東日本旅客鉄道株式会社

会社情報

財戦略部人財育成ユニットマネージャーの尾上さやか氏にお話をうかがった。

 

―外国人材の採用に取り組み始めたのはいつ頃ですか。

2012年からです。当初は若干名の採用でしたが、国際事業の進展などに伴い、2014年から採用人数を増やし始めました。新卒採用・中途採用の双方を合わせて、年間10名程度を採用しています。現状はアジアの方が多いですが、今後は事業を展開していく国の方の採用を強化することも検討しています。

 

―日本人と外国人材の採用には、どのような違いがありますか。

2つあります。1つ目は採用候補者との接点のもち方です。これは外国人の方に限らず日本人にもいえることですが、当社は「さまざまな地域から多様な人材を受け入れる」ことを採用方針にしています。ただ現状、日本で出会える外国人材は留学生が主体で、国籍もアジアの方が多く地域が限られてしまいますし、大学の偏りも生じてしまいます。幅広くグローバルな人材を採用していきたいという観点で考えると、今までの採用チャネルだけでは限界があると感じています。

そこで海外在住の外国人材と接点をもつべく、近年は海外で開催されるキャリアイベントや、ASIA to JAPANの「Study Go Work JAPAN 面接会」などにも積極的に参加しています。海外ではJR東日本が海外事業を展開していることを知らない方も多いですから、まずは当社に関心をもつ機会をつくるよう、努力をしています。

2つ目は、職種への理解です。当社には総合職と、東日本の各エリアを軸にしたビジネスフィールドで活躍するエリア職があるのですが、海外では「学生時代に培った専門性を活かしたい」と希望する方が多いのです。総合職の場合は専門性だけでなく、幹部候補生としてマネジメント力や経営目線も求められますから、求める人材像を理解していただくことに難しさを感じています。

 

選考の際、最も重視しているポイントは何ですか。

当社の場合、鉄道の実務に関する知見を得るために、総合職の方も最初は必ず駅などの現場に配属されます。その際に「自分がやりたい仕事ではない」とギャップを感じることがないように、現場の仕事に抵抗がないかは必ず確認するようにしています。最初に現場というステップを踏まなければ次に進めないということではなく、「現場での経験が将来の海外事業やマネジメントの仕事に必要である」ことを正しく理解できているかが重要です。外国人材の方は最初に現場配属になることへの抵抗感が比較的強いように感じますので、現場で活躍している外国人の社員と交流をもたせるなどして、本当に腹落ちしているのかは確認するようにしています。

そもそも当社は事業の性格上「転職が当たり前」という会社ではなく、長く勤めていただける方を採用しており、それは外国人材でも変わりありません。安全で安定した、鉄道事業を提供する礎になるのは経験であり、それは数年で身に付くものではない。ある程度の下積みが必要だということ、そしてそれはかっこいい仕事ばかりではないということを、まずはご理解いただく必要があるのです。

ほかに、人物面では「熱量の高さ」と「人間的な魅力」を重視しています。鉄道はお客さまからの信頼を礎とする事業ですので、実直さと意欲、情熱が不可欠です。特に国際事業を強化していくにあたり、難しい案件が増えていく中で、「絶対にやり遂げる」という気持ちは欠かせません。また、日本人と現地の人たちとの架け橋になっていただきたいとも思っていますので、どのような現場であっても受け入れてもらえるような人柄やコミュニケーション力も重視しています。交渉事やマネジメントを担うセクションに配属されることもありますので、荒削りでも、将来の可能性を感じるような方を採用したいと思っています。

 

―日本語力はいかがでしょう。

現状ではある程度日本語力も求めており、たとえ採用時の日本語力が低かったとしても、入社時には日本語能力検定(JLPT)でN1レベルになっていただきたいと思っています。そのためのサポートとして、2018年から一部の外国人材の方で可能な方には10月に入社いただいています。日本での在住経験が短い方や日本語力に不安がある方に対して、当社だけではなく、ある程度日本の環境に慣れた状態で4月の新入社員研修に参加できるようにするための対応です。4月までの半年間、夜は語学学校にも通ってもらっています。

 

―外国人材の受け入れに関して、ほかに何か工夫していることはありますか。

2018年より「外国籍社員ネットワーク」を立ち上げました。外国人社員から「同じ外国籍の先輩社員と話がしたい」という相談があったことがきっかけです。具体的には年に4〜5回意見交換の場を設け、さまざまな議論を行っています。「外国籍社員が考えるキャリア」をテーマにしたり、東京オリンピック・パラリンピックの際に当社ができるサービスについて外国人目線から考えてもらったりしています。ほかに、たとえば「結婚して家を探す際に住宅控除が得られない」といったときの対応など、「ほかの人が同じことで困らないように」と、外国人社員ならではの困りごとを共有し、それを冊子にまとめたりもしました。

ネットワークへの参加は任意ですが、外国人社員のうち半数程度が参加してくれました。「新たな交流が生まれた」「ほかの人も同じように苦労していることがわかった」など好評です。まずは会社がきっかけを与えることが大切だと感じています。今後は外国人社員で自主的に運営してもらい、引き続き悩みや困りごとをケアできる場にできればと思っています。当社として初のムスリムの女性が今後入社する予定ですが、お祈りや食事などの宗教上の対応に関しても、こうした場でケアできるのではないかと考えています。

また、こういった場を定期的に設けることで、コアメンバーは先輩としての自覚がもてますし、マネジメント力を鍛えることにもつながります。会社に対するロイヤリティーも高まるのではないかと期待しています。

 

−最後に、外国人材の採用を行ったことで会社に生じた変化について教えてください。

私は採用だけでなくダイバーシティも担当しているのですが、外国人社員が職場にいることは、まさしくダイバーシティです。日本人と比べると、外国人社員は意見をはっきりと言う人が多いです。でも、たとえ突拍子もないことを言われたとしても、少なからず新しい発見や視点が生まれるものだと感じています。そういった新しい何かが社員や組織、会社の意識改革にもつながりますので、外国人の皆さんがいることが、すごく大きな力になっていると思います。

また、外国人社員を周りの日本人社員がフォローしていますが、フォローをしている社員を見守る目線がとても温かいのが印象的です。さまざまなセクションがかかわって成り立つ鉄道事業に大切なチームワークを強める効果もあるように感じています。

これまではダイバーシティの観点での外国人材の採用という側面が強かったのですが、今後の事業を担う人材として採用する方も増えてきます。外国人材がマネジャークラスで活躍できるようになっていけば、会社の変化も加速していくと期待しています。単に職場に新しい風を入れるということではなく、ビジネスの成功に外国人材の能力や経験、知識が直結する。これが今後のフェーズに求められていますし、会社としてもそういった人材を育てていくために改革をしていかなければと考えています。