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【セミナーレポート】意図しない法令違反を防ぐ!外国人雇用と日本人雇用の違い

目次

ASIA toJAPANは、グローバル法務・労務の第一人者である杉田弁護士とwebセミナー「意図しない法令違反を防ぐ!外国人雇用と日本人雇用の違い」を、11月1日に開催しました。

2019年より、在留資格に「特定技能」が加わり、外国人労働者が日本で働く機会が増えてきました。
また、企業のダイバーシティ化が進んでいることもあり、これから外国人雇用を検討する企業もあるのではないでしょうか。

今回のセミナーでは、外国人労働者を採用する際に関わる「法令」、そして日本人雇用との違いについて、杉田弁護士に解説いただきました。
本記事では、その内容の一部を抜粋してご紹介します。


セミナーについて

●トークテーマ
・外国人雇用の全体像
・在留資格制度とは?
・在留資格「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」について
・外国人雇用時の運用上のルール
・外国人雇用で気をつけるべき労働法

●こんな方にオススメ
・2024卒の採用で外国人材の採用を行なった企業様や、2025卒採用で外国人材採用を検討している企業担当者の方
・部署異動や担当変更などで、新たに外国人材の採用を担当することになられた方
・外国人材を雇用する際の注意点を、もう一度おさらいしておきたい方

●登壇者
弁護士法人Global HR Strategy
代表社員
杉田昌平 弁護士

●モデレーター
株式会社ASIA to JAPAN
代表取締役社長
三瓶 雅人

 

外国人雇用の注意点

外国人雇用は、日本人雇用とルールが異なるというのが基本です。

杉田弁護士:毎日、外国人雇用に関するご質問を30〜50件いただき回答しています。日頃から不思議に思うのが、「管理体制がしっかりしている企業でも、なぜ法令違反が起きてしまうんだろうか」ということです。そんな中、私が考えた要因というのが、「日本人と同じ対応をしたら法令違反になる」というものです。残念ながら、外国人材を雇用する際、専門家に相談することがない限り、この情報を事前に教えてくれる人はいません。そのため、知らない方は日本人雇用と違うということを意識されません。

この違いがあるということが、外国人雇用において注意すべきことなのです

では、一体どのようなことを意識することで、法令違反となるリスクを低くすることができるのでしょうか。

 

在留資格を要チェック

外国人材を雇用する際、必ず漏れなく確認しなければならないのが「在留資格」です。

2019年から特定技能が開始され、日本における在留資格は29種類(数え方次第で33種類)あります。
そして、在留資格には就労ができる資格と、そうでないものが存在します。
もし、ルールを知らずに雇用を行ってしまうと、場合によって法令違反となることがあります。

そういった間違いを起こさないために、杉田弁護士より在留資格制度についてお話しいただきました。

 

就労する外国人材が持つ在留資格の割合

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめででは、外国人労働者数は 1,822,725人と公表されています。
実際に日本で就労する外国人材が持つ、在留資格の割合が次になります。

 

在留資格制度の重要ポイント

在留資格制度で杉田弁護士が重要とされるポイントが

・日本に入国している外国籍の人は、原則として、一人一つ、何らかの、日本にとどまり、活動することができる資格(在留資格)をもっている(入管法2条の2第1項、一在留一在留資格の原則)
・外国人は、原則として、在留資格の範囲でしか報酬を得る活動ができない(入管法19条)

の2点とお話しいただきました。

 

杉田弁護士:一つ目は、外国人の方は原則として「一人一つ」の在留資格を持っているというのがポイントです。そのため、留学の在留資格と就労の在留資格を、一人が同時に持つということはできません。二つ目は、在留資格で定められた範囲以外の仕事をすることができないということです。そのため、保有する在留資格次第で出来る仕事が決まるというのが、外国人材雇用ルールの中核となります。もしジョブローテーションで、資格外の仕事に配置転換された場合、法令違反となります。このルールと人事制度が重なる時、意図しない法令違反を犯しているケースが多くあります。

 

働ける在留資格

前述しましたが、日本における在留資格は全部で29種類あります。
その中で、就労できるものか否かに分けたのが、次の表になります。

杉田弁護士:在留資格によって、行える仕事の範囲が異なるため、この分類はすごく大事だと思います。在留カードを見た時、制限なしのグループでしたら、外国人材のため届出は必要ですが、日本人と同じように採用されても問題ありません。認められた範囲のみ就労可のグループは、それぞれ在留資格に対応した仕事のみという制限があります。そのため、自社で予定する業務範囲が在留資格から超えないかどうか、確認する必要があります。就労不可のグループは、文字通り働くことができません。しかし、資格外活動(アルバイト)の許可を取得していれば、規定の範囲内で働くことができます。

 

働けない場合に働かせてしまった場合のリスク

就労不可の在留資格、また在留資格で指定された範囲を超えて働かせてしまった場合、不法就労助長罪(入管法73条の2)が適応され、法令違反となります。
次の3つのいずれかに該当した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金にが課されるか、併科されます。

杉田弁護士:これが外国人材雇用を行うにあたっての、一番のリスクとなります。ただし、発覚後でも早期対応することで、リカバリーできることも多いです。そのため、焦ることなく対応しましょう。しかし、もし発覚しても対応を怠り放置してしまうと、刑罰を科されることになるので注意が必要です。

 

不法就労の類型

在留資格によって働ける範囲が変わることを理解されていれば、知らずに不法就労させるリスクを大きく減らすことができます。
杉田弁護士によると、不法就労となるリスクは大きく2つに分けることができるとのことです。

杉田弁護士:「在留資格を有しない外国人で」一番多いのが、在留期間を過ぎても日本に住み続ける「オーバーステイ」です。在留カードの確認を怠り、期限切れの方、もしくは採用の途中で期限が切れてしまい、オーバーステイになった方に仕事をさせてしまうと、不法就労助長罪となります。もう一つが、在留資格の範囲外の業務をさせてしまった場合ですので、不法就労リスクについてはしっかりと注意しましょう。

 

在留資格該当性とは

外国人材を雇用する際、2つの審査が行われます。それが次の図です。

杉田弁護士:審査の枠組みは、入管法第七条に書いてあります。審査の基準は、黄色線と緑線の2つあります。黄色線の場合、与えられた業務が、入管法に定められた内容と一致しているかどうかになります。もし業務内容が、規定範囲を超えてしまうと不法就労とみなされます。緑線は、上陸許可基準省令で定められた基準であり、もし範囲を超えてしまっても不法就労にはなりません。

そして、杉田弁護士いわく、技術・人文知識・国際業務の要件において、外国人材に業務を与える際立ち仕事に注意が必要とのことでした。ここにおける立ち仕事の概念というのは、在留資格該当性が関係します。

杉田弁護士:技術は、「理学」、「工学」「その他の自然科学の分野」の技術や知識を要する業務。人文知識は、「法律学」、「経済学」、「社会学」、「その他の分野」の技術や知識を要する業務。そして、国際業務は、専門的能力を必要とする業務であることが必要と定められています。いわゆる、業務を担わせることができるのは、“大学で学んだ知識を使った業務”のみとなります。そのため、単純作業のみの労働など、大学の知識を使わない業務は、在留資格の範囲外となり不法就労とみなされるのです。

 

研修の為の立ち仕事は事前申請で可能に

立ち仕事に注意と前述しましたが、参加いただいた方より「法人営業職として在留資格を取得後、研修や商品知識向上を目的として、短期間立ち仕事をさせることは可能でしょうか」という、ご質問をいただきました。

杉田弁護士:理論的には可能です。その方法は、「OJTを活用した技術・人文知識・国際業務の採用」というものです。入社時に、一定の研修を行うというのを入管も認めており、OJTの為のガイドラインが設定されています。そのため、法人営業職として採用された後、OJT計画を作成し、在留資格の申請を行います。その後は、作成したOJT計画に則って立ち仕事を行い、法人営業職へ配置転換を行う運用ができます。

 

よくあるトラブル事例

事例①

システム開発業を営むA社は、人手不足対策のための在留資格「高度専門職1号」で在留する、外国人エンジニアを雇用しようと考えていたところ、同在留資格で在留・就労する外国人Bさんから応募があった。
「高度専門職1号」の在留資格で在留する人材を採用するのは初めてであったが、外国人Bさんは既に国内で就労しているところ、働くことができる在留資格を有するとして、日本人同様に雇い入れ手続を行い、その他に特別の手続をしなかった。
1年後、外国人Bさんが在留期間を更新するために入管に訪れたところ、A社で働く前に在留資格変更許可の手続を行わなければならなかった旨を告げられた。

①の原因解説

杉田弁護士:これは「働く法人を指定される」というルールが原因です。指定された法人を変更するには、「在留資格変更許可」という在留資格を変える手続きをしなければなりません。「高度専門職」、「特定技能」、「特定活動」、「技能実習」の4つはとても厄介で、転職の際に前職と同じ在留資格でも変更が必要という、特別な手続きがあると認識いただくと良いです。

 

事例②

製造業者のC社は、毎年4月の入社日前の3月下旬に、新卒採用者に対し、義務的に入社前研修を行っている。
この入社前研修は、内定者に対し参加義務を課して行われるものであり、研修時間に対応する賃金が支払われる。
C社に内定していた「留学」の在留資格で在留中(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更許可申請中)のDさんは、所属していた大学を学則の定めに従い3月16日に卒業した後に、研修に2週間参加して賃金を得た。
後日、C社のコンプライアンス監査において、Dさんを研修に参加させたことは、不法就労助長罪に該当するのではないかという指摘がなされた。

②の原因解説

杉田弁護士:これは、アルバイトで働ける規定範囲を超えてしまったのが、不法就労助長罪に問われた原因です。

 

ASIA to JAPAN

以上の通り、いくつかのポイントを気をつければ、外国籍人材の採用は難しいことではありません。
ASIA to JAPANは、アジアトップクラス大学に通う外国籍学生の採用支援を行っています。
各大学と提携し、理系学生に対する無料の日本語授業を提供。
また、海外の学生を無料で日本へ招待しており、「日本で対面にて面接」できる機会をご用意しています。
今回のセミナーに登壇した、杉田昌平弁護士と連携した、採用後の在留資格申請のサポートや、入社時の出国および入国、生活立ち上げの支援も行っております。
採用を検討するにあたり、または、採用した外国籍人材を受け入れるにあたり、ルールや手法に不安を感じているなどありましたら、ASIA to JAPANへ気兼ねなくお問い合わせください。

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