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外国人留学生を採用・受け入れる企業必見!在留資格切り替えのプロセスと入社までの注意点

目次

外国人留学生を採用・受け入れる企業必見!在留資格切り替えのプロセスと入社までの注意点

企業のグローバル化が進む中、日本で学ぶ学生を外国人新卒学生を採用する企業も徐々に増えている昨今。受け入れの際は、日本人学生と同様にならないケースもあることをご存知でしょうか?

本記事では、外国籍人材雇用の法務・労務の第一人者である杉田昌平弁護士にご協力いただき、外国人留学生を採用した企業様に向け、受け入れる際の手続きと気を付けるべきことをお届けします。

 

日本で学ぶ外国人留学生の推移 

まずは外国人留学生がどれくらいいるのか?を見てみましょう。

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の2022年度外国人留学生在籍状況調査結果」によると、日本における外国人留学生数は23万1,146人でした(2022年5月1日現在)。 2019年をピークに、新型コロナウイルスの影響を受けて外国人留学生は減少しています。しかし、2022年3月以降、国内への入国制限の緩和により、新規入国の留学生は増加傾向にあり、今後も増えていくと予想されます。 

外国人留学生の日本での就職状況 

外国人留学生の国内における就職状況とは、どのようなものなのでしょうか。 

入国管理局の「令和3年における留学生の日本企業等への就職状況について」の報告によると、2021年に在留資格「留学」と「特定活動(就職活動)」から、就労ビザへの「在留資格変更許可」の申請数は3万1,955人でした。そのうちに許可されたのは2万8,974人で、許可率は90%です。 

令和3年における許可状況を主な国籍・地域別内訳でみると、 

  1. 中国 9,331 
  2. ベトナム 6,885 
  3. ネパール 4,403 
  4. スリランカ 1,477 
  5. 韓国 1,117 

となっていて、アジア諸国で27,612人と全体の95.3%を占めています。 

新卒留学生の職務内容で多いのは、翻訳・通訳で、全体の17.1%を占めています。次に企画業務(マーケティング・リサーチ)で7.6%、海外取引業務(7.5%)、経営者を除く管理業務(7.2%)の順となっており、これらの4種の職務内容に従事する者は18,303人で、全体の39.5%を占めます。 

 

留学生の在留資格に関する基礎知識

ここからは、留学生を採用する際に必ず必要となる基礎知識である在留資格について見ていきます。

そもそも「在留資格制度」とは

前提として、日本では「在留資格制度」を採用しています(入管法2条の2)。在留資格制度とは「外国人の本邦において行う活動が在留資格に対応して定められている活動のいずれか一に該当しない限り、その入国・在留を認めないとする仕組み」と説明されます 

この記事では詳細は割愛しますが、日本の入管法は、外国人が日本に在留する際に、原則として、一人一つの在留資格を有する制度を採用していると考えられている、というのが重要なポイントです(一在留一資格の原則、または、一在留一在留資格の原則)  

留学生の在留資格

2023年3月時点において、在留資格は29種類存在します。海外から日本の大学へ学びに来る留学生は、在留資格「留学」に該当します。
在留資格が「留学」の外国人は、「原則就労不可」のグループに属するため、原則として就労を行うことができないのが特徴です但し例外として資格外活動の許可を得た場合には、資格外活動の許可の範囲内で働くことが可能です

 

留学生を採用した企業向け|在留資格切り替えのプロセス

ここからは、実際に在留資格が「留学」の学生を採用した企業が、在留資格の切り替えをどのようなフローで実施したら良いかを解説します。

資格切り替えの具体的なプロセスについて

在留資格に関する3つの手続である①在留資格認定証明書交付申請、②在留資格変更許可申請及び③在留期間更新許可申請について、具体的に解説していきます。

「留学」の在留資格で入国した外国人材は、以下の図の通り、在留資格を変更して在留することになります。

 

在留資格変更許可申請―日本国内にいる外国人が在留資格の変更する際

既に外国人が日本にいる場合は、当該外国人は何らかの在留資格を有していることになります。今回、新卒採用で採用する学生であれば「留学」の在留資格を有します。とはいえ、外国人が有する在留資格を必ず確認し、在留資格を変更する必要があるのかを確かめましょう。

今回のケースで想定する、在留資格が「留学」である場合には、在留資格の変更許可申請を行う必要があります(入管法20条)。在留資格の変更は、「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由」がある場合に許可されます(入管法20条3項)。

この相当性の判断に際しては、在留資格該当性だけではなく、その他諸般の事情を考慮して在留資格の変更を認めることが、相当かが考慮され、その中で上陸許可基準省令に基準に適合すること(基準適合性)についても求められるため、基準適合性は日本に上陸するときだけではなく、日本国内にいて在留資格を変更する場合でも満たす必要があることになります。

日本にいる外国人を採用する場合の流れを図式化すると、次のとおりです。

新卒者に関する申請が多い1月から3月については、手続を行う出入国在留管理局も混み合います。4月入社に間に合わせるには、十分に余裕をもって手続に取り組むことが重要となるので注意が必要です。なお、在留資格変更許可申請を行った場合、それまで有していた在留資格の在留期間が2か月または結果が出るまでの先に到来する日まで、延長されます(入管法20条6項)。

在留資格変更許可申請 -誰が、どこへ申請するのか

●誰が申請できるか

入国しようとする外国人本人もしくは、その代理人の方が申請できます。例えば、日本で就労しようとする場合の代理人は、受入れ機関となる企業の職員であり、日本人と結婚されて入国しようとする場合には、外国人の配偶者である日本人が代理人となります。

●どこへ申請するのか

これまでは「住居地を管轄する地方出入国在留管理官署」でしか申請は認められていませんでしたが、現在は代理人となる受入れ機関の所在地を管轄又は分担する出入国在留管理官署においても認められるようになりました。
※出入国在留管理庁:管轄について

これにより、愛知県に住む留学生が東京都の会社に入社する場合、以前は、名古屋入管のみでしか申請できませんでしたが、今後は内定先の東京出入国在留管理局での申請も認められます。※これは取次者証明書が交付された人(公益法人の職員や弁護士や行政書士等)についても認められます。

留学生を採用した企業向け|入社までの注意点

手続きについて理解できたところで、それ以外に、入社までに気を付けるべき点はあるのでしょうか?

前提として理解しておくべき重要なポイントは、外国人の採用は日本人の採用と全く同じ人事オペレーションを行った場合には、法令違反となる場合があることです。 日本に在留する外国人も労働関係法令の適用場面では、日本人と同様に同じ法律が同じように適用されますが、これは「日本人を雇用する場合と同じオペレーションをすれば良い」ということは同義ではありません

むしろ、外国人雇用において注意すべきポイントは「日本人を雇用する場合と同じオペレーションをしたら法令違反になる」ケースがあるという点であり、同時に、最も実際にトラブルの原因となる点でもあります。具体的に日本に留学をしている海外大生を採用する際に起こりえるケースを見ていきます。

 

気を付けたいポイント:入社前研修

【事例:入社前の義務的研修】 

C社は、中堅のメーカーである。
C社では、毎年4月の入社日前の3月下旬に、新卒採用者に対し、義務的に入社前研修を行っている。
C社の入社前研修は、内定者に対し参加義務を課して行われるものであり、研修時間に対応する賃金が支払われる。
C社に内定していた「留学」(資格外活動の許可有り)の在留資格で在留中(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更許可申請中)のDは、Dが所属していた大学を学則の定めに従い3月16日に卒業した後に、研修に2週間参加して賃金を得た。
後日、C社のコンプライアンス監査において、Dを研修に参加させたことは、不法就労助長罪に該当するのではないかという指摘がなされた。

上記の事例は、「留学」の在留資格で在留するDさんについて、C社が内定を出し、Dさんが大学を卒業した後に賃金を支払って義務的な入社前研修を行ったという事例です。 この事例の結論がどうなるかといえば、C社に不法就労助長罪が成立し得えます。


一見、Dさんは資格外活動の許可を持っているため、義務的な入社前研修に参加して賃金の支払いを受けても問題無いように思えますが、「留学」の在留資格において許可される資格外活動の許可のうち包括活動許可については、入管法施行規則1951号括弧書において「留学の在留資格をもつて在留する者については教育機関に在籍している間に行うものに限る。」と定められています 

そのため、資格外活動の許可の範囲に含まれない活動を行ってしまっているため、入管法191項に違反し、Dさんは不法就労活動を行ってしまったことになり、C社についても不法就労助長罪が成立し得るのです この事例は、日本人の内定者と同じオペレーションで「留学」の在留資格を有する者について入社前研修を行った結果、法令違反になってしまった事例であるといえます

 

気を付けたいポイント:内定者の資格外活動(アルバイト)の状況

「留学」から「技術・人文知識・国際業務」等に在留資格を変更する場合等に、「留学」の在留資格で行った日本での活動も含めて「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由がある」と言えなければならないのもポイントの1つです。

出入国在留管理庁の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(最終改定令和3年3月)」の別紙3では、次の不許可事例が記載されています。

商学部を卒業した者から,貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に
基づき,海外取引業務に従事するとして申請があったが,申請人は「留学」の
在留資格で在留中,1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働
していたことが今次申請において明らかとなり,資格外活動許可の範囲を大き
く超えて稼働していたことから,その在留状況が良好であるとは認められず,
不許可となったもの。

留学の在留資格は資格外活動の許可を得て、原則として週28時間[※1]以内(在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、1日8時間以内)のアルバイトが可能です。

ただし、この時間制限を超過して勤務した場合、勤務した側は「不法就労活動」に該当し資格外活動罪等に該当し得るのと、働かせた側は不法就労助長罪が成立する可能性があります。

学生が意図せずとも、このような「留学」の在留資格中に行ったオーバーワークは、資格外活動の許可に反して就労したことになり、その後の在留資格変更許可が不許可となり得るので注意が必要です。

[※1]週28時間については、週のどの曜日から起算しても28時間以内となっている必要がある

 

気を付けたいポイント:国民年金の支払い状況

その他にも、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」で2018年12月25日に決定された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」では「国民健康保険・国民年金については、保険料を一定程度滞納した者からの在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請を不許可とする等の対策を講ずる。」と記載されています。

留学生も20歳を超えて日本に住んでいる場合には、国民年金に加入する必要があるので注意が必要です。

学生であれば「国民年金保険料の学生納付特例制度」を使うことができて未納ならないように対応可能ですが、留学生が手続を知らずに行っていない例もあります。こういった公法上の義務違反によって在留資格の変更が受けられないといった事態も考えられます。

まとめ

いかがでしたか?この記事では、日本で学ぶ学生を外国人新卒学生を採用した企業様に向け、外国人留学生を受け入れる際の手続きと気を付けるべきことをお届けしました。

ASIA to JAPANでは、外国人学生の日本における就職支援に注力しており、日本語教育から採用、内定後の受け入れサポート(就労ビザ取得、来日サポート等)を一貫して行っております。具体的な採用ノウハウについて、より詳しくご説明することが可能です。

少しでも気になることがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

●記事執筆のご協力

弁護士 杉田昌平(弁護士法人Global HR Strategy 代表社員)

杉田昌平

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