Web面接が普及する中、物理的な距離に関係なく選考ができるようになったことで、外国人材の採用において母集団を形成しやすくなり、外国人学生と出会うチャンスは増えました。
ただ、国によって、日本への就職に対する不安は異なります。「外国人材」と一括りにしてしまいがちですが、個々人が抱える事情は国により、個人により、さまざまです。
だからこそ、まずは相手の出身国や置かれている環境を理解し、その上で目の前の個人に向き合うことが重要。そこで、各国の事情や学生についての理解を深める機会を作ることを目的に、7月31日(金)にオンラインにて、書籍『外国人高度人材はこうして獲得する! ―「準備」「手続」「定着」の採用戦略』出版記念セミナーを開催しました。
テーマは『アジア各国の教育現場に学ぶ、外国人社員「定着」と「活躍」の秘訣』。ASIAtoJAPANが日本語研修を展開する国の中から4カ国の大学の日本語教師の方をゲストにお招きしました。
セミナーには人事担当者30名弱が参加。質疑応答では多くの質問の声が上がりました。本レポートでは、その一部をご紹介します。
<登壇者>
・シンガポール:南洋理工大学(Nanyang Technological University/NTU) チェン先生
・ベトナム:ハノイ工科大学( Hanoi University of Science and Technology/HUST)トゥ先生
・インド:プネ大学 (Savitribai Phule Pune University/SPPU)シュルティ先生
・インドネシア:インドネシア大学(University of Indonesia/UI)レア先生
自国の学生が優れていると思う点は?
<シンガポール:南洋理工大学 チェン先生>
・語学力
英語はネイティブ、中国語もほぼネイティブという、ビジネスをする上でこれ以上ない好条件。
<インド:プネ大学 シュルティ先生>
・自ら学ぶ姿勢
プネは「東のオックスフォード」と呼ばれる地域で、最新設備の研究環境が整っており、学生には自ら学ぶ姿勢があります。語学面も多言語国家で英語と現地語が堪能ですが、理系の勉強をしながら1年半程度で日本語を習得する人が多く、学習力の高さが伺えます。
<ベトナム:ハノイ工科大学 トゥ先生>
・チームワーク
研究をしているのを見ていて、チームワークの良さを感じます。大学では実用的なものづくりをしており、興味関心の分野が同じ学生が集まって機械をいじっていたりします。
<インドネシア:インドネシア大学 レア先生>
・積極性
遠慮せずに意見を人に伝えることができます。多文化のなかで育っているので、新しい環境に適応しやすく、新たな体験にも興味を持って前向きに取り組むことができます。授業でも興味があればどんどん参加する積極性があると思います。
また、国立大学にが入るためには英語力が必要であり、英語も堪能です。
学生たちはなぜ日本へ就職したい?
<インド:プネ大学 シュルティ先生>
以前は欧米への就職が盛んでしたが、ビザ取得が難しくなり、また就職先も飽和状態になりつつあるため、アジアの先進国に注目が集まっています。欧米に比べて同じアジアであることから文化が似ており、両親も本人も安心できるメリットも。
中でも日本は環境が整っており、特にインフラ建設などの分野の日本企業はインド人にとっても身近な存在。動画のサブスクサービスでも日本ドラマが人気です。
<ベトナム:ハノイ工科大学 トゥ先生>
技術が進んでいることが大きいと思います。卒業後もさらに専門分野を学びたいと考える学生にとって、日本は魅力的に映るようです。
自国の企業と比較して、日本企業の良いところは?
<シンガポール:南洋理工大学 チェン先生>
国内市場に向け事業を行う企業もあれば、国際的な企業もあり、会社規模が小さくても、専門的な部分で秀でた企業があるのも魅力ですね。
<インド:プネ大学 シュルティ先生>
社員の面倒見が良く、特に研修が優れていると思います。インドはJOB型採用ゆえに学生から社会人にシフトするのが大変ですが、日本企業は研修で会社環境など理解でき、学生から社会人へのシフトが緩やかにできます。
また、ジョブローテーションがあり、いろいろなチャンスがあるのも良いところ。給料や手当が安定しているので、安心して働けると思います。
日本へ就職する時の不安は?
<シンガポール:南洋理工大学 チェン先生>
・制度の違い
年功序列のシステムにより、「実力があっても評価されないのでは」と考えてしまう人は多いです。ボーナスについての考え方も異なっていて、日本は成果を出しても金額にさほど変化はないですが、シンガポールは評価により毎年金額が変わります。それがモチベーションにつながっている面もありますね。
・日本語
英語で話が通じてしまうことも多く、日本語学習のモチベーションを維持しづらいと感じます。
<インド:プネ大学 シュルティ先生>
・日本語
ある程度日本語力を身に着けていても、敬語やビジネス日本語が非常に難しいです。
・食事
インド人はべジタリアンが多く、飲み会で肉や酒に戸惑うケースは多いです。
<ベトナム:ハノイ工科大学 トゥ先生>
・日本語
特に敬語が不安だという声をよく耳にします。
・食事
時間の経過とともに順応する人が多いものの、ベトナム人は生ものをあまり食べないので、食事会で困ったりお腹を壊したりすることも。
<インドネシア:インドネシア大学 レア先生>
・宗教
特にイスラム教徒はお祈りや食事、断食などを続けられるか心配しています。
・自然災害
訓練をしていないので、対応の仕方がわからず、不安に感じる人は多いです。
・働き方の違い
残業の多さを心配しています。また、間違えたり失敗してしまったりすることへの恐怖心があるとも感じますね。