2026年3月、ASIA to JAPANはマレーシアとインドネシアの複数の現地大学を訪問しました。
東南アジアにおける日本就職マーケットは拡大を続けていますが、その中身はこの数年で大きく変化しています。
本記事では、現地出張で得られた最新情報をもとに、両国の大学・学生・日本就職の現在をお届けします。
出張概要と訪問背景
今回の訪問は、2026年3月初旬に実施しました。
目的は以下の通りです。
- 日本企業の採用支援の帯同
- 大学との連携強化
- 日本語授業の状況確認
訪問先は、
インドネシア
- インドネシア大学(UI)
- バンドン工科大学(ITB)
マレーシア
- サンウェイ大学(Sunway University)
- MSU(Management & Science University)
となります。
今回訪問した4大学ともに、私たちASIA to JAPANが提供する日本語プログラムには、予想以上に優秀な学生がしっかりと集まっている印象を受けました。
大学別の印象でいうと、インドネシア大学もITBも学生の集まりがよく、母集団形成ができています。
マレーシアは、サンウェイ大学が広大な土地に「サンウェイシティ」という都市型キャンパスを形成しており、日本の筑波大学のように寮や病院まで含む一体開発が進んでいます。
学費は比較的高く、海外大学との提携も多く、シンガポールの大学に近い印象でした。
MSUは大学ランキングが高く、日本にも非常に興味を持っていて、今回私たちASIA to JAPANにお声がけいただいた形になります。
日本向けの「ジャパンデスク」設置を計画し、留学・インターンシップ・就職を包括的に強化する意向が示されました。
インドネシア~「次の国」としてのポテンシャルは依然高い
ご存じの通り、インドネシアは
- 世界第4位の人口規模
- 若年層の厚さ
- 理系人材の豊富さ
などから、日本企業にとって「次の採用国」として非常に有望な市場です。
そんな中、近年インドネシアの大学では日本就職を目指す学生を後押しする動きが増えています。
背景には、インドネシアでは経済成長が続いている一方で、大卒者の就職環境は依然として厳しいという状況があります。
特に新卒採用においては、学歴や専門性があっても希望する条件(職種や給与面)での就職が難しいケースが少なくありません。
こうした理由から、学生の間では「国内だけでなく、海外も含めてキャリアを考える」という意識が広がっています。
今回の訪問でも、ASIA to JAPANが提供する日本語プログラムに、予想以上に優秀な学生が集まっていることが確認できました。
また、プログラムを通じて、日本語でのコミュニケーションが可能なレベルまで成長している学生も多く見られました。加えて、大学内外で日本語を学ぶ環境が整いつつあり、日本就職を前提に語学習得に取り組む学生も増えています。
こうした学習環境の広がりや、さらには先輩が実際に日本で就職し身近な事例が多く出来てきたことが後押しし、日本就職は一部の限られた学生だけのものではなく、「努力次第で手が届くキャリア」として受け止められるようになってきていると感じています。
マレーシア~日本就職への関心は拡大中
続いて、マレーシアにおいても日本就職への関心は高く、「すぐに日本で働きたい」という明確な意思を持つ学生だけでなく、「将来の選択肢として日本就職について知りたい」といった情報収集段階の学生にまで、すそ野の広がりが感じられます。
その背景には、マレーシアの学生にとって海外就職の選択肢が変化していることがあります。
欧米就職は依然として人気が高い一方で、近年はビザ取得の難易度が上がっており、「行きたい気持ちはあっても現実的ではない」と感じる学生が増えています。その中で、日本は比較的明確な採用スケジュールと就労ビザ制度が整っている国として認識されているのだと思います。
特に、日本独自の「新卒一括採用」という仕組みは、世界的に見ても珍しく、職務経験がない学生でも正社員としてキャリアをスタートできる点に魅力を感じる声も多く聞かれます。
私たちの過去の実績を見ても、人材の優秀さ、入社後の定着率や活躍度など、総合的にマレーシアの採用は安定していると考えています。
給与面での優位性は減少している
以前と比べ賃金格差が少なくなってきているという点で、必ずしも日本企業が有利とは言えない状況でもあります。
特にインドネシアは急速に賃金が上がってきており、インドネシア国内でも理系であれば初任給10万円を超えてきています。
もちろんマレーシアもそうです。特に直近リンギット(マレーシアの通貨)が強くなっているため、日本に来ても以前のように給料が3倍にならないケースが出てきており、学生の日本就職への意欲が相対的に下がっている状況です。
ですから、日本企業の人事としては、直近の通貨の状況を把握して、5年前、10年前と比較してどうかを考えながら採用活動をしていく必要があります。
日本では5%ずつ程度ベースアップしていたとしても、現地企業はそれ以上に上がっているところがあり、だんだんと差が縮まっています。今後も給与面での優位性は減っていく可能性を認識しておかなければなりません。
日本企業が選ばれるために出来ること
もちろん給与以外にも、日本の魅力は多数あり、そこをアピールしていくことも重要です。
インドネシアやマレーシアの学生が日本に興味を持つきっかけは、アニメやエンターテイメントであることも多く、また、日本に旅行する人も増えており、住む環境や治安の良さを実感する機会も増えています。
「日本の文化が好き」「日本で生活してみたい」など比較的ライトな動機から日本就職に関心を持ち、そこから具体的に就職を考え始める学生も多いのです。
また、前述のように、職務経験がなくても企業が人材を育成していくという日本の新卒採用文化は、キャリアや成長機会を重視する学生にとってとても魅力があります。
加えて、マレーシア、インドネシアともに、イスラム教徒が多い国です。
日本で就職するにあたり、ムスリム文化への配慮や受け入れ体制があるのか、不安に思う学生も多くいます。
近年では、祈祷時間の確保やハラール食の提供、服装の柔軟な対応など、企業側の配慮事例も増えているため、こうした事例を参考に準備を行い、情報提供していくことで、学生の不安を払拭し就職意欲を高めるポイントとなると思います。
大学ごとの違い
今回訪問して感じたこととして、トップ大学とそれ以外の大学では、状況に少し差があることです。
特にインドネシアにおいては、大学卒業後の就職先探しに苦労する学生も多くいますので、その中から優秀な学生を見つけ出すことも一つの策です。
一方マレーシアについては、今回訪問した2大学については就職にそれほど困難さはないように見受けられました。
ただ、海外の就職については大学ランキングに非常に影響するため、大学としてよりよい年収が得られる就職先とのパイプ作りは重要課題であり、日本ももちろん有力な候補の一つです。
MSUがジャパンデスクを設置するのも、日本への就職に注力していきたい考えがあるからでしょう。
学生が日本語を学ぶメリットとは
日本企業で働く場合、英語だけで業務が可能な企業は限られており、ほとんどの企業では実務レベルの日本語力が求められます。インドネシアやマレーシアの学生も、その認識を持ち、日本語を勉強する学生が多くいます。
ASIA to JAPANが各大学と提携し、学生に無料で日本語授業を提供しているのもそのためです。
しかし、せっかく日本語を学び始めても、途中で諦めてしまったり、上達しきれずに卒業する学生がいることも事実で
す。
中国や韓国の場合、在学中にN1取得は一般的ですが、インドネシアやマレーシアの場合、卒業時にN2を取れない学生も多いと言います。
大きな理由は、卒業後に日本語を活かせる良い就職先が少なく、せっかく勉強して高い日本語力を身につけても、それを活かせる仕事に着けるとは限らず、収入面で別の就職を選択せざるを得ないケースも多いからです。
東アジアと違い、東南アジアの場合まだまだ日本での就職率が低いため、高い日本語力を身につけるよりも別の勉強をしたほうが収入に直結すると考える学生も多いようです。
ただし、日本語以外の語学力でいえば、マレーシアの場合、授業は英語なので、英語はもちろんマレー語もできますし、中華系の方であれば中国語も話せるので、トリリンガル以上の採用が可能です。
現地訪問のメリット~帯同企業の例を踏まえ
今回の現地訪問は、ある企業の採用活動の帯同という目的もありましたが、現地採用のメリットを改めて実感しました。
通常の面接イベント『FAST OFFER』の場合、ある程度日本語力を身につけた学生が来日して日本で面接をするわけですが、現地に赴くことでより優秀な学生を採用できることが確認できました。
今回帯同した企業では、まだ日本語が仕上がっていない早い段階で、日本語と英語と両方を使いながら面接を行い、通常よりも優秀な学生を多数採用していただくことができました。この後、卒業までの期間で日本語授業を行い日本語力をアップさせていきます。
この方法は、非常に有効な手段だと思います。
インドネシア、マレーシアともに今後も優秀な人材採用が見込める国ですから、まず採用を開始して体制を整え、その後の環境整備も含めて採用しやすいサイクルを作ることは価値があります。
現地に赴いて日本語勉強中の優秀な学生を英語または通訳を付けて面接し内定を出してから、入社までの期間で日本語を仕上げるやり方は、企業側もワンランク上の学生を採用できるうえ、学生側も安心して日本語の勉強を頑張ることができるので、とても有効な手法だと感じました。
今回訪問した大学
■インドネシアで訪問した大学
・インドネシア大学(Universitas Indonesia/UI)
インドネシア大学は、インドネシアで最も歴史のある国立大学のひとつで、オランダ植民地時代の1849年に設立され、1851年に教育活動が開始された「ドクタージャワ学校」を起源としていまる東南アジアでも屈指の総合大学です。
その後、発展を続け1946年には複数の学部を統合した臨時大学が設置され、1950年に現在の Universitas Indonesia(インドネシア大学)の名称が確立しました。
現在はジャカルタと西ジャワ州デポックの2つのキャンパスを持ち、医学、工学、法学、社会科学、経済・経営、コンピュータサイエンスなど多様な学部・研究科を擁しています。
また、国際交流や研究活動にも力を入れ、国内外で高い評価を受けている大学のひとつです。
・バンドン工科大学(Bandung Institute of Technology/ITB)
バンドン工科大学は、インドネシアを代表する理工系の国立大学で、理工分野における国内最高水準の教育・研究機関のひとつです。
インドネシア初の技術系教育機関として1920年に設立された工業高等学校を前身とし、1959年に現在の「Institut Teknologi Bandung(バンドン工科大学)」として正式に設立されました。
所在地は西ジャワ州バンドン市で、工学・理学・デザイン・経営など多様な学部・大学院プログラムを提供しています。
国内外から多くの学生が集まり、インドネシア国内で入学が非常に競争的な大学の一つとされています。
■マレーシアで訪問した大学
・サンウェイ大学(Sunway University)
サンウェイ大学は、マレーシアを代表する私立大学のひとつで、クアラルンプール近郊に広がる「サンウェイシティ」と呼ばれる複合開発エリアの中に位置しています。
大学、学生寮、商業施設、医療機関などが一体となった都市型キャンパスが特徴で、国際色も豊かです。
海外大学との提携も多く、グローバル志向の学生が多く集まっています。
・MSU(Management & Science University)
MSUは、マレーシア国内で高い評価を受けている私立大学で、実学志向の教育に強みを持っています。
医療、ビジネス、ホスピタリティ、工学など幅広い分野を展開し、産業界との連携にも積極的です。
近年は日本との連携強化にも力を入れており、留学・インターンシップ・就職まで一体で支援する体制構築を進めています。
まとめ
今回の訪問で得られた情報を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
日本就職に興味を持つ学生が多数いる一方で、給与面での優位性低下や、日本語を学ぶハードルなど、採用する側が課題として認識しておかなければならない点もあることがわかりました。
その中で、現地に赴いて採用を行う利点は、ワンランク上の学生を日本語が仕上がっていない段階で確保できる可能性が高いということです。
ASIA to JAPANでは、通常の『FAST OFFER』だけでなく、各企業様の状況を踏まえた様々なご提案が可能です。
インドネシアやマレーシア人材のみならず、他国も含めた海外人材への関心や採用プロセス、大学へのアプローチ方法などについてご相談がある場合は、お気軽にASIA to JAPANまでお問い合わせください。
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