外国人労働者の賃金はいくらに設定すべき!?産業別・国別比較
外国人材を雇用しようと思ったときに気になる賃金。いったい給与はいくらにすべきなのか?迷う人事担当者様も多いのではないでしょうか。
そこで今回は外国人労働者に支払う適切な賃金について、日本の法律にも触れながら解説していきます。
外国人労働者にも最低賃金が適応されるのか?
外国人労働者にも、最低賃金は適応されます。最低賃金法に国籍は関係なく、外国人労働者の最低賃金は日本人労働者の最低賃金と同額です。
その理由は、日本で働く人に対しては国籍を問わず日本の法律が適用されるからです。外国人労働者として日本に来る人は、東南アジア諸国などの平均賃金が日本と比較すると低い国出身であることが多いです。しかし、日本で働く以上は日本の最低賃金が提供されることに留意してください。
日本の最低賃金法
最低賃金法とは、賃金の最低額を保証する”法律”です。賃金の最低額が決められた背景は、労働者の賃金を適正な額として不当に低くならないようにすることです。
最低賃金は基本給や諸手当といった基本的な賃金のみが対象となり、残業代や通勤手当、ボーナスなどは最低賃金の対象外となります。
技能実習生でも最低賃金を下回ることは違法!
たとえ技能実習生であっても、最低賃金を下回ることは違法に当たります。外国人労働者の賃金に関する問題として、実際に一部の企業が外国人労働者を最低賃金以下で働かせていることがあります。もしも、最低賃金法に違反していた場合以下の罰則を受けます。
①最大で過去2年分の差額を支払う
最低賃金未満の給与しか支払っていなかった場合には、最大で過去2年分の差額の支払いが雇用主に課されます。ただし、2020年4月1日に施行された改正労働基準法では、賃金請求権の消滅期間が2年から5年に変更されています。当面は3年とされていますが、2022年4月1日以降に差額を支払う場合には、過去2年以上の期間が支払い対象となり、支払う金額がより大きくなります。
②差額を支払わなかった場合には罰金を課せられる
地域最低賃金との差額を支払わなかった場合には、最低賃金法40条に則り、50万円以下の罰金に処せられます。また特定(産業別)最低賃金との差額を支払わなかった場合には、「賃金全額支払い原則」違反となり、労働基準法24条と120条に則って、30万円以下の罰金に処せられます。
労働基準法ではどのように書かれている?
労働基準法における最低賃金は、同法から派生して生まれた最低賃金法で定められた金額で、企業は最低賃金以上の賃金を従業員に支払わなければなりません。最低賃金は時給として定められていて、1カ月の諸手当を含む基本給が対象です。最低賃金には、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の2種類があります。
この2つのうち、両方が適応される場合には、高い方の最低賃金を支払わなければなりません。
地域別最低賃金
地域別最低賃金は地域によって賃金の差はありますが、業種を問わず、正社員以外のパートやアルバイト、外国人労働といったようにすべての労働者と使用者に適用されます。
特定(産業別)最低賃金
特定(産業別)最低賃金は特定の産業を対象にしていますが、同じ産業であっても地域によって最低賃金が異なります。
日本の労働者の賃金
外国人労働者の賃金に対する理解を深めるためには、日本労働者の賃金と比較することでイメージしやすくなるのではないでしょうか。そこで、外国人労働者の賃金についてみていく前に、日本の労働者賃金について、厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況」をもとに、詳しくみていきたいと思います。
企業の規模別
令和4年時点で、日本の平均賃金(男女計)は311,800円です。企業規模別に賃金を見ると男女計では大企業で348,300円、中企業で303,000円、小企業で284,500円となっています。男女別にみていくと、男性は大企業で386,600円、中企業で331,200円、小企業で308,100円、女性は大企業で278,200円、中企業で257,000円、小企業で241,300円となっています。
日本の地域別比
都道府県別の賃金 をみると、全国計(311,800円)よりも賃金が高かったのは5都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県)となっており、最も高かったのは、東京都(375,500円)でした。
外国人労働者の賃金
では外国人労働者の賃金は日本人と比較してどのくらいなのでしょうか。
一般労働者のうち外国人労働者の賃金は248,400円となっています。在留資格区分別にみていくと、専門的・技術的分野(特定技能を除く)が299,600円、特定技能が205,700円、身分に基づくものが280,700円、技能実習が177,800円、その他(特定活動及び留学以外の資格外活動)が220,900円となっています。
日本人の賃金と比較すると、おおよそ6万円の差があることが分かります。
外国人労働者が日本で暮らすときにかかる費用
賃金の平均について理解できたところで、その給料は日本で生活する上で十分なものなのでしょうか?生活費や仕送りにいくらかかるのかを見ていきます。
1ヶ月の生活費
総務省の「家計調査報告」によると、2022年(令和4年)度における1人暮らしの方(平均年齢58.3歳)の消費支出(個人や家族が生活を維持するために行う生活費)の1か月平均はおよそ161,753円 という結果が得られています。ただしこのデータは、日本全国の世帯調査による平均のため、東京都内など家賃の相場が高い地域においては特に家賃が高くなり、毎月の生活費がもう少し高くなります。1年間の中では9月〜12月期の支出が最も多くなっています。
内訳は以下の通りです。
- 家賃 23,322円
- 食費 43,276円
- 水道・光熱費 13,098円
- 家具・家事用品 5,613円
- 被覆および履物 5,280円
- 保険・医療費 7,441円
- 交通・通信費 19,344円
- 教育 2円
- 教養娯楽 18,700円
- その他 25,678円
合計 161,753円
母国への仕送り
外国人労働者は、日本で暮らす生活費を賄うだけでなく、母国にいる家族のために仕送りを送らなくてはならない人々も多いです。仕送り金額は人によって異なりますが、収入の半分以上を仕送りに当てている外国人労働者も少なくありません。また、現在日本では円安が進んでいるため、その影響でさらに労働者が苦しい状況に追い込まれていると考えられます。
外国人労働者と課税
外外国人労働者に給与を支払う場合、所得税の源泉徴収及び住民税の特別徴収が必要となります。今回は「所得税」の仕組みについて見ていきたいと思います。
居住形態によって変わる所得税
外国人労働者は、その方の居住者・非居住者の区分によって課税所得の範囲が異なります。
国籍とは関係なく、日本国内に住所がある場合や、1年以上居所がある場合は「居住者」に分類されます。
「居住者」以外の外国人は、「非居住者」となります。非居住者の具体例としては、短期的に日本に来て働いている人(ワーキングホリデーやインターンなど)や、日本に来たがまだ1年間も居住していない労働者などが当てはまります。
また、居住者は、さらに「永住者」と「非永住者」にわかれます。
過去10年間で、日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以上になると「永住者」に区分されます。5年以下の場合は「非永住者」となります。
(参考元サイト:国税庁「居住者と非居住者の区分」)
居住者の課税範囲
居住者の場合は、「永住者」と「非永住者」で所得税の課税範囲が異なります。所得税は日本人と同じ税率によって計算され、年末調整または確定申告で納税します。
永住者の場合
永住者の場合は、以下に対して所得税が課税されます。
- 国内外で生じた所得
非永住者の場合
- 国内で生じた所得(国内源泉所得)
- 上記以外の所得のうち国内支払のもの又は国外から送金されたもの
非居住者の課税範囲
- 国内で生じた所得(国内源泉所得)
(参考元サイト:大阪外国人雇用サービスセンター「外国人雇用Q&A(令和5年6月版) 」)
日本で働く外国人は賃金についてどう思っているか
給与に不満を持っている人は全体の15%
ASIA to JAPANでは、2023年7月に、現在日本に在住し日本で就業中の外国人材171名を対象にアンケートを実施しました。実際に日本企業で仕事を始めた後は何に不満やストレスを感じているのでしょうか。
アンケートを詳しく見る:ASIA to JAPAN 【171名に聞いた!日本で働く害奥人材へのアンケート結果】
最も不満に感じていることは「日本人の上司や先輩、取引先とのコミュニケーション」(25%)で、「給与水準が低い」と回答したのは15%程度となりました。
フリーコメントで見られた「業務に対して給与が見合っていないと感じる。与えられる業務もルーチンタスクが多く成長できない」という不満については、外国人材特有のものではなく、日本人の若手社員も同様でしょう。
日本企業では新卒社員に対し、一定期間待遇を一律とすることが多いですが、実力や成果に応じて業務を振り分け、それに見合った給与を支払うことは長く勤めてもらう上で重要なポイントです。
少子高齢化により希少性が高まる日本人の若手人材も同じような不満を抱えていること、人手不足により外国人材採用をやらざるを得なくなることを踏まえて考えれば、この点は企業側が見直すタイミングにあるといえます。
また 外国人材ならではの不満としては、「税率がとても高い。円安の影響もとても大きいと感じる」というものでしょう。
母国に住む家族に送金をしている人にとって、円安の影響により母国への送金額が目減りしているのは事実です。
年収500万円を支払っていたとしても、円の価値が下がれば海外での価値は実質450万円ということが起こり得るのであり、入社後に昇給したとしても、外国人材の母国での価値は昇給前と変わらないこともあるのです。
企業側が対応できる話ではないですが、そのような事実があることは認識しておきたいポイントです。
日本で働く外国人労働者の生活を守るために
日本で働く外国人労働者の生活を守るためには、少なくとも最低賃金は支払っていなければなりません。そして、日本語が流暢に使えないことなどによる差別や偏見をなくし、外国人労働者の労働環境を改善する必要があります。
最低賃金が支払われていない、円安が進んでいる、差別・偏見があるといった理由で外国人労働者が日本の企業もしくは日本自体から離れてしまうことは、日本企業の衰退やグローバル市場での成長を見込めない要因にもつながると言えるでしょう。
外国人労働者の労働権利を守ることが、日本企業の安定・成長にも影響します。
外国人労働者の受け入れに不安がある方はASIA to JAPANにご相談を
ASIA to JAPANとは
ASIA to JAPANは高度外国人材の採用をサポートする企業です。
日本語が話せるアジア最高峰の学生と東京で出逢える採用イベント『FAST OFFER』を開催しています。学生はIT、電気、機械の学部が中心で、約7割~8割が日本語で面接可能です。
ASIA to JAPANの強みは、アジア各国で実施している日本語授業、企業が日本にいながら海外の学生と面接・採用が可能であること、一気通貫の受け入れサポート(就労VISA取得、来日サポートなど)を行なっていることです。
「外国人材を採用したいけど、コミュニケーションが取れるか不安だ。」「優秀な外国人材を雇いたいが、どのようにすればいいかわからない。」
といった悩みを抱えている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。