2019年12月にASIAtoJAPANのインターン生として来日した、チュラロンコーン大学(Chulalongkorn University/CU)のタナワンさんがタイの教育制度や就職事情についてまとめてくれました。一部編集し、ご紹介します。
タイの教育制度
タイの教育制度は、基本的には以下の通りに分けられます。義務教育は、初等教育(小学校:6年間)と前期中等教育(中学校:3年間)の計9年間です。
・初等教育(小学校:6年間)
義務教育。初等教育の前に、2~3年間の就学前教育を受けさせる家庭もあります。
・前期中等教育(中学校:3年間)/後期中等教育(高校:3年間)
中等教育には、主に理学プログラムと外来語プログラムが用意されています。美術やアニメーションといったプログラムを用意する学校も。前期中等教育は義務教育です。
・高等教育(大学以上)
高等教育では、学生が興味の分野をより深く学べます。学士、修士、博士を取得することが可能です。
また、前期初等教育(中学校)卒業後は、働くためのスキルを身に着ける学校に進学することもできます。この学校は「職業高等学校」と「高等専門学校」の2つに分類されます。
・職業高等学校
基礎を学ぶ課程で、働くためのスキルを磨きます。例えば、工業や家庭科、農業などについて学ぶことができます。
・高等専門学校
職業高等学校卒業後に進学することができます。日本でいう短期大学に相当。高等専門学校卒業後は高等教育(大学以上)に進学することも可能です。
タイの大学入試制度
タイの大学入学制度は、より良い制度を目指して常に改良が重ねられています。現在の入試制度は TCAS (Thai University Central Admission System)と呼ばれ、学生は以下の5つの選考方法のいずれかを選んで受験をします。
・ポートフォリオラウンド
ポートフォリオ、または学校の成績を元に選考
・クォータラウンド
基準試験や成績、スポーツ、言語などの特技を元に、特に優秀な生徒を選考
・直接入試ラウンド
各大学が基準試験の結果と、成績を元に選考
・Admissionラウンド
各大学が基準試験の特定の科目の結果と、成績を元に選考
・Independentラウンド
各大学が独自に設定した選考方法や合格基準で行う選考
タイで人気の学部
2019年の各大学への応募数から、タイで人気の学部が見えてきます。
まず人気が高いのは、経営学部と経済学部。就職に有利だというイメージが強いことが背景にあるようです。グローバル化の影響を受け、第三言語の習得を希望する人が増えたことから、人文学部への応募も増えています。
他にも看護学部や、薬学部 、総合医、療学部などの健康科学に関する学部も人気です。これらの分野は人手不足であることから、卒業後の仕事に困ることはまずありません。
学費の安さや、国立大学の方が質の高い教育が受けられるという考え方から国立大学を志望する学生もいますが、労働市場のニーズに合わせ、希望の学部を中心に大学を選ぶ生徒も徐々に増加しています。
タイの有名大学「チュラロンコーン大学」
タイで最も有名な大学は、国立チュラロンコーン大学です。名前を耳にしたことがある方もいると思います。
同大学は、タイで最も古い歴史ある大学。現在に至るまで国内第1位の大学であり、入学試験が最も難しい大学でもあります。また、歴史に名を残した人物や、現在活躍している有名人を数多く輩出しています。奨学金制度が充実し、優秀な学生が集まっているので、どの学部も国内屈指のレベルを誇ります。チュラロンコーン大学のブランド力、学力は、日本でいう東大のようなものです。
実はこの大学の設立者は、チュラロンコーン大王(ラーマ5世)ではなく、ワチラーウット王(ラーマ6世)。彼が先王であるチュラロンコーン大王(ラーマ5世)に由来する名称として、チュラロンコーン大学と名付けました。
タイの就職活動
タイのいわゆる新卒者の就職活動は、日本とはかなり異なります。日本の大学生は3年生からほぼ一律に就職活動を始めますが、タイの大学生は一律の就職活動はしません。多くが卒業してから就職活動をはじめます。
一般的にタイの大学生がすべての授業を修了し、学位をもらうのは5月です。しかし、学位授与をしてもらうために王族を招待して卒業式を行う大学が多いので、その調整期間があります。そのため学位をもらってから卒業式が執り行われるまでは、半年から1年ほどかかります。ほとんどの新卒者はこの期間に就職活動をします。 大学、または学部が契約をしている会社に入社するケースもあります。
一方、ITや会計分野の学生は、日本の就職活動に似た活動を行います。大学で各社が会社説明会を行い、学生は興味を持った会社に履歴書を送付し、面接を実施します。他に、インターンシップに行った会社から内定がもらえることも。
また、公務員を希望する人も少なくありません。公務員はタイ人にとって最も安定とされている職業だからです。日本と同じく、公務員になるには公務員試験を受けなければなりません。就職活動においては、先輩や知人をたどったり、自分で検索してみたりするだけではなく、大学のJob Fairに参加したり、人材紹介会社を通して採用プロセスに進んだりすることもあります。
タイでは日本と違って、ほどんどの会社が募集の際に学部や専攻の制限を設けます。例えば銀行で募集する人材は、財政分野に関する学部の卒業生に限られます。
タイの新卒者の給料
会社によって異なりますが、一般的に1万5,000〜1万8,000バーツです。日本円にすると驚くかもしれませんが、約4万5000円です。大学院卒で6万円ほど。新卒者でも給料が高い会社は、ほとんどが外資系企業です。職種としては、IT系やエンジニア、営業などがあげられます。その中には日本語を使う職業も含まれています。
また、販売員やビジネスの開発者、工学者、IT、会計士、事務といった職業は現在、タイの労働市場で高い需要があります。