EN

【171名に聞いた!日本で働く外国人材へのアンケート結果】日本で働き始めて感じた不満・ストレス

目次

ASIA to JAPANでは、2023年7月に、現在日本に在住し日本で就業中の外国人材171名を対象にアンケートを実施しました。
前回は『日本企業への就職前に外国人材が感じていること』と題し、アンケート結果をお伝えしましたが
この記事では『日本で働く外国人材が抱く不満・ストレス 』を中心にお伝えしていきます。

アンケート概要・回答者プロフィール

アンケート概要

日本で働く外国人材が抱く不満・ストレス

これまでのアンケート結果から、入社前および入社当初の外国人材が言葉や文化の違いなど、日本ならではの慣習やルールに対して戸惑いを覚えていることが見えてきました。
では、実際に日本企業で仕事を始めた後は何に不満やストレスを感じているのでしょうか。
 


最も不満に感じていることは「日本人の上司や先輩、取引先とのコミュニケーション」(25%)ではあるものの、総じて多いのはやはり「特になし」でした。また、日本企業が外国人材の受け入れに際して心配することの一つが宗教への対応ですが、「宗教や食文化など異文化を理解してもらえない」と答えた人は5%にも満たない結果となりました。 

 アンケート回答者の現在の勤務環境の約半数が「日本語のみの環境」であることを踏まえれば、回答者の勤務先は必ずしも先進的な企業というわけではないでしょう。それにも関わらず「(不満は)特になし」がこれほど多い結果を見れば、外国人材に向けた特別な制度を用意したり社内環境を整備したりといった対応の必要性はそれほど高くないともいえます。 


要するに、企業が気にするほど外国人材は不満を抱いていないのです。アンケートに回答している外国人材の多くは「チャレンジしたい」と母国を飛び出したのであり、異文化に身を置くことへの覚悟を持って日本に来ている人材です。文化や言語の違いは事実としてあり、それに紐づくコミュニケーションや孤独感などの課題は不満を感じるポイントの上位にきているものの、そういった点のフォローさえ行っていれば、制度や仕組みの部分はそれほど気にする必要はないことが読み取れます。 

 詳細は後述しますが、上位の「日本人の上司や先輩、取引先とのコミュニケーション」「身近に相談できる相手がない」については外国人材特有の背景が大きく影響しているものの、「給与水準が低い」「仕事内容がつまらない、やりたい仕事に携われない」「仕事の量が多すぎる」への不満の内容は日本人の若手人材が抱く不満とほとんど同じでした。文化や言語など明確に異なる点以外、不満を抱えるポイントは日本人も外国人材も変わらないことが分かります。  

要は外国人材だからといって特別に考える必要はないのです。従来は「日本の雇用慣習に合わせてもらうためにどうするか」と考える側面もありましたが、日本人の若手人材と外国人材の価値観が似通ってきた今、既存社員に向けた改善を行なっていれば、結果的に外国人材の満足度も高まるというシンプルな話に過ぎません。総じて「外国人材にとって良い組織は日本人にとっても良い組織」であることを裏付けるアンケート結果といえるでしょう。 

 以下、各項目の具体的な内容について紹介します。


日本人の上司や先輩、取引先とのコミュニケーション
 

上司や先輩、取引先とのコミュニケーションに対して不満やストレスを感じるのは、外国人材に限った話ではありません。日本人の新卒であっても同様です。 ただし、詳細を見ていくと外国人材ならではの悩みが見て取れます。 まずは言葉に関するものです。外国人材の日本語力に応じて、噛み砕いて説明をしたり、通常より時間をかけて意見を聞いたりといった配慮は必要でしょう。 

中には「コミュニケーションが難しい理由が、自分の日本語力不足なのか、相手の説明力不足なのかがわからない時がある」という指摘もありました。言語やバックグラウンドの違いがあるからこそ、「このくらいの説明で伝わるだろう」ではなく、どの程度理解しているのかを確認しながら丁寧に話すことが重要です。


「本音と建前の概念がわからずとても苦労した」という意見も見られましたが、外国人材とのコミュニケーションにおいては察してもらうことを期待するのではなく、曖昧さを排しはっきりと伝える努力も求められます。
 

出身国や個人の性格によっても感覚は異なるため、実際のところは本人が仕事をしながら感覚を掴んでいくしかないが、受け入れ部署や上長もまた、外国人材の中には上下関係の考え方自体に馴染みがない人がいることは知っておきたいポイントです。 

 「日本人と外国人ではバックグラウンドが全く違う。上司やマネジメント層にはその前提を理解し、日本人の同期と比べないでほしい」という回答がありましたが、まさに指摘の通り、異なるバックグラウンドから来る日本人とは違う視点こそが外国人材の強みであることを忘れてはいけません。 

他に「オフィスがとても静かで気軽に質問をしていいのか戸惑った」「日本人は普段プライベートの話をしないのでコミュニケーションが取りづらい」といった回答も寄せられました。出身国にもよりますが、海外と比較し、日本は人との距離感が遠い傾向にあります。その前提を踏まえ、話しやすい雰囲気づくりをしたり、時にはフレンドリーにプライベートの話をしたりと、外国人材に歩み寄る姿勢も必要です。 

ただし、日本人の中にもプライベートをあけすけに話す人もいれば話したくない人がいるのと同じように、外国人材も出身国や個人によって感覚は当然異なります。あくまで傾向の話であり、一括りに「こういうものだ」と決めつけないことの重要性は改めて指摘しておきたいです
 

身近に相談できる相手がいない

日本人と海外から日本に来ている外国人材の違いの一つが、家族や友人の存在です。来日後間もない外国人材の大多数は、日本に親しい人がいません。さらに外国人材の中には「友人をつくったり、周囲の人との関係性を深めたりするのが難しい」と感じている人も一定数いるようです。


なお、日本で働く中で困ったときに誰に相談したかを聞くと、多いのは「日本にいる友達」(36%)「母国にいる家族・友達」(29%)という結果になりました。注目すべきは「会社の人事」と回答した人が21%しかいない点でしょう。

人事に相談する人が少ないからこそ、同期や外国人メンバーなど横のつながりをつくることが重要なのであり、ぜひ会社側で社内のネットワークづくりについて支援を検討していただきたいです。

「初めは友人を作るのも難しく孤独だったが、同じように他国から日本に来て働いている友人ができて気持ちが楽になった。来日する前から友人とのつながりをつくっておくべきだと思った」という回答からわかるように、入社前からチームメンバーや同期、同じ外国人メンバーとの交流の機会を設けるなど、あらかじめ周囲との関係性の基盤づくりをすることで外国人材の孤独感は減らせるはずです。 

他に、外国人材の相談窓口を用意するのも有効です。中には「会社には外国人が少なく、英語が話せる人も少ない。体調を崩した時は孤独感を感じた」という意見もあり、英語で相談ができる場所があることも外国人材の安心感につながることが想像できます。 

なお、一番良いのは外国人材を増やすことです。同じ立場で悩みを相談できる人を増やすことにつながり、先輩ができればロールモデルとしてキャリアの参考にもなります。

給与水準が低い 

「業務に対して給与が見合っていないと感じる。与えられる業務もルーチンタスクが多く成長できない」という不満については、外国人材特有のものではなく、日本人の若手社員も同様でしょう。

日本企業では新卒社員に対し、一定期間待遇を一律とすることが多いが、実力や成果に応じて業務を振り分け、それに見合った給与を支払うことは長く勤めてもらう上で重要なポイントです。少子高齢化により希少性が高まる日本人の若手人材も同じような不満を抱えていること、人手不足により外国人材採用をやらざるを得なくなることを踏まえて考えれば、この点は企業側が見直すタイミングにあるといえる。現に、最近では職種や過去の実績に応じて新卒社員の待遇に差を付ける日本企業も出てきています。 

 外国人材ならではの不満としては、「税率がとても高い。円安の影響もとても大きいと感じる」というものでしょう。
まず、母国に住む家族に送金をしている人にとって、円安の影響により母国への送金額が目減りしている現実があります。

年収500万円を支払っていたとしても、円の価値が下がれば海外での価値は実質450万円ということが起こり得るのであり、入社後に昇給したとしても、外国人材の母国での価値は昇給前と変わらないこともあるのです。企業側が対応できる話ではないが、そのような事実があることは認識しておきたいポイントです。 

また、日本は海外と比較し、所得税などの税率がやや高い傾向にあります。これもまた企業側が変えようのない話ではあるが、例えばシンガポール企業と日本企業の両方から同じ年収額でオファーが出た場合、税金額を差し引いた手取り額を算出して比較する外国人材もいることは知っておきましょう。

採用時に自社が不利になりそうな場合は、福利厚生などのプラス要素を全て提示し、候補者にメリットを感じてもらうことが重要です。

仕事内容がつまらない、やりたい仕事に携われない

「今の仕事内容は自分の大学時代の専攻と全く異なっており、自分の力が生かせていないと感じる」「面接の際に聞いていた業務内容と違う」といった不満は、まさにメンバーシップ型雇用の弊害です。

日本企業は総合職採用であり、「とりあえず新卒採用枠で入ってもらう」という考え方が根強く、入社後は一律で研修を受けさせ、適性を考えて配属先を決めるケースが多いことからこういった不満が起きやすいという事実があります。

そしてこの不満もまた、日本人の若手が抱く不満と共通しています。最近ではコース別採用や職種別採用を行う日本企業も増えつつありますが、この流れが加速すれば外国人材採用も行いやすくなるでしょう。

また、「ルーチンタスクが多く、チャレンジングな仕事がない」という声もありました。先に紹介したアンケート結果では、外国人材が日本で働きたい理由の1位は「チャレンジしたかったから」という結果に表れているように、実際に国境を越えて日本で働いている時点でチャレンジ意欲は高い人材なのであり、だからこそ難易度の高い仕事を与えることによって仕事に飽きさせないことを意識したいです。


(関連記事)
【171名に聞いた!日本で働く外国人材へのアンケート結果】外国人材の日本語力について
【171名に聞いた!日本で働く外国人材へのアンケート結果】日本企業への就職前に外国人材が感じていること
【171名に聞いた!日本で働く外国人材へのアンケート結果】外国人材が日本企業に求める支援制度

 

この記事をシェアする!