【インド最前線 #3】インドの日系企業が教えてくれた —日本企業がインド人材を採用する前に知るべきこと
| 📌 本記事は「インド最前線」全4回シリーズの第3回です。
#1 日本語を学ぶインド人学生の特徴(26/6/4公開済み) #2 インドの大学生のリアル(26/6/9公開済み) #3インドの日系企業が教えてくれた——日本企業がインド人材を採用する前に知るべきこと(本記事) #4 インド人材 採用成功のポイント(6月末公開予定) |
| ⚠️ この記事について
本記事はインド現地に拠点を持つ または 今後インド進出を検討している |
はじめに
インドへ進出する日系企業は年々増加し、2024年時点では1,400社を超えるとも言われています。しかし「インド現地でどんな人材を採用すればいいのか」「日本とインドで採用の考え方はどう違うのか」——現場のリアルを把握している担当者はまだ多くありません。
今回、ASIA to JAPANとインド・プネを拠点とするAtoJ HIRAMEKIは、インドに拠点を持つ日系企業16社(総合商社・自動車関連・メーカー・IT・金融・政府関連機関など)を直接訪問し、現地の採用担当者にヒアリングを実施しました。
見えてきたのは、日本国内の採用とはまったく異なる「インド採用の常識」でした。本記事では、インド現地での採用を検討している担当者に向けて、その知見を整理してお届けします。
訪問した16社から見えた「インド採用の現実」
今回ヒアリングした16社は、業種も規模も多様です。大手メーカーや総合商社だけでなく、新たな市場開拓を目指してインドへ進出した地方の製造業も含まれています。
企業ごとに事業内容や現地での役割は異なりますが、多くに共通していたテーマがありました。それが「インドで、どのような人材を採用するべきか」という問いです。
現地法人では日本本社とは異なる採用環境への対応が求められており、各社がそれぞれの試行錯誤を重ねていました。その経験は、これからインド人材採用を検討する日本企業にとって、貴重な先行事例となります。
インド採用の大前提——「即戦力文化」を理解する
日本企業では、新卒を採用し時間をかけて育成する文化が一般的です。しかしインドでは、即戦力となるキャリア人材の採用が主流です。
ヒアリングした16社でも、特にニーズが高かったのは以下のような人材でした。
- 製造現場のマネジメント経験者
- 営業・顧客対応の実務経験者
- IT・技術領域の専門職
- 日本本社と連携しながら業務を進められる人材
「ポテンシャル採用」よりも「入社後すぐに動ける人材かどうか」が採用基準の中心であり、学歴・専攻よりも「どの業務を担当してきたか」「どんな成果を出してきたか」が重視されます。
| 採用担当者へのポイント:日本国内と同じ採用基準・評価軸をインド人材に当てはめると、ミスマッチが起きやすいです。「育成前提」ではなく「経験ベース」での評価設計を検討しましょう。 |
転職は当たり前——流動性を前提にした採用設計を
インドでは、キャリアアップを目的に2〜3年で転職するケースが一般的です。これは個人の問題ではなく、インドの労働市場全体の文化です。
現地の日系企業も一定の離職を前提として採用活動を行っており、「長く勤めてもらうこと」だけを期待するのではなく、「短期間でも成果を出せるか」を重視しています。また転職市場が活発なため、給与やポジションだけでなく「キャリア成長の機会をどう提示するか」が採用の鍵になっています。
| 採用担当者へのポイント:採用段階からキャリアパスを明示し、成長機会を具体的に伝えることが定着率向上につながります。「長期定着」を前提にした日本基準での評価は、ギャップを生みやすいです。 |
日本語力は「必須」ではなく「プラスアルファ」
インド拠点では英語が業務の中心
ヒアリングした企業の多くで共通していたのが、「現地業務では英語が中心」という点です。日本語力を必須条件としている企業は限定的で、実務経験や専門性を優先する傾向が見られました。
インドでは高等教育を受けた人材を中心に英語運用能力が高く、ビジネス上も英語で業務が完結する環境が整っています。
日本語が活きる場面もある
一方で、日本本社との定例会議・レポーティング・調整業務などを担うポジションでは、日本語力が大きな強みになります。単なる翻訳にとどまらず、日本側とインド側の意図を双方向で理解し橋渡しできる人材は高く評価されていました。
ただしこうしたポジションは現地採用全体の中では限定的です。日本語人材の需要は、日本国内採用の方が大きいというのが実態です。
| 採用担当者へのポイント:日本語要件はポジションの役割を明確にしたうえで設定しましょう。「日本語必須」にすることで優秀な理系人材を逃すケースもあります。 |
日本の地方企業こそ「受け入れ体制」の整備が急務
今回ヒアリングした日本企業の中には、大手メーカーだけでなく日本の地方に本社を置く製造業も含まれていました。こうした地方企業では、インド人をはじめとする外国籍人材の受け入れ経験がまだ少なく、社内の許容度や体制が十分に整っていないケースも見られました。
「どのように受け入れるべきか」「社内でどうコミュニケーションを取るべきか」という不安の声も聞かれました。
インド人材採用後に課題になりやすいのは、日本特有の仕事文化とのギャップです。
- 「報連相」の考え方
- 会議・メールでのマナー
- 「察する」コミュニケーション文化
- 残業に対する感覚の違い
これらは採用後の早期離職にもつながるポイントです。採用と同時に受け入れ体制の整備を進めることが、定着率の向上に直結します。
| 採用担当者へのポイント:インド人材の採用は「採用して終わり」ではありません。オリエンテーションやメンター制度など、入社後のフォロー体制をあらかじめ設計しておくことが重要です。 |
| ASIA to JAPANにできること
「インド人材に興味はあるけど、何から始めればいいか分からない」——そう感じている方に向けて、ASIA to JAPANでは以下のような支援を行っています。 ▶ 「まず現地のリアルを知りたい」企業様へ インド・プネ拠点のAtoJ HIRAMEKIを通じて、日系企業へのヒアリングや現地大学訪問ツアーを実施しています。実際に学生と話すことで、オンラインだけでは見えないリアルな人材像を知ることができます。 ▶ 「採用設計から相談したい」企業様へ 即戦力採用が主流のインド市場において、自社のポジションや事業フェーズに合った採用要件の整理からサポートします。日本語人材が必要かどうかの判断も含め、現地市場を踏まえた採用設計をともに考えます。 ▶ 「採用後の定着が不安」な企業様へ 日本企業特有のコミュニケーション文化や報連相の考え方など、受け入れ後の教育支援も行っています。日本国内採用・海外拠点採用の双方に対応しています。 インド人材採用について、まずはお気軽にご相談ください。 |
まとめ——インド人材採用で押さえるべき4つのポイント
| ポイント | 内容 |
| 即戦力文化を理解する | 育成前提ではなく、経験ベースの評価設計を |
| 流動性を前提にする | 2〜3年の転職は当たり前。キャリアパスの提示が定着の鍵 |
| 日本語要件はポジション次第 | インド拠点は英語中心。日本語は橋渡し役に活きる |
| 受け入れ体制を先に整える | 採用後のギャップを減らすオンボーディング設計が必須 |
インド人材の採用は、日本国内の採用と同じ感覚では進められません。しかし、文化や労働市場の特性を正しく理解したうえで採用設計を行えば、優秀な理系人材・グローバル人材との出会いが広がります。
次回(#4)は「インド人材 採用成功のポイント」として、実際の採用事例をもとにさらに具体的な知見をお届けします。(6月末公開予定)