アジアの大学はここ数年、世界的にも研究力・教育力を急速に高めています。
2026年11月3日、イギリスの高等教育評価機関QS(Quacquarelli Symonds)が「QSアジア大学ランキング2027年版」を発表しました。
今回は26の国・地域から1,722校が掲載され、前年の1,534校から大きく増えています。首位は2年連続で香港大学。一方で、清華大学が9位から3位へ急浮上し、シンガポールの2校はトップ5から後退するなど、上位の顔ぶれは同じでも順位は大きく入れ替わりました。
本記事では、前回(2026年度版)の結果や先月公開のTHE世界大学ランキングと比べながら、トップ100の国・地域別の勢力図、日本の大学の現在地、そして外国人材の採用で押さえておきたいポイントを解説します。
もし「そもそも世界大学ランキングとは?」という点から知りたい方は、以下の記事を先に読んでいただくことをお勧めします。
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■QS Asia University Rankingsとは
QSアジア大学ランキングは、QSが毎年発表している、アジア地域の大学の総合力を測る主要ランキングです。東アジア・東南アジア・南アジア・中央アジアの大学が対象で、研究力や教育力に加え、国際性や雇用者からの評価も重視されます。
・評価基準:2027年度版も前年と同じ11指標
評価方法は前年から変わっていません。全体の半分を「学術的評価」と「雇用者評価」の2つの評判調査が占めます。
| 指標 | 重み(%) |
|---|---|
| 学術的評価(Academic Reputation) | 30% |
| 雇用者評価(Employer Reputation) | 20% |
| 教員/学生比率(Faculty-Student Ratio) | 10% |
| 国際研究ネットワーク(International Research Network) | 10% |
| 論文あたり被引用数(Citations per Paper) | 10% |
| 教員1人あたり論文数(Papers per Faculty) | 5% |
| 博士号保有教員比率(Staff with PhD) | 5% |
| 国際教員比率(International Faculty) | 2.5% |
| 国際学生比率(International Students) | 2.5% |
| 受け入れ交換学生比率(Inbound Exchange Students) | 2.5% |
| 派遣交換学生比率(Outbound Exchange Students) | 2.5% |
世界大学ランキングと比べると、アジア版は雇用者評価の比重が高く(世界版15%→アジア版20%)、博士号保有教員比率や交換留学生の指標が加わっています。そのため、同じ大学でも世界版とアジア版で順位が大きく異なることがあります。
■2027年度版の結果:香港大学が首位を維持、清華大学が3位へ
香港大学が2年連続の首位、北京大学が2位を守りました。トップ10の10校は前年と同じですが、そのうち8校の順位が入れ替わっています。
| 2027年 | 2026年 | 大学名 | 国・地域 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 香港大学 | 香港 |
| 2 | 2 | 北京大学 | 中国 |
| 3 | 9 | 清華大学 | 中国 |
| 4 | 7 | 香港城市大学 | 香港 |
| 5 | 7 | 香港中文大学 | 香港 |
| 6 | 5 | 復旦大学 | 中国 |
| 6 | 3 | シンガポール国立大学(NUS) | シンガポール |
| 8 | 3 | 南洋理工大学(NTU) | シンガポール |
| 9 | 10 | 香港理工大学 | 香港 |
| 9 | 6 | 香港科技大学 | 香港 |
今年の主なトピックは次の4点です。
- 清華大学が6ランクアップの3位:中国本土の大学として、北京大学に続く存在感を示しました。
- 香港がトップ10に5校:2年連続で最多。QSは香港を「最も大きく改善した地域」としています。
- シンガポールの2校がトップ5から後退:NUSは世界ランキングでは上位ですが、アジア版では6位。アジア版独自の「教員1人あたり論文数」の指標が順位を押し下げた形です。
- 韓国のKAISTが15位で復帰:前年はQSの調査規定違反により除外されていましたが、今回再びランクインしました。
また、掲載校は1,722校(うち新規195校)に拡大。国・地域別の掲載数は中国本土が448校(前年比+53校)で最多、続いてインド325校、日本153校です。(出典:QSプレスリリース)
・世界大学ランキングとの比較:顔ぶれは同じ、並び順は違う
先月ご紹介したTHE世界大学ランキング2027と並べてみると、アジアの上位校の顔ぶれはほぼ共通しています。一方、順位の並びは大きく異なります。
| 大学名 | 国・地域 | THE世界2027 | QSアジア2027 |
|---|---|---|---|
| 清華大学 | 中国 | 11 | 3 |
| 北京大学 | 中国 | 13 | 2 |
| シンガポール国立大学(NUS) | シンガポール | 15 | 6 |
| 東京大学 | 日本 | 27 | 27 |
| 南洋理工大学(NTU) | シンガポール | 28 | 8 |
| 香港大学 | 香港 | 33 | 1 |
| 復旦大学 | 中国 | 38 | 6 |
| 香港中文大学 | 香港 | 42 | 5 |
| ソウル大学 | 韓国 | 56 | 16 |
| 京都大学 | 日本 | 62 | 31 |
| KAIST | 韓国 | 64 | 15 |
| 香港城市大学 | 香港 | 70 | 4 |
| マラヤ大学 | マレーシア | 194 | 17 |
違いが生まれる主な理由は評価方法です。THEは研究や教育の質を重視するのに対し、QSアジア版は評判調査が5割を占め、国際教員や交換留学生の指標も含みます。
- 香港の大学はQSアジア版で強い:香港大学はTHEではアジア内6番手ですが、QSアジア版では首位。香港城市大学もTHE70位に対し、QSアジア版では4位です。国際性の指標で満点に近いスコアを持つためです。
- 日本・シンガポールはTHEで相対的に高い:東京大学はTHEではアジア4番手ですが、QSアジア版では27位。NUSもTHEではアジア3番手と、研究力の評価が順位を支えています。
- マレーシアはQSアジア版で存在感:THEのトップ200はマラヤ大学のみですが、QSアジア版ではトップ100に11校が入ります。
採用の観点では、清華大学・北京大学・NUSのように両方のランキングで上位に入る大学は、評価軸によらず安定した実力を持つ大学といえます。一方、片方でだけ順位が高い大学は、その評価軸(研究力か、国際性か)を確認すると特徴がつかみやすくなります。
■国・地域別に見るトップ100の勢力図
トップ100入りの大学数は、中国が28校で最多となり、前年から3校増えました。日本は12校で前年と同数、韓国は14校、マレーシアは11校です。
| 国・地域 | 2027年 | 2026年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 28 | 25 | +3 |
| 韓国 | 14 | 15 | -1 |
| 日本 | 12 | 12 | ±0 |
| マレーシア | 11 | 10 | +1 |
| 台湾 | 7 | 8 | -1 |
| 香港 | 6 | 6 | ±0 |
| インド | 6 | 7 | -1 |
| インドネシア | 5 | 7 | -2 |
| シンガポール | 4 | 2 | +2 |
| カザフスタン | 3 | 3 | ±0 |
| タイ | 2 | 2 | ±0 |
| その他(パキスタン、ブルネイ、マカオ等) | 3 | 4 | -1 |
トップ100全体で見ると、中国・シンガポール・マレーシアが数を伸ばし、インドネシアやインドがやや減らしました。上位10校の総合スコアの差はわずか1.6ポイントで、小さな指標の差が順位を大きく動かす混戦になっています。
■エリアごとのランキング
続いて、東アジア、東南アジア、中央アジア、南アジアにエリアを分けて、前年からの動きを見ていきます。
・東アジア:中国・香港が勢いを増し、韓国も上位を固める
東アジアは引き続き、トップ層が集中する地域です。
中国:清華大学(9位→3位)のほか、南京大学(19位→17位)、中国科学技術大学(21位→20位)が順位を上げました。トップ20入りの大学数と新規ランクイン校数は、いずれも中国が最多です。
香港:香港城市大学(7位→4位)、香港中文大学(7位→5位)がトップ5入り。香港浸会大学も53位から50位に上がり、トップ50入りしました。
韓国:延世大学(11位)、高麗大学(12位)、成均館大学(15位)、KAIST(15位)が上位に並びます。トップ20入りの大学数は、中国に次いで多くなっています。
台湾:国立台湾大学が23位を維持。国立成功大学(43位→33位)、国立清華大学(37位→35位)など、上位校が順位を上げました。
・東南アジア:マレーシアが過去最高を更新、インドネシアは首位交代
マレーシア:国民大学(UKM)が過去最高の20位、マラヤ大学が17位。QSによると16校が過去最高順位を記録しており、国際化の指標が伸びています。
シンガポール:NUSとNTUはトップ5から外れたものの、シンガポール工科デザイン大学(88位)とシンガポール経営大学(90位)が新たにトップ100入りしました。
タイ:チュラロンコン大学が52位で国内首位を維持。マヒドン大学は58位です。
インドネシア:ガジャマダ大学(53位)が2021年以来初めて国内首位に。インドネシア大学は47位から56位に下がりました。
ベトナム:ベトナム国家大学ハノイ校(159位)が国内首位。トップ500入りは10校に増えています。
・中央アジア:掲載校の拡大が続く
カザフスタンのアル・ファラビ・カザフ国立大学(46位)が地域トップです。ナザルバエフ大学は、前年の201位から139位に大きく上昇しました。
QSは、カザフスタンが地域を牽引し、ウズベキスタンの掲載校数も増えていると分析しています。日本企業にとってはまだ採用ルートが限られる地域ですが、注目度は年々高まっています。
・南アジア:インドは掲載数を伸ばす一方、上位校は順位を下げる
インドは掲載校数が325校(前年294校)に増え、中国に次ぐ規模です。一方で、トップ100入りした6校はいずれも順位を下げました。
| 大学名 | 2027年 | 2026年 |
|---|---|---|
| インド工科大学デリー校(IITD) | 66 | 59 |
| インド理科大学院(IISc) | 79 | 64 |
| インド工科大学ボンベイ校(IITB) | 83 | 71 |
| インド工科大学マドラス校(IITM) | 85 | 70 |
| インド工科大学カラグプル校(IIT KGP) | 90 | 77 |
| インド工科大学カンプール校(IITK) | 97 | 77 |
QSも「インドは研究成果と博士号を持つ教職員の面で首位」と評価しています。順位の低さは、必ずしも学生の質を表しているわけではありません。
【コラム】難関のIITは、なぜランキングでは低いのか
IITは入試の合格率が1〜2%程度とされる難関校で、GAFAMなど世界的な企業に就職する卒業生も多くいます。それでもランキングで上位に入りにくいのは、ランキングの評価軸とIITの特徴が合っていないためです。IITデリー校のスコアを見ると、その差がよく分かります。
| 指標(重み) | IITデリー校のスコア |
|---|---|
| 雇用者評価(20%) | 100 |
| 学術的評価(30%) | 98.5 |
| 教員1人あたり論文数(5%) | 100 |
| 博士号保有教員比率(5%) | 100 |
| 教員/学生比率(10%) | 36.0 |
| 論文あたり被引用数(10%) | 34.5 |
| 国際教員比率(2.5%) | 13.7 |
| 国際学生比率(2.5%) | 5.6 |
| 受け入れ交換学生(2.5%) | 3.4 |
| 派遣交換学生(2.5%) | 22.4 |
企業や研究者からの評判はほぼ満点ですが、次の3つの点でスコアを落としています。
- 国際性の指標が低い:国立の大学で学生の大半がインド人です。外国人教員の採用にも制度上の制約があり、留学生や交換留学も多くありません。
- 教員数に対して学生が多い:定員の拡大に教員の採用が追いついていません。
- 論文の被引用数が伸びにくい:工学に特化しており、引用が多くなりやすい医学・生命科学の分野を持たないためです。
一方で、入試の難しさや卒業生の就職実績は、ランキングにほとんど反映されません。ランキングが測るのは主に「研究機関としての総合力と国際性」であり、「学生がどれだけ優秀か」ではない点に注意が必要です。IITのように優秀な理系人材を多く輩出する大学は、順位だけで判断しないことをおすすめします。
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インド工科大学(IIT)学生採用
■日本の大学:12校がトップ100入り
日本はトップ100に12校(うちトップ50に8校)が入り、前年と同数です。最上位は東京大学の27位。筑波大学を除く11校が順位を下げましたが、多くは総合スコア自体は上がっており、他国の大学の伸びがそれを上回った形です。評判や教育環境は高く評価される一方、国際教員比率や交換留学生など国際性の指標が引き続き課題です。
| 大学名 | 2027年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 東京大学 | 27 | 26 |
| 東北大学 | 30 | 29 |
| 京都大学 | 31 | 28 |
| 九州大学 | 39 | 35 |
| 名古屋大学 | 40 | 36 |
| 東京科学大学 | 41 | 33 |
| 大阪大学 | 42 | 40 |
| 北海道大学 | 45 | 42 |
| 筑波大学 | 58 | 63 |
| 早稲田大学 | 60 | 59 |
| 慶應義塾大学 | 61 | 58 |
| 神戸大学 | 99 | 86 |
■採用担当者が押さえたい3つのポイント
順位の上下より「どの指標で評価されているか」を見る
トップ10のスコア差は1.6ポイントしかなく、数ポイントの差で順位は簡単に入れ替わります。インドのIITのように順位を下げても、雇用者評価や研究力は依然としてトップクラスという大学もあります。採用の判断材料にするなら、総合順位よりも雇用者評価や研究力などの個別指標を見るのがおすすめです。
中国・韓国・マレーシアの層の厚さが増している
中国はトップ100に28校、韓国は14校、マレーシアは11校がランクインしました。トップ校だけでなく、50~100位の大学にも優秀な学生が多く在籍しています。いわゆる最上位校以外にも目を向けることで、採用の母集団を広げられます。
インド・東南アジアは「数」で伸びている
インドの掲載校は325校、マレーシアやベトナムも掲載・上位入りが増えています。理系人材を中心に、採用候補となる大学の選択肢は年々広がっています。
■まとめ
QSアジア大学ランキング2027年度版では、香港大学が首位を維持し、清華大学が3位に躍進しました。香港と中国本土が勢いを増す一方、シンガポールやインドの上位校は順位を下げています。
日本は12校がトップ100入りを維持しましたが、多くの大学で順位はわずかに下がりました。評判や教育環境は高く評価される一方、国際性が課題として残っています。
アジア各国の大学の特徴を踏まえて採用戦略を立てることで、グローバルに活躍できる人材をより効率的に確保できるのではないでしょうか。ASIA to JAPANでは、今後も各ランキングの最新結果を定点観測でお届けします。
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出典:QS World University Rankings: Asia 2027(TopUniversities)/QSプレスリリース「QSアジアランキング2027」(2026年11月3日)