【出張レポート】日本就職を望む「タイ・ベトナム」の学生事情について伺う
ASIA to JAPANは、2023年12月26日〜29日の4日間にかけて、事業提携を行うタイとベトナムの大学へ訪問しました。
タイでは、「キングモンクット工科大学 ラートクラバン校(以下:KMITL)」、「チュラロンコーン大学(以下:CU)」、「コンケン大学(以下:KKU)」の3校で、ベトナムでは「ハノイ工科大学(以下:HUST)」の計4校に訪問しました。
今回の主な目的として、大学との提携強化や就活支援を行いました。
キングモンクット工科大学 ラートクラバン校への訪問
今回も通常通りの訪問を予定していましたが、急遽内容が変更されました。主に、現在工学部と結んでいる提携範囲拡大し、大学全体として改めてMOUを締結するという内容でした。
KMITLの工学部とは、2018年より提携を結んでおり、工学部の学生を対象にした日本語講座を、年単位で毎年無料開講しています。
また、日本語講座を修了した学生のうち、FAST OFFER経由で日本企業に内定を獲得したOB・OGが、現在も日本で活躍しています。
大学から、これらの過去の実績を評価いただき、今回このような運びに至ることになりました。
無事締結が進み、早ければ今年の7月から、新たに他学部向けに日本語講座の提供を予定しています。
KMITLは、世界大学ランキングを意識しており、近年では農業イノベーターの育成を進めています。育成の背景として、農業国であるタイの生産性が低いことが課題とされていることです。この課題解決に向けて、農業だけでなく最先端の技術も織り交ぜた知識、技能を学ぶ学生を育てており、農業分野の学部としても国内トップクラスのレベルを誇っています。
訪問した代表の三瓶によると、「バンコクの大学ではあるものの、まだまだ日本での就職を希望する生徒が多いです。また、給与ベースも日本の求人レベルのままでも大丈夫です」と、大学側からヒアリングしました。
この話にもあるように、バンコクの給与額が年々増加しており、日本の給与との差が縮まりつつあります。そのため、給与面で魅力的に感じる人が年々減少傾向にあるのです。
そのため、“まだまだ”ではあるものの、いずれは今以上に採用が難しくなると考えられます。
チュラロンコーン大学への訪問
CUは、タイの大学の中でも日本語教育に力を入れています。そして、タイ国内の大学ランキングでは1位に君臨する、タイのエリートが集まる大学です。
※詳しくはこちらをご覧ください
同校とは長年提携を結んでおり、日本語講座を毎年開講しています。担当の学部長に講座の現状についてヒアリングしました。「日本語を学ぶ学生数は、横ばいではあるものの、継続率が以前に比べて上昇している」と伺いました。
CUは、他の大学に比べて、就活し企業に就職する生徒が少ない傾向にあります。その理由として、学生の大半が高所得世帯で、かつ実力が伴っていることもあり、学生ながらに起業したり、SNSを活用しインフルエンサーとして収入を得たりするなど、自主的に活動する人が多いためです。また、卒業後に欧米へ留学を行う人も一定数います。
一方で、日本企業から「タイ人材なら、CU出身者を採用したいね」という声をよく耳にします。
しかし、CUの学生の多くが裕福な家庭出身ということもあり、卒業後に「日本で就職」という選択肢を持つ人がほとんどいません。
需要に対して母数が限りなく少ないため、採用は困難を極めます。
三瓶によると、「今回の訪問で、CUの学生を採用の難易度が、過去一番高くなっていると感じました。もし、入社を希望する学生がいれば、迷わず採用することをお勧めします。また、内定後の辞退もあり得るため、他大学の学生も併せて採用しておくとよいでしょう」と、学生の変化と採用の困難さを強く感じたとのことでした。
コンケン大学への訪問
KKUは、タイ東北部最大の総合大学で、キャンパスを置く地方の発展のために、行動し貢献できる人材育成を行っています。また、医学も東北部トップに位置しており、地域の健康・医療を下支えしています。
今回は、工学部の学生就職の責任者と面会し、互いの就活事情について情報交換を行いました。
大学側は、引き続き学生を日本に送り出せる環境なのか否かを気にされていました。
その質問について、過去の採用実績や、日本の外国人材受け入れ事情と状況について、現地講師を交えてお伝えしました。
大学側としても、学生に対して日本就職を選択肢として与えられるものかを懸念していましたが、今回の訪問で、不安を一部解消するに至ることができました。
また、学生に向けた就職支援の説明会も実施し、直接日本の就活事情についても情報提供しました。
タイでは地域によって所得格差がとても激しく、バンコク以外の地域ではいまだ所得が低いです。
実際に、タイ東北部の大学初任給は、平均で15,000THB※とのことでした。これは日本円に換算すると62,000円ほどと、そこまで高くはありません。
そのため、日本への就職を検討する学生の割合は、バンコクの学生に比べても多いです。
学生の日本就職について三瓶は、「タイ東北部の初任給は、バンコクに比べてまだまだ低く、日本に来てもらえると思います。また、工学部の学生は、日本の進んだ技術に関わりたいと考えている人が多いです」と、前向きに考える学生が多く、採用候補として有益であるとのことでした。
※THB:タイバーツ(タイの通貨)
タイの実情
前述している通り、タイの地域によって貧富の格差が生じています。首都・バンコクは中でも高所得が多く住み、また海外企業も多く参入しています。最近は、日本の大手百貨店である高島屋がバンコク内に店舗を構えました。高島屋内のテナントは、日本と変わらない高級ブランドが多く展開され、日本に訪問せずとも商品を手にいれることができるようになりました。
ここで重要なのが、高級ブランドがタイで展開しても収支を見込めるということです。
バンコクでは、日本と同じかそれ以上の収入を得ている人が一定数おり、嗜好品も購入できるだけの余裕があるということ。そして、日本の製品もわざわざ渡航せずとも手に入る実情があります。
ハノイ工科大学への訪問
HUSTも、長年提携を結ぶ大学の1つです。
訪問目的は、日本語講座で学ぶ学生に会うことと、クラスを受け持つ講師に現状についてヒアリングを行うことでした。ベトナム人材は、日本企業のニーズがとても高いため、HUSTでは2023年から日本語講座を2クラス設けています。
訪問したクラスには、日本への就職を夢見る学生で溢れており、日本語を学ぶ機会を作ったことに感謝いただきました。
三瓶によると、「今回、開講から約1年と、半年の2クラスを訪問しました。訪問時に気づいたのが、学生全体の日本語レベルが上昇していることです。今回、日本語でプレゼンを行いましたが、学生は内容の1/3近くを理解していました。生徒のほとんどが、読み書きできないレベルでしたが、期間内でここまで成長できたことに嬉しさを覚えました。これは、日本語を教えてくださる先生が丁寧に授業を進めているおかげでもあります」と、学生の努力や、1年のプログラムで実力をつけることができる手応えを感じられたそうです。
現在講座に通う学生へは、日本の文化に興味や理解を持ってもらうことに努めています。今後、日本語レベルが上達したのち、日本での就職活動の方法や企業情報などを伝えていく予定です。
彼らとは、2025年以降のFAST OFFERで会えるかもしれません。
タイ・ベトナムの理系人材の採用について
タイ人材とベトナム人材は、日本企業にとってとてもニーズが高いです。その理由の一つとして、企業の支店・支部がタイとベトナムに多いことがあげられます。
その他、各人材について紹介します。
タイの理系人材
意外にも、日本語が出来る人材はそこまで多くないため、引く手数多でどの企業も渇望しています。
そして、日本企業は面接・採用時に日本語が出来る外国人材を、積極的に採用する傾向にあります。
その傾向に対し三瓶は、「タイ人材の採用においては、日本語の有無を基準にするのはとても危険です。優秀なタイ人材を求めるのであれば、能力を基準にすることをお勧めします。日本語能力については、内定から入社までの期間でなんとかすることが可能です」と、高学歴かつ優秀なタイ人材の採用が、困難である現状を踏まえた上での対策方法を伺いました。
ベトナムの理系人材
ベトナム人材の採用ニーズは、現在日本ではトップレベルで高いです。事実、日本で働く外国人材の出身国の中1番多いのがベトナムです。ベトナム人材も、日本で得る給与の方が、ベトナムで働くよりも高いという点で、卒業後の選択肢として日本就職の人気があります。
しかし、ベトナム国内大学ランキングでトップのハノイ工科大学出身の高度外国人材は、意外と少ないのです。HUSTは、アメリカトップのGAFAMに入社する卒業生がいるなど、優秀な人材を多く輩出しています。そのため、日本での就職を希望する学生は、日本企業にとって貴重な存在と言えるでしょう。
まとめ
三瓶は、今回の訪問も踏まえて「タイ人材の採用が年々難しくなってきている」と感じたそうです。一方で、ベトナムでは日本で就職する機会をもらえたことに感謝されるという、モチベーションの違いがあります。
過去に比べて日本の経済に、希望や魅力を抱くタイ人材が減っていることが要因だそうです。そのため、日本企業は「採用してあげる」から、「日本に来てもらう」とマインドを変える必要があるかもしれません。
しかし、日本語講座への応募は年々増え続けています。成長する彼らとマッチングできる企業は、ある意味幸運なのかもしれません。
外国人材に関して気になることがあれば、気兼ねなくASIA to JAPANへお問い合わせください。