日本の大学へ所属しながら1年だけなど短期で海外大へ通う「交換留学」と、海外の大学へ直接入学する「正規留学」。留学の形態によって、満足度の違いはあるのでしょうか?
今回はイギリスの名門校マンチェスター大学に留学する日本人学生へ、留学の実態と満足度についてアンケートを行いました。交換留学生と正規留学生の間で、留学に対する満足度や意見の違いが見られました。
【1】アンケート調査対象者の基本情報
アンケート調査に協力いただいた日本人留学生のは以下の30名です。交換留学、正規留学ともに最終学年前の学生を対象としています。
- 交換留学生:18名
- 正規留学生:12名
留学生の基本情報として留学を決めた理由や留学費用の拠出方法について質問をしました。
留学を決めた理由は何ですか?
留学を決めた理由は交換留学生、正規留学生ともに「海外への憧れ」や「語学を磨きたい」という点が大きな要素でした。
また、交換留学生は「大学や学部で留学が必須だったため」という理由がその他に含まれていました。
留学費用はどのように拠出していますか?
留学費用の拠出について、交換留学生と正規留学生では大きな違いが見られました。
交換留学生は、約70%にも及ぶ学生が官公庁や財団、大学などによる費用の援助を受けています。
一方で、正規留学生は今回アンケートの回答をした12名中11名が留学費は自費であると回答しています。
このことから正規留学生は自費の負担が大きく、費用拠出に関する差が留学満足度や困難を感じる点で影響を与えている可能性が考えられます。
【2】留学満足度アンケート結果
アンケートでは以下の点から留学満足度を調査し、まとめました。
- 学問、アカデミックの満足度
- プライベートライフの満足度
- 友人や後輩に留学をすすめるか?
- 自分の人生に大きな影響を及ぼしたか?
留学生活における学問、アカデミックの満足度は?
留学経験について、学問やアカデミックの面では交換留学生、正規留学生ともに高い満足度を得られています。
卒業後の展望についての質問では、正規留学に比べ、交換留学生の方が大学卒業後に就職よりも大学院への進学・学問の追求の割合が高いことが分かりました。
また、留学を決めた理由においても、交換留学生は「語学を磨きたい」に次いで「専門性の高い学び」が票を集めました。このことから交換留学生は、学問やアカデミックの追求を重視している傾向があると考えられます。
● 交換留学生の意見
「日本と違って一回の授業に対する準備量がとても多いことに驚きましたが、留学期間を通して自主的な学習態度が身についたと思います」
「日本の大学と比べレベルも高く、学生のオンとオフの切り替えもしっかりしていて勉強していて楽しかった」
「グループディスカッションにおいて、非常に質の高い意見交換と、教員からのフィードバックがあった」
「日本の大学とは違う授業構成で、あるトピックについて深く且つインタラクティブに学べるのが興味深かった」
● 正規留学生の意見
「比較的情熱ある生徒が集まるので、必然的に自分もやる気になります」
「アクセスできる情報量が国内に比べて圧倒的に多い」
「選択した領域にに注力できます。言い換えると、自分に合わなかった場合きついです」
「専攻科目を自由に選択でき、専門性もある為、周りに勉強意欲的な学生も多く勉強に集中できる環境も整っている」
留学中のプライベートライフの満足度は?
交換留学生のプライベートライフ満足度は90%以上が5や4と良いスコアを回答し、非常に満足度が高いことが伺えます。日本の大学生活と比較した「出会う人や価値観の多様さ」やイギリスを中心としたヨーロッパへの「旅行」で留学生活を満喫した回答が多く見られました。
● 交換留学生の意見
「日本では出会うことのできない国の人々と出会えた。イギリス国内外に旅行ができ、充実していた」
「もちろんうまくいかないときには家族や日本にいる友達が恋しくはなりましたが、全体的にたくさんの友達と出会うことができて充実した留学でした」
「多彩なバックグラウンドを持つ学生にたくさん出会えた事が楽しかったです。日本の大学に在籍しているよりも、色んな人に会えたと思います」
一方で正規留学生は5段階評価にばらつきがあり、暮らしにフォーカスした回答が多く見られました。交換留学とは異なる日々の生活に関するネガティブな感想も多く、長期の留学生活の厳しい側面を知ることができます。
● 正規留学生の意見
「ご飯は美味しくないが、さまざまな交流がある」
「寮はお金をかけた方が良いと思いました。衣食住の水準は成績に反映されると思います」
「イギリスのコアな文化に触れることができる」
友人や後輩に留学をすすめますか?
自分と同様の形式での留学を友人や後輩にすすめるか、質問をしました。
交換留学生は、18人中17人が「はい」と回答しており、人にすすめるほど高い満足感や価値を感じているようです。
一方、正規留学生は「たぶん」との回答が半数を占め、人にすすめるかどうかには慎重な判断をしていることが伺えます。これまでのアンケート結果で分かった、正規留学の自費負担や長期の留学生活の厳しさが反映されていると考えられます。
留学は自分の人生に大きな影響を与えましたか?
留学が自分の人生や価値観に大きな影響を与えたかについては、交換留学生からは全員、正規留学生は12名中11名の学生から「はい」とポジティブな回答がありました。
留学生活で有意義に感じたことについては、以下の意見がありました。
● 交換留学生の意見
「変なプライドから自分を現実以上に見せようとする意地が無くなったこと。できないことは当たり前で、できるようになるためにどうするか、できるようになりたいという気持ちをどう示すかのほうが大切だと学ぶことができました」
「学びが深まったこと。日本を俯瞰できるようになったこと。世界中の友達が出来たこと」
「一生ものの友達ができたことと、将来の進路の選択肢の視野が広がったこと」
● 正規留学生の意見
「色々な価値観を持つ友人や先輩と出会えた」
「英語力、新しい価値観、そして文化との出会い」
「エッセイを書いたり、ディスカッションに参加した時に、受動的に授業を受けるだけでなく、自分自身の考えを深く追求し、スキルを磨くことができていると感じられたこと」
【3】留学満足度アンケートのまとめ・考察
交換留学生と正規留学生の間には、留学満足度の差や意見の違いが見られました。
差を生む原因として、以下の違いが影響していると考えられます。
- 留学費用の拠出が自費なのか、他からの経済的支援があるかの違い
- 留学形態や留学期間の違いから生ずる、プライベートや生活面の違い
また、満足度や意見のポジティブさネガティブさの違いはあったものの、交換留学、正規留学はともに人生や価値観に大きな影響を与えていることは間違いありません。
最後に
本記事はマンチェスター大学に拠点を置くManchester Japanese Societyさんに調査していただいた内容をまとめたものになります。Manchester Japanese Societyのオリヴィアさんをはじめとする皆さん、ご協力ありがとうございました。
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