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日本語はハイコンテクストで外国人に分かりづらい?ビジネスで使えるコミュニケーション術4つ

目次

日本語や日本文化は「ハイコンテクスト」と言われ、言葉で明確に示されていない背景や文脈から想定してコミュニケーションが行われています。

  • 場の空気を読んで発言した
  • 「大丈夫」とだけ返事があったので、状況から推測して大丈夫の意味を理解した
  • 相手の発言の意図を読み違えて、ミスコミュニケーションが生まれてしまった

このような状況はハイコンテクスト文化で起こりやすいです。

ASIA to JAPANは日本で働きたい外国人と日本企業をつなぎ、これまで600人以上の日本就職を成功させてきました。日本企業で働く外国人を対象とし行ったアンケートでは、「ハイコンテクストが多くて、一緒に働く方の話し方のニュアンスを理解しにくいことがある。」との意見がありました。

本記事では、前半でハイコンテクストの意味や具体例について触れ、後半ではASIA to JAPANで働くGraceさんに下記の点を伺いました。

  • 外国人が感じるハイコンテクストな日本語の難しさ
  • 外国人が働く日本企業におすすめなコミュニケーション術4つ

 

多くの外国人メンバーが働くASIA to JAPANで実際に行なっているコミュニケーション方法を具体的にご紹介します。

リモート勤務やチャットでのやり取りが増え、相手を察する情報が減ってコミュケーションのストレスを抱えていませんか? 外国人メンバーだけでなく意図が読み取りづらいシチュエーションで役立つ実践的な内容です。ぜひ最後までご覧ください!

 

ハイコンテクストとローコンテクスト

はじめに言葉の意味について、解説します。

コンテクスト(context)とは、背景や文脈を意味する英単語です。本記事で取り上げるハイコンテクストの対になる単語はローコンテクスト。

コンテクスト(背景、文脈)の共有されている割合が高いとハイコンテクスト、低いとローコンテクストに分類されます。両者はどちらがいい、悪いということではありません。

歴史的・文化的な背景により、言葉やコミュケーションスタイルが異なるという点を理解しておきましょう。

ハイコンテクストとは?

ハイコンテクスト(high-context)とは、コミュニケーションの背景や文脈の共有されている割合が高い状態を指します。コミュニケーションの背後に共通認識があるため、言葉で示さなくてもなんとなくで意味が通じることが特徴です。

日本語や日本文化はハイコンテクストと言われています。

  • 空気を読む
  • 行間を読む
  • 忖度する
  • 阿吽の呼吸
  • 以心伝心

など、日本語にはハイコンテクストを指す言葉がいくつもあります。

ハイコンテクストの具体例

Aさん:最近、C社のプロジェクトはどう?

Bさん:山場は超えたので、今週は落ち着いています。

Aさん:そうなんだね。私はD社の提案資料作りに手こずってて、最近は残業続きなんだよね。

Bさん:私にできることがあれば手伝いましょうか?


上記のようなシチュエーションがあった場合、ハイコンテクストな文化ではAさんは「Bさんに仕事を手伝ってほしい」「仕事を手伝う姿勢を見せてほしい」といった含みを持たせている可能性があります。

そのためBさんは直接頼まれてはないものの、ハイコンテクストなコミュニケーションでは最後の発言で
「私にできることがあれば手伝いましょうか?」
「今日は急ぎの仕事がないので、19時までであれば手伝いますよ!」
など、空気を読んで発言することが期待されます。

Bさんがハイコンテクストなコミュニケーションに慣れていない場合やAさんの状況を読み取れていない場合、Bさんは「大変ですね。頑張ってください!」とだけ答えて会話が終わってしまうかもしれません。

次に紹介する、ローコンテクストな文化圏では「やんわり伝えたつもり」は基本的には伝わりません。詳しく見てみましょう。

ローコンテクストとは?

ローコンテクスト(low-context)とは、背景や文脈の共有が少ない状態で言語によるコミュニケーションに重きをおく状態を指します。意図することや指し示すことを明確に言葉で示すので、シンプルなコミュニケーションスタイルです。

英語圏のコミュニケーションは、言葉で明確に示すことが重視されローコンテクストであると言われます。言葉に重きがおかれる背景として、複数の民族が集まっていることや移民が多いなど、共通するバックグラウンドが少ないことが考えられます。このような地域では背景や文脈に依存せず、明確に言葉で示すことが重視されるのは自然な流れでしょう。

ローコンテクストの具体例

Aさん:最近、C社のプロジェクトはどう?

Bさん:山場は超えたので、今週は落ち着いています。

Aさん:そうなんだね。私はD社の提案資料作りに手こずってて、最近は残業続きなんだよね。もし急ぎのタスクがなければ、今日私の作業を手伝ってくれない?

Bさん:分かりました。今日の19時までであれば手伝います。


このようにローコンテクストなやり取りでは、AさんはBさんに手伝ってほしいことを言葉で伝えます。ハイコンテクスト文化で生活していた日本人からすると、ローコンテクストな表現は「直接的すぎる」「相手に申し訳ない」と感じるかもしれません。

しかし、ローコンテクストな文化圏では「嫌なら断ればいい」「できないときは断ることも当然」と考えられています。

このようにハイコンテクストとローコンテクストでは、コミュニケーションスタイルが異なります。

ハイコンテクストな日本語の難しさ

英語圏をはじめとするローコンテクストな文化で生活してきた外国人や日本文化のバックグラウンドを理解していない人が、日本で生活すると相手の意図が分かりにくいと感じる場面が多々あると耳にします。

実際にASIA to JAPANが行った日本企業で働く外国籍の方へのアンケートでは「ハイコンテクストが多くて、一緒に働く方の話し方のニュアンスを理解しにくいことがある。」との意見がありました。

実際に来日、就職したGraceさんに日本企業で働いて感じた日本語でのコミュケーションの難しさについて伺いました。

ひとつの単語で複数の意味がある

日本語はひとつの単語で複数の意味があることが特徴です。同音異義語がその代表です。

  • はし:橋、箸、端
  • いどう:移動、異動
  • いがい:以外、意外

前後の文脈でどの意味の単語なのか理解する必要があります。また自分が書くときは、どの漢字なのかすぐに思い出すことは難しく、アウトプットに時間がかかる場合も。

同音異義語以外にも「大丈夫」「すみません」など、状況によって意味が変わる言葉があります。このニュアンスを読み取るハードルはとても高く、ミスコミュニケーションの原因になりやすいです。

主語や目的語があいまい

日本語の文章は主語や目的語が省略されることが多いです。

長い文章でトピックが変わったときに、前の文章の主語を引き継ぐのか?それとも主語は変わったのか?文脈から読み解く必要があります。

英語では主語や目的語を省略することが、日本語に比べて少ないです。

  • 日本語:友達と図書館に行った。
  • 英語:I went to the library with my friend.

日本人が英語を勉強するときに主語や目的語をスキップしたくなるのとは逆に、英語圏の人は主語や目的語がない日本語のあいまいさに苦労します。

そのため、上記の日本語では「誰が図書館に行ったんですか?」「誰の友達ですか?」という疑問が生じる可能性があります。

実際のビジネスシーンでは、もっと文章が長く、専門用語が入るため読み解く難易度が上がります。

表情による情報量が少ない

ハイコンテクストというトピックからは外れますが、日本独特の企業文化もコミュニケーションの障害になり得ます。外国人からすると日本人は職場で表情がかたく情報を読み取りづらいと感じることがあります。

海外では職場でもフレンドリーな振る舞いがされる場合も多く「なぜ職場であまり話さないのか?」疑問に感じられます。壁を作られているように感じるため、自然と読み取れる情報が少なく、会話のラリーも減る原因になります。

職場と飲み会では上司の人柄が違うことに驚いた、という声を日本で働く外国人からよく耳にします。

 

外国人が働く日本企業におすすめなコミュニケーション術4つ

日本語を新しく学ぶ外国人にとって、空気を読むことの難易度は高いです。

アジアは同じくハイコンテクスト文化と言われますが、背景にある文化が異なります。また英語圏出身であればハッキリ言うのが当然というローコンテクスト文化で生活してきたため、空気を読むという概念から知る必要があります。

そのため日本で働く外国人は空気を読むことを覚え、まだ少ない日本語のボキャブラリーの中から言葉を選んで、相手によっては敬語を使って…とコミュニケーションの壁が多くあることを理解しましょう。

日本のハイコンテクスト文化でも外国人が活躍できるコミュニケーション術をGraceさんに伺いました。

  • 聞き返しをする
  • 外国人に恥をかかせない雰囲気づくり
  • テキストでのコミュニケーションを意識する
  • 英語のアウトプットも許容する

 

実際にASIA to JAPANで活用されており、さまざまなバックグラウンドのメンバーが活躍できることが証明されています。

聞き返しをする

日本語には、状況によっていくつもの意味にとらえられる言葉があります。

  • すみません
  • 大丈夫
  • いいです
  • はい
  • いいえ

 

一般的には前後の文脈で意味を理解することが求められますが、日本人同士でも意味を取り違えてしまうことがあります。聞き返しをすることでミスコミュニケーションを防ぐことができます。

Aさん:「明日の会議資料は進んでる?」

Bさん:「はい、大丈夫です。」

Aさん:「今の大丈夫は、もう終わっているという意味の大丈夫ですか?」

このように「大丈夫」と相手が表現したことに対し、自分の理解が合っているか確認することで正確に意図を認識することができます。

上司に聞き返すのは気後れする、聞き返すのは威圧的に感じられないか…と心配になるかもしれません。その場合は「ミスコミュニケーションを防ぐために聞き返しをしよう」とチームで認識共有すれば解決することができます。

 

外国人に恥をかかせない雰囲気づくり

日本で働く外国人は、ひらがな、カタカナ、漢字から始まり、日本文化や企業文化、さらには空気を読むことまで、日々インプットの努力をしています。

一方で、母国語のように言いたいことを表現できないフラストレーションを抱えたり、自分が外国人「代表」として正しく振る舞わなければいけないとプレッシャーを感じたりすることもあります。

状況によっては「日本語ができないと思われたくない」「伝わらないから発言しない」という思いを抱えて悩んでいるかもしれません。

このことを理解し、分からない日本語や文脈を質問しやすい雰囲気づくりがおすすめです。

そもそも認識違いしていることに気づいていない状況もあります。会議など専門用語が多く話題が難しい場合は、小休止しやさしい日本語で解説したり、「今のは分かった?」とスピーカー側から理解度を確認するとよいでしょう。

外国人に限らず、新しくチームに加入したメンバーにとって企業文化やチームの常識は、はじめて出会う情報です。そのような状況では質問しやすい雰囲気づくりがチームによい結果をもたらします。

 

テキストでのコミュニケーションを意識する

日本企業では電話でのやり取りが多用されます。電話の方がニュアンスが伝わりやすい、電話の方が早いという意見もありますが、外国人メンバーと働くのであればテキストでのコミュニケーションが彼らに安心感を与えます。

テキストであれば、次のメリットを享受できます。

  • コピペですぐに翻訳、意味合いの検索ができる
  • 見直して確認ができる
  • 後からでもニュアンスの聞き直しがしやすい

テキストの場合、聞き返しをしたい場合もスムーズです。ASIA to JAPANのチャットでは意図が分からない部分をコピー&ペースト、ハイライトしてテキストでの聞き返しが行われています。

 

英語のアウトプットも許容する

日本企業ではまだまだ、外国人社員に高い日本語能力を求める傾向があります。しかし、英語でのアウトプットも受け入れると外国人メンバーのパフォーマンスを上げることができます。

いくら熱心に日本語を学んでいる人でも、母国語や英語に比べると日本語でのアウトプットはスピードが落ちます。

ASIA to JAPANの社内チャットでは、英単語が混ざった発言もよく見受けられます。外国人メンバーは高い日本語能力を持っていますが、漢字やカタカナに変換するアウトプットに時間がかかる場合があります。

仕事の効率を優先して、英語が入ったコミュニケーションを受け入れていることでストレスなく進めることができます。

前項のようにテキストでのコミュニケーションを心がけていれば、英単語が分からないメンバーもコピペして翻訳することができるので大きな問題は発生しません。

 

ハイコンテクストとローコンテクストの違いを理解し最適な方法を探ろう

日本はハイコンテクストな文化です。それが日本語の特徴であり、日本の個性をつくる要素のひとつです。しかし、日本で働く外国人はニュアンスを読み取るのが難しいと感じることがあるのも事実です。

外国人のメンバーを受け入れる企業やチームは、そもそも英語圏と日本ではハイコンテクストとローコンテクストのように前提となるスタイルが違うということを認識しておきましょう。

外国人メンバーが日本語でのやり取りに難しさを感じるのが本人の努力不足ではなく、バックグラウンドの違い、慣れていないだけということを知り歩み寄ることが必要です。

これらを理解した上で、自社やチームに最適なコミュニケーション手段を考えてはいかがでしょうか?

ASIA to JAPANでは、アジアトップ大学の学生を集め日本で面接を行い日本企業への就職を実現しています。グローバル採用や海外人材の強化を行う企業様は、ぜひお気軽にご相談ください!

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