注目される企業のダイバーシティ採用!定義や成功事例についてご紹介
人事担当者や採用に何かしら関わったことがある人は、「ダイバーシティ」という言葉を聞いた事があるかもしれません。しかし、馴染みがある人の割合の方が比較的多いでしょう。もしかしたらこの言葉は、将来企業にとってとても重要な言葉になるかもしれません。今回は、このダイバーシティについてご紹介いたします。
ダイバーシティとは何か
ここ数年で耳にすることが多くなった「ダイバーシティ」ですが、聞いたことがあっても詳しく説明ができないという人もいるでしょう。まずは、基本的な定義をご紹介します。
ダイバーシティの定義
ダイバーシティという言葉は、日本語ではしばしば「多様性」と訳され、ここ数年で広く知られるようになりました。ダイバーシティという言葉がビジネスや社会的な文脈で使用される際には、さまざまなバックグラウンド、属性、特性、価値観、文化的背景、性別、性的指向、宗教、年齢など、異なる要素を持つ個人やグループが共存し、尊重され、認められる状態を指します。
ダイバーシティという言葉が広まった背景
最近使われ出したビジネス用語のように思いますが、実はかなり昔から使用されていた言葉なのです。この言葉が広まった背景を紹介します。
公民権運動
歴史的にみると、「ダイバーシティ」はアメリカで広まった言葉です。
1960年代にアメリカで展開された公民権運動は、人種差別に対抗し、アフリカ系アメリカ人の権利を守るために大きな役割を果たしました。この運動では、多様性と平等の概念を前面に押し出すことで、人種的な差別に反対する声を高める結果となりました。
女性の権利運動
同じく1960年代から1970年代にかけて、女性の権利運動も活発化しました。この運動では、性別に基づく差別に対抗し、女性の平等な権利を実現することを目指しました。そのため、主な内容として多様性とジェンダー平等の重要性が強調されました。
連邦政府の法制度
アメリカ連邦政府は、1960年代から1970年代にかけて一連の法制度を制定しました。これには、公民権法(Civil Rights Act)、平等雇用機会法(Equal Employment Opportunity Act)、タイトルIX(Title IX)などが含まれ、多様性と平等を奨励するものでした。
日本初のダイバーシティへの取り組み
先の3つの運や方制度から分かる通り、「ダイバーシティ」という言葉は、アメリカで平等を訴えるために広く使われた言葉でした。では、日本ではいつから使われるようになったのでしょうか?一説によると、1985年に成立した「男女雇用機会均等法」での、雇用における女性差別の是正から始まったとされています。
ダイバーシティの種類と重要性
ここまで、定義や背景などを紹介しましたが、現代においてダイバーシティという言葉にどれだけの重要性があるかご存知でしょうか?
定義でも紹介したように、この言葉には「多様性」という意味合いがあり、表層と深層の2つに分かれます。
表層的ダイバーシティ
「性別」「年齢」「人種」「宗教」「障害の有無」など、外面的な部分における多様性のことを言います。具体的には、障がい者や外国人の雇用や、男性や女性の性別に関係なく雇用を行うこと。また、高齢者を雇用するなど外見的に判断ができる部分を指します。
企業としても取り組みがしやすく、目に見えて結果がわかるというメリットがあります。
深層的ダイバーシティ
「知識」「能力」「感性」「職歴」「経験」「価値観」「パーソナリティ」など、内面的な部分における多様性のことを言います。これらは、外面だけでは判断することができない部分を指します。
企業としては、新たなブランドの立ち上げや組織の活性化、そして社員のモチベーションを上げるといったメリットがあります。
ダイバーシティの重要性
2つの意味を持つダイバーシティですが、どちらか一方だけ行えばいいというものではありません。
もし、表層だけ行っても見た目に変化があっても中身は変わらず、企業としての活性化には繋がりません。一方で、深層だけ行っても、見た目では判断がしづらく、根気よく続けていかなければ成果が見えないというデメリットがあります。そのため、2つを同時に行うことがとても重要となります。
そして、ダイバーシティ化を進めることによって、社内の活性だけでなくイノベーション向上や、新たな戦略が立てやすくなるなど、企業にとって躍進を遂げる一つの糧となりうるのです。
ダイバーシティ採用とは何か
ここからは、ダイバーシティ採用について紹介します。
ダイバーシティ採用とは、すなわち「多様な人材の採用」です。経済産業省の「ダイバーシティ経営の推進」で、多様な人材について以下のように定義しています。
「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。
(出典:経済産業省『ダイバーシティ経営の推進』)
このように、表層と深層の2つを兼ね備えた人材を採用することを言います。
ダイバーシティ採用のメリット
では、ダイバーシティ採用を行うことで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
優秀な人材の確保
まずは、優秀な人材を確保しやすくなることです。通常の採用活動であれば、企業が指定する求人枠内での募集となるため、対象母数が少なくなります。さらに、少ない対象者を複数社で争わなければなりません。結果、必要とする人材に出会える可能性が減ってしまいます。
しかし、ダイバーシティ採用では、外国人材なども対象となるため、母数を大幅に増やすことができ優秀な人材と出会える機会を増やすことができます。その結果、通常に比べて人材の確保がしやすくなります。
イノベーションの創出力向上
次に、イノベーションの総出力が向上することです。文化や価値観が異なり、考え方や思考が違うものが意見を出し合うことで、新たなアイデアが生まれやすくなります。また、社内間で行われるコミュニケーションの内容にも変化が現れ、その結果新たなブランド構築や企業の発展など期待ができます。
企業価値の向上
ダイバーシティ化することによって、企業の理念にマッチした人材が集まりやすくなります。その結果、働き方の満足度が上昇することで社員からの評価が上がり、さらに外部企業にも良い印象を与えることができるようになります。それらが、最終的に企業価値を高める要因となるのです。
離職率の低下
企業価値の向上でも述べた通り、企業の理念にマッチした人材が集まりやすくなります。また、企業がダイバーシティ化を意識し、各社員のライフスタイルや価値観に応じた働き方を実現できれば、社員のモチベーションが高まり、業務効率改善や成果物の品質向上など、社員のやりがい度が上昇します。そして企業に対して満足度が上がることにより、離職率の低下を推し量ることが期待できます。
ダイバーシティ採用の課題
ここまで、メリットについて紹介しましたが、いい話があれば何かしらの課題もあります。
ここからは、ダイバーシティ採用を行うことで生じる課題について紹介します。
価値観や認識のズレ
多様な人材を新たに雇用することで、企業内に新しい旋風が巻き起こります。社内の改革を行う点では魅力的なように感じますが、一方で全く価値観が違うという点で、既存の社員との認識にズレが生じるケースもあるのです。そのため、社内間でコミュニケーションを多く取るようにし、互いが抱く疑問や認識のずれに対して、こまめに解消していく必要があります。
生産性の低下
前述した内容とほぼ同じですが、互いのコミュニケーション不足だけでなく、認識のズレによって、目的に対するアプローチが上手くいかないなどの問題が発生し、既存の社員のやる気を阻害する可能性が出てきます。そして、最終的に全体の生産性が低下する恐れがあるのです。これも、こまめにコミュニケーションを取り、認識のズレを解消する必要があります。
ダイバーシティ採用の成功事例
ここからは、ダイバーシティ採用を実践し成功した企業様のインタビューを一部抜粋してご紹介します。
▼株式会社マネーフォワード様
日本人と外国人材で、採用のやり方を変えている部分はありますか。
入社後の配属先になりそうな部署の上長を面接官にアサインしています。外国人材は日本人と比べて日本語のコミュニケーションがとりにくいですから、受け入れ先の上長が納得感をもって「育てよう」と思えることが重要です。実際に面接に参加してもらうことで、覚悟を決めてくれていると感じます。また、採用や受け入れの知見が蓄積される効果もあるように思います。
▼YKK株式会社様
日本人と外国人材の採用には、どのような違いがありますか。
基本的な選考の進め方は日本人と同じですが、採用時には「本当に日本で働きたいと思っているか」という点を特に確認しています。入社後には海外拠点で活躍してもらうことを期待していますが、その前に日本に腰を据えて技術・技能を身に付ける必要があるためです。また、日本に都会的なイメージを抱いていると富山の工場に来たときにギャップを感じてしまいかねないですから、黒部の環境について事前にお話をしています。
>>ASIA to JAPAN のサービスを利用した企業様のインタビュー詳細を見る
多様な人材の活躍を実現するために大事な3つのポイント
ダイバーシティ採用を実践した場合、無事に多様な人材が企業で活躍してもらうことが重要となってきます。この活躍を実現するため経済産業省は、中堅・中小企業向けに「経営者の取組」「人事管理制度の整備」「現場管理職の取組」の、3つのポイントから取り組んでいくことを推進しています。
(出典:経済産業省(2021)「~3拍子で取り組む!~ 多様な人材の活躍を実現するために」)
実際に、この3つのポイントをおさえた中堅・中小企業と、その他の企業の実績を比較したグラフがこちらです。
(出典:経済産業省(2021)「~3拍子で取り組む!~ 多様な人材の活躍を実現するために」)
実践できた企業は、人材の採用や定着、売上高・営業利益等の主な経営成果のすべての項目において、よりよい結果が出ていることがわかりました。
まとめ
ダイバーシティ採用についていかがでしたでしょうか。初めて言葉の意味や内容を知ったという人もいれば、採用経験はあるものの具体的な内容を知らなかったという人もいると思います。
ASIA to JAPANでは、日本の企業が行う外国人材のダイバーシティ採用支援の実績が豊富です。
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