思います。

    奥村:外国人社員とのコミュニケーションは、言語や文化の違いを背景に阿吽の呼吸では伝わらないことも多いですから、どう伝えるか、考える力が備わりつつあるのも感じます。

    後藤:ダイバーシティの観点だと、様々なバックグラウンドの方が入ってくることによって、「こんな見方があるのか」「そういう配慮が必要なのか」といった発見が多くあります。自動車業界は変化が激しく、この先事業や組織が大きく変わる可能性もありますので、いろいろな考えを持った人と日常的に接し、交渉したり調整したりといった経験を多くの社員が積むほど、変化に柔軟に対応できる組織になっていくのではと思います。

    あとは、日本人採用以上に優秀な人材を採用できていますね。当社の場合、国内採用では中堅大学の出身者を採用するケースが多いですが、外国人材や留学生の採用では、その国の上位大学で、かつ専門性と英語力を兼ね備えている人材と出会えています。それは大きなメリットです。

    また、外国人社員が増えていくことで、社員の横のつながりからの採用も期待できると思います。前向きに働いている外国人社員が「うちの会社は働きやすいし、活躍できるよ」と言ってくれることは、人事が説明するよりも説得力がありますし、実際に昨年採用に至ったケースでは、当社の先輩社員からタチエスの話を聞き、数社の中から当社を選んでくれた人もいました。

    先日、外国人留学生の採用に特化した合同企業説明会に出展し、入社 2 年目のインド人技術系社員に協力をしてもらいました。その場に先輩社員がいれば学生から気軽に質問をしていただけますし、どういう活躍ができるのかを直接伝えられるので、候補者の安心につながったと感じます。

    吉岡:外国人社員の存在は、国内の新卒採用にもプラスになると思います。当社はグローバルでビジネスを行っていることもあり、海外に興味がある学生からの応募が多いので、外国人材の採用実績は魅力的に映るのではないかと思います。私個人としてもグローバルに事業を展開していることが当社を志望した理由の一つなので、同期に外国人材がいるのはうれしかったです。

    改めて、外国人材を採用するメリットは何だと思いますか?

    後藤:少子高齢化が進み、日本人だけでビジネスを展開するのが難しい世の中が到来することを考えれば、グローバルな視点で自社にマッチする優秀な人材を探し、獲得できる体制を整えるのは重要です。

    その手段の一つが海外大生や日本に来ている留学生の積極採用です。5 〜10年後には外国人材採用をするのは当たり前になると思うので、今のうちから取り組みを強化することにより、会社の更なる発展に貢献したいと考えています。

    奥村:当社は自動車産業の一角を担っていますが、今後を考えれば自動車以外のビジネスにも積極的にチャレンジしていかなければいけません。その時にイノベーションを起こすには、バックグラウンドの異なる人の新たな発想が必要です。その意味でも外国人材を積極的に採用したいですし、新たな市場に挑戦する際にも彼ら・彼女らの力を借り、後押ししてもらうことを期待しています。

    この記事をシェアする!